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“前戯”の果てに広がっていたエモーション――画面越しとなった“本番”の一部始終を観た!

感覚ピエロ | 2020.07.22

 ライブ後半、横山直弘(Vo/Gt)は「この壁、全部ぶっ壊そうぜ! かかって来いよー!」と視聴者に向かって熱く吠えていた。その鋭い視線と汗まみれの表情からは、通常のライブとなんら変わらない感覚ピエロの姿があった。いや、音楽を取り巻くすべての壁を超越して、あなたに届けたいんだ!という意志は、普段以上にエモーショナルに映った。

 今回はコロナ禍の影響を受けて、感覚ピエロが初となる無観客ワンマンライブ「前戯が長過ぎてごめんnight」を開催。コメント機能を搭載した視聴アプリ「FanStream」を活用し、視聴PASS販売プラットフォーム「StreamPass」と連携する形で有料配信を行った。一応、僕は会場である渋谷WWW Xに出向き、実際のパフォーマンスと配信映像の両方を観る機会を得た。

 開演20時に入場SEが流れると、横山、秋月琢登(Gt)、タッキーパイセン(Ba)、アキレス健太(Dr)の4人が登場。横山は「ここにお客さんを入れてやる予定でした」と告げたあと、「Sing along tonight」で本編スタート。この曲は、4月1日にリリースされた3曲入り配信シングル「毒の根の音」に収録されているもの。今日のフロアはカメラクルーのみで目の前に観客はいない。画面越しの視聴者とともにシンガロングを巻き起こしたい。その熱い思いを宿した歌と演奏に心を激しく揺さぶられる。ふと視聴者コメントを覗くと、「泣いた」「鳥肌が立った」という歓喜の言葉がひっきりなしに流れているではないか。
 煌びやかな秋月のライトハンドが鳴り響くと、次は「ハルカミライ」へ。バンドの演奏も加速度を上げ、キレキレのプレイに惹き付けられる。すると「指がエロい」という視聴者コメントが目に飛び込み、ニヤリとさせられた。フロアからステージを眺めるのとは違い、メンバーの細部まで捉えるカメラワークの妙は配信ならではの楽しみ方と言える。「メリーさん」に入ると、タッキーは頭の後ろでベースを弾くなど派手なパフォーマンスで魅了する。

 「久しぶりっすねぇ!」と秋月は万感の思いを込めて言い放ち、続けて「無観客やけど、アリーナみたい。久しぶりにやると、テンション上がる!」とライブができる喜びを爆発させている。そのMCに対して、健太は自前で仕込んだ歓声(効果音)を鳴らして場を和ませていた。
 そして本来ならばこの日、コンセプトワンマンツアー「感エロフェチズム Vol.2」をやる予定だったことにも触れ、「胸の中でギクシャクしたものも届ける」と横山は告げ、「感染源」~「共犯」と先述した配信シングルから2曲を立て続けに披露。前者はポエトリー・ボーカルと漆黒のヘビー・グルーヴで攻め立て、後者はスラップベースと情熱的なギターソロをフィーチャーした大人びた曲調。特に「感染源」は、今の時代性と完全リンクしたメッセージの強い歌詞が何より強烈。この2曲の流れは序盤のハイライトと言えるもので、それは「DVD化求む」という興奮気味の視聴者コメントにも表れていた。

 「1曲、やりたい曲」と横山が呟くと、「雨ノチ、雨上ガリ」をプレイ。砂塵舞い上がる激しいロックチューンを突きつけ、その勢いを「A-Han!!」でさらに膨らませていく。メンバー4人のパフォーマンスも躍動的になり、全身で音楽を体現するすさまじいエネルギーを放出させていた。その気迫は視聴者にも確実に伝わり、拍手アイコンがとめどなく流れる活況ぶりを呈した。
 バンドと視聴者が熱い絆で結ばれていくなか、ここで飛び出したのは彼らの代表曲「O・P・P・A・I」である。通常のライブであれば男女に分かれてコール&レスポンスを行う場面があるが、今日に限ってはiPhoneとAndroidに分かれるアイデアで視聴者の心をがっちりと鷲掴みにする。当然、視聴者コメントは「おっぱい」の文字がダーッと羅列される有様で、画面の前で笑顔を浮かべながら文字を打っている人も多かったに違いない。

 すでにステージ上で汗だくになっているメンバー4人。「(ライブ休止から今日を迎えるまで)前戯がほんと長過ぎだよね?」と秋月がぼやくと、「ほんまに」と健太が頷き、「これは本番でしょ」と横山が言うと、ここからライブも後半戦に突入だ。「拝啓、いつかの君へ」「She say O.K.」と本能剥き出しのアグレッシブな演奏を叩き付け、視聴者も拍手アイコンで画面を盛り立てたりと、一方通行では収まらない一体感が生まれていた。普通ならば送り手と受け手が同じ会場にいるはずなのに、今はそれができない。そうしたもどかしさを含めて、横山は冒頭で記した言葉を吐き出したのかもしれない。ライブができるうれしさと、眼前に観客がいない悲しみ。それらの感情を全部ガソリンにして「疑問疑答」を披露。危機迫る圧倒的なテンションを爆発させたあと、メンバーもスカッとした表情を浮かべているように見えた。
 「最高に楽しかったです! 自然には勝てない。そこで楽しみを見つけるしかないから、4人はあまり悲観していない。(コロナ禍の中でも)どれだけかっこいい感エロを見せていけるか……」と横山が語りかけると、最後にサプライズで投下したのは新曲であった。これがヘビーさを研ぎ澄ました攻撃的な曲調で、視聴者コメントも「かっこいい!」「新曲いい!」と絶賛の文字がずらりと並んでいた。一気に全12曲を駆け抜けると、メンバー4人はステージ袖に消え、その後は楽屋で乾杯したあと、しばらくトークを繰り広げていた。どうやら久々のライブということもあり、「ちゃんと緊張した」という赤裸々な発言も飛び出すほど。

 早く次のライブにも期待したいところだが、現在は観客を入れたパフォーマンスをいつできるのかわからない状況だ。今日の演奏中も「ライブハウスに行きたい」という視聴者コメントが胸に刺さった。けれど、どんなに高い壁が立ち塞がろうとも、音楽はそれをすり抜けて、あなたの心をジャックする。感エロの無観客ワンマンはそれを見事に証明してくれたと思う。いつか観客を交えた“本番"の日を楽しみに待ちたい。

【取材・文:荒金良介】
【撮影:ヤマダマサヒロ】

tag一覧 J-POP 配信ライブ 男性ボーカル 感覚ピエロ

リリース情報

digital release「毒の根の音」

digital release「毒の根の音」

2020年04月01日

JIJI INC.

01.共犯
02.Sing along tonight
03.感染源

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セットリスト

前戯が長過ぎてごめんnight
2020.07.13@渋谷WWW X

  1. 01.Sing along tonight
  2. 02.ハルカミライ
  3. 03.メリーさん
  4. 04.感染源
  5. 05.共犯
  6. 06.雨ノチ、雨上ガリ
  7. 07.A-Han!!
  8. 08.O・P・P・A・I
  9. 09.拝啓、いつかの君へ
  10. 10.She say O.K
  11. 11.疑問疑答
  12. 12.(新曲)

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