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冬空の森の中から届けられた2020年を締めくくるオンラインライブ「CNR LIVE STREAM at the Forest」徹底レポート!

Czecho No Republic | 2021.01.22

 青空の下という開放感あふれるライブを海から届けてくれた9月の配信ライブから3か月。今回、Czecho No Republic(以下チェコ)が僕らに見せてくれたのは、焚火のショットからの森の中でのライブ・パフォーマンスというちょっと浮世離れした幻想的なところもある景色だった。

 ライブハウスを飛び出して、ニューノーマルの時代にふさわしいライブの見せ方に挑戦するチェコの冒険心と言うか、遊び心に思わず胸が躍った筆者は、同時に北欧のインディ・ロック・バンドのMV、あるいはオレゴンの森の中で開催されるインディ系のフェスティバル、Pickathonの光景をちょっと連想したりも。

「こんばんは。Czecho No Republicです。楽しい時間にしましょう!」。

 武井優心(Vo, Ba)がカメラの向こうに声をかけ、防寒対策もばっちりの、でも、おしゃれな装いの4人が1曲目に演奏したのは、フォークロアな魅力もあるハートウォーミングなポップ・ソングの「旅に出る準備」だ。観ている人たちを冒険に誘うという意味で、これほどふさわしいオープニングはなかっただろう。砂川一黄(Gt, Cho)のギターの音色によるところが大きいリヴァービーなサウンドが幻想的な空気を作り出す。

 そこから「Festival」を繋げた4人の演奏はギターで鳴らした小気味いい裏打ちのカッティングとともにテンポアップ。《笑って輪になって僕ら踊ろうよ》という歌詞は、観ている人たちに対する「この時間を一緒に楽しもう!」というメッセージ。《青い空を見渡して》という歌詞に合わせ、森から見上げた青空のカットが挿入される。因みにライブ終演後のアフタートークでメンバーたちが語ったところによると、この「Festival」、直前まで降っていた雨が止んで、自分たちの出番では青空が広がったというRUSH BALL出演時のエピソードを歌ったものだという。

 砂川がギターを激しくかき鳴らしながら、演奏に熱を加えると、それに応えるようにタカハシマイ(Gt, Syn, Vo)が「Hoo!!」と歓声を上げる。

 そして、バンドはハッピーな空気を放ちながら上がってきた調子を繋げるように、タイトルにニヤリとせずにいられない「Don’t Cry,Forest Boy」を披露。砂川とタカハシが奏でる2本のギター・アンサンブルが印象的なネオアコ・ナンバー。武井とタカハシがハーモニーを重ねるツイン・ボーカルは、まさにチェコの真骨頂だ。

「一緒に歌ってください!」と武井が極々自然にシンガロングを求めたのは、配信ライブを何度も経験する中で自分たちの演奏や思いがちゃんと届いているという手応えを感じてきたからこそ。それを考えると、配信ライブは、彼らにとっては挑戦などではなく、もはやライブの1つのスタイルとして確立されているのかもしれない。

「今日は森でね。お届けします。今日という日がとても素晴らしく、美しくなることを祈って、森のパワーをお届けできたらと思います」。

 武井の短い挨拶を挟んでから、バンドが演奏したのは「Baby Baby Baby Baby」と「ファインデイ」――それぞれサーフ調、ニュー・ウェーブ調に味つけしながらキラキラと音を鳴らした2曲のネオアコ・ナンバー。前者で武井の歌にハイトーン・ボイスでハーモニーをつけたタカハシが後者ではリード・ボーカルを務め、武井がハーモニーを重ねる。砂川が「Baby Baby Baby Baby」で巧みにアーミングを使って奏でたギター・ソロを聴きながら、エネルギッシュにリズム・ギターをかき鳴らしていた以前の印象に加え、砂川がリード・ギタリストとしても存在をアピールする場面が4人編成になってからぐっと増えてきたことを改めて実感する。

 そして、跳ねるリズムを持つ懐かしい「Good Bye」から、それまで流れるように曲を繋げてきた印象が変わり始める。その「Good Bye」から一気に10年の時間を飛んで、今年6月にリリースした8th アルバム『DOOR』からメランコリックな「ごめんねリグレット」を披露。武井とタカハシが歌声を重ねる男女ツイン・ボーカルの魅力を存分に味わわせると、キーボードでホーンの音色を鳴らしたチェコ流のバロック・ポップ・ナンバー「For You」、スロウ・サイケな「国境」と、それぞれに印象が全然違う2曲を繋げる。砂川がE-BOWを使って奏でたエキゾチックなロングトーンに武井がグロッケンシュピールの音色を重ね、じわじわと始まった「国境」は、この日、それまで瞑想するかのごとく、目を閉じたままタイトなプレイに徹していた山崎正太郎(Dr)が突然覚醒したように叩き始めた躍動感に満ちたドラムに合わせ、ぐんぐんぐんテンポアップ。そして、最後は轟音を鳴らすシューゲイザー・ナンバーになるというドラマチックな展開とともにポップな印象が強いチェコが持つライブ・バンドとしての底力を見せつけ、前半のハイライトとなったのだった。

 そこで一息入れた4人は温かいコーヒーが入ったカラフルなマグカップを掲げ、「森に乾杯!」。結成10周年を記念して、12月9日にファン投票による全39曲を収録した『Czecho No Republic 2010-2020』をリリースしたことを改めて報告。これまでの10年間の活動を支えてくれたことに感謝の気持ちを述べると、「まだまだいい景色を一緒に作っていけると思って、山からハッピーの向こうへ、夢の国に変えたいと思います」と武井が後半戦にかける意気込みを語る。

「ちょっとばかしテンションを上げていきましょう」(武井)

「ちょっとじゃないでしょ?(笑)」(タカハシ)

「だいぶあげていきましょう。行こう!」(武井)

 その宣言どおり、後半戦は「ネバーランド」「MUSIC」というメンバー全員が声を上げるチェコのアンセムの2連打からスタート。「MUSIC」の終盤、ラスサビ前のシューゲイザー的な展開がぐっと演奏の熱を上げると、その勢いのまま、「もっともっと楽しんでいこう!」と武井が声を上げ、「No Way」になだれこむ。武井とタカハシがともに歌うニュー・ウェーブなロック・ナンバー。ダンサブルなサビが印象づけるのは、さっき武井が言っていた「ハッピーの向こうに広がる夢の国」! 砂川が帽子と眼鏡を飛ばして、エネルギッシュにギターをかき鳴らして、突入した最後のサビは全員がシンガロング。たぶん、家でライブを観ている観客も一緒に声を上げ、歌っていたに違いない。

 そして、2月27日から東名阪ツアーを開催することを発表した武井が続けて語った来年の抱負は以下の通り。

「来年、ツアーが決まっているので、今年の分を取り返せたらと思っています。とは言え、未来のことはまったくわからない。まったく白紙。その未来を自分たちの好きな色でペイントとして楽しんでいきたい。真っ白なままじゃ物足りないから、温かい色でペイントして、その中を歩いていけたらと思います」。

 この日、チェコがエンディングに選んだのは、どこかしんみりとしたメロディーを持つワルツ調のフォーク・ナンバー「アイボリー」とチェコ流のカントリー・ナンバー「STAR」の2曲。もしかしたら意外な選曲だったかもしれない。しかし、それぞれに独立した曲ながら、このシチュエーションで並べると、森を通り抜け、明るい未来を祝福しようというメッセージが浮かび上がる――そんな気がしたのは筆者だけだろうか。

 ともあれ、この日、彼らが演奏した全14曲は、前述したベスト・アルバムを念頭に森というシチュエーションを意識しながら選曲したものだという。そんなセットリストがニュー・ウェーブの波の中から生まれたネアオコというチェコが持つバックボーンとハイセンスなポップ・ソングの魅力を今一度アピールしながら、最後の最後に一番伝えたいのは、ポジティブなメッセージだったと思わせるところが、やはりチェコならでは。今さら言うまでもなく、実は熱い気持ちを持ったバンドなのである。

 終演後のアフタートークでは、彼ららしい笑いの要素も交えながら、これまでの10年間を振り返りつつ、10周年のタイミングで4人の絆がさらに強いものになったことが窺えた。そして、最後の最後に焚火を囲んで、砂川がアコースティック・ギター、山崎がカホンというアコースティック・セットでベスト・アルバムには収録されていない「エンドロール」を披露。そこにメンバーやスタッフのクレジットを含むいわゆるエンドロールが流れるという演出に思わず拍手。最後まで遊び心を忘れないところも実にチェコらしくてよかった。

【取材・文:山口智男】

tag一覧 J-POP ライブ Czecho No Republic

リリース情報

BEST ALBUM『Czecho No Republic 2010-2020』

BEST ALBUM『Czecho No Republic 2010-2020』

2020年12月09日

日本コロムビア

[DISC1]
01.好奇心
02.MUSIC
03.Festival
04.No Way
05.Amazing Parade
06.ファインデイ
07.Firework
08.Melody
09.For You
10.ショートバケーション
11.Baby Baby Baby Baby
12.ダイナソー
13.幽霊船
14.ネバーランド
15.レインボー
16.Electric Girl
17.1人のワルツ
18.MIKA
19.Heart Beat
20.Oh Yeah!!!!!!!

[DISC2]
01.Everything
02.Forever Summer
03.Crazy Crazy Love
04.Field Poppy
05.タイムトラベリング
06.テレパシー
07.エンドルフィン
08.愛を
09.LALALA
10.Hi Ho
11.アイボリー
12.Call Her
13.旅に出る準備
14.Sunshine
15.Dream Beach Sunset
16.DANCE
17.Summer Love
18.Hello, My Friend Sophie
19.Beautiful Days

セットリスト

CNR LIVE STREAM at the Forest
2020.12.20@HIBIKI NO MORI

  1. 01.旅に出る準備
  2. 02.Festival
  3. 03. Don’t Cry, Forest Boy
  4. 04.Baby Baby Baby Baby
  5. 05.ファインディ
  6. 06.Good Bye
  7. 07.ごめんねリグレット
  8. 08.For You
  9. 09.国境
  10. 10.ネバーランド
  11. 11.MUSIC
  12. 12.No Way
  13. 13.アイボリー
  14. 14.STAR

お知らせ

■ライブ情報

BEST 2010-2020 TOUR
2021/02/27(土)愛知 ell.FITS ALL
2021/03/06(土)大阪 Music Club JANUS
2021/03/16(火)東京 TSUTAYA O-EAST

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