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9ヵ月ぶりの有観客ライブ、熱狂と歓喜に溢れたディスタンスの向こう側を観た!

感覚ピエロ | 2020.12.26

 感覚ピエロがワンマンライブ「わがまま言わせnight ~都合の良いディスタンス~」を有観客で開催。オープニングSEが鳴り響き、横山直弘(Vo/Gt)、秋月琢登(Gt)、タッキーパイセン(Ba)、アキレス健太(Dr)のメンバー4人にピンク色の照明が降り注ぐと、今年4月にリリースされた配信シングル「毒の根の音」収録の「共犯」でスタート。ゴージャスかつダンサブルな曲調がフロアを華やかに染めていく。観客はソーシャルディスタンスを保ちながら、感覚ピエロのライブをようやく生で体感できる喜びに沸き上がっている様子だ。「your answer」ではアグレッシブな演奏を叩き付け、観客はその場で体を激しく動かしていた。

 長めのイントロを導火線に「メリーさん」に移ると、サビの爆発力も相まって場内の熱気は高まっていく。秋月がステージ上を動き回れば、タッキーは頭の後ろでベースを弾いたりと、躍動的なプレイで観客の耳目を奪う。3曲目が終わる頃にはバンドと観客を隔てる壁はキレイに吹き飛んでいた。
「全員かかって来い!」と挑発的に煽ると、「疑問疑答」が炸裂。殺気を帯びた攻撃力はグッと増し、拳を突き上げてノる観客が一気に増えていく。普段ならばもみくちゃになって、汗が飛び交う光景かもしれないが、バンドが放つエネルギーはここにいる人たちの心を確実に射抜いているようだった。「後ろ、真ん中、前、元気か?」と曲中に声をかけ、観客と密にコミニュケーションを図ることも決して忘れない。
「みんなウワーッ!とか言いたいよな。こんな時代になってもうたよ。マスクのせいでみんな美男美女に見える」と秋月は友達に語りかけるような親密な口調で場の空気を和ませると、「いやあ、ライブしてんなあ。マジ長かったよ。俺らはいつもどおりのライブをやります。9ヵ月(有観客の)ライブできなくて、腐りそうだった」と素直に述べる横山。そういえば、この日初めて感覚ピエロのライブを観に来た人もいたしく、新規ライブキッズにも「よく来たな」とやさしい言葉を投げかけていた。

 美しいメロディに彩られた「楽園」、力強いドラムとともに始まった「ウラムの螺旋」もライブで抜群に映え、ワルツのリズムを導入して一気に爆発する展開もかっこよく、ショウの流れにいいフックをもたらしていた。「CRAZY GIRL」に入ると、観客もその場でジャンプする光景が広がり、「心の中で歌え!」としきりに焚き付けていく。シンガロングこそできないけれど、送り手と受け手が一体化する熱い磁場がここには生まれていた。シームレスに「サヨナラ bye-bye」に?ぎ、哀切なメロディに観客は手を振り、積極的に楽曲の世界に参加している。曲が終わると、「おっ、かっこいい!」と自身の曲を褒め称える横山に対し、「自分で言う?」と秋月がツッコミを入れ、さらにタッキーの新しい服にタグが付いたままであることをバラし、会場は大きな笑いに包まれた。
 そんな朗らかなムードから一転、横山がどうしても歌いたくてねじ込んだ曲と説明して、「一瞬も一生もすべて私なんだ」をプレイ。<いつの間にか誰かが決めた「正解」に惑わされ>と冒頭の歌詞にあるとおり、人生に正解などなく、地に足をつけて自分の道を進むんだというメッセージを込めた1曲。何が正解なのかわからない今の時代に、この曲を届けたかったに違いない。切迫感を帯びた歌声と演奏は吸い寄せられるように魅力を放ち、多くの観客が聴き入っていた。

 続いて「会心劇未来」「ミステリアスに恋をして」と4人のアンサンブルは激しい火花を散らし、バンドの演奏は加速するばかりだ。演奏後に「テンション上がりすぎて、ギターの弦が切れました」と横山が報告。彼は「音楽を辞めてやろうという時期もあった。生きてりゃいいことあるんだな、そう思わせてくれたのはあなたです!」と告げ、「拝啓、いつかの君へ」を披露。<何度だって声に出して/夢に向かって 立ち上がって/壊れたってまた創って/愛を持って生きてくんだ/いつの日にか叶えるんだ>の歌詞がまた違う意味を持って胸に刺さる。「ようやくあなたの前で歌えてんだよ!」と曲中に叫ぶシーンもあり、そんなヒリヒリしたエモーションにもグッときた。

「俺の正義はロックをやることです!」と宣言し、後半も残り数曲という段階でバンドのテンションはレッドゾーンに突入していく。

「手加減しねぇからな!」と啖呵を切り、「Japanese-Pop-Music」からフロアの過熱ぶりは半端じゃなく、観客もクラップやジャンプなどでノリまくる。「シェケナベイベ」においても吹っ切れたような怒濤の攻めを発揮。間髪入れずに「Sing along tonight」に進むと、ありったけの感情を放出する気迫のこもった演奏に鳥肌が立った。

 そして、7月に実施した無観客ワンマンライブ「前戯が長過ぎてごめんnight」の際、入場BGMをフルサイズで作ると約束したことにも触れ、イベント名をそのまま冠した新曲「前戯が長すぎてごめんnight」(11月24日リリースの2曲入り配信シングル「NIGHT」収)をプレイ。ストレートな歌詞と大人びた雰囲気が交差した踊れる曲調に加え、腹に響くパワフルなドラムも最高。
「最後は人と人、一緒に生きていこう!」と呼びかけ、本編ラストは「感染源」で締め括り、アンコールで再びステージに姿を見せるメンバー4人。「ほんとは一緒に歌いたいんだけど……すげえ歌いたい気持ちも受け止めるから」と言うと、最終曲「O・P・P・A・I」を披露。お祭り感溢れるグルーヴを解き放ち、恒例のコール&レスポンスでは観客は両手を挙げる大フィーバーぶりで、約2時間に及ぶライブは終了した。

 来年はフルアルバムを出すとメンバーの口からうれしい知らせもあり、2021年の感覚ピエロはさらに大暴れしてくれることだろう。すべてのエモーションを投げ打った危機迫るワンマンライブを観て、その思いをより一層強くした。

【取材・文:荒金良介】
【撮影:ヤマダマサヒロ】


tag一覧 J-POP ライブ 男性ボーカル 感覚ピエロ

リリース情報

NIGHT

NIGHT

2020年11月24日

JIJI INC.

01.わがまま言わせnight
02.前戯が長すぎてごめんnight

セットリスト

わがまま言わせnight
〜都合の良いディスタンス〜
2020.11.23@恵比寿LIQUIDROOM

  1. 01.共犯
  2. 02.your answer
  3. 03.メリーさん
  4. 04.疑問疑答
  5. 05.楽園
  6. 06.ウラムの螺旋
  7. 07.CRAZY GIRL
  8. 08.サヨナラbye-bye
  9. 09.一瞬も一生もすべて私なんだ
  10. 10.会心劇未来
  11. 11.ミステリアスに恋をして
  12. 12.拝啓、いつかの君へ
  13. 13.Japanese-Pop-Music
  14. 14.シェケナベイベ
  15. 15.Sing along tonight
  16. 16.前戯が長すぎてごめんnight
  17. 17.感染源
  18. 【ENCORE】
  19. 18.O・P・P・A・I

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