go!go!vanillas、約束の地・日本武道館で開催された「ROAD TO AMAZING BUDOKAN TOUR 2020 -FINAL-」
go!go!vanillas | 2020.12.02
「僕を駆り立てるここは……日本武道館!」――記念すべき初めての武道館ワンマン、1曲目に鳴らされた「オリエント」で、牧達弥(Vo/Gt)は歌詞をそう変えて叫び、頭上に垂れ下がった巨大な日の丸を見上げた。go!go!vanillasがついに立った憧れのステージは、バンドの過去と現在をつなぎ、未来への始まりを刻む、とにかく感動的でパワフルなものとなった。「ROAD TO AMAZING BUDOKAN TOUR 2020」、ファイナル。約束の地・日本武道館のレポートをお届けする。
新型コロナウィルスの感染対策で観客が座る座席はひとつおき、声を出しての観覧は禁止……と、本来あるべき姿とは違う形にはなってしまったものの、客席から放たれる熱と思いは開演前からとんでもないものだった。当然である。メンバーチェンジやさまざまなアクシデント、一筋縄ではいかなかったバニラズの歴史を、ここに集まった全員が知っているからだ。その視線の先には、アリーナ中央にでんと設えられた巨大なステージ。上から見るとロックの“69”と、go!go!vanillasの“gg”という文字をかたどるような形をしたそのステージを、バニラズの4人は所狭しと駆け回った。そうそう駆け回れないドラムのジェットセイヤはその代わりに(?)ドラム台ごと回転し、いつもどおり音をぶっ放していた。
「オリエント」に始まり、牧、長谷川プリティ敬祐(Ba)、柳沢進太郎(Gt)が花道へと散ってオーディエンスを煽った「アメイジングレース」、そして「派手にやっちゃおうぜ!」と「マジック」へ。おなじみの手拍子による合いの手で観客とのコンビネーションを見せつける。メンバー全員、気合いが入ってしかも楽しそうな、いい表情をしている。そしてそのまま、プリティの「やっぱバンド、最高やろ!」という言葉を合図に突入したのは「デッドマンズチェイス」だ。メンバー全員でリードボーカルをパスしながら、その言葉通りロックバンドの楽しさを全力で発揮していく。ギターとドラム(セイヤの革ジャンの背中には「DEADMAN’S CHASE」というピンク色の文字がでかでかと書かれている)のソロ回しもばっちり決まって、客席のテンションもぶち上がる。
「日本武道館、たどり着いたぞー!」とプリティが万感込めて絶叫し披露したのは、最新作「鏡e.p.」から彼が作詞作曲歌唱を担当した「バームクーヘン」である。事故で苦しい時期を過ごしてきた彼の思いが、シンプルなコード進行と4ピースの熱いサウンドとがなり立てる歌声に乗せて武道館にこだまするのを身体で受け止めると、否が応でも心が震えてしまう。
その「鏡e.p.」は、メンバー4人それぞれが書いた楽曲が並んでいる、バニラズならではの振れ幅とおもしろさをもった作品だが、なかでも最高だったのが、ジェットセイヤが中学生のときに書いたという「JETT ROCK SCHOOL」だ。ぱっと暗転して再びステージが明るくなったと思ったら、フロントマイクの前には真っ赤なギターをぶら下げたセイヤが立っている。プリティがギター、柳沢がベース、そして牧がドラムと楽器を交換して、初期衝動丸出しのロックンロールをぶちかます。異常に低くセットされたマイクに身を捩らせながら食らいつくセイヤが「夢を諦めるな! ライフゴーズオン!」とシャウトする。夢の舞台だからこそ、その言葉が力をもつ。サマになってるぜ、セイヤ。
そんな「鏡e.p.」に象徴されていたのは、バニラズという器の柔軟さと、4人で鳴らせばどんな曲、どんな音でもちゃんと彼らだけのロックンロールになるという真実だ。この日演奏された曲だけをみても、彼らの音楽性がいかに豊かに広がってきたかが如実にわかる。カラフルなライトのなか鳴らされたディスコチューン「バイバイカラー」に、柳沢が表情たっぷりの歌声を響かせた「イノセンス」、今のバニラズのテーマソングとでもいうべき「パラノーマルワンダーワールド」、そして牧のサウナ愛がラブ&ピースの世界を描き出す「TTNoW」(ステージから上がる蒸気がリアルなサウナ感を演出する)。牧が書いた最新作の「鏡」もまた、バニラズのロックンロールに新たな色を付け加えるすばらしい曲だ。
武道館で初めてロックコンサートを行ったザ・ビートルズを引き合いに、牧はこの場所への思い入れを語っていた。「しきたりとかルールの垣根を越えちゃって、革命を起こした場所だと思う。それって、最終的な平和だなって思ってる」。自由で、何でもありで、すべての思いが美しい大爆発を起こす場所。バニラズが武道館に求めたのはそんな場所であり、この日のライブは、まさにそれを体現するものだった。声が出せないかわりに手拍子でのコール&レスポンス(もちろん仕切るのは柳沢)をやってのけて突入した「カウンターアクション」、炎とレーザーがダイナミックに彩り、セイヤがシンバルを放り投げた「No.999」、「俺たちのすごいところ見せてやろうぜ!」と繰り出したジェネレーションソング「平成ペイン」。牧はこの日のライブ中何度もステージのすみずみまで歩き回り、観客ひとりひとりの顔を覗き込むようにして歌っていた。それはプリティや柳沢も同様。今こそロックンロールで強い絆と新しい平和を生み出していく――大げさにいえばそんな思いが、武道館のバニラズを駆動させていた。
「コロナがなくならないかぎり、不安とか後ろめたさはなくならないと思います。でも、みんなにどうしても『このライブがあったから乗り越えられた』と思ってほしくて」。終盤、牧はこの日のライブに込めた思いをそう語った。それはそのまま、牧がここに来るまでにロックンロールから受け取ってきたものだろう。メンバーと出会ったときのこと、過去に在籍していたメンバーのことを語り、「ここに立つまで、順風満帆とか幸せだってことがずっと続いていたわけじゃないよ」という牧の声は震えている。こんな牧を見るのは初めてかもしれない。「通過点とか、そんなクソみたいなこと言わない。またここから進むための今日です。心で、今日も歌ってよ!」。今日この日の意味と重みをちゃんと受け止め、困難な現状もちゃんと受け止め、それでもなお前に進むためのアンセムとして鳴らされた「おはようカルチャー」は、間違いなくこの日のハイライトだった。そして本編ラストはバニラズの始まりの曲「人間讃歌」。ちゃんと過去に落とし前をつけるようにして、バニラズの武道館は大団円を迎えた。
アンコールでセイヤは「ロックンロール・イズ・生きるパワー!」と絶叫していたが、まさにそのとおり。そんなだいそれたこと、なかなか言えない世の中だが、バニラズは自分たちの歩みと音楽でそれを証明してみせた。バニラズがいて、続いてきてよかった。心からそう思えた。
【フォトグラファークレジット:西槇太一 / ハタサトシ】
リリース情報
鏡 e.p.
2020年11月18日
ビクターエンタテインメント
02.バームクーヘン
03.イノセンス
04.JETT ROCK SCHOOL
セットリスト
ROAD TO AMAZING BUDOKAN TOUR 2020 -FINAL-
2020.11.23@日本武道館
- 01.オリエント
- 02.アメイジングレース
- 03.マジック
- 04.デッドマンズチェイス
- 05.チェンジユアワールド
- 06.ヒンキーディンキーパーティークルー
- 07.バームクーヘン
- 08.JETT ROCK SCHOOL
- 09.バイバイカラー
- 10.イノセンス
- 11.パラノーマルワンダーワールド
- 12.TTNoW
- 13.鏡
- 14.カウンターアクション
- 15.No.999
- 16.エマ
- 17.平成ペイン
- 18.おはようカルチャー
- 19.人間讃歌
- EN1.アクロス ザ ユニバーシティ
- EN2.ギフト
お知らせ
go!go!vanillas ROAD TO AMAZING BUDOKAN TOUR 2020 -FINAL-
https://gogovanillas.lnk.to/budokan
■ライブ情報
MERRY ROCK PARADE 2020
12/19(土)ポートメッセなごや 1号館~3号館
FM802 ROCK FESTIVAL RADIO CRAZY
12/28(月)インテックス大阪
COUNTDOWN JAPAN 20/21
12/31(木) 幕張メッセ国際展示場1~11ホール、イベントホール
※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。