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2020年の締めにふさわしいラッキリ初のホールワンマン、大ボリュームのセットリストで踊り明かした一夜を徹底レポート!

Lucky Kilimanjaro | 2020.12.30

 2020年はライブミュージック受難の1年だった。Lucky Kilimanjaroも例外ではなく、アルバム『!magination』のリリースに続いて春に予定していた初のワンマンツアー“2020 Dancers”は秋に延期された。恵比寿ザ・ガーデンホール公演は同ツアーの追加公演で、9月の恵比寿リキッドルームに行けなかった僕にとっては8月の配信限定ライブ「DANCE IN DA HOUSE」以来、生に限れば昨年11月の渋谷WWW以来1年ぶりのラッキリだった。

 フロアには椅子が並べられ、ソーシャルディスタンスに配慮して1席ずつ空けてあった。ラッキリのライブで着席は、少なくとも僕は初めて。“世界中の毎日をおどらせる”を標榜する彼らがどう対応するかを想像して軽いドキドキ感もありつつ、ガーデンホールの上品な雰囲気は案外(?)ラッキリには合っているようにも感じられた。

 大瀧真央(Key)の影ナレーションが上手で感心していたら、19時5分ごろ暗転。シンセサイザーのイントロが流れるなか、楽器だけが置かれた簡素なステージにメンバーが現れ、アルバムのタイトル曲でもある「Imagination」でショーが始まった。「夜とシンセサイザー」のMVで見た白系の衣装だ。

 熊木幸丸(Vo)が「『Lucky Kilimanjaro Presents “2020 Dancers”』、お越しいただきありがとうございます。みなさん座ってられますか? 立っても大丈夫です、自分の席であれば。踊っていってください。最高の忘年会にしましょう。楽しんでいこうぜ!」と軽く呼びかけて「Drawing!」。観客は言われるまでもなく早くも総立ちで、さっそく思い思いに体を揺らし始めた。

「風になる」「Favorite Fantasy」を続けて、柴田昌輝のドラムとラミのパーカッションの応酬を導入に「FRESH」。ドラムンベースっぽいドラムのアレンジが気持ち良くて、特に印象的に仕上がった曲のひとつだった。そのまま「新しい靴」、少しテンポを落として「時計の針を壊して」、再び上げて「RUN」。「グライダー」では強烈な低音がフロアを揺らし、観客の踊り方も少し変わった。

 コロナ禍の空気を濃厚に反映した「光はわたしのなか」は、<変わる日々に目隠しされても このダンスは止めないわ><未来は消えてないよ 今だから踊り歌うわ>と祈りと決意がこもった歌詞もさることながら、「FRESH」以上にライブ感のあるアレンジが印象的。曲中の「来てくれて本当に、本当にありがとう」という熊木の発言も思いの強さをにじませ、拍手もひときわ大きく響く。

「今日はまだまだ曲を用意してます。すてきなラブソングをお届けします」と簡潔なMCに続いて「Sweet Supermarket」。シンセのフレーズがファンク好きの心をくすぐる。さらにR&Bバラードの「とろける」、「アルバムの中で僕がとても好きな曲を」と前置きして「君とつづく」とスローナンバーを続ける。次はシンセループの長いイントロから一転、躍動感のあるドラムで雰囲気を変える「初恋」。もともとライブ映えのする曲だが、アレンジでさらに魅力を増していた。

 活動を始めて6年目にガーデンホールでライブができることを「皆さまのおかげです。本当にありがとう」と丁寧に感謝したあと、「ところで今日って何曜日だっけ? 皆さん一緒に踊って思い出してもらってもいいですか?」と「Burning Friday Night」へ。松崎浩二のギターソロをフィーチャー、全員でステップを揃えたダンスバンドっぽい動きもいい感じだ。ここからは「春はもうすぐそこ」「エモめの夏」「DO YA THING」「Do Do Do」「ロケット」とほぼノンストップ。ステージの上も下も完全にリラックスした感じで、僕の2~3列前、ひとりで来ていた女性の躍動感のある踊りがとても良かった。

「皆さんにとっておきの情報をお届けします」と、2021年3月にアルバム『DAILY BOP』、1月に先行シングル「MOONLIGHT」をリリースすること、さらに4月には日比谷野外音楽堂公演“YAON DANCERS”を開催することを発表し、いよいよラストスパートに突入する。「350ml Galaxy」で乾杯、リミックスっぽくつないだ「HOUSE」、そして「ひとりの夜を抜け」とハイエナジーなダンスソングを連発。スタジオバージョン以上にドラマチックな「夜とシンセサイザー」、そして<踊れや!ほいやっさ!>の祝祭ソング「太陽」で客電も点灯、光のなかでショー本編は終了した。

 アンコールに応え、グッズのTシャツに着替えたメンバーが再びステージへ。ラミと大瀧と熊木が掛け合ってグッズを紹介し、「めっちゃ楽しかったです。今日ライブやってよかったと思います」と素直な感慨を吐露したあとに「SAUNA SONG」。メンバー紹介を経て、「僕らは皆さんが楽しく踊れる毎日を過ごしてもらえるようにダンスミュージックをやってます。これはそんな曲です」と「君が踊り出すのを待ってる」を披露する。最後は観客を一人ひとり指差しながら「待ってる! 待ってる!」と語りかけ、演奏を終えると全員で整列。マイクを通さずに感謝を述べ、ステージをあとにした。

 数えてみれば全27曲。『!magination』収録曲はすべて披露した。長めのMCもなく、ほとんどノンストップで演奏しきったエネルギーはあっぱれである。特に熊木のボーカルは見るたびに安定感とスタミナを増している感が強い。
 これは毎度のことだが、文中に特記した曲以外も同期と生演奏を巧みに組み合わせたライブアレンジで全体にダイナミズムが格段に増していて、特にリズムアレンジは圧巻だった。山浦聖司(Ba)はベースギターよりもシンセベースを弾く局面が多かったのでは? メンバーも観客も楽しそうで、音の良さもあって僕がこれまで観たなかでは最高の出来だった。ニューアルバムにも“YAON DANCERS”にも期待がふくらむ。

【取材・文:高岡洋詞】
【撮影:石阪大輔】

tag一覧 J-POP ライブ 男性ボーカル Lucky Kilimanjaro

リリース情報

DAILY BOP

DAILY BOP

2021年03月31日

ドリーミュージック

01.Superfine Morning Routing
02.太陽
03.エモめの夏
04.アドベンチャー
05.ペペロンチーノ
06.雨が降るなら踊ればいいじゃない
07.ON
08.KIDS
09.夜とシンセサイザー
10.MOONLIGHT
11.おやすみね
Bonus Track 光はわたしのなか

セットリスト

Lucky Kilimanjaro Presents TOUR “2020 Dancers FINAL”
2020.12.11@恵比寿ザ・ガーデンホール

  1. 01.!magination
  2. 02.Drawing!
  3. 03.風になる
  4. 04.Favorite Fantasy
  5. 05.FRESH
  6. 06.新しい靴
  7. 07.時計の針を壊して
  8. 08.RUN
  9. 09.グライダー
  10. 10.光はわたしのなか
  11. 11.Sweet Supermarket
  12. 12.とろける
  13. 13.君とつづく
  14. 14.初恋
  15. 15.Burning Friday Night
  16. 16.春はもうすぐそこ
  17. 17.エモめの夏
  18. 18.DO YA THING
  19. 19.Do Do Do
  20. 20.ロケット
  21. 21.350ml Galaxy
  22. 22.HOUSE
  23. 23.ひとりの夜を抜け
  24. 24.夜とシンセサイザー
  25. 25.太陽
  26. 【ENCORE】
  27. EN1.SAUNA SONG
  28. EN2.君が踊り出すのを待ってる

お知らせ

■ライブ情報

Lucky Kilimanjaro presents. YAON DANCERS
2021/04/04(日)東京 日比谷野外大音楽

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