より強固に、円熟味を増したナッシングスの集大成的セルフカバーに見る信念とは。

Nothing’s Carved In Stone | 2020.08.31

 新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、大きな打撃を受けた音楽業界。Nothing’s Carved In Stoneも例外なくそのあおりを受け、予定していたライブの延期や、出演予定のイベントが中止になるなど、不測の対応を迫られた。そんななか、6月27日には初のスタジオ配信ライブ「Studio Live “Navigator”」を敢行(関連記事:ライブハウスさながらの熱量 × ハイクオリティな音質で届けられた生配信ライブ「Studio Live “Navigator”」https://music.fanplus.co.jp/liveReport/20200715550a97484)。元気な姿で圧巻のパフォーマンスを展開し、ファンを驚喜させた。さらに8月26日にはセルフカバーアルバム『Futures』をリリース。ここにきてアクティブな動きを見せている。『Futures』は2枚組(豪華盤では3CD!)というボリュームで、ライブによって鍛えられた人気ナンバーに加え、今年3月と6月にデジタルシングルとして発表した最新曲「NEW HORIZON」「Dream in the Dark」を収録。最新型にアップデートされた楽曲の数々が楽しめる。ここではバンドを代表して村松拓(Vo/Gt)、生形真一(Gt)のふたりに、セルフカバーへの思いや、コロナ禍の中で感じたことについて存分に語ってもらった。


――まず、セルフカバーアルバム『Futures』の制作意図とは、何だったんでしょうか?
生形:たぶん『By Your Side』(10thアルバム/2019年9月リリース)を作り終わったときには、出そうかって決めてたんですよね。
――なるほど。たしかに『By Your Side』の制作時期というのは、バンドの歴史を振り返るタイミングでもあったと思います。

生形:そうですね。バンドを11年間やってきたこととか、(事務所を)独立してアルバムを出したこととか、いろんな変化があった時期だったんですよ。ずっと制作で使ってきたスタジオもレコーディングスタイルも変わったんで、一度振り返ってみようかって気持ちになったんじゃないですかね。
――『Futures』には「NEW HORIZON」と「Dream in the Dark」という新曲も収録されていますが、これらの楽曲に込められたメッセージには自粛期間の影響があるような気がします。

村松:ああ、「Dream in the Dark」の歌入れがちょうどライブするはずだった2月27日(新木場STUDIO COASTにて行われる予定だったワンマン公演「BEGINNING 2020」)から1週間後くらいだったんですよ。その間に歌詞を書いてるから、もしかしたら多少の影響はあったのかなって思うんだけど、コロナのことを歌ってるつもりはないんです。たしかに「Dream in the Dark」の歌詞は現在の状況とリンクするような内容に聞こえるかもしれないですよね。でも、もともと俺らが言ってることって最初から変わってないというか。歌詞は俺と生形のふたりで書くんだけど、そこにはずっと変わらないメッセージがあるのかなって。
――言われてみると、たしかに歌詞に込められたメッセージには一環したものがありますよね。ポジティブな力をもらえますし。ちなみに、新曲の「NEW HORIZON」と「Dream in the Dark」は、それぞれDISC1、DISC2の1曲目に収録されていますが、新しい曲を1曲目に持ってきたところに意図はありましたか?
生形:両方ともレコーディングしたのは今年の3月なんだけど、作っていたのは去年の年末あたりからだったと思います。『Futures』に新曲を2曲とも入れることは決めてたんで、メンバーと話し合って「やっぱり1曲目は新曲がいいよね」ってことになりました。DISC2の最後を「Dream in the Dark」にしようかって話もあったんですけど、結果的にこういう並びになりましたね。「BLUE SHADOW」も最後の曲としての候補になってたんで、最終的には「BLUE SHADOW」がいいんじゃないかなと。
――その「BLUE SHADOW」を今回セルフカバーとして選んだ理由が気になりますね。
生形:何かレアな曲じゃないですか、ある意味ね。最初にメンバー4人で「絶対これは入れよう」って決めたのは全体の半分くらいしかなくて……そこでは「Isolation」とか「Spirit Inspiration」が先に候補に上がってましたけど、それ以降はレコーディングしながら決めていったんです。



――全曲揃ってからレコーディングがスタートしたわけじゃなかったんですね。
生形:そうなんです。レコーディング期間も結構長かったんで、結局「BLUE SHADOW」も入れようって決まったのは最後の最後でした。
――誰の意見だったんですか?
生形:拓ちゃんが「やっぱり『BLUE SHADOW』も入れたい」って言ったのは覚えてます。
――お、ぜひその思いを聞かせてください。
村松:何だろうな、ファンのみんなが喜ぶだろうなっていう思いもあったんだけど……。そもそもこの曲って「Spirit Inspiration」のカップリングだったんですよね。ただ、実はアルバムに入れるクオリティーなんじゃないかなってずっと思ってて。野音でもやったし、大切にしてきた曲のひとつでもあったんですよ。ファンの人たちも野音で聴いたときのイメージがあるだろうし、それで今回入れてみたいなって思ったんです。

――2枚組とはいえ候補曲は膨大ですし、どうしても厳選せざるを得ない曲数だったのはお察しします。
生形:そうですねえ。結構絞りに絞りました。それでも、最初にみんなでバーッと選んだ曲はアップテンポの曲が多くて。これ、かなり飛ばしたアルバムになるんじゃないかって話になったんですよ。そこでミドルの曲も選んでいったんです。そのときに「BLUE SHADOW」とか「Midnight Train」とかの案が出たんですよね。当然バランスも考えてました。ファンが喜ぶだけじゃなく、ハッとしてくれればいいなって。「あ、この曲も入ってるんだ」っていう感じで。
――ちなみに村松さん、生形さんのおふたりが特に「この曲入れようよ!」って押した曲はあるんですか?
生形:俺が絶対に入れようと思ってたのが「Rendaman」。やっぱり当初とアレンジが結構変わったんでね。特に後半は元の音源とアレンジが違うんですよ。ツアーをやってライブを重ねるうちに自然と変わっていったんです。それがすごくバンドっぽいなと思って。

――6月27日に行った配信ライブでも、アンコールに「Rendaman」やってましたよね。
生形:はい。何も決めてなくて急遽やるって決めたんで、めちゃくちゃ間違えましたけど、俺(笑)。
村松:あれ、超面白かったね(笑)。俺のほうは特に推した曲はなくて……。
――「BLUE SHADOW」くらいですか(笑)。
村松:ああ(笑)。でも、自分では結構客観的に選んでた気がしますね。やっぱり代表曲と言えるもの……あとは、もしかしたら「Rendaman」のおかげかもしれないけど、今回のセルフカバーには“ライブっぽい”っていうテーマもあったんですよ。ライブで育ててきた曲っていうか、グルーヴに関してもそうだし、要はライブでよくやる曲を選ぼうみたいな暗黙の基準はあったと思います。
――ライブで仕上げてきた曲ばかりだから、レコーディングはスムーズだったんじゃないですか?
生形:いやあ、セルフカバーとはいえ、レコーディングには時間がかかりました。やっぱり自分たちの中でも元の曲は超えたいっていう気持ちがあって。それがもう最低条件なわけですよ。ただ、アレンジに関してはあえてそんなに変えてないんです。実は全曲、めちゃくちゃアレンジを変えようかって話もあったんですけど、それをやっちゃうと、俺がファンだったらどう思うのかなっていうのは考えました。自分たちは楽しくても、元の曲が好きだったり、思い入れがある人から「前のほうがよかった」って言われたら微妙じゃないですか。もちろん、それでも自分たちが納得していればいいんでしょうけど、ファンの人がちょっと寂しく感じるのは良くないかなって。
――ところで、今年の春あたりには自粛期間としてライブがまったくできない時期がありました。アーティストの皆さんにとっても予期せぬ状態だったと思います。おふたりはどのように過ごされていたんですか?
生形:4月くらいかな? 完全に世の中が止まったじゃないですか。さすがに最初は「これ、すごいことになったな……」と思いましたよ。でも、よくよく考えたら世の中全部が止まってるから、俺がいろいろ不安に思ってもしょうがないのかなって。だから俺は毎日事務所の作業部屋に来てました。
――おお! そこで制作モードに切り替わったんですね!
生形:その頃は結構曲を作ってました。まあ、そこで作った曲たちを世に出すかどうかは別としてね。最近は忙しくなっちゃって作ってないけど。
――ポジティブですね! 村松さんは?
村松:正直に言うと、どうしてみんなそんなに焦ってるんだろうなと……。
――それは意外な答え!
村松:俺らって自分らが世の中のムードを作る側じゃないですか。でもあの時期、世の中が全部止まってて、周りでは不安なことばかり言って煽りあっててね。焦って何かしても悪循環っていう状況になってるんじゃないかなって思ったんです。俺らはたまたま独立したあとだったし、恵まれた環境でタイミングが良かったっていうのもありましたけど、ここは変わらずにバンドを続けるのがいちばんいいはずだと思って……。だから今焦っても、絶対何もならないなって感じてました。不安になって焦って何かやっても、結局どうしようもない現状に戻って来ちゃうのがわかってたんですよね。もがくのが悪いっていうわけじゃないし、それぞれのやり方はあるんだろうけど、俺自身はこれまで地に足をつけてやってきたことをこのまま続けるべきだなって思って……それで釣りをしてました(笑)。
――そういう落とし方(笑)。
村松:(笑)。でも、そういう感じでしたね。流されちゃいけないなって。たまたま家でも曲を作れる環境を整えようと思ってたので、機材を買ったりしましたよ。もちろん、落ち込みがちになるのもわかります。そんなときこそ好きなことをやるべきだなって思うんですよ。そこで俺は料理したり、釣りに行こうかなって考えたりしてね。あとは映画を見たり曲を書いてました。
――最近では配信ライブを取り入れるアーティストも増えましたね。ナッシングスも6月末にスタジオライブを配信されましたが、どういう手応えを感じましたか?
生形:配信ライブも、ウチだけじゃなく、どのバンドもめちゃくちゃ悩んでると思うんですよ。「やるべきかどうか」「やるのはかっこ悪いんじゃないか」とか「やっぱり本物のライブとは違うんじゃないか」とかね。俺らももちろん、そういうことは話し合いました。で、「まずは1回やってみよう」ってことでやってみたんです。自分たちのスタイルでね。それでライブハウスではなく、スタジオライブを選びました。とにかくいい音で、撮影スタッフも俺らのことをよくわかってくれてるクルーに撮ってもらってね。結果、やってよかったですよ、すごく。そのまま配信をやらないっていう選択肢もあったかもしれないけど、観てくれたお客さんから「すごく力をもらえた」とか「楽しかった」とか言ってもらえたんで、すごくうれしかったです。
――配信ライブってこれまでもあった手段だったんですけどね。
生形:そうそう。でも、ほとんどのバンドがやらなかったですよね。やっぱりそこの怖さもあったし。
――お客さんと一緒に作り出す一体感がないとライブじゃない……っていう価値観もわかりますしね。
生形:配信ってそれとは全く別モノだしね。でも、前回の配信ライブはなんとなくうまくできたんじゃないかなって思います。もちろん、通常のライブができるようになったら、俺らも絶対またやるしね。今はどうしたって難しいから……。
――いろんな意味で価値観も変わりつつある時代ですが、さしあたって現時点でやりたいことは?
村松:アルバム作りたいですね!
――いいですね! 聴きたいです(笑)。また、どんなメッセージが出てくるのかも気になりますし。
村松:この前、ラジオ聞いてたんですけど、だいたいコロナの話題になるじゃないですか。そこでとあるプロデューサーの方が話してたのが、「ここまで世界中で同時に同じことが起こって、人々が同じ気持ちになってることって初めてじゃないか。ここまで気持ちが共有できてるんだから、音楽でこの状況を的確に表現できたとき、ものすごいことになるんじゃないか」って。
――たしかにそうですね!
村松:俺も「あ、そうだな」って思ったんですよ。だから今、こうやって不安に思ってる気持ちとか、逆に前向きに「何かしようぜ」って切り替えられてる気持ちとか…って、まあ結局俺らが最初からずっと言ってきたことと変わらないんですけどね(笑)。でも、そういう部分にアプローチできるような曲を作っていけたらいいんじゃないかなって。これまでと変わらずね。
――生形さんの「曲を作ってました」発言もありましたし、また新しい曲が生まれるのを楽しみにしてます。まあ、新曲が出たらどうしてもライブが観たくなっちゃいますけどね(笑)。
生形:ライブはわからないけど、配信ならすぐ曲が発表できますからね。曲はメンバー個々で常に作ってますから。リリースの予定はまだ立ててないですけど(笑)。
村松:『Futures』を作ったばかりなんでね(笑)。あ、でも配信ライブをまたやるんですよ。詳細はホームページをぜひチェックしてみてください!

【取材・文:海江敦士】

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リリース情報

Futures

Futures

2020年08月26日

Silver Sun Records

[DISC 1]
01.NEW HORIZON
02.Isolation
03.Spirit Inspiration
04.November 15th
05.Red Light
06.Rendaman
07.白昼
08.Out of Control
09.Like a Shooting Star
10.きらめきの花

[DISC 2]
01.Dream in the Dark
02.YOUTH City
03.In Future
04.Brotherhood
05.Midnight Train
06.Around the Clock
07.Milestone
08.Pride
09.ツバメクリムゾン
10.BLUE SHADOW

<初回限定盤DVD収録内容>
・What’s My Satisfaction from(“Live on November 15th 2018”)
・Perfect Sound(from “Live on November 15th 2018”)
・Bog(’19 ver.)(from SPECIAL ONE-MAN LIVE “BEGINNING”)
・Cold Reason(from SPECIAL ONE-MAN LIVE “BEGINNING”)
・Crystal Beat(from “Live on November 15th 2019”)
・メンバーインタビュー
※アルバムについてのソロ&全員インタビューを収録

<豪華盤>
初回限定盤収録内容+
・ライブ音源CD「Nothing’s Carved In Stone Studio Live "Navigator"」
・LP×3枚(通常盤収録の20曲をLP化)
・ピックセット(メンバーサイン入り)

お知らせ

■コメント動画




■ライブ情報

Nothing’s Carved In Stone
Studio Live “Futures”

09/19(土)20:00~
アーカイブ期間:09/21(月)23:59まで


※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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