“福岡発新世代ネオ・ソウル・バンド”yonawo、待望のファーストフルアルバムリリース!

yonawo | 2020.11.13

 “福岡発新世代ネオ・ソウル・バンド”yonawoが14曲入りのファーストフルアルバム『明日は当然来ないでしょ』を完成させた。配信シングル曲「good job」「トキメキ」「天神」「rendez-vous」を収録しつつ、アルバム単位のまとまり、つながりも見事。ぜひ1曲めから順に通しで聴いてもらいたい、あっぱれな出来である。前回(https://music.fanplus.co.jp/special/20200415140ee3bf2)はメールインタビューだったので初対面。この日7本め(!)の取材で疲れていたと思うが、4人仲良く元気に答えてくれた。

──アルバム全体のまとまりがとてもいいですね。しかもカチカチに固まっているのではなくて、いい意味でぼんやりしている。光が明滅しているイメージというか、トンネルの中を車で走りながら照明が一定間隔で視界を流れていくような感覚で聴きました。聴き終えたらトンネルを抜けるみたいな。
荒谷翔大(Vo):初めて言われましたけど、むちゃくちゃすてきな表現ですね。
斉藤雄哉(Gt):めっちゃうれしいです。
荒谷:抜けた感じっていうのは爽快感があるってことですか?
──そうです。しかも最後の「告白」からまた1曲めの「独白」に戻るような構成で、もう一度聴きたくなるという。
田中慧(Ba):全然考えてなかったです。
野元喬文(Dr):出来上がったとき、よくできてんなぁと思いました(笑)。
荒谷:「蒲公英」と「202」でつなげたいとか、「麗らか」と「close to me」とか、部分的にはあったんですけど、全体を通しての流れとか連続性は作ってるときは全然意識してなかったんです。でも最後にみんなで曲順を決める作業をしたとき、あらかじめ当てはまるようにピースが全部あったような感じで。不思議な体験でした。だから偶然なんですけど、必然性も孕んでたのかなって今、振り返ると思いますね。
──大げさかもしれませんが、ビートルズの『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』とか『アビー・ロード』のB面をちょっと思い出す感じというか。
斉藤:『サージェント・ペパー』大好きなんで、めちゃくちゃうれしいです。
荒谷:そういう感じにしようとは言ってなかったんですけどね。
斉藤:でもアルバム単位で聴くのがみんな好きなので、自然と「アルバム1枚でひとつの作品にしたい」ってことは意識してました。
荒谷:でも考えてみたら、アルバムのために作り足した曲はけっこうあるので、自分の中で無意識に流れというかぼんやりとしたイメージはあったのかもしれないです。
──作り足した曲はどれですか?
荒谷:「独白」「逢えない季節」「ムタ」「close to me」「生き別れ」「告白」、あと慧が作った「cart pool」も。
田中:「cart pool」はアルバムのために作ったわけではないんですけど、結果的に合うものができたって感じです。
野元:僕はみんなが決めたのを最後に聴かせてもらったんですけど、自分の中でつながりをなしてなかった曲がつながってる!ってびっくりしました。違和感をちょっとでも覚えるのかなと思ったら、最後までなくて。こんなことってあるんだ、みたいな。
田中:「ここはどうかな?」みたいなとこ、ないもんね。
斉藤:みんなで話して一度ざっと決めたんですけど、それを並べたらなんか違ったんで、聴きながら並べ替えたらけっこう一瞬で終わって、「こうでしょ!」みたいになりました。
──野元さんはみんなより後に聴いたんですね。
野元:そうです。完成したのを持ってきてくれて。
斉藤:ドラム練習しよったん?
野元:ドラムも練習しよったけど、アートワークをいろいろやってたから。
荒谷:なので最初のリスナー目線ですね(笑)。
野元:けっこうそういうこと多いんです。『当然来ないでしょ』っていうタイトルも後から知らされました。
荒谷:今、『明日は』省略した(笑)?
──アルバムタイトルは誰がつけたんですか?
荒谷:僕です。最後の最後まで決まらなくて、雄哉に「小説のタイトルってかっこいいけん、そういう感じがいいんやない?」って言われたので、自分の詞も小説っぽいからそういうのもいいなって思って考えて「どう?」って言ったら……。
斉藤:「最高!」って。
荒谷:それで二人にも提案したんですけど、「えっ?」ってなってたよね。
田中:「あ、おう。ああ、うんうん」みたいな(笑)。
野元:まさにその反応しよったよな。
田中:ちょっと「ん?」ってなりますよね。そのまま言われて「いいねそれ!」って感じにはさすがにならんくて(笑)。しかも急に日本語の文のタイトルやったけん。
荒谷:意味は一応、僕の中にはあるんですけど、それはあえて言わないです。これを目にした人は慧と同じように、すんなり飲み込めないで絶対に一瞬考えると思うんですよ。どういう意味に解釈されたとしても、そういう瞬間が生まれることがいいなって。自分の詞も「このワードが来てこのワードが来る?」みたいな組み合わせが多いんですけど、そういうこだわりもこのアルバムタイトルで総括できました。
野元:今日めちゃくちゃインタビュー受けたんですけど、受けるほどにこのタイトルはこのアルバムに合っとるなって僕もすごい思いました。
荒谷:自分の中でも腑に落ちたし、今までの僕たちを知ってるみなさんを、いい意味で裏切れたなって思います。曲たちも、アレンジも。いい驚きを感じてもらえるかなって。
──1曲ごとに非常に音のバリエーションがありますよね。編成もいろいろで。
野元:メンバー何人もいます(笑)。ライブのことは考えてないですね、作品は。
田中:音源は音源でライブとは別、ってもとからの考えなんです。
荒谷:ライブってわざわざ足を運ぶものじゃないですか。でも作品は買ったらいつでも聴けるし、ストリーミングだったらずっと流せる。過程が違えば捉え方も変わってくるやろうな、ってなったら、見せ方も変えるのが当然かなって思うんです。
斉藤:あと、レコーディングでしかやれないこともやりたいし。ライブではリバースのアコギとか絶対無理じゃないですか(笑)。
荒谷:音源でしかできないこともあるし、ライブでしかできないこともあるし。
斉藤:どっちもよさがあるしね。

──yonawoは“ネオ・ソウル・バンド”を標榜していますが、僕はロックを感じたんですよ。みなさん的にはジャンルはどうでもいいだろうと思いつつ。
荒谷:たしかに。
斉藤:ネオ・ソウルじゃないよな(笑)。
──もちろんソウルフルな曲もたくさんあるけど、やっぱりギターが空間を埋める役割になっていることが大きいのかなと思うんですが……。
斉藤:そうですね(笑)。みんなロック好きなんで。けっこうギター歪んでるし、今回。
──そんなところもいい意味での違和感になっているかなと。
荒谷:たしかに裏切ってますね。
──ファーストアルバムでそういう内容をやっちゃうのが面白いです。
荒谷:(笑)。それは思いますね。
斉藤:前からやりたかったんです。ファーストで、とは考えてなかったですけど、たまたまタイミングが来たっていう。
──前回のメールインタビューで「現在のバンドの音楽性はどのようにして固まってきましたか?」という質問に、荒谷さんが「今もスタイルはまだ固まっていないと思っています」と答えてくれたのが面白かったんですが、このアルバムを聴いて腑に落ちました。
荒谷:僕たち3人はアレンジとかサウンドの面でけっこうやりたい放題の案を出すんですけど、慧が客観的に「ここはちょっとやりすぎ」とか言ってくれるから、破綻しないギリギリのバランスで留まってて、その感じが僕たちっぽいのかなって思います。
──田中さんはそういう役なんですね。何か基準があるんですか?
田中:感覚なんですけど、「実験しすぎ!」みたいな(笑)。みんながどう思ってるかはわかんないですけど、やっぱりある程度ポップなものでありたいと思ってるんです、僕は。その一番はたぶん荒ちゃんの声で、個人的な意見ですけど、誰が聴いても耳馴染みがいいというか懐かしい感じがするみたいな、そんな声だって思ってて。だからみんなが行きすぎてると「ちょっと待て」みたいな感じになっちゃいますね。
──田中さんにとってyonawoの中心は荒谷さんの歌なんですね。
田中:歌を聴かせたいかなって、自分の中では。もちろんそういうベクトルで考えない曲もあっていいと思ってるんですけど、歌ものだったら荒ちゃんのボーカル、メロディを聴かせるのが自分の役目というか。だからベースラインを考えるときも、歌メロの邪魔にならないように意識してます。ただこのアルバムでは意外とやっちゃってて、「天神」の最初のサビとか、ベースで弾くようなフレーズじゃないんですけど。

荒谷:(笑)。俺のデモがやりすぎとるけん、たぶん。ベーシストじゃないので、ベース入れるとけっこうメロディアスになっちゃうんです。それを慧に聴かせて、生かすべきところは生かしてくれて、変えるべきところは変えてくれるっていう。
田中:ドラムもすごいけん、たまにマジで「これ、イカれとうな」って思うこともあります(笑)。荒ちゃんとも、のもっちゃんとも「ここ、もうちょっとこうなりませんかね」みたいに話し合って。変なものは自分も好きなんで、奇妙さみたいなものも出したいんですけど、ある程度の聴きやすさは保っていたいんです。そのバランスを取ることが自分の役割なのかなって。
──各々、自分のパートをどうするかという悩みがあるんですね。
斉藤:あります!
荒谷:ギターない曲とかもあるもんな。
斉藤:聴いて「あー、これギター入れんでいい」って。
田中:こういうことすぐ言うんですよ(笑)。
荒谷:最初トライはするよな。その結果……。
斉藤:「いらん。ギター必要ない」つって。
荒谷:でも意外と悩むんですよ。
斉藤:自分じゃなくて曲優先で考える結果やと思う。
荒谷:ギターがシンセ的な立ち位置の曲もいっぱいあるし。変幻自在よね、ギター。
田中:うん。器用やと思うよ。
──ドラムはどうですか?
野元:荒ちゃんが考えてきたフレーズを参考にすることもあれば、みんなで話しながらベースとの兼ね合いを考えて作ったやつもあれば、自分が提案したのもあれば、みたいな。あとアドリブでやっちゃったのもありますね(笑)。
荒谷:「cart pool」の最後は、エンジニアの方が「生ドラムほしいね」って言い出して、その場でやったんです。
斉藤:ワンテイクめやもんね。
野元:何テイクか録ったけどね。
斉藤:自分を納得させるためのテイクをね。
──歌詞も面白いですが、メロディとどっちが先ですか?
荒谷:メロが先で、そこに詞を乗せるときもあれば、詞がもともとあってメロをつけるときもありますけど、ほぼ同時が多いかもしれないです。つじつま合わせじゃないけど、そのときどきで詞を変えたりコード感を変えたりしながら進めていく感じで。
──例えば「麗らか」は?
荒谷:これは先に詞があって、コードをつけてみて、その後に言葉並びを変えたりしながら、頭の中にあるイメージ通りに組み立てていくみたいな感じで作っていきました。
──ボブ・ディランなどのいにしえのフォークロックをアップデートしたような曲ですね。
斉藤:これ展開すごいですよね。
荒谷:途中からラップみたいになるしね。ハナレグミさんが好きなんで、ああいう語りっぽい曲が作れたらと思って作り出したんですけど、出来上がってみたらしっちゃかめっちゃかになりました(笑)。
──「good job」の“暇乞い”も印象的でした。今どき使わない言葉だし。
荒谷:その言葉を見たときに「わ、すてきな言葉やな、使いたい」と思ったんです。

──「蒲公英」の日本語と英語が入り混じった歌詞は得意技ですよね。
荒谷:自分けっこうひねくれてるんで(笑)、一見まじめそうな歌に聞こえるんですけど、よく聴くとクスッと笑えるようなところがほしいんですよ。
斉藤:たしかに。あらためて文字面で見るとけっこう面白いよな。
──うんうん。何度か聴いているとだんだんじわじわくるユーモアです。僕がいちばん好きなのは「ムタ」なんですが、何がいいって“名付ける”とか“名前を覚えて”とか“名前を忘れた”とか、どうしたいねん!って気持ちになってくるんですよね。その気まぐれな感じが猫っぽくて。
荒谷:アハハハハ。
野元:絵本とかにありそうですよね。
荒谷:最後も矛盾しとうけん。<名前は一生要らない/あたいはムタ>って(笑)。
──女言葉の曲と男言葉の曲が混在し、最後の「告白」に<女かしら 男かしら>という一節があるなど、話者のイメージが抽象的なのも気に入っています。
荒谷:そういう仕切りを取っ払いたくて、こういう表現が生まれたところはあります。
──僕はまんまと狙い通りの聴き方をしちゃったみたいですね。
荒谷:(笑)。めちゃめちゃうれしいです。ありがとうございます。
──“踊る”というより“揺れる”感じのゆったりしたテンポの曲が多いのはみんなの好みですか?
荒谷:そうですね。「トキメキ」はちょっとノリノリですけど……。
野元:ノリノリでも(BPM)81ですから。

荒谷:それがノリノリって感じるってことはそういうことかなと(笑)。だいぶ染みついちゃってるんですよね、そういうテンポ感が。
斉藤:最近ライブの練習を始めたんですけど、「うわ、おっそ!」って思いました(笑)。

【取材・文:高岡洋詞】

tag一覧 アルバム 男性ボーカル yonawo

リリース情報

明日は当然来ないでしょ

明日は当然来ないでしょ

2020年11月11日

WARNER MUSIC JAPAN / Atlantic Japan

01.独白
02.逢えない季節
03.トキメキ
04.rendez-vous
05.good job
06.cart pool
07.蒲公英
08.202
09.天神
10.ムタ
11.麗らか
12.close to me
13.生き別れ
14.告白

お知らせ

■CD購入&配信サイトリンク

https://yonawo.lnk.to/iknowyoudontcometomorrow



■コメント動画




■ライブ情報

yonawo 1st full album
「明日は当然来ないでしょ」
release one man live tour

2020/11/22(日) 名古屋 CLUB QUATTRO
2020/11/23(月・祝)大阪 BIGCAT
2020/11/28(土)札幌 BESSIE HALL
2020/12/20(日)福岡 BEAT STATION
2020/12/23(水)東京 TSUTAYA O-EAST
※全公演チケットソールドアウト


yonawo presents
「LOBSTER」【振替公演】

2021/03/31(水)東京 恵比寿LIQUIDROOM
ゲスト : 韻シスト

2021/04/02(金)大阪 梅田Shangri-La
ゲスト : 君島大空

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

トップに戻る