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ライブでしか味わえないyonawoのエッセンシャルな魅力が詰まった一夜をレポート!

yonawo | 2020.12.30

 インタビューした11月初めの時点で、すでにソールドアウトと聞いていた。名古屋から始まって大阪、札幌、地元福岡と巡演してきたyonawoのファーストアルバム『明日は当然来ないでしょ』リリースライブ、最終公演。yonawoにとって初めてのワンマンツアーである。彼らのライブは初めての僕がワクワクしながらO-EASTに足を踏み入れると、フロアには全面に椅子が並び、黒を基調としたステージにはペルシャ絨毯とクラシックなモニターアンプ群。サブステージにはアンティーク風のスタンドランプと椅子が置かれていた。

 19時半を少し回ったころ、おもむろにアルバムのオープニングナンバー「独白」が流れ、後方からフットライトが赤く照らすステージに斉藤雄哉(Gt)と田中慧(Ba)と野元喬文(Dr)、少し遅れて荒谷翔大(Vo/Key)が現れる。ほんのわずかな時間だったが、「独白」はあたかもこのために作られた曲であるかのように似合っていた。

 ステージが明るくなって目についたのはハニカムパターンのパネルがついた天井のライトと、4人が向かい合った立ち位置。メンバーはみなジャケットを着込み、シックな雰囲気満点だ。オンライン配信用のカメラが何台も入っていて、配信されている映像がステージ左右のモニターにも映し出されていた。

 オープニング曲はyonawoの知名度を上げた現時点での代表曲「矜羯羅がる」。荒谷が小さく「ありがとうございます」と挟み、そのまま「トキメキ」へ。アルバム『明日は当然来ないでしょ』の世界へと観客を引き込んでいく。

 荒谷が「どうもこんばんは、yonawoです。お越しいただきありがとうございます」と短く挨拶をし、「配信の向こうの人にもこんにちはって言わなきゃ」とカメラを覗き込むが、カメラを間違えて「あれ?」と照れ笑い。田中が「照明すごくないですか? かっこいいすよね。それを受けてテンション上がっております」と引き継ぐ。スタイリッシュな楽曲、演出とのギャップについ笑いがもれてしまう純朴な風情とメンバー仲のよさは、ライブでしか味わえないyonawoのエッセンシャルな魅力と言える。

 「rendez-vous」では斉藤がセミアコからエレキ、田中がベースギターからシンセベースにスイッチ。「麗らか」から「close to me」へのブルージーなメドレーはアルバム終盤と同じ。後者では野元が一部ドラムパッドを使い、ダイナミックなシンバルワークとの対比を聴かせる。

 ここからはEP『LOBSTER』コーナー。「26時」はベースライン、「しあわせ」はジャジーなギター、「ミルクチョコ」では後半のボーカルのシャウトなど、どの曲にも見せ場がたっぷりだ。続く「good job」はライブならではのボサノバ風イントロと荒谷のファルセットがクール。自分たちの曲を自ら“解釈”してみせるような折衷的な演奏が、楽曲のイメージを膨らませ、時には変容すらさせていく。

 「ちょっと休憩します。のもっちゃん、なんかしゃべって」と荒谷にむちゃぶりされた野元が、ひとしきり戸惑ったあとマイクに向かって「年が明ける前にyonawoのライブで締めくくってもらってありがたいです」と言葉を絞り出すと、田中が「お客さんのほう向いて」と突っ込む。グダグダのやりとりをするうち、斉藤が「サンプラーの電源が落ちた」。MCタイムの自然体ぶりは向かい合った立ち位置のおかげもありそうだ。見ながらつけていた僕のメモには「ちょけ方もクワイエットストーム」と書いてあった。

 斉藤がさまざまなスタイルのギタープレイを披露する「Mademoiselle」に続く、ベースのループを軸にした「cart pool」から「ijo」へのノンストップリレーは、重たいドラムとギターでスタジオ版から大きく化けた感があり、個人的には当夜のハイライト。特に前者後半のサイケデリックなジャムっぽさ、後者のサンプラーも駆使してさらに折衷度を高めた演奏は、リラックスしたテンポでゆっくり、じわじわと熱量を上げていくyonawoの持ち味全開だった。

 荒谷が「あと2曲です」と告げると、フロアからはたまらず「えーっ」と小さな声が上がる。荒谷に「雄哉、ひとこともしゃべっとらんやん」と促された斉藤が「ずっと座りキツくないですか? 今が立ち上がって伸びをするチャンスです」と言い、「立っちゃダメなんだよ」と突っ込まれて「あっ、すいません」と謝る。愛嬌満点の会話を経て、荒谷が立ち上がり斉藤がエレピに回った「告白」、コーラスのサンプルループと生演奏の絡みから後半のサイケデリックな展開へと盛り上がっていく「蒲公英」で再びクライマックスを迎え、本編は幕を閉じた。

 アンコールに応えて荒谷がひとり登場し、ギターを手にシャッフル調の「202」。終わると3人もステージに上がってツアーグッズ紹介だ。荒谷が中心になったのはツアー最終日にして初だそうで、前任の田中が「長い」と怒られたという秘話を明かす。荒谷がギター、斉藤がキーボードとギターを兼任して「天神」、最後に「感謝しかないです。本当にありがとうございました」と「生き別れ」を披露した。アルバムではギターの弾き語りに近いスタイルだったこの曲は、エモーショナルなギターソロ入りのバンドバージョンで完全に生まれ変わっていた。3度目のクライマックスと言っていいだろう。

 インタビューで語っていた「音源は音源でライブとは別」(田中)というyonawoの思想を体現する演奏だった。『明日は当然来ないでしょ』のストーリーをバラして並べ替え、他の曲も混ぜて新たなストーリーを作り上げていた。荒谷のボーカルは楽曲に合ったものだし、向かい合ってアイコンタクトを交わしながら、何よりも音楽が大好きなことがモロに伝わる楽しげな風情で演奏する4人の姿は、1960年代末~1970年代のロックバンドのようだった。その印象は映像で見た人にはさらに強かったはずである。照明も生で見るのと配信映像では色彩がかなり違い、撮影のクオリティも高かった。

【取材・文:高岡洋詞】
【撮影:Toyohiro Matsushima】

tag一覧 J-POP ライブ yonawo

リリース情報

明日は当然来ないでしょ

明日は当然来ないでしょ

2020年11月11日

WARNER MUSIC JAPAN / Atlantic Japan

01.独白
02.逢えない季節
03.トキメキ
04.rendez-vous
05.good job
06.cart pool
07.蒲公英
08.202
09.天神
10.ムタ
11.麗らか
12.close to me
13.生き別れ
14.告白

セットリスト

yonawo 1st full album
「明日は当然来ないでしょ」
release one man live tour
2020/12/23@東京 TSUTAYA O-EAST

  1. 00. 独白
  2. 01. 矜羯羅がる
  3. 02. トキメキ
  4. 03. rendez-vous
  5. 04. 麗らか
  6. 05. close to me
  7. 06. 2 6 時
  8. 07. しあわせ
  9. 08. ミルクチョコ
  10. 09. good job
  11. 10. Mademoiselle
  12. 11. cartpool
  13. 12. ijo
  14. 13. 告白
  15. 14. 蒲公英
  16. 【ENCORE】
  17. EN-1 . 202
  18. EN-2. 天神
  19. EN-3. 生き別れ

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