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インディーズラストとなる全国ツアーが開幕! 未来に向かって変化を続けるHakubiの現在地に迫る!

Hakubi | 2021.03.08

 京都発の3ピースバンド・Hakubiの全国ツアー「極・粉塵爆発ツアー」の初日が、2/9に東京・TSUTAYA O-EASTにて行われた。今回のツアーは、最終公演となる3/9のKYOTO MUSE公演まで全国15ヵ所を回るツアーとなっており、初日以外は対バン形式の予定だったが、緊急事態宣言が発出されたことを受け、全公演がワンマンライブに切り替えられた。Hakubiにとっては久々の全国ツアーのスタートかつ、東京での初めてのワンマンライブであったこの日は、バンドが当初思い描いていたものとは異なる環境や心境の中で行われたはずだ。けれども、「Hakubiが音楽を鳴らし続ける理由」を常に自問し、そこで生まれる葛藤をありのままをさらけ出すようなライブからは、ひたすらに「ここで生きたい」という強いエネルギーが放出されていた。当記事では、ネタバレは極力控えて、主にライブから感じたHakubiの現在のモードについて書いていく。

 Hakubiにとって今回のツアーは、インディーズ時代のラストツアーという意味合いが大きい。この日歌われた「ハジマリ」の中に<果てしなく長い道を/僕たちは光を目指して進む>というフレーズがあるが、メジャーデビューを目前に控えた今の彼女たちの心境にリンクしているように思う。以前、メンバーに行ったインタビューの中で、片桐(Vo/Gt)は「メジャーデビューで階段を一段上がったというよりは、責任感という重みが増した感覚」だと話していた。バンドにとっての転換期ともいえる絶好のタイミングでコロナ禍に突入し、マイナスと捉えられる出来事が折り重なってしまったことも事実だが、この日の「2021年、久しぶりのツアー! 始まりの年! ここでやるしかない!」という気合の入った片桐の言葉からは、不安や恐れよりも、未来を見据えた確固たる意志と覚悟を感じた。そして、そういった意識の強まりは、この日の3人の演奏からも見て取れた。ヤスカワアル(Ba)の冷静沈着な佇まいとプレイは、Hakubiの音楽性に凛とした空気を纏わせていた。マツイユウキ(Dr)のドラミングは、聴き手の背中をドンっと押して励ましてくれるような力強さを持ちつつ、時に自分自身を鼓舞するかのように、エネルギッシュに躍動していく。そして、片桐の正直な歌は、いつだって聴き手の心めがけて真っ直ぐに響く。緊張で声が震えたり、集中するために大きく深呼吸したりすることもあれば、聴き手を思いやって涙声になることもある。彼女は、「死にたい」という気持ちも「生きたい」という気持ちも臆し隠すことをせず、その時々のありのままの感情を歌声に出す。今のHakubiは、そうした三者三様のプレイスタイルが確立しつつあり、相乗効果を持って、冷静と躍動の二面性を持つメロディに乗る真っ直ぐな言葉が、どんどんと飛距離を伸ばしてきているように思えた。

 そうした変化は、迷いや憂いだけでなく、その先にある希望を歌うようになった楽曲のほうにも表れていて、この日披露された「アカツキ」や、最新曲「在る日々」はまさにそうだ。「在る日々」をプレイする前に、片桐は「自分が『もう死んでしまいたい』と思ったときに作った曲を再編しました。ひとりぼっちの部屋で、『私はいてもいなくても変わらないんじゃないか? 私がいなくなっても、誰も悲しまないんじゃないか?』と思っていました。でも私は、いろんな人に支えられて生きているし、本当は生きていたいんだと思った。そのときは自分に向けて書いていたつもりだったけど、目の前にいる皆さんに届いたときにどう思われるかを考えていました」と楽曲が生まれた背景を語り、「生きるのがつらいとか、学校に行くのがしんどいと少しでも思ったときに、寄り添ってあげられる曲であればいいなと思います。そこに生きていてくれるだけでいいです。生きて、ここに来てくれてありがとう。一緒に生きていきましょう」と、じっくりと語った。

 残酷な事実ではあるけれど、人は、自分にとってどれだけ大事な人であろうとも、相手が抱える痛みや苦しみを100%理解することはできないだろう。だから、いつ、どんな出来事がきっかけで人の命の灯が絶えてしまうかもわからないし、もしそうなったとしても「そんな些細なことで」なんて絶対に言えない。けれどもし、その崖っぷちの状態にいる人がふと立ち返ることができるのだとすれば、そのきっかけはやっぱり「誰か」の存在なのではないかと思う。「在る日々」の中でも<もしも僕がいなくなったら/悲しむあなたが目に浮かんで/こんな僕でも愛されていたことに気づいた>と歌われているが、希望の多くは人に宿るのだと思う。「Hakubiにとっての希望=自分たちの音楽」であることに変わりはないが、それと同じくらいに、音楽を届けたいと思えるリスナーの存在が日に日に大きなものになっているのだろう。

 この日、片桐は「早く死にたいと思ってた! 音楽さえなければ、こんなに生きたいと思うことはなかった! もっと生きたいと思ってしまった! できることなら、Hakubiの音楽を愛してくれる人たちの“救世主”になりたいと思った! “神様”になりたいと思った! “心の拠り所”になりたいと思った! ずっとずっと、味方でいる!」と声を張り上げて伝えた上で、渾身の「mirror」を歌い鳴らしていた。自身の殻に閉じこもり、心の内側に張り付く混沌とした感情を“歌”として掻き出していた彼女は今、「誰かのために生きたい」と堂々と言えるまでになった。その変化を「成長」と呼んでしまうと語弊があるかもしれないが、この変化はHakubiにとって必要な一歩なのだと思えたし、そう確信できるほど、彼女たちはしっかりと地に足を付け、前を真っ直ぐに見据えてステージに立っていた。生きていれば迷いやつらさからは逃れられないということを理解し、それに飲み込まれないようにと必死に抗いながら音楽を届けることで、自分の背負っているものを懸命に守ろうとしている。その姿がとても眩しく、美しく、ライブ中に何度も息を飲んだ。

 ライブの終盤に、「今日から全国を回って、Hakubiの音楽を届けにいってきます」という片桐の挨拶に、会場からは彼女たちを優しく見送るような温かい拍手が沸き起こった。深くて暗い夜を知っている人ほど、眩しく輝く朝の美しさを語ることができるはずで、そういう歌を歌っているHakubiを宿り木にする人は、今回のツアーをきっかけに、これからますます増えていくのだろう。たとえ自分が生まれた意味はわからなくても、わかろうとすることを諦めずにもがく人間は人を惹きつけるし、多くの人の救いになっていくはずだ。Hakubiもそういう存在になっていくのだろうという、大きな期待を抱かせるライブだった。

【取材・文:峯岸利恵】
【撮影:翼、(@na283be)】

tag一覧 J-POP ライブ 女性ボーカル Hakubi

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お知らせ

■ライブ情報

極・粉塵爆発ツアー
02/09(火)東京 渋谷TSUTAYA O-EAST ※ワンマン
02/11(木)新潟 GOLDEN PIGS RED STAGE
02/13(土)石川 金沢vanvanV4
02/15(月)岡山 CRAZYMAMA 2nd Room
02/17(水)大阪 OSAKA MUSE
02/19(金)愛知 名古屋APOLLO BASE
02/20(土)静岡 東静岡UMBER
02/24(水)宮城 仙台enn 2nd
02/26(金)千葉 LOOK
02/27(土)岐阜 柳ヶ瀬ants
03/02(火)兵庫 神戸太陽と虎
03/04(木)山口 周南rise
03/05(金)福岡 Queblick
03/07(日)大分 SPOT
03/09(火)京都 KYOTO MUSE

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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