チェコ第2期の挑戦を記録したフルアルバム『DOOR』全曲解説インタビュー!

ゆびィンタビュー | 2020.06.10


 エッジを効かせながら、カラフルでハートウォーミングなポップ・ロックを奏でるCzecho No Republicが、『旅に出る準備』から2年3ヵ月ぶりとなるフルアルバム『DOOR』を完成。CDリリースに先駆け、6月10日に配信リリースされた。2018年8月、現在の4人編成になって初めて配信リリースした「Baby Baby Baby Baby」をはじめ、この2年3ヵ月の間にリリースした曲の数々に新曲を加えた全12曲は、結成10周年を迎えた彼らが第2期と謳う新境地に辿りついたことを印象づけているが、全曲の作詞・作曲を手掛ける武井優心によると、「走ったり、歩いたり、こけたり、止まったり。色々あった旅の記録」という気持ちもあるそうだ。「色々あった旅の記録」だ。1曲1曲に格別の思い入れもあるに違いない。そこで今回のメンバー全員インタビューでは、『DOOR』収録の全12曲にまつわるエピソードを、順を追って語ってもらった。


PROFILE

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Czecho No Republic


 2010年結成、多幸感溢れる男女ボーカルバンド。
 2013年にアルバム「NEVERLAND」でメジャーデビューし、メンバーチェンジを経て2018年5月より現体制にて活動。
 深夜ドラマやバラエティー番組等に楽曲が多数使用されるほか、2014年には「オールナイトニッポン0」のパーソナリティーを1年間務める。
 「ドラゴンボール超/改」のEDテーマに2度起用されたこともあり、国内のほかに、台湾・中国・シンガポールなどでのライブ活動も行う。
 2020年に結成10周年を迎え、3月10日、4月10日、5月10日と3ヵ月連続で新曲を配信リリース。6月10日にはフルアルバム『DOOR』を配信リリースした。

  • 『DOOR』は現在の4人になってから、フットワーク軽く新曲をリリースし続けてきたCzecho No Republicの、この2年3ヵ月の活動を集大成したベスト盤と言える作品になりましたね。
  • 武井優心(Vo/Ba)

    4人になってから、意外と曲を出しているので、それをいったんコンプリートしたいと思ったんです。発表済みの曲をアルバムに入れないというやり方もあったと思うんですけど、新曲だけで作るよりも、まずは1つの記録として残したかったというか、1回この4人の総まとめと言えるものを作っておきたかったんです。
  • それはやはり4人になってからの2年3ヵ月が、みなさんにとってかなり濃い時間だったというか、特別思い入れのある時間になったからなのでしょうか?
  • 武井

    構築し直した時期だと思うんですよ。1度5人で完成した、5人の活動が飽和点に達した瞬間があって、そこで第1期が終わって、現在の第2期が始まったわけなんですけど。それが大変でもあり、新しい試みもあったりして。音楽のアプローチも含め、結構変わった部分があると思うので、その入門編じゃないですけど、今回のアルバムをきっかけにチェコから離れていた人にも聴いてほしいという気持ちがあります。
  • なるほど。今回のアルバムを聴けば、変わった部分とか、新しい試みとかがわかるし、もしかしたらバンドにとって大変だった時期というのもなんとなく曲の向こう側から感じられるかもしれない。そういう作品になっているわけですね。
  • 武井

    そうですね。
  • そういう作品だからこそ、メンバーそれぞれにかなり手応えがあるんじゃないかと思うのですが。
  • タカハシマイ(Gt/Syn/Vo)

    5人から4人になって再構築という話が出ましたけど、武井さんは曲を作るうえで、4人でできることを考えたと思うんですよ。その結果、音数を今一度引き算して、シンプルにいいものを作れるようになったと思います。以前は足して、足して作っていたと思うんですけど、今回はすべてがちょうどいいというか。多すぎず、少なすぎず、そのうえで4人でできることをちゃんとやっているような気もするし、その一方で、この10年間学んできたことはそのまま出ているし。ほんとに今の私たちがそのまま表現できていると思います。
  • 砂川一黄(Gt)

    いい意味で、ラフというか自然体というか。無理に「こうしなきゃ」みたいなところがないんですよね。それに4人になってからの代表曲も入っているし、今の4人を聴いてもらうにふさわしい1枚じゃないかと思います。
  • 山崎正太郎(Dr)

    チェコが始まってから10年――その歴史の中でもいい感じにリニューアルできたというか、これまでやってきたこともしっかり取り入れながら、そういうことができた作品になったと思います。
  • 武井

    ちょっと気の抜けた作品になった気がしますね(笑)。昔はもっとギラついたアルバムを作っていたような気がするんですよ。
  • 気が抜けたというか、肩の力が抜けているなという印象はありました。
  • 武井

    それがいいのか悪いのかわからないんですけど。
  • いや、僕はいいと思いますよ。
  • 武井

    そう言ってもらえると信じて振りました(笑)。
  • では早速1曲目から、その曲にまつわるエピソードを聞かせていただきたいと思います。




  • 1.摩訶不思議 (DOOR Remastered ver.)



  • まず「摩訶不思議」は今年3月から3ヵ月連続で配信リリースした新曲の第1弾でした。曲調、歌詞ともにアルバムのオープニングにふさわしいアップテンポな曲ですね。さらなる前進を宣言するような曲ですが、今年3月にそういう曲をリリースしたのは、どんな思いからだったんですか?
  • 武井

    単純に、この曲がいきなり出来たっていうのが一番の理由なんですけど。家でアコギを弾いていたら、あのリフが出来て、その勢いのままアップテンポな曲になりました。歌詞も響き重視で書いたら景気のいい派手な曲になったので、これは(3ヵ月連続配信リリースの)1発目にふさわしいと思いました。
  • 山崎

    初めてデモを聴いたとき、次のアルバムを作るタイミングで間違いなく推し曲になると思いました。普段、武井はデモを全部完成させてから聴かせてくれるんですけど、この曲は完成前に聴かせてくれたんですよ。本人的にも結構自信作というか、手応えを感じながら作ったんじゃないかな。そしたら実際にアルバムの1曲目でありリード曲になりましたね。

  • 2.Everything (DOOR Remastered ver.)



  • 2曲目の「Everything」のリード・ボーカルはタカハシさんですね。
  • タカハシ

    めちゃくちゃ好きなんですよ! 個人的にはチェコの曲の中でもかなり上位に入ると思っています。
  • 武井

    ライブ映えする曲ですよね。
  • タカハシ

    すごくパワーを感じるんですよ。壮大で、胸に迫るものがあるんです。
  • 武井

    でも、聴き返したらちょっと笑ったなあ。超かっこいい曲だと思っていたんですけど、昨日久しぶりに聴いたらバカな曲だと思いました(笑)。
  • タカハシ

    何それ(笑)。私も昨日聴いたけど、すごくいいと思った。全然バカな曲じゃない。
  • 武井

    でも、作っていていちばん楽しかったかも。
  • タカハシ

    その気持ちが出ているってことじゃない? 初めて聴いたとき、すごい曲だと思いました。だからリード・ボーカルを任されたときは、ほんとにうれしくて。ラスサビはもともと転調してなかったんですけど。
  • 武井

    ああ、そうだ。タカハシさんのアイデアで転調することになったんだ。
  • タカハシ

    さらに壮大にしたかったんです。歌えるということもあって、個人的にもかなり力を入れましたね。
  • アルバムの中で唯一、シンセ・オリエンテッドな曲ですが、この曲を作ってからこういったサウンドから興味が離れたというところもあるんでしょうか?
  • 武井

    ああ、興味がなくなったわけではないんですけど、なんとなくギター・アンサンブルのほうが楽しくなっていった感じはあります。また戻る気もしますけど。ただ、生音のほうが好きになってきているっていうのはありますね。シンセの曲って作り込みすぎちゃうんですよ。それがあんまり気持ち良くなくなってきたというか、完成させるのが大変っていうか(笑)。やりたいことが見つかったらまたやると思いますけどね。

  • 3.Hello New World (DOOR Remastered ver.)



  • 次の「Hello New World」は3ヵ月連続配信リリースの第2弾です。この曲はすごくピースフルでふわっとしているんですけど、メッセージはかなりはっきりしているというか、しっかりしている。
  • 武井

    「LOVE & PEACE」です。これは昔から隠れテーマというか、歌い続けたいテーマというか。もう大人ですしね。
  • ネオアコっぽいギターのカッティングがすごく印象的です。
  • 武井

    シンセでコードを作ったあとに、カッティングはギターだろうと思って、すぐに出来たリフです。その代わりにベースラインがまったく思い浮かばなくて、砂川さんに全部考えてもらいました。この曲、超面白いですよ。ギターは俺が考えて、ベースは砂川さんが考えたんです。
  • そういうことって今までもありましたか?
  • 武井

    なかったですけど、今後は全曲そうしたいぐらいです(笑)。
  • 砂川

    なんでだよ(笑)。いやいやいや、全部考えたわけじゃないですよ。スタジオでアイデアを出し合いながら、みんなで作ったんです。ただ、レコーディングで弾いたのはなぜか僕だったっていう。
  • 武井

    歌っているのも砂川さんです。
  • 砂川

    んなわけあるかよ。さすがにわかるだろ、誰が聴いたって。
  • 武井

    ものまねがうまい(笑)。
  • 砂川

    うますぎだろ。周波数帯域まで完全にコピーしてるって。
  • 今後はそういう作り方も増えていくかもしれない、と。
  • 武井

    そうですね。ただ、砂川さんがベースを弾いた日から、ベースにすごく興味が出てきて。
  • 砂川

    今まで興味なかったのかよ(笑)。
  • 武井

    いや、歌いながら弾くなら、もうこれぐらいだろって思っていたんですけど、練れば練るほど解決策のある楽器なんだと改めて思いました。でも、フレーズを考えてほしい気持ちはあります。
  • 砂川

    なんでだよ。
  • 武井

    最近、人のエッセンスがたくさん欲しくなってきています。自分だけの世界観でまとめたくないんですよ。かなり飽き飽きしている、自分の世界観に(笑)。
  • 砂川

    でも、ベーシストが弾くベースと、ギタリストが弾くベースって、やっぱり違うんですよ。当たり前と言えばそうなんですけど、専門分野じゃないんで。武井さんが弾くベースのラインとかグルーヴとかは、やっぱりベーシストだなって思います。僕のスパイスが入って、良くなるならいいんですけどね。餅は餅屋じゃないですけど、専門分野の人がやるほうがいいんじゃないかなと思います。
  • 武井

    「餅は餅屋」、太字でお願いします(笑)。
  • 砂川

    いやいやいや(笑)。
  • そういえば、この曲、ベースでオブリのフレーズが入っていますね。
  • 武井

    そこだけ俺が考えたんですよ(笑)。
  • え、そうなんですか。面白い。
  • 砂川

    武井さん、ベース/ボーカルだから、抜くフレーズは歌いながらだと難しいと思うんですよね。そういうときに色を入れられるなら、今後僕が考えてもいいと思いますけど。

  • 4.Forever Summer (DOOR Remastered ver.)



  • 昨年7月に配信リリースした「Forever Summer」は、もうラブソングってことでいいでしょうか?
  • 武井

    そんなハズい質問されたの初めてです(笑)。
  • 配信リリースしたタイミングを考えると、ちょっと冷静に聴いていられないのですが(笑)。
  • 砂川

    ハハハハ。
  • 武井

    そんなことを言われると、俺ももう歌えないな。
  • タカハシ

    ふふふ。
  • 武井

    でも、これも出来たからって感じですよ、結局は。そのテンションは一切変わっていないです。そういう曲が出来たから、「やろう」「いい曲じゃないか」「夏の曲だし」っていう。
  • そうですよね。すみません、つまらないことを言ってしまって。
  • 武井

    いやいやいや、こちらこそほんとに(笑)。
  • 曲がドラムから始まるところと、そのドラムのフレーズがすごくかっこいい。
  • 山崎

    ありがとうございます。武井が考えました(笑)。
  • 武井

    今後はベースだけでなく、ドラムのフレーズも考えないことにします。もう飽きたんで、自分のフレーズは。
  • 餅は餅屋に任せると。
  • 武井

    ですね。
  • ギターの音色の使い方も聴きどころではないかと思うのですが。
  • 武井

    餅は餅屋に答えてもらいましょう。
  • 砂川

    うるせえなあ、マジ言わなきゃよかったよ(笑)。ギターの音色という意味では、オクターブ上の成分をずっと足しているのがポイントじゃないですかね。あとはリバーブの感じとか、タカハシさんのギターのアームのベンド(弦を引っ張って音程を変えるテクニック)の感じとかが独特の世界を作っていると思います。
  • あ、そうか。タカハシさんもエレキギターを弾いているんですね。
  • タカハシ

    はい。弾いています。
  • 砂川

    アームのベンドの感じが個性的なんですよ。やっぱり歌い手っぽいと思います。

  • 5.Wandering Days

  • 5曲目の「Wandering Days」は新曲ですね。今回、新曲は何曲ぐらい作ったんですか?
  • 武井

    えっと、10数曲ですかね。
  • そこからすでにある曲とのバランスを考えながら選曲していったと思うのですが、「Wandering Days」が収録されたのは、この曲のどんなところが決め手になったのでしょうか?
  • 武井

    苦労しないで書けたんですよ、悩まずに。そういうことはあんまりないんです。いつも時間をかけて考えながら作るんですけど、これはあっという間に出来ました。普通に、いいメロディだなと思います。
  • オールディーズっぽいというか、マージー・ビートっぽいというか。
  • 武井

    そうそうそう。
  • 山崎

    ビートルズの「プリーズ・プリーズ・ミー」が頭の中に浮かんだので、スネアにタオルを被せて、音をミュートして、リンゴ・スターになったつもりで叩きました。
  • 武井

    リンゴ・スターになりきっていたのは知らなかった(笑)。
  • 砂川

    ギターも極力、柔らかい音色で、タッチも柔らかく弾くことを意識しました。
  • 武井

    最終ミックスで、あえてレンジを狭くするっていう加工もしました。そうすると、レコードとかテープとかで聴いているような音になるんです。
  • なるほど。イントロでリード・ギターが2本鳴っているんですけど、砂川さんとタカハシさんがそれぞれ弾いているんですか?
  • タカハシ

    そうですね。
  • リード・ギターの1本は、音色がキーボードっぽく聴こえるのですが。
  • 砂川

    俺のほうかな。コーラスとかトレモロとか、そういうエフェクターを使って、揺らす感じの音色にしました。古いエレピみたいな音にしたかったんですよ。それがオールディーズっぽいというか。武井さんのデモの時点で、そういう音色になっていたんですけど。

  • 6.Dong Dong



  • 続いて、3ヵ月連続配信リリースの第3弾だった「Dong Dong」。こういうフォーキーというか、牧歌的な曲はチェコの持ち味の1つだと思うのですが、武井さんが冒頭でおっしゃっていたように、気の抜けたというか、肩の力が抜けたチェコが良く出ているという印象があります。
  • 山崎

    実はこの曲、今回収録されない可能性が高かったんです。
  • 武井

    レコーディングの前日まで録る予定ではなかったんですよ。
  • 山崎

    曲が出揃って曲順を決めながら並べているとき、「Dong Dong」は入っていなかったんですけど、さっき言っていた牧歌的なサウンドが1曲ぐらい入っていたほうがいいと思ったんです。それで、アルバムから漏れたデモを全曲聴き直したら、この曲がすごくひっかかって、レコーディングの直前に「この曲いいと思うんだよ!」ってゴリ押ししました。
  • 武井

    デモが未完成だったんですよ。それで最後の最後に、みんなで作り上げたんです。
  • タカハシ

    スタジオでアイデアを出し合いながらね。
  • そういう作り方は、今の武井さんからしたら理想的なわけですよね。
  • 武井

    大歓迎です。そのほうが楽だし、餅は餅屋じゃないけど、できることは分担したほうがいいと思います。考えてみれば、宅録技術がそんなになかった頃は、そこまで作り込んでなかったんですよ。特にドラムはドン・パン・ドド・パンぐらいしかできなかったので、その頃の曲を聴き返してみると、俺の予想を超えたドラムになっている。そういうほうが面白い気がします。

  • 7.Bye Bye Summer

  • 「Bye Bye Summer」は1分35秒というショート・チューンです。
  • 武井

    タイトルどおり、ほんとに夏の終わりに作りました。電灯が1個だけついている暗い部屋で作っていたんですけど、1日かけても全然出来なくて。めっちゃストレスが溜まって、爆発しそうになっていたんですけど、そしたら急にリフを思いついて、歌もその瞬間に全部出てきちゃったんです。個人的に、すぐに出来た曲に思い入れがあるのかもしれないですけど、めっちゃ短い曲をいつか作りたいと思っていたこともあって、個人的には上位で好きな曲です。

  • 8.Baby Baby Baby Baby



  • そして、「Baby Baby Baby Baby」。4人になってから初めてリリースしたのがこの曲でした。
  • タカハシ

    4人になって、改めてギター・サウンドの可能性を考えるようになったというか。当時、武井さんが「ギター・サウンドは楽しい」と言っていて、リバービーで幻想的な感じの、空間系のギターを使った曲を結構作っていたんです。イントロにシンセは入っていますけど、新体制第1弾として、新しいチェコ、4人になったチェコを打ち出しているというイメージがあります。ここから「Forever Summer」をはじめ、こういうサウンドが定着していきましたね。
  • おっしゃるように、幻想的で空間系のギター・サウンドは、現在のチェコの主流になっている印象があります。
  • 武井

    ドリーム・ポップというか、シューゲイザーというか、そういうサウンドは昔からずっとやりたかったんですよ。次の「ごめんねリグレット」もその類の曲ですね。

  • 9.ごめんねリグレット

  • もちろん、そういうサウンドも聴きどころだと思うのですが、個人的には、主人公の僕は何をやらかしてしまったのかが気になります。
  • 武井

    愛想を尽かされるようなことをしたんじゃないですか。
  • そうなんですよね、きっと(笑)。それはちょこっと実体験の部分もあるんですか?
  • 武井

    みんな、あるんじゃないですか? 男たるもの(笑)。いや、特にそういうことがあったから書いたってわけではないです。曲の響きに引っ張られて、こういう歌詞になりました。別に日記ではないです、はい。
  • メランコリックな曲ですが、ギター・ソロで熱がぐっと上がりますね。
  • 砂川

    弾いたのは僕ですけど、武井さんのデモに入っていたフレーズを生かしています。
  • 武井

    この曲のギターはかなりこだわりました。ギター・ソロもめっちゃかっこいいと思います。
  • どんなふうにこだわったのですか?
  • 武井

    歌とは別に、いいメロディがずっと鳴っていてほしかったんですよ。

  • 10.Hi Ho (DOOR Remastered ver.)



  • 「Hi Ho」は「Dong Dong」同様、チェコの牧歌的な魅力を担う曲ですね。チェコ流の肩に力の入っていない応援歌という印象があります。
  • 武井

    まさにそんな感じですね。イントロは昔からあったんですよ。いや、サビぐらいまであったのかな。いつか作ろうと思って取っておいた曲を、「よし、今日こそは」と完成させたんですけど、なんでこういう歌詞に……そうだ! 「就職しました」とか「親になりました」とか、環境の変化を知らせてくれるお客さんの手紙が増えてきて、そういう人たちの応援歌を作りたいと思ったんです。仕事帰りとか、寝るときとかに聴いてもらいたいですね。

  • 11.Happy End

  • 「Happy End」も現在のチェコらしいギター・サウンドの曲ですね。
  • 武井

    まさに。タカハシさんの声がハマる曲を作りたいと思って作りました。歌詞がいいですね(笑)。この歌詞、すごく好きです。
  • タカハシ

    肩の力を抜いた感じにしたいと思っていたんですけど、私の声って高いというか、ともすればキンキンしてしまうこともあるので、けだるさを少しだけ出せたらいいなと思って、ボーカルのレコーディングには時間をかけて取り組みました。今回、時間に余裕があったせいか、歌録りに関してはスタジオにこもってできたんですよ。それもあって、曲の雰囲気を大事にしながら作れた印象はあります。
  • 歌詞がすごく好きと武井さんはおっしゃいましたが、「Hi Ho」や、この曲の歌詞から想像すると、人間的に前よりもやさしくなってきたのかなという気がします。
  • 武井

    んー、そんなことはないですけどね。
  • タカハシ

    武井さんが望んでいる世界なのかなと思います。
  • 武井

    ああ、そんな感じです。
  • タカハシ

    根は暗いんですけど、それをそのまま歌うのではなく、聴いてくれる人にとって希望になるように歌いたいんだと思います。でも、実は一番は自分に歌っているんじゃないかなと思う瞬間が私はあります。自分に対しての希望を歌っているんじゃないかって。
  • そうなんですか?
  • 武井

    そうなのかもしれないです。わからないですけど。まあまあ、多くを語ってもしょうがないんで。ハッピーエンドっていうものを、聴く人がどう捉えるかって感じです。だって1つの出来事を、バッドエンドと捉えることもできれば、ハッピーエンドと捉えることもできるわけじゃないですか。何かが終わるとき、最悪だったとも言えるし、最高だったねとも言えるし。そういう感じです。あ、全部言っちゃってるじゃん(笑)。
  • ありがとうございます(笑)。

  • 12.土曜日

  • 1つの出来事をハッピーエンドにもバッドエンドにも捉えられるっていう考え方は、ラストナンバーの「土曜日」にも表れていると思います。「土曜日」はハッピーかバッドかってことではなくて、どんな些細なことでも考えようによっては幸せに思えるっていうメッセージが込められていると思うのですが。
  • 武井

    そうですね。
  • この曲こそ、このアルバムのハッピーエンドなのかなと思いました。この曲、すごくかっこいいですね。
  • 武井

    おっ、ありがとうございます。
  • アルバムの中でいちばん好きかもしれないです。
  • 武井

    よかった。うれしいです。
  • 現在の4人編成のチェコの底力が演奏に表れていますね。
  • タカハシ

    スタジオで作った部分も結構あって、4人で合わせているときはエモすぎて、個人的には泣きそうになる瞬間もあったんですよ。今回のアルバムはこの曲があってよかったと思いました。10周年の集大成みたいなものが出ている気がします。
  • 砂川

    キモはやっぱり最後の展開だよね。
  • 演奏が轟音になるアウトロですね。
  • 山崎

    そこにパッションを詰め込みました。
  • 砂川

    曲が終わったと思いきや、もう1回戻ってきて爆音になる展開がいい意味でチェコっぽくないですよね。みんな、かなり自由にプレイしているんですよ。僕もアンプのレベルをめちゃくちゃ上げて、音を歪ませて、ハウリングも起こしてっていうのは、これまでチェコではやったことがないと思うんですけど、ほんと楽しかったです。しかもテイクも1発だけで、録り直しもしていないし、クリックも聴いていないんです。だから、かなり荒々しいですけど、それがいい具合にエモい感じになっていると思います。
  • 山崎

    あれだけ長い時間、自由に演奏を爆発させられたっていうのは楽しかったですね。チェコの前身バンドとか、チェコの初期とかは、レコーディングでもフレーズは結構出たとこ勝負でやりたいというパッションがあったんですよ。その頃のことを思い出しました。
  • どんなところから思いついたアイデアだったのですか?
  • 武井

    練習しているとき、曲が終わっても砂川さんがずっと弾き続けていて、「それ、いい感じだから、アウトロもう1回やろう」ってなりました。
  • 山崎

    最初はライブでやったら良さそうだねって言っていたんですよ。そしたら、あまりにも楽しくて、アルバムもこれでやろうってことになりました。
  • 武井さんのボーカルも力強いですね。
  • 武井

    もっと力強く歌いたかったです。ライブでやりたい曲ですよね。ライブしたいなぁ。
  • たしかに、この曲はぜひライブで聴きたいです。
  • 武井

    「ちょっとした日常の楽しいことを生きる糧にする」っていうテーマなんですけど、「摩訶不思議」にも《生きてみよう》って歌詞があるんです。そこ、最初は《生きてみよう/もうちょっとだけ/決めた土曜》 って歌詞だったんです。でも、《決めた今日》に変えたんです。土曜日に限定して、土曜日じゃないライブのほうが多かったらイヤだなと思って――それで、いつ歌っても大丈夫なように《今日》に変えたんですけど、《土曜日》のままにしておいたら、最初と最後できゅっとなって良かったなって録り終わってから気づきました。
  • このインタビューを読んだ人は、そんなことを考えながら、「土曜日」からまた1曲目の「摩訶不思議」に戻って、もう1回聴いてみるのもいいんじゃないかと思います。




  • 最後に『DOOR』というタイトルに込めた思いを聞かせてください。
  • 武井

    人の一生って選択の連続じゃないですか。たくさん“DOOR”があって、でも開けられる“DOOR”は1個しかない。『DOORS』にしなかったのは、1度に選べる“DOOR”は1個しかないからなんですけど、どの“DOOR”を開けるのか――安全策を取るのか、チャレンジに賭けてみるのか、そういう感じでタイトルをつけました。
  • ああ、なるほど。いただいた資料に「DOORは開いてます。中に何があるか覗いてみてください。」という武井さんのコメントが載っていたので、「現在のチェコの中に何があるのか覗いてみてください」という意味で『DOOR』とつけたのだと思っていました。
  • 武井

    もちろん、それもあります。だから、コンプリート的なアルバムになっているわけで。繰り返しになりますけど、4人になってから聴いていない人もいると思うんで、ここからもう1回聴いてもらえたらうれしいですね。

【取材・文:山口智男】

tag一覧 アルバム ゆびィンタビュー Czecho No Republic

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リリース情報

DOOR

DOOR

2020年06月10日

murffin discs / mini muff records

(配信) 2020年6月10日
(CD) 2020年6月19日

01.摩訶不思議 (DOOR Remastered ver.)
02.Everything (DOOR Remastered ver.)
03.Hello New World (DOOR Remastered ver.)
04.Forever Summer (DOOR Remastered ver.)
05.Wandering Days
06.Dong Dong
07.Bye Bye Summer
08.Baby Baby Baby Baby
09.ごめんねリグレット
10.Hi Ho (DOOR Remastered ver.)
11.Happy End
12.土曜日

お知らせ

■配信リンク

『DOOR』
https://lnk.to/c-n-r_door



■コメント動画




■ライブ情報

《CNR LIVE STREAM#2 -DOOR発売記念ライブ-》
配信URL:https://youtu.be/5bxIYvSHTXY
配信時間:06/10(水)21:00~22:00予定 (アーカイブ配信なし)


BAYCAMP 2020 10th Anniversary
09/12 (土) 川崎市東扇島東公園・特設会場
オールナイト公演

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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