FOMARE、メジャーデビュー作「Grey」から改めてわかるFOMAREらしさとは

FOMARE | 2020.11.25

 群馬出身の3ピースバンド・FOMAREが、11月25日にメジャー1st EP「Grey」をリリースした。表題曲「Grey」は、TVアニメ『ゴールデンカムイ』第三期OPテーマに向けた書き下ろし楽曲という、FOMAREとしても新しい試みを経て制作された楽曲。人気アニメのタイアップを担当するという、一見華々しく思われるメジャーデビューの第一歩ではあるものの、バンドとしては様々な葛藤や発見もあったようだ。そういった当時の心境も含めつつ、今作に収録されている楽曲たちについて、そして先日Zepp Tokyoにて行われたツアー初日や「#FOMAREの実験2 ワンマンワンマンライブ」についてなど、バンドの近況についてメンバー全員が語ってくれた。
――10月30日にZepp Tokyoで行われた「FOMARE LIVE HOUSE TOUR 2020~おいでよ目を閉じて~」のツアー初日のライブを観させてもらったんですけど、改めて8ヵ月振りのライブはどうでした?
アマダシンスケ(Vo/Ba):ほぼ1年振りだったので、ちょっと初ライブに近い感覚でしたね。ほとんどがライブで初披露の曲だったので、いつも通りの気持ちにしなきゃ!という意識が強かったです。
カマタリョウガ(Gt/Cho):ライブの感覚を、ライブをしながら取り戻してました。最後の方でやっと掴めたかな?って感じで、最初の方は割とガチガチでした。
オグラユウタ(Dr/Cho):8ヵ月前とは状況が全く違ったので、本当に新しい第一歩という感じがしましたね。
アマダ:ステージから見る景色も一変してはいましたけど、マイナスなイメージは全くなくて新鮮でしたし、もしホールでライブをやったらこうなるんだろうなと思いました。残念だなと思ったのは、ソーシャルディスタンスがあったことくらいですね。
――しかもその後の11月13日に行われた、最初に会場に辿り着いた一組に向けてワンマンライブをするという「#FOMAREの実験2 ワンマンワンマンライブ」と題したゲリラライブも、かなり挑戦的というか、異例のライブイベントでしたよね。自分たちの音楽や活動で誰かを驚かせたいといった好奇心や遊び心といった欲求は強い方ですか?
カマタ:そうですね。昔っから本当にやりたい放題やっていましたね。
アマダ:やりたいことは全部やる主義みたいなね。
カマタ:メジャーに行って、そういうところをメジャーのチームが応援してくれたっていうのがデカいですよね。
アマダ:あんなデカいところ(東京・TSUTAYA O-WEST)で普通できないですもんね。みんなも、まさかこのタイミングでああいうライブをするなんて思っていなかったと思うし、「#FOMAREの実験」という企画は、毎回良い意味で裏切れているから楽しいですね。
オグラ:そうだね。自分たちも「#FOMAREの実験3」が楽しみだしね。
――私たちも、これからも驚かされることを楽しみにしてます! では今作のお話を訊かせてください。楽曲「Grey」について、明確なコンセプトがある中での制作はどういう風に進んでいったんですか?
アマダ:アニメのストーリーを辿りつつ、男らしさだったり疾走感だったり、尖ったナイフみたいなソリッドな曲にしようっていうイメージがありました。途中で正解が分からなくなったりもしたんですけど、時間をかけて作り上げました。
オグラ:でも、理想通りにできたよね?
カマタ:うんうん。ソリッドな曲に敢えてツービートを入れてみたり、今までにないような要素を盛り込みまくって、3人で試した感じはあります。
――確かに、クールな世界観なのにドラムがめちゃくちゃアツいですよね。
アマダ:FOMAREの曲の中で一番ドラムが目立つ曲かもしれないですね。
――そして作詞に田中秀典氏、編曲に大西省吾氏を迎えての制作だったということで、バンド以外の方の手が加わることついての抵抗感はなかったんですか?
アマダ:ありましたね。最初、自分たちの中でもまだ「Grey」に対するイメージがまとまっていないっていう状態だったのに、そこにさらにアレンジャーさんが入るっていうことへの抵抗はありました。音も今までとは全然違うし、これがもし「メジャーに進むこれからのFOMARE」なのだとしたら、果たして自分は受け入れられるのか?という葛藤がありました。
カマタ:反抗期というか、全部言うこと聞かない時もありましたね。でも、最終的にはいい感じになりました。
――<かもしれない世界なら>という歌い出しも、今までのFOMAREにはない雰囲気ですもんね。
アマダ:歌詞については俺も思うところがありましたね。自分で書くからこそ得られる、メンバーに見せた時や、レコーディングのぶっつけ本番で発表する時のドキドキやワクワクっていうのがあるんですよ。だからこそ、そこに誰かの手が加わってしまったら歌詞が偽物になっちゃうんじゃないか?と思ったんですよね。でも、これってあくまで『ゴールデンカムイ』とのタイアップ曲なんだよなぁ、と考えられるようになったんです。
――ああ、オリジナルとは別物であるという考え方にチェンジしたんですね。
アマダ:そうなんです。FOMAREのオリジナルとして世に出る楽曲がそうなるのは絶対に嫌ですけど、アニメに合うような楽曲を作ることに関しては、俺だけの力では不十分だったと思いますし、そういう気付きも含めて、タイアップをやれて良かったなと思います。でも、今まで100%自分で書いてきた歌詞をライブで歌うからこそ、当時の想い出が蘇ってきて胸が熱くなる、っていう瞬間がめちゃくちゃあるんですよ。だから、これから「Grey」を歌う時にどれだけ気持ちを込められるのか?っていうのは、正直まだわからないですね。
――でも、今後のライブでの演奏を経て「Grey」を自分たちのものとして変化させていけたら、バンドとしてもかなり強みになりますよね。
アマダ:ほんとにそれは最高っすよね!
カマタ:それに、制作面でめちゃくちゃ勉強になりましたね。特にトラックの重ね方については、自分からは出てこないものでしたし。ギターを一番前に出しつつ、アシスト的にギター以外の音色を重ねるという作業があるんですけど、そのバランスがすごく上手かったんですよ。自分ももっと勉強しなきゃなと思いました。
――でもその分、「Holo」と「fall」の新曲2曲については、自信を持って「これはFOMAREの曲だ!」と言い切れるものに仕上がったんじゃないですか?
アマダ:確かにそうですね。でも新曲2曲に関しては、ネタがなくなっちゃってたんですよ。それで結局、レコーディングの1週間前くらいにやっとメロディのイメージが出来始めて、速攻スタジオに入って、歌詞も歌録りの日に考えました。かなりギリギリで出来上がりましたね。
――相当タイトだったんですね。個人的に「Holo」の歌詞は、ライブでアマダさんが言っていた「FOMAREは変わらないまま、変わり続ける」という言葉を裏付けるような内容だと思いました。
アマダ:ああ、確かに。でも、結果的にそうなってくれたという感じで、そこまで意識はしていなかったですね。過去の自分を振り返りながら「あの頃は楽しかったんじゃないのかな?」と実際に考えていたし、曲が出来ないっていうことをテーマに、俺自身の加速が弱まってるんじゃないか?と思いながら書いてましたね。
――なるほど。あと、<虚しさはこの胸に 愛しさは声に出した>という歌詞を読んで、「虚しさを溜め込んじゃうのか!」とも思いました。
アマダ:今まで虚しさや寂しさというようなネガティブな感情を歌うことが凄く多かったので、逆に一旦ポジティブな気持ちを出してみよう、というテーマもありましたね。駅前をボケーっと歩きながら書いてました。
――前半はしっとりとさせて、中盤で一気にスピードを上げていく感じは、メロディックパンクでの育ちを感じさせる構成ですね。
オグラ:この曲はセッションをしながらできましたね。ギターリフも、カマタが即興で弾いて、「うわ! このリフきたらこのドラムだろ!」という感じで合わせていきました。
アマダ:コロナの影響でスタジオに入る機会も減っていたので、3人でセッションしながら曲を作るっていうのは楽しかったですね。
――「fall」はZepp Tokyoでのライブで新曲として披露された時に初めて聴いて、一発で惚れました。めちゃくちゃ良いですよね、この曲。
オグラ:俺も「fall」推しです!
カマタ:いやあ、嬉しいですね! この曲の中でほのかに薫るインディーズ感に関しては、自分としても手応えがあります。
アマダ:この曲は、気持ちがどんどん落ちていくっていう意味で“fall=落ちる”というタイトルをつけました。生々しい話、この歌詞を書いた時くらいに自分の身に起きた失恋をきっかけに作った曲なんですよ。それで、これは一旦メジャーデビュー盤に入れとかなきゃなと思って、入れました。
全員:(笑)
――すごいな、それで入れようと思うんだ(笑)。
アマダ:歌詞にある<Ahh>の表記も、最初は漢字だったんすよ。でもそうすると病んでるっぽくなるんで、ローマ字にしました。そっちの方が明るさが出ると思って。
カマタ:漢字だと演歌感が出ちゃうしね(笑)。
アマダ:そうそう(笑)。最後の<Ahh…>なんて、「…」があるからマジで落ちてっちゃってるように思えるからね。
――(笑)。個人的には「切なさ」と「心地好いスピード感」のバランスこそFOMAREの強みだと思っているんですけど、「fall」はその強みをぐっと昇華させたような曲だと思います。
カマタ:それは自分たちでも思いました。自分たちの武器が分かってきたっていう感覚があったし、その上で、「Grey」の制作で学んだことを落とし込めたのが良かったです。
――自分たちが思う「FOAMREの武器」ってどういうところだと考えています?
アマダ:最低限、シンプル、ですかね? ニュアンスが難しいですけど……。派手なものが好きだったり目立ちたがりだったりするところはあっても、バンドとしては意外とシンプルなんですよね。
カマタ:アマダはボーカルですし、裸でいさせたいですね。でも3人とも裸だとヤバい集団なので、僕は服を着ているっていう。歌詞の邪魔はしたくないですけど、歌声を含めたメロディを重視しつつ、ギターをシンプルにしすぎないようにしています。3ピースってライブの時にどうしても音が薄くなっちゃうんですけど、そこを埋めるアルペジオを考えたりしてますね。俺らはずっと3ピースでやっていくと思うので、これからも3人でやれるように曲を作っていきたいと思ってます。
オグラ:うんうん。ドラムにおいても、アマダの歌を聴かせるっていうことが絶対に一番ですね。ライブにしても曲作りにしても、歌をストレートに聴いてもらえるように気を付けてます。僕が加入したきっかけも、同郷だということもそうですけど、FOMAREのそういった着飾らない楽曲に惹かれた部分が大きいですし。
アマダ:2人のそういう考え方に基づいたプレイにはもちろん気付けていますし、嬉しいですね。
――なるほど。「FOMAREの音楽=着飾らず、盛り込みすぎず、一番気持ち良いところのメロディラインを狙っていく」という意識が強くあるんですね。確かに「Holo」と「fall」の2曲は、その意識が強く反映されている楽曲ですよね。
アマダ:そうですね。メジャーデビューを飾る曲なのに、若干ある古臭さみたいなのがいいですよね。
カマタ:個人的には「Grey」よりも、新曲2曲の方を推したいとは思ってますね。
――そして、4曲目の「恋をする自分が好きなだけだと思う」は廃盤になったデモに入っている曲ということで、この曲をメジャーデビューのタイミングで再録したのはどうしてですか?
アマダ:メジャーデビューということもあって、昔からFOAMREを応援してくれているお客さんへのサプライズプレゼントという意味があります。
――10代の時に作ったラブソングを改めて録り直すって、どんな気持ちでした?
アマダ:照れましたね。当時、自分の身近にいたメンヘラの女の子の気持ちを代弁した歌詞なんですけど、今じゃ絶対書けないです。この頃って、変に勘違いして突っ走っていた時期でもあったんですよ。だから、ああ、自分も若かったんだなと思うし、昔の自分に会っている気持ちになります。
カマタ:作った時のことはほとんど覚えてないんですけど、タイトル長!って思ったことは覚えてます(笑)。でも、お客さんもまだ5,6人しかいなかった当時この曲が人気になったし、自分も好きだったんですよ。それで今回、リテイクする時も、あえて手を加えずに当時のまま弾いてみようと思って、音だけ良くさせて演奏しました。
――今の自分と過去の自分を比べて、成長っぷりを感じました?
カマタ:相当感じましたね。例えばメロディの見せ場や歌詞の見せ場っていうのは、今の方が分かってると思います。かといってこの曲がダメだとは思わないですし、いい意味での荒々しさを感じますね。
――今まで「FOMARE=ラブソング」というイメージも少なからずあったと思うのですが、最近の楽曲はそういったところから抜けたような感じがします。イメージを打破したい!という意識はあったんですか?
アマダ:そういう訳でもないんですけど、多分、最近の私生活が充実していたんですよね。上京して東京に慣れつつあったし、恋愛や友達との関係性が充実してる時って、リアルなことってあんまり書けないのかな?と思いました。そこで自分は、何かしらが追い込まれていないとダメなんじゃないか?って気付きましたね。今作の制作期間中、1ヵ月間家がなかったことがあったんですけど、そういう経験って自分の人生にもバンドにもすごい影響すると思っているんですよ。そして自分はそれを歌詞や音楽としてアウトプットできると思っているし、追い込まれていた方が良いものが降ってくるんだと思うんです。
――え、1ヵ月も家がなかったんですか?(笑)
カマタ:いやもう最高っすよね(笑)。自分は絶対にそんなことできないですもん。そういうところをもっと伸ばしてほしいし、もっとやれ!って思っています。アマダはそういうことができるからこそ、ずっと裸のままでいてほしいんです。
オグラ:でも、身体には気を付けてねって思ってます(笑)。
全員:(笑)
――なんか家族みたいで、あったかくて良いですね(笑)。KEYTALKとのコラボ楽曲「Hello Blue Days」は先輩バンドとの共作ということですが、どうでしたか?
カマタ:純粋に先輩バンドとやるっていうのは刺激がありました。基礎的な部分ももちろん上手いですし。あと、めちゃくちゃ仲良くなりましたね。
オグラ:すごくフラットに接してくれるので、有難いですね。
カマタ:でも「Grey」の時とはまた違って、そんなに勉強勉強っていうスタンスではやっていなくて、合宿とか修学旅行みたいな感じに近かったですね。
――ありがとうございます。ここまで「Grey」収録の全5曲についてのお話を訊いてきましたが、各々の楽曲がバンドにとって大きな意味をもたらす作品だと感じました。そしてFOMAREは今作をきっかけに新たなステージへと踏み出すわけですが、この機会をきっかけに生まれた目標などはありますか?
アマダ:「Grey」の制作で色んなことに気付けたり、再確認できたりしたので、次の曲作りが楽しみっていう気持ちです。それに、今ってまだ万全な状態ではないじゃないですか? 本心としては完璧な状態でメジャーも発表したかったし、インディーズ盤の『目を閉じれば』のツアーも終わってない中でメジャー盤をリリースするっていう、本当に何も片付けられてない状態なんですよ。なので結構複雑な気持ちですね。だから、一旦そこを全て整理させてから、先の事を考えていきたいですね。

【取材・文:峯岸利恵】


FOMARE 『Grey』Official Music Video

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リリース情報

Grey

Grey

2020年11月25日

Sony Music Associated Records

01.Grey
02.Holo
03.fall
04.恋する自分が好きなだけだと思う
05.Hello Blue Days(KEYTALK × FOMARE)

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先輩が、カラーひよこを子供の頃に祭りでお父さんに買ってと頼んで、1匹だけ買ってもらったけど逃げちゃって。そして次の年に、またカラーひよこを買ってって言ったら、「無理、お前育てらんないだろ」って言われて、「わかったよ!」って言ってたら、裏の林みたいなところに、ちょっと成長したピンクとかのカラーひよこが70匹くらいいたらしくて(笑)。だから、店の人が逃がしてたんですよね……。

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自粛期間中とか髭生えちゃうじゃないですか。で、たまに鏡とか見て「イケてるかも」と思っちゃうときがあって。髭が生えてる芸能人(イケメン)を見て、「あ、こうなりたいかも」と思って(鏡を見て)「……でもちょっと違うな」って(笑)。



■ライブ情報

FOMARE LIVE HOUSE TOUR 2020
~おいでよ目を閉じて~

※終了した公演は割愛
[2021]
02/06(土) 宮城 仙台JUNK BOX
02/13(土) 沖縄 output
02/16(火) 兵庫 MUSIC ZOO KOBE太陽と虎
02/18(木) 岡山 IMAGE
02/20(土) 福岡 FUKUOKA BEATSTATION
02/22(月) 京都 KYOTO MUSE
02/26(金) 群馬 高崎club FLEEZ
02/28(日) 新潟 NIIGATA GOLDEN PIGS RED
03/02(火) 大阪 心斎橋BIG CAT
03/03(水) 愛知 名古屋DIAMOND HALL
03/05(金) 神奈川 横浜F.A.D
03/09(火) 北海道 札幌PENNY LANE24


COUNTDOWN JAPAN 20/21
2020/12/27(日) 千葉 幕張メッセ

NAMBA69 presents
MORO’S ATTACKS! SHELTER DAY2

2021/01/13(水) 東京 下北沢SHELTER

small indies table tour 2021
2021/06/01(火) 東京 Zepp Tokyo
2021/06/09(水) 愛知 Zepp Nagoya
2021/06/10(火) 大阪 Zepp Osaka Bayside

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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