これぞAliA新章の決意表明――新曲満載の世界同時配信ライブ「AliAliVe2020~Refrain Mayday~」独占レポート!
AliA | 2021.01.12
音楽とは想いだ。AliAから放たれる音、リズム、メロディ、声、言葉??それらの集大成に触れれば触れるほどそう感じずにはいられない。生身の彼らを前にすればなおのこと確信は強まる。たとえ画面越しだったとしても。12月26日、ついに敢行されたAliA初の配信ライブ「AliAliVe 2020~Refrain Mayday~」。新型コロナウイルス感染症の出現によってそれまでの当たり前が当たり前でなくなってしまった2020年、生活様式は変容を迫られ、人と人とが集うことも、声を出して笑い合い、一緒に歌ったり声を上げることさえ憚られてしまう世の中になるなど、誰が予測しただろう。音楽をはじめとするエンターテインメントやアートは不要不急とされ、数多くのライブやコンサート、フェスが自粛を求められた。それは緊急事態宣言が解かれたのち現在に至るまでなお通奏低音のごとく、不穏な痛みを残し続けている。たくさんのアーティスト、バンドが表現の在り方を模索し続けるなか、にわかに盛り上がりを見せ始めたのが配信ライブであり、今やパフォーマンスを発表する場として主要な選択肢のひとつになりつつあるのはご存知のとおりだ。しかしながらAliAはそうしたムーブメントにも慎重だった。SNSを通じた発信は積極的に行いつつも、こと音楽活動に関しては沈黙を貫き続けた(少なくとも表立った部分についてはそう見えた)。その真意は当サイトの独占インタビューにて詳らかに語ってもらったが、つまりは6人が6人、音楽というものに対して途轍もなく真摯だからこそ。AliAが本当にすべきことは何か、AliAに何ができるのか、AliAで伝えたいこと、届けたいものは何なのか。幾度もディスカッションを交わし、熟考に熟考を重ねて出した答えが12月16日に先立って配信リリースされた「リフレインメーデー」であり、今回の配信ライブ「AliAliVe 2020~Refrain Mayday~」なのだ。
オープニング映像を経て、映し出される場内。暗転から徐々に全貌が明らかになっていくさまに早くも興奮のメーターが上がる。なにせ「どうせ配信ライブをするならすごいことしようぜってことで、セットにもかなり力を入れてる」「この配信ライブでしか観られないもの」「生のライブ以上にすごい」と前述したインタビューの中ですでにたっぷりと期待を煽られているわけで、その言葉に嘘がないことが早くも予感できるからだ。天井には照明を取り付けた巨大な3重の円形状トラスが設えられ、それ以外にもたくさんのライトがあちこちに配されている。マイクや機材の配置を見るに、6人が輪になった向かい合っての演奏になるらしい。その周りをぐるりと取り囲むように大きな鏡が何枚も間隔を空けて並び、幻想的な風景を生み出す一助となっている。そこへゆっくりと現われたメンバー。ああ、AliAだ! たちまちにして胸いっぱいに熱いものが広がる。本当に待ち侘びた。そうして彼らがそれぞれの位置につくや、頭上のいちばん外側のトラスが静かに降りてきて、6人をすっぽりとその円のなかに捕えてしまった。これは何かのメタファーだろうか。“拘束”? それとも“結束”か。しかし、そんな勝手な憶測は直後にほとばしった「eye」に一蹴された。先陣を切るAYAMEのエモーショナルな歌声、それを後押しする分厚く鋭いアンサンブルが画面など易々と突き破って観ているこちらに押し寄せてくるのだから、たまらない。思えばこの曲、3月にリリースされて以来、ライブで演奏されるのは今回が初ではなかろうか。9ヵ月間、押し込めてきたものが一気に溢れ出たかのごとき凄まじい迫力、特に目をみはったのはブレイクダウンの演出だ。“ピー”という信号音とともに映像にノイズが入り、演奏がピタリと止む。まるで時を止めたようにメンバーの動きも固まり、微かなオルゴールの音色だけが空虚に流れる刹那の異色。音源でも驚かされた箇所なのだが、ライブとして目にすればそのインパクトはいっそうデカい。「ライブ中に自分たちが音楽をやらない時間、何もしてない時間っていうものがほしかった。『音楽をやらない』っていう、普段とは真逆のことをやってみて、ちょっとずつ自分たち自身が持っている価値観を壊していきたかった」とはこの曲についてインタビューした際のERENの弁だが、“何もしてない”ことがこんなにも観る者の胸をざわつかせるとは。時間にして20秒超の静寂、それが解かれた瞬間の爆発力がまたなんと甚大なことか。
「お待たせしました、ハイブリッドロックバンド・AliAと申します! 今日は今まで溜め込んだ想い、全部ぶつけていきたいと思います!」。
AYAMEはそう宣言すると、全世界で同時にこの配信ライブを観ているオーディエンスにも「また歌えて幸せ、楽しみましょう!」と英語で呼びかけ、演奏は2曲目「ノスタルジア」へとなだれ込む。自然とハンドクラップしたくなるような明るい疾駆感に満ちたAメロから力強さをたたえたBメロ、マイナーに転調して切実さを増幅させるサビ、とAliAらしい起伏ある展開が、聴き手の心の起伏にも呼応するかのようだ。「eye」でメンバーを囲い込んでいたトラスは頭上に戻り、そのためか6人のプレイがいっそう伸びやかに感じられるから面白い。一転、ジャジーでアダルトなムードを芬々と醸した「ケセラセラ」はこれまでのAliAにはなかった世界観を窺わせて実に新鮮。どこか斜に構えたような猥雑さが、それでもなおまっすぐに画面の向こうに斬り込んでいくAYAMEのボーカルに不思議とマッチして、聴き進むほどに心地よく体が揺れる。沈黙を守っていた期間、自分たちの本当にやりたいことを追求し、ひたすら曲作りに勤しんでいたというAliA。その成長、進化がこの2曲からも如実に伝わってくるようだ。
AYAME、EREN、TKTの3人編成で届けた「promise」、英語詞でやさしく朗々と歌い上げられるこのバラードに世界中が涙腺を緩めたことだろう。ERENがつまびく温かなアコースティックギター、TKTが弾く柔らかなタッチの鍵盤、それぞれの音色が歌に寄り添ってどこまでも飛んでいく。彼らの音楽が国境を越えて響き渡るのは、一音一音に宿った言葉にならない部分にも想いが乗っているからなのだとつくづく知らされる気がした。再びバンドセットに戻っての「翼が生えたなら」はシンプルな音像がかえってAliAというバンドのキャパシティの果てしなさを物語るような、素直に“いい曲”と呼びたい1曲だ。丁寧に、繊細に、誠実に紡がれる音と歌。派手さはないが、いつまでも心に残って鳴り続けるような滋味がある。だが、余韻に浸っていたのも束の間、ライブは俄然、アグレッシブなモードへと舵を切った。のっぴきならない雰囲気をはらんだインストセッションを挟んで、突入した「steroid」が叩きつける激情。<沈みゆく船の中で終わりを見つめている>という淡々とした歌い出しから<ねえ本当の僕を見て 目に映るモノが一つとは限らないよ><今はもう一度 外の景色を夢見て進むから>とドラマティックに展開した「equal」。海の底を思わせる深いブルーに沈んだ空間が、足元から噴き上がる無数の光と、頭上できらめくミラーボールの光で白く染め上げられていく光景もこの上なく美しく、しかしながら不協和音のカオスで幕を閉じるのだから、やはりこのバンドはただならない。
「Let’s sing together! みんな、一緒に歌おう!」。
混沌のなかから立ち上がるようにTKTが繋いだ旋律が、希望に満ちた大きなうねりとなったとき、AYAMEがそう声を上げた。ほぼ新曲で構成された“AliAlive 2020 -Refrain Mayday-”において唯一の既発曲「かくれんぼ」だ。デビューミニアルバム『AliVe』のリード曲であり、AliAというバンドそのものを描き出したような彼らにとってもファンにとってもかけがえないこの曲が文字通り“いっせーの”で一気にはじけた。パワフルに躍動する空気、いきいきとした振動が画面を越えて届く。“手を取り 始めよう/僕たちの物語”、6人が声を重ねて歌うその一語一句に帯びるリアルな響きもとてもうれしく、配信ではあっても彼らと一緒になって歌える喜びを何度も何度も噛み締めた。
ラスト1曲を残してのMCコーナーではそれまでと立ち位置を変えて6人が横一列に並び、BOBとAYAMEが中心となってオーディエンスに感謝を伝える。彼らの背後には頭上にあったトラスが日輪のごとく燦然と佇み、その巨大さを知らしめるかのよう。「このセット、すごくないですか? 『クイズタイムショック』みたい。照明がトルネードスピンしてる」というBOBのたとえにも思わず頷いてしまった。さらにBOBとRINAは中国語でも挨拶。ふたりの流暢な発音に「そんなにしゃべれたの!?」「イントネーション、すごくない?」とEREN、SEIYAが目を丸くする。ふたりによれば1年半ほど前から勉強しているのだという。国内のみならず海外での活動も視野に入れ、ここまで突き進んできたAliAだが、そうしたグローバルな姿勢はこれから先、ますます求められていくのだろう。ところで12月26日はAYAMEの誕生日でもあり、MC中にはメンバーからバースデーケーキが贈られるというサプライズも。BOBから差し出されたケーキをそのままパクリとひとかじり、「いや、フー!でしょ」「ろうそくを消しなさいよ」とつっこまれるも「“食べて”ってことなのかと思った」と悪びれないAYAMEがなんともキュート。メンバー同士の仲の良さも垣間見られる、ファンにはたまらない一幕となったはずだ。
「こんなことが起こるとは誰もが思ってなかったと思います。私もまさかみんなの前で歌えなくなる日が来るなんて思ってもなかったから」。
改めてそう語り始めたAYAME。コロナ禍で何もかもがままならない現状、いろんな想いを抱えて、たぶん今も苦しんでいる人たちがいるんじゃないかな、私たちに何ができるのかなと考えさせられたこと、自粛期間中、音楽もできず家からも出られないという状況に「なんで生きてるんだろう?」とふと思ってしまったとも明かす。「でも思い出すのは、みんなと笑い合った、歌って叫んで楽しんだ、あの光景ばっかりで。ああ、歌いたいな、歌えたことって当たり前じゃなかったんだなって心から思いました」と言葉を続け、「生きてるってほんとにすごいことだと思います。今、精一杯生きてるだけで素晴らしいことだと私は思います。きっと、このコロナだけじゃない。10年後、20年後、また同じことが起きるかもしれないし、またしんどいことがあるかもしれない。そのときに私たちができることは、そんなときでも何度でも何度でも立ち上がってあなたのために歌うこと。それが私の役目なんだな、私の人生なんだな、生きてるってそういうことなんだなって今、ここで配信ライブをして強く思いました」とリアルタイムな想いを口にした。
「ひとりで溜め込まなくていいんだよ。そのために私たちは歌うから。叫んでいい。つらいときは叫んでほしい。みんなと一緒に歌える日を夢見て、これからも進んでいきたい。一緒にいきましょう」。
そうして奏でられたラストソング「リフレインメーデー」が、世界中の悩める魂を全力で包み込む。私たちはいつだってあなたの側にいるからと全身全霊で訴えかけてくる。この音楽が想いでないなら、なんだろうか。壮大なスケール感を携えながら、一人ひとりの叫びにしっかりと対峙して、掴んだ手は離さない。6人の鬼気迫る覚悟と決意が凛としてここに鳴る。
「eye」に始まり「リフレインメーデー」で終わった「AliAliVe 2020~Refrain Mayday~」はまさにAliAの2020年を体現したものだったと言ってもいいのかもしれない。葛藤や逡巡を乗り越えて、自分自身にも相手にも嘘をつくことなく、想いを見つめ、音楽を求め続けたおよそ10ヵ月にも及ぶ日々。困難に彩られた1年の最後にこのライブを観られてよかったと心から思う。2021年4月から5月にかけて日本国内9都市にてツアーを開催するといううれしいニュースもこの配信ライブ中に発表された。ここから始まるAliAのネクストステージをあなたと一緒に見届けたい。
【取材・文:本間夕子】
【撮影:青木カズロー】
リリース情報
リフレインメーデー
2020年12月16日
SLIDE SUNSET
セットリスト
AliAliVe2020~Refrain Mayday~
2020.12.26
- ~OP SE~
- 01.eye
- 02.ノスタルジア
- 03.ケセラセラ
- 04.promise
- 05.翼が生えたなら
- 06.steroid
- 07.equal
- 08.かくれんぼ
- 09.リフレインメーデー
お知らせ
AliAliVe 2021(仮)
2021/04/03(土)香川 高松DIME
2021/04/04(日)広島 SECOND CRUTCH
2021/04/09(金)大阪 BIGCAT
2021/04/11(日)福岡 DRUM Be-1
2021/04/17(土)宮城 仙台MACANA
2021/04/18(日)新潟 GOLDEN PIGS BLACK STAGE
2021/04/25(日)愛知 THE BOTTOM LINE NAGOYA
2021/04/30(金)北海道 PENNY LANE 24
2021/05/05(水・祝)東京 EX THEATER ROPPONGI
※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。