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夜韻-Yoin-「僕たちの音楽で何かができたら幸せです」――アコースティックで寄り添ったオンラインライブ

夜韻-Yoin- | 2021.01.28

 シンガーソングライターのあれくん、ギタリストの涼真、ピアニストの岩村美咲による3人組ユニット“夜韻-Yoin-”が1月22日にオンラインライブ「夜韻-Yoin- 2nd LIVE~trinity~」を開催した。

 12月14日に行われた1度目のオンラインライブは、ドラムとベースを迎えたバンドスタイルとなっていたが、1ヵ月ぶり2度目となる今回は、“trinity”=三位一体というタイトル通り、メンバー3人のみのアコースティック編成。しかも、3人が向き合った状態で演奏しており、まるでホームセッションに招いてもらったかのような親密で温かいムードが漂っていた。

 初のアコースティックライブは、前回のエンディングを飾っていた「花の片隅で」から始まった。音源ではあれくんのボーカルとアコースティックギターから始まり、1コーラス歌った後にバンドが盛大に入ってくる壮大なロックバラードとなっていたが、この日はあれくんの癒しの歌声にはっきりと焦点が絞られており、Dメロでは歌とピアノのみに展開し、転調やグルーヴもボーカルが引っ張っていた。歌、アコギ、ピアノというシンプルな構成だが、これが夜韻-Yoin-の本質なのだろう。

 最初のMCでは、あれくんが「前回はフルバンドでやらせてもらって。迫力もあったけど、今回が本来の僕らっていうのが一番近いのかな。完全に生で優しいサウンドでお届けしてます」とコメントした。続けて、「疾走感あるけど、アコースティックアレンジにしたら、より夏っぽくなった」という「逆光」へ。「花の片隅で」「逆行」という2曲は、2020年の11月にそれぞれ2曲目、3曲目の配信シングルとしてリリースされており、1stミニアルバムでもこの順番で収録されていた。花瓶のすぐそばで詩を書いていた“君”が花のように散っていた様と、置き去りにされた“僕”のやるせない心情が描かれており、あれくんは、マイクとスタンドを両手で握り、足でリズムをとりながら、うなりのようなコブシや青い空に抜けていくようなファルセットを効かせながら、“僕”の感情の揺れ動きを丁寧に表現していく。やがて、カメラはグッと引いて全景を映して暗転。あれくんによる<どうしてこうなってしまったんだろう>という嘆きが、“君”と“僕”のさらなる過去の情景を呼び起こす。つぶやくようなAメロから次第にスケール感を広げていくフォークバラッド「青」(あれくんのオリジナル曲)では、2回目のサビから美咲がコーラスでも参加。それはまるで、すでにこの世にいない“君”とまだ現実で絶望と喪失感を抱えている“僕”のデュエットのようで、涙を誘われた。音楽的にも、もっとこの2人のハーモニーを聴きたいと思わせてくれる新たな発見があった。

 3月に配信予定の未発表の新曲「溶けて、解けて(とけて、ほどけて)」も、追憶や回想だろうか。ここでは呼びかける相手が“あなた”になっているので、“君”側の視点かもしれない。あれくんは「前回のライブでやったバンドのアレンジでは走り抜けていく情景が映し出されると思うんですけど、アコースティックでやると歌ってる気持ちや背景が全て漏れることなく心に染みるのかな」と語っていたが、筆者の脳裏にはバッドエンドに向かって、過去になっていく2人が浮かんでいた。早く歌詞をじっくり読み込みたいのでリリースが待ち遠しい限りだ。

 中盤のMCでは、涼真が夜韻-Yoin-としての活動を始めてからの半年間を振り返り、「コロナの打撃を倍、感じた」と語った。

 「夜韻-Yoin-でできなくなったこともあるし、僕がやっているMAKE OWN LIFEでも、やりたかったけどできなかったことがあって。すごい悲しいなというか、コロナがなかったらできたのにっていう失った感があって。遡ってしまえば、あれくんのワンマンから中止になって。喪失感がめちゃめちゃあったんですけど、その分、自分と向き合える時間があって。忙しない日常だと感じられなかった自分の良さや足りないところと向き合えて。それを2020年は夜韻-Yoin-に還元できたし、いろんな経験をさせてもらったなって思って。今年、1発目のライブですけど、アコースティックライブは初めてで。これも、コロナだからこそ思いついた発想だと思うんですよ。オンラインで無観客じゃないと、こうして3人で向き合ってできることもないじゃないですか。今は失ったものよりも得たものを自分の中にとどめて前に進んでいくしかないのかなって思いました」

 涼真が寂しそうな表情で本音を吐露すると、美咲が「その得たものが去年のミニアルバムという形になったと思うし、これからもコロナ禍で感じたことを音にして届けるのが私たちの仕事だから。誰かが救われたらいいなと思ってます」と同意し、あれくんも「僕たちの音楽で何かができたら幸せです」と続けた。それぞれの音楽に対する真摯な姿勢を感じるともに、3人が励まし合いながら同じ方向を向いて進んでいっていることが伝わってくるひとコマだった。

 夜、月、夏という、夜韻の1stミニアルバムと共通するようなワードが散りばめられたヨルシカ「ただ君に晴れ」のカバー、この3人では初となる、あれくんのヒット曲「好きにさせた癖に」のアコースティックバージョンを経たMCでも、涼真はライブハウスで観客を入れたライブができないことへのもどかしさを語っていた。再び緊急事態宣言が発令されたことも影響していたのだろう。しかし、顔を上げて、「夜韻-Yoin-は必ずしもハッピーエンドには終わらないユニットだと思ってて。でも、だからこそ、そういう負の感情みたいなところにも寄り添っていきたいし、みんなで乗り越えていきたい」と決意を示すと、あれくんは「みんなで呼吸を合わせてやっていくしかないよね」と呼びかけ、「ほんとに今を大切にしよう。今は今しかないし、今しかできないこともあると思う。今日は音楽に対しての前向きな姿勢をお届けすることができて幸せです」と語り、3人で「これからもどうぞよろしくお願いします」と声を合わせた。

 ライブの終盤では、あれくんが伴奏なしで「君泳ぐ」を朗読し、美咲が「走馬灯」をピアノで独奏。ミニアルバムの1曲目、2曲目を生音だけで再現すると、歌とピアノ伴奏に、涼真のアコースティックギターがビートを刻む「Seafloor」で、歌詞の通り、“僕”は“君”と同じ道を辿るように、深い深い海の底へと落ちていった。最後の曲はミニアルバムのラストナンバーでリード曲「青く冷たく」。あれくんは歌う前に、「どうか夜韻-Yoin-の曲が皆さんの救いとなり、寄り添えるような音楽でありますように」と祈るように伝えた。歌詞は決してハッピーエンドではない。海も空気も、体も心も、恋も感情も全てが青く冷たくなっていく曲ではあるが、あれくんの歌声や涼真のアコギ、美咲のピアノとコーラスのひとつひとつには、人肌の温かさを感じた。MCも含めて、彼ら3人の人間味がひしひしとリアルに伝わってくるライブであった。

【取材・文:永堀アツオ】

tag一覧 J-POP 配信ライブ 男性ボーカル 夜韻-Yoin-

リリース情報

青く冷たく

青く冷たく

2020年12月23日

ユニバーサルミュージック

※全曲ノンストップMIX
01. 君泳ぐ
02. 走馬灯
03. Seafloor
04. 花の片隅で
05. 逆行
06. 青く冷たく
07. ボーナストラック

セットリスト

2nd LIVE~trinity~
2021.01.22

  1. 01.花の片隅で
  2. 02.逆行
  3. 03.青
  4. 04.溶けて、解けて
  5. 05.ただ君に晴れ(cover)
  6. 06.好きにさせた癖に
  7. 07.Seafloor
  8. 08.青く冷たく

お知らせ

■ライブ情報

日本工学院ミュージックカレッジ presents
LUMiNOUS meets SPACE SHOWER TV
ココロザシ

02/03(水)東京 Zepp Haneda

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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