これ以上ない絶好のロケーションで届けられた夏の終わりのオンラインライブ「CNR LIVE STREAM on the Beachside」徹底レポート!
Czecho No Republic | 2020.11.27
ファンの意表を突くように書き込まれたメンバーによるコメントにチャットが盛り上がるなか、いよいよライブが始まる。画面が切り替わった瞬間、うわっ、そう来たか!?と思わず声を上げたのは筆者だけだったろうか。
Czecho No Republic(以下チェコ)は5月から毎月「CNR LIVE STREAM」と題して配信ライブを行ってきたが(8月は最新アルバム『DOOR』のリリース記念トークだった)、「CNR LIVE STREAM on the Beachside」と題した今回はタイトルどおり逗子にあるカフェバーの海にせり出たデッキからのライブ配信となった。演奏している4人の背景には椰子の木と青い空と海が広がっている。思いがけず目の前に現れたヌケのいい景色に心が弾んだ。
配信ライブというこの時代だからこその新しいスタイルを存分に活かしながら、この日のライブのテーマに最もふさわしいシチュエーションを“演出”したバンドに拍手を贈りつつ、筆者はそこに配信ライブの可能性も感じたり――なんてしかつめらしい話はさておき、全員が向かい合うように並んだ4人の演奏は、「海からみんなの元に届けたいと思います。楽しい時間にしましょう!」という武井優心(Vo/Ba)の言葉を合図にインディーズ時代から歌い続けてきた「レインボー」でスタートした。そして、その「レインボー」から、砂川一黄(Gt)がメロディアスなイントロを奏で、繋げたのは8月にCDをリリースした最新アルバム『DOOR』収録の「Forever Summer」。タカハシマイ(Gt/Syn/Vo)と武井が歌声を重ねるビタースウィートなネオアコ・ナンバーに誰もが夏の終わりを意識したに違いない。
しかし、感傷的になるのはまだ早い。夏が終わる前に、もうひと騒ぎしよう! そんな意図があったのかなかったのか。ともあれ、砂川の激しいトレモロ・ピッキングと山崎正太郎(Dr)が打ち鳴らすドラムにタカハシがきらびやかなシンセの音色を重ねたダンスポップ・ナンバー「Heart Beat」から演奏はテンポアップ。武井のべースもドライブし始める。
タカハシがハンドマイクで歌い、演奏に動きをつけた「Electric Girl」。「もっと楽しくなろう!」と武井が呼びかけたアンセミックな「Amazing Parade」では全員が<Oh Oh Oh Oh Oh Oh>とシンガロングの声を上げ、武井は「全員で!」とカメラの向こうのオーディエンスにもいつもどおりシンガロングを求める。
そんなふうに、ぐんぐんと熱を上げていったバンドの演奏は、山崎がパーカッシブにドラムを鳴らした「Dream Beach Sunset」でさらにヒートアップ。砂川がギターから持ち替えた5弦ベースで刻む16ビートの上で武井とタカハシのツインボーカルがハジけるラテン・ファンクなダンスポップ・ナンバーは、タイトルも含めこの日にぴったりだ。そして、「一緒に!」と武井が再び声をかけ、<Hey!Hey!Hey!>と全員でシンガロングの声を上げたところで、前半戦は終了。
「すごいところでライブさせてもらってます!」「これ以上ないロケーション!」と武井と砂川が快哉の声を上げ、4人はビールで乾杯。「うまい!」と全員が声を揃えた。
「(コロナ禍の影響で出かけることができず)夏が短かったので少しでも夏をお届けできたらと思ってます」。武井がそう語ったとおり、今回の配信ライブはロケーションのみならず、夏をテーマにした選曲という意味でもスペシャルなものになったようだ。
「このロケーションとビールにぴったりの曲をお届けしたいと思います」と武井が紹介した南国風のポップ・ナンバー「P.I.C グアム」以降の後半戦は前半戦の盛り上がりから一転、ネオアコ調の「Happy End」、マージー・ビート風の「Wandering Days」、シンセ・オリエンテッドなニュー・ウェーブ・ナンバー「Blue Holiday」と繋げ、持ち前のセンチメンタリズムで魅了する。
そろそろ日も沈みかけてきた。
「快晴! 完全に夏フェスですよ。ほんと最高のロケーションだね」と感激を言葉にせずにいられない砂川とは正反対に、さっきからほとんど無言の山崎が3人から「どうしたの?」と心配され、ようやく言った一言が「気持ちいいなって体で感じてんだよ」。
これまでだったら夏フェスも含め、毎夏、ライブ三昧の日々を送っていたことを考えると、砂川の感激も、その感激をじっくりと噛みしめている山崎の気持ちも理解できる。そんな思いを共有しながら、という意味でも今回の配信ライブはスペシャルなものになった。
そして、バンドの演奏は「夏が残っているうちに熱く一緒になれたらと思います!」という武井の言葉とともに「摩訶不思議」からラストスパートを掛けるように再びテンポアップ。転がるように鳴るピアノにメンバー全員が<Yeah!>と声を重ねながら、前進を誓う姿に見ているこちらも胸が熱くなる。そこから「No Way」と繋げた頃には、日はほぼ沈んでいるという絶好のタイミングで、「夏の夜にぴったりの曲やります」(武井)と披露したのが「Firework」だった。
アップテンポの演奏に頼らずにバンドのスケールをダイナミックにアピールする曲の説得力は年々大きなものに。しかも今回は、遠くで花火が打ち上がるという偶然が重なって、より見応えあるものになったと思うが、それをさらに上回るスケールアップを印象づけたのが、メンバーたちが「ライブで演奏するのが楽しみ」と言っていた「土曜日」だ。「あたりまえだったことがあたりまえじゃなくなった今年は春夏があっという間に過ぎていって、これから秋冬になって、何もできないまま2020年は終わりそうで寂しいけど、こうして素敵な場所でライブができて、観てくれる人がいてよかったと思います」。その「土曜日」を演奏する前に武井はそんなふうに、この日、ライブができた歓びを語ったが、そこから続けた言葉を聞けば、彼が言った「ライブができてよかった」という言葉が、言葉どおりの単純なものではなかったことはわかるはず。
「思うように活動できず、何もかも投げたくなるけど、でっかい空、海に囲まれ、メンバーがいて、観てくれる人がいて、ちっぽけな悩みに襲われてたんだと思って、今は生きていることが美しいと思います」。
大袈裟になるかもしれないけれど、ライブをやって、それを観てくれる人がいるということは、彼にとって、そしてチェコというバンドにとって、生きる意味、続ける意味になるということを改めて実感したということだと思う。そう考えると、「誰かに会いに行くというちょっとした予定があるだけで行ける、そんな思いを曲にしました」と武井が紹介して、最後の最後に演奏した「土曜日」の熱演もちょっと聴こえ方が変わってきはしないか。ゴスペルにも似た荘厳さを演出しながら、その荘厳さを突き破るように4人が繰り広げる轟音のインプロビゼーションの熱量と言ったら!
チェコが持つライブバンドとしての底力に今一度圧倒されつつ、彼らがどんな思いで、それを鳴らしているのかに思いを馳せれば、この日、最後を飾るのはこの曲しかなかった。きっと配信ライブを見ていた誰もが大団円にふさわしい熱演を、2020年の夏の思い出として、しっかりと胸に焼き付けたに違いない。
【取材・文:山口智男】
リリース情報
BEST ALBUM『Czecho No Republic 2010-2020』
2020年12月09日
日本コロムビア
01.好奇心
02.MUSIC
03.Festival
04.No Way
05.Amazing Parade
06.ファインデイ
07.Firework
08.Melody
09.For You
10.ショートバケーション
11.Baby Baby Baby Baby
12.ダイナソー
13.幽霊船
14.ネバーランド
15.レインボー
16.Electric Girl
17.1人のワルツ
18.MIKA
19.Heart Beat
20.Oh Yeah!!!!!!!
[DISC2]
01.Everything
02.Forever Summer
03.Crazy Crazy Love
04.Field Poppy
05.タイムトラベリング
06.テレパシー
07.エンドルフィン
08.愛を
09.LALALA
10.Hi Ho
11.アイボリー
12.Call Her
13.旅に出る準備
14.Sunshine
15.Dream Beach Sunset
16.DANCE
17.Summer Love
18.Hello, My Friend Sophie
19.Beautiful Days
セットリスト
CNR LIVE STREAM on the Beachside
2020.09.19@surfers ZUSHI
- 01.レインボー
- 02.Forever Summer
- 03.Heart Beat
- 04.Electric Girl
- 05.Amazing Parade
- 06.Dream Beach Sunset
- 07.P.I.C グアム
- 08.Happy End
- 09.Wandering Days
- 10.Blue Holiday
- 11.摩訶不思議
- 12.No Way
- 13.Firework
- 14.土曜日
お知らせ
CNR LIVE STREAM at the Forest
12/20(日)20:00〜Streaming+にて配信
※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。