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Omoinotake、配信ワンマンで見せた2020年の軌跡と飛躍、そして希望

Omoinotake | 2020.12.02

11月22日にOmoinotakeの4thミニアルバム『Long for』の発売を記念した無観客ライブが恵比寿リキッドルームより配信された。コロナ禍での活動は悔しい想いもたくさんあったと思うが、そんな中でも自分たちの音楽を常に更新し続けた、藤井レオ(Vo/Key)、福島智朗(エモアキ・Ba/Cho)、冨田洋之進(ドラゲ・Dr/Cho)の3人。「ずっと目標にしてきた」と語る場所でのワンマンライブは、まさに2020年の彼らの飛躍と、ミュージシャンとしての信念を感じさせるものだった。

静かなピアノの音色が聴こえてきて、「惑星」からライブはスタートした。サビのメロディでサックスの音色と共にレオの声が心地良く伸びていき、終盤ではグルーヴィーに熱を帯びていく。その舞台と映像は、メンバーがまるで小さな水槽(もしくは惑星)にいるかのような、どこか幻想的な演出で、続く「夏の幻」では背景のビジョンにサイダーのシュワシュワ感が映し出されていたのも効果的だった。視聴者がまるでその空間の中にいるような錯覚を味わえるのは、配信ライブならでは。R&Bのビートで魅了する「Stand Alone」では、レオが小さな箱のようなスペースに移動して演奏するなど、新鮮なアプローチでOmoinotakeの音楽世界にどっぷり浸れた序盤。「モラトリアム」の途中で正面の紗幕が落とされ、ステージ全貌と3人の表情がよりはっきりと見えて、演奏は更なる高揚感を放っていく。そして最新作の中から、今年で上京して10年になる彼らが当時のことを思い出しながら書いた「東京」を披露。ノスタルジーに溢れたテーマをスタイリッシュかつクールなテクスチャーで表現できるのも彼らならでは……と思っていたが、その後のMCを聞くと内心はかなり心を揺さぶられていたらしい。

「Omoinotakeのワンマンライブへようこそ。画面の前でたくさんの方に観ていただいていると思います、ありがとうございます。今日のためにみんなで練りに練ってこのステージを作り上げてきました。島根から東京に出てきて、音楽をやり続けたことで出会えた人たちがたくさんいて、そんなことを考えながら歌っていたらグッと来ちゃいました」とレオ。「俺は泣いたよ」と既に泣いていたエモアキはさておき(笑)、インタビューでもいつも冷静な印象のレオが序盤から感慨に耽っている様子に、このステージへの強い想いをあらためて知ることになった。しかし「まだまだ(ライブは)これからですね」と仕切り直すレオに、既に泣いたエモアキがなぜか「そう、まだ早いんだよ」と返したのは今になって考えるとちょっと面白い(笑)。ドラゲもにこやかにそんなやり取りを見守り、「画面の前で皆さんが楽しんでいることを願っています」というレオの言葉でライブは中盤へと突入する。

中盤では森心言(Alaska Jam /DALLJUB STEP CLUB)をステージに招いた「ダイアローグ」で、森のラップとレオの歌声を美しく交差させたのもこのライブのハイライトのひとつ。華やかで甘いムードで届けられた「欠伸」に続き、サックスとパーカッションのサポートメンバーを加えた5人で、よりダンサブルで熱気に満ちた展開になったのは「So Far So Good」。ドラゲが楽しそうにビートを奏でるとハッピーなグルーヴが渦巻き、みんなで声を上げるサビのフレーズが最高の開放感を演出。続く「産声」ではステージの高揚感がヒートアップしたことが画面越しにも伝わってきた。様変わりする曲構成とリズムとメロディ。初のドラマタイアップで悩みながら丁寧に書き上げた、スリリングかつエモーショナルなこの曲を渾身の演奏で届けようとする3人の姿が目に焼き付いた。

MCではレオが「今日、11月22日は前々からこの会場を押さえていて、その頃はお客さんを入れてライブをする気満々だったんですけど」と言い、「本当にすごい年だったなと思いますけど。ピンチをチャンスに変えながら1年やらせていただきました」と続けた。そして「重大なお知らせ」として来年の2月に約1年ぶりのワンマンツアーが開催されることが発表された。「東名阪、そして地元の島根でツアーを予定しています。まだまだ予断を許さない状況だとは思うんですけど、僕たちも最大限の予防対策をしてツアーができればと思っています。みんなもワクワクして待っていてください。またライブハウスでみんなと出会えるように、まだ配信ライブしか見たことないよって人も、一度掴んだ心は絶対に離さないと、この曲で歌っているので」と、「Never Let You Go」へ。これぞOmoinotake!という感じのグルーヴィーなナンバーが、画面越しのたくさんのオーディエンスとコール&レスポンスをしているような熱気を生み出した。まるで「絶対に伝える、伝えたいんだ」という彼らの信念を感じるような時間だった。

ライブもいよいよ終盤。<踊り明かそう>のフレーズを合図に、エモアキも手拍子で煽り、最高潮の盛り上がりを見せた「Hit It Up」。ラッパッパと歌う間奏も、サックスのソロも、てんこ盛りの展開がパーティ感たっぷり。きっと画面の前のみんなも一緒に踊っていたことだろう。そこに畳み掛けるように演奏された「トニカ」も感動的で、<いつか思い出す今日を 僕の一部と誇りたい>というフレーズがキラキラと輝いていた。「2020年は、配信ライブでずっとこの曲を歌ってきました。またツアーでお客さんの前でやれるように、日々みんな健康第一で過ごしてもらいたいと思います。来年は会えますように」というレオの言葉で届けられた最後の曲は「One Day」。<当たり前に寄り添い合える日々でまた/再会を誓い合いたいtonight 繋ぐその先で>と歌うこの曲を、今年の彼らは何度も祈るような気持ちで歌い続けてきたことだろう。その再会を来年2月に見据えながら、この歌を全力プレイと熱唱で届けきった。「また会いましょう!」とステージを去る3人。こんな時だからこそ良い曲を作りたいんだと、決して諦めず、歩みを止めずに2020年を駆け抜けたOmoinotakeの軌跡を感じた配信ワンマンライブ。バンドとしてもひとまわりタフになったであろう彼らにライブハウスでまた会いたいと願うことは、私たちの心に確かな希望をもたらしてくれた。

【取材・文:上野三樹】
【撮影:後藤壮太郎】

tag一覧 J-POP 配信ライブ 男性ボーカル Omoinotake

リリース情報

Long for

Long for

2020年11月18日

NEON RECORDS

01.産声
02.One Day
03.欠伸
04.夏の幻
05.東京
06.One Day (JQ from Nulbarich Remix)

セットリスト

「Long for」 Release
One Man Live 2020
2020.11.22

  1. 01.惑星
  2. 02.夏の幻
  3. 03.Blanco
  4. 04.Stand Alone
  5. 05.モラトリアム
  6. 06.東京
  7. 07.ダイアローグ feat.森心言
  8. 08.欠伸
  9. 09.So Far So Good
  10. 10.産声
  11. 11.Never Let You Go
  12. 12.Hit It Up
  13. 13.トニカ
  14. 14.One Day

お知らせ

■ライブ情報

「Long for」 Release
One Man Tour 2021

02/07(日) 東京 渋谷WWWX
02/13(土) 愛知 名古屋Electric Lady Land
02/20(土) 大阪 MUSE
02/23(火・祝) 島根 松江B1


duo MUSIC EXCHANGE presents
『TAKE A STEP』

01/13(水) 東京 duo MUSIC EXCHANGE

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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