充実のセルフカバーアルバム『Futures』をチーム総力戦で体現してみせた「Studio Live “Futures”」徹底レポート!
Nothing’s Carved In Stone | 2020.11.11
8月にセルフカバーアルバム『Futures』をリリースしたNothing’s Carved In Stone。ライブで進化させた代表曲の数々を最新の演奏でアップデートした音源は、究極のベストアルバムと言っても過言ではないだろう。9月19日には、この渾身のセルフカバーをフィーチャーしたスタジオ配信ライブ「Nothing’s Carved In Stone Studio Live “Futures”」を行い、音源の上を行くライブを見せつけてくれた。バンドが音を出せば、どんな環境であれ、最強のステージになる。それは6月に行った初のスタジオ配信ライブ「Studio Live “Navigator”」でも実証されていたが、今回は前回以上の迫力だった。バンド、照明、カメラワーク、画面のスイッチングなど、ライブに関わる全スタッフが一丸となって作り上げた気合の賜物と言うべきか……。実際、どのようにすごかったのか、当日のライブを振り返ってみたいと思う。
開演は20時。だが、その少し前から画面横のコメント欄にはファンのわくわくした言葉があふれていた。「まだか?」「ドキドキする」……まさに開演前にライブハウスのフロアのようなやりとりが交わされ、それぞれがバンドへの思いを共有している。中にはビールを開ける人や、バンドTシャツに着替える人もいて、多くが楽しむ準備を整えていた。
開演時間の20時。画面が切り替わり、配信ライブがスタート! 気になる1曲目には「November 15th」が選ばれた。バンドにもファンにも大事な曲のひとつであり、毎年この日にはライブが行われてきたほどの象徴的なナンバーである。スタジオでは村松拓(Vo/Gt)、生形真一(Gt)、日向秀和(Ba)、大喜多崇規(Dr)の4人が前回同様、円陣スタイルのフォーメーションを組み、互いの表情を見ながらプレイするというスタンスだ。イントロが鳴った瞬間から聴き手は音のインパクトに衝撃を受ける。彼らのパフォーマンスのスゴさは熟知しているのだが、画面を通してもこれだけの音圧を感じるとは。しかも、俯瞰用のカメラに切り替わると、床に“Nothing’s Carved In Stone”というバンド名が書かれており、この日のライブにかけるメンバーやスタッフの熱意が伝わってきた。2曲目に「Isolation」が続く流れで、すでのこの日のメニューが“神セットリスト”だと確信した人たちも多かったに違いない。カメラワークや照明も演奏を盛り上げていて、バンド愛溢れる仕事ぶりには胸が熱くなる思いだった。3曲目の「白昼」では、すっかりライブのペースをつかんだ村松が、カメラ目線でいい表情を見せる。また、彼らの十八番であるバンドアンサンブルも戦慄もの。贅沢に仕込まれたカメラは、生形の手元や足元のエフェクター、日向のスムーズなベースプレイや、大喜多のバスドラを打つ足元や細かいフィル回しなどのプレイも存分に網羅していく。最初のブロックを終えると、村松が本日の初MCで口を開いた。
「画面越しだと思いますけど、いつものようにやっていきます。最後までついてきてください。よろしくお願いします!」。
そのまま気負うこともなく、「NEW HORIZON」へ。自粛ムードの中でリリースした配信シングル曲だ。ライブハウスで聴いたら、さぞや気持ちいいに違いない。そして、このあと生形のギターに導かれ、「Honor is Gone」が飛び出す。これは8thアルバム『Existence』(2016年リリース)収録のナンバーで、ナッシングスのダークサイド全開のヘビーチューンだ。大喜多のドラムの破壊力も倍増。こういう攻撃的でエモい曲も格別だが、まさかのサプライズ選曲にファンのテンションは急上昇! しかもこのあと、1stアルバム『PARALLEL LIVES』(2009年リリース)から「Words That Bind Us」をブチ込むというセレクトに、コメント欄は大いにザワついた。レア曲の演奏でも、日向は超絶なベースフレーズを軽やかに弾きながら笑顔を見せる余裕だし、村松もまたいい顔でライブを楽しんでいる。前回の配信ライブより、メンバーがリラックスしているように感じられた。そして、このブロックをシメたのは、『Futures』でも進化したアレンジで人気の「Rendaman」。照明も派手に点滅し、曲を盛り上げる。脳内はライブハウスのフロアにトリップしたような感覚だ。
ここまで疾走モードで突っ走ってきたナッシングスだが、中盤を前にひと呼吸。
「なかなか現実に会うことは難しいですけど、こうして今日も配信ライブをやっております。遠くにいるみんなへ、気持ちを込めていつも歌っている曲を1曲……」と前置きして「青の雫」へつなげたのだが……まさかの「歌詞間違えました(笑)」と村松。通常のライブなら大いに盛り上がった瞬間だったに違いない。気を取り直して「青の雫」をやり直すというハプニングも、まさにライブの醍醐味だ。このブロックでカメラは村松の表情をアップでとらえ、温かみのある時間帯を演出。続いて演奏された「Shimmer Song」は、サウンドも歌詞も、心に染みる力強い曲だ。「Pride」では、絡み合うギター、ベースのリフ、そのアンサンブルを焚きつけるようなドラム……スリリングなサウンドを展開して後半戦へのはずみをつけた。
後半ブロック前には、村松がMCで「青の雫」の歌詞間違いに触れ、「歌詞、合ってたから(笑)」と釈明。そして「久しぶりにライブやらせてもらってます。ありがとうございます。すごい楽しいです! スタジオライブなんですけど、こうして仲間がたくさん集まって、最高の環境を作り上げてライブしております。総力上げて、俺たちの熱が伝わる努力をみんなでやってます。最高のライブにしたいと思ってますから!」と、配信ライブへの自信をのぞかせた。
ここから「最後まで行きますか!」と煽りを入れて「In Future」へ、この先は怒涛の人気曲のオンパレードだ。「Spirit Inspiration」「Out of Control」「Like a Shooting Star」……言うなれば、代表曲だらけの『Futures』の中でも、ライブの熱量が爆上がりなキラーチューンの連発ということ。村松も「踊れ!」と、ライブハウスと同様の煽りでスパートをかける。配信だろうが、どこにいようが、彼らが音を出せば確実に熱量が届くのだ。「きらめきの花」では、曲に合わせて両手を振るファンの姿も容易に想像できた。そんなファンの思いが見えない力で伝わっているのか、メンバーにも笑顔が浮かぶ。
時空が歪んでいたのかと思うくらい、時間はあっという間に過ぎ、ライブはエンディングに近づいていた。村松は「みんないろいろ騒いでるか?――そろそろ発表になると思うんですけど……ライブしたいなって感じあるよね。みんなが期待しているようなニュースを僕らから発信できればいいなと思います。ちょっと待ってもらえたら」と、意味深な言葉を生形に投げかける。生形は「たぶん何十分後かに」と、終演後、何らかのアナウンスがあるという含みを持たせた。
終演後の発表を気にしつつ、いよいよラスト2曲へ。大詰めに用意されていたのは最新デジタルシングル「Dream in the Dark」、そして「BLUE SHADOW」の2曲。いずれも不安の多い時代に響く力強いサウンドとメッセージが盛り込まれた楽曲だ。最後までぬかりなく構成されたセットリストに加え、音よし、画質よし、メンバーのプレイも言うことなしという充実ぶりには圧倒されるしかなかった。配信の概念を超えたパフォーマンスが、どれだけファンの気持ちを救っているか……そんなことを確信した次第である。
終演後、アンコールを望むコメントが溢れたが、潔くライブは終了。直後、意味深なMCの全貌が明らかになった。この日の1曲目を飾ったのは「November 15th」だが、来る11月15日、「Live on November 15th 2020」と銘打った有観客&生配信のライブを行うことが発表された(@KT Zepp Yokohama)。おそらくはガイドラインに従うスタイルで、フロアの様子はいつもと違うかもしれない。だが、バンドとファンを隔てる距離などあるわけはないのだ。当日は、いつも以上に記憶に残る“November 15th”となるに違いない。
【取材・文:海江敦士】
【撮影:横田和樹】
リリース情報
Futures
2020年08月26日
Silver Sun Records
01.NEW HORIZON
02.Isolation
03.Spirit Inspiration
04.November 15th
05.Red Light
06.Rendaman
07.白昼
08.Out of Control
09.Like a Shooting Star
10.きらめきの花
[DISC 2]
01.Dream in the Dark
02.YOUTH City
03.In Future
04.Brotherhood
05.Midnight Train
06.Around the Clock
07.Milestone
08.Pride
09.ツバメクリムゾン
10.BLUE SHADOW
<初回限定盤DVD収録内容>
・What’s My Satisfaction from(“Live on November 15th 2018”)
・Perfect Sound(from “Live on November 15th 2018”)
・Bog(’19 ver.)(from SPECIAL ONE-MAN LIVE “BEGINNING”)
・Cold Reason(from SPECIAL ONE-MAN LIVE “BEGINNING”)
・Crystal Beat(from “Live on November 15th 2019”)
・メンバーインタビュー
※アルバムについてのソロ&全員インタビューを収録
<豪華盤>
初回限定盤収録内容+
・ライブ音源CD「Nothing’s Carved In Stone Studio Live "Navigator"」
・LP×3枚(通常盤収録の20曲をLP化)
・ピックセット(メンバーサイン入り)
セットリスト
Studio Live “Futures”
2020.09.19
- 01.November 15th
- 02.Isolation
- 03.白昼
- 04.NEW HORIZON
- 05.Honor is Gone
- 06.Words That Bind Us
- 07.Rendaman
- 08.青の雫
- 09.Shimmer Song
- 10.Pride
- 11.In Future
- 12.Spirit Inspiration
- 13.Out of Control
- 14.Like a Shooting Star
- 15.きらめきの花
- 16.Dream in the Dark
- 17.BLUE SHADOW
お知らせ
Live on November 15th 2020
11/15(日)神奈川 KT Zepp Yokohama
※有観客+配信で実施
・生配信視聴チケット:2,500円
販売URL:https://eplus.jp/ncis1115st/
※販売期間:11/18(水)21:00まで
※アーカイブ配信:11/18(水)23:59まで
※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。