“夜”を歌ってきたHakubiが“夜明け”を歌うまで――その軌跡に迫る。

ゆびィンタビュー | 2021.01.12

 3ピースバンド・Hakubiの新曲「アカツキ」が11月16日、2021年リリース予定のメジャーデビューアルバムより先行配信となった。同曲は、TVドラマ『浜の朝日の嘘つきどもと』の主題歌として書き下ろされた楽曲ということで、今まで「自身の内面」で湧き起こる葛藤や気付きをひたむきに歌ってきたバンドは、どういった心境で今回の制作に挑んだのか? さらに、夜から朝へと向かう情景描写から感じるバンドの変化についてなど、メンバー全員に訊いてみた。

PROFILE

KALMA dummy

Hakubi


 2017年結成、京都発スリーピースバンド「Hakubi」。
「夜中、あなたに寄り添う音楽」をコンセプトに地元京都を中心に全国で活動中。
 Vo/Gt.片桐が紡ぎ出すストレートな言葉とその弱さを押し殺すように聞こえてくる力強い歌声が早耳のリスナーから支持を受け、MV「夢の続き」はYouTubeにて297万回再生を突破。1st、2nd、2枚のe.pはライブ会場限定にも関わらずそれぞれ3,500枚を販売し、2019年4月、3rd e.p『光芒』を初の全国流通でリリース。内容、セールスともに大きな話題を呼んだ。
 2018年初のリリースツアーは21箇所、2019年2度目のリリースツアーは全30箇所、音源とは違う泥臭いライブバンドの側面も魅力の一つで、ツアー主要都市は軒並みSOLDOUT。また【TOKYO CALLING 2018】や【JAPAN’S NEXT 2018】【見放題東京2019】等のサーキットイベントでは入場規制が続出、【百万石音楽祭2019~ミリオンロックフェスティバル~】や【FREEDOM NAGOYA 2019】等のフェスにもオファーを受け、4th e.p『追憶』を11/6にリリース。
 日本テレビ「バスリズム02」『これがバズるぞBEST10 2020』にて13位!
 2020年4月よりFM京都α-STATIONでのレギュラー番組も決定! 9/9には5th e.p『結』をリリースし、各サブスクリプションでも楽曲配信中!



  • 時代が大きく変遷していくなかで、Hakubiは配信ライブ「Noise From Here」、そして10月22日には、京都MUSEで初のワンマンライブを行っていました。これらを経験することで、感じたことはありましたか?
  • 片桐(Vo/Gt)

    コロナ禍に入って、2月以降ずっとライブをできていない状況で、自分が求めていた居場所っていうのは、誰かの前でライブをすることなんだなと改めて感じました。自分が曲を書いている意味を考えることができたというか。ただただ自分の鬱憤を晴らすために曲を作っていたんですけど、それが誰かに伝わらないと意味がなかったんだなと思いました。
  • マツイユウキ(Dr)

    配信か有観客かどうかは関係なく、ライブはフルテンションでやっているんですけど、やっぱり見えている景色が全然違いますし、人前でやるからこそ、「Hakubiのドラムをやっているのは自分なんだ」という喜びを、ワンマンライブでは強く感じました。スタジオで鳴らすときよりも絶対に活き活きした音が鳴っていたと思いますし、Hakubiのドラムで良かったなと改めて思いましたね。
  • ヤスカワアル(Ba)

    率直に、ライブができる日常が特別だったんだなと思えましたし、改めて大事にするべきものだなと感じました。音楽業界の話で言うと、コロナの発生関係なく、これからは配信といったバーチャルの世界でのライブって主流になっていくと思っています。だから、今回の出来事はその先駆け的な挑戦というか、リスナーの方にとっても、音楽の新しい楽しみ方や聴き方について考える機会になったんじゃないかなと。配信って、多角的に観られるから個々のメンバーのプレイがよく見えるし、キャパシティーの制限もないですし。だから、生か配信かどちらがいいというよりは、どっちもいいっていう考えです。
  • Hakubiとしては、メジャーデビュー前のタイミングで、そうした配信ライブ/生ライブの双方のメリットに気付けたというのは、経験値としても大きいものですね。
  • ヤスカワ

    そうですね。災難ではありますけど、今のタイミングで、未来に向けた音楽体験ができたということはプラスに考えられています。
  • Hakubiは2017年に活動をスタートさせたバンドということで、これまでの3年間を振り返るとどうですか? 変わらないことや、変わったことなどの実感はありますか?
  • ヤスカワ

    停滞する時期っていうのがあんまりなくて、体感的にはとんとん拍子というか、早く過ぎていきましたね。年齢的にも若いうちにメジャーデビューができたというのは、将来的にも大きな意味を持つと思っています。
  • マツイ

    関わっている人が増えるにつれて、自分の意識や行動も変わってきましたね。私生活もそうですし、ドラムとしてやっていることも曲の展開の仕方も、1枚目のepのときと比べたら格段に変わってきていると思います。対バンしたバンドの影響を受けたり、新しい音楽を聴いて取り入れてみたりして、バンドを始めた大学3回生のマツイからはかなり成長してきていると思います。
  • 片桐さんは歌詞を書いている立場として、昔を振り返って感じる成長や変化はあります? 例えば、「僕」という一人称が「僕たち」へと変化してきたことは、目に見える変化ではありますが。
  • 片桐

    人称の変化っていうのは、自分では気付いていなかったんですよ。それも人に言われて気付きましたし、自分自身ではあんまり変われていないなと思っています。もともと自己分析っていうのがとても嫌いで、感覚的に「嫌だ!」って思ったことがあったとしたら、それを自分の中で煮詰めずに歌詞のほうにぶん投げちゃうんですよ。でも、変化はたしかにあるんですよね……難しいな……。
  • マツイ

    昔からええこと言いはる人だし、そこは変わっていないと思いますね。「夢の続き」やったら、サビのところの<いつも本気で思ってた/あなたのことも夢の続きも/いつかわかると思ってた/涙の訳も生きることの意味も>って、「こんなん20歳で書けんねや!」と思いましたね。
  • 片桐

    ははははは!
  • マツイ

    でも、最近は特に言葉の選択の幅が広がったようには思います。今までは、ちょっと売れかけている学生バンドの歌詞っぽかったんですけど、「22」なんかは、それらを続けてきた上で腰を据えてきたというか、戦っている人の歌になっていると思うんですよ。受け皿は変わらずとも、響く人の範囲が広がったというか。これまでいろんな人と出会い、いろんな経験をしていくなかで人間力が上がってきたからこそ、表現力やアプローチの幅が変わったのかなとは思います。
  • 片桐

    でもたしかに、人間力というか、人を信じられるようになったかもしれないです。この3年間でメンバーと一緒に過ごす日々を繰り返すなかで、彼らを家族のように思えてきているんですよ。誰かと日々を過ごすなんて絶対に考えられなかったのに、そういう時間を共に過ごすことで信じられるようになったし、そのおかげで自分も変わってこれたのかもしれないです。そもそも今まで、誰かとケンカもできなかったんですよ。親にも友達にも泣いた顔を見せたことがなかったのに、それをすべてさらけ出せるような関係になれたのはかなり大きい変化ですね。
  • 家族ということは、誰がどのポジションですか?
  • 片桐

    アルくんは、ママかな。
  • ヤスカワ

    ママか……。
  • 片桐

    マツイはなんやろうなぁ。
  • マツイ

    そこはパパでええやん!(笑)。
  • 片桐

    いや、双子っていう感じですね(笑)。
  • ははは! ケンカできる関係って本当に限られますからね。でも、本人の体感としては大きな変化はなくとも、内側での何かしらの変化が生じているというのは、今作「アカツキ」からも感じます。今まで殻に閉じこもって夜を歌ってきた人が、夜明けを歌えるようになっていますし。
  • 片桐

    ああ、たしかに。私、夜明けを歌えるようになったんですね。
  • そう思います。音楽面でも、ストリングスの使い方がより効果的になっているように思いますし。ドラマ主題歌の書き下ろしという、自分以外の何かに向けて制作するという経験について、違和感や苦労などありました? 以前リリースした「大人になって気づいたこと」も、リクルートの方に向けて作られた楽曲ではありましたが。
  • 片桐

    これがいいのか悪いのかはわからないんですけど、結局自分が書く歌詞っていうのは、自分自身のことになっちゃうんですよね。もちろんテーマに寄り添う努力はするんですけど、やっぱり自分のことなんです。だから、違和感などはなかったですね。
  • 「寄り添う」というのは、ドラマ作品のどういった部分に自分を重ねてみたんですか?
  • 片桐

    主人公が夢に破れてしまった話だったので、その気持ちになってみようと思ったんです。でも、私は今、夢を追っている立場だしなぁと思ったんですよね。だから、主人公になりきるのではなく、自分も経験している夢を追うなかでの葛藤や、その先に見えた景色を考えつつ書きました。
  • やっぱり、自分以外の誰かになって曲を作るというのは難しかった?
  • 片桐

    でも、昔は「自分のことしか書けねえ!」と思っていたんですけど、コロナ禍になっていろんな音楽に触れてきて、自分の音楽人生の新しい扉のひとつとして、フィクションを取り入れるというのはアーティストとしてやってみたいなとは思うようになりました。だから、今は拒絶はしていないです。
  • 曲作りに関してどうでした?
  • 片桐

    今までは私が弾き語りで元ネタを持っていって、バンドで作り上げていくっていう作り方をしていたんですけど、今回は“書き下ろし”という責任感もあって、自分に対して過度に期待しちゃって、上手く作れなかったんですよ。だから、断片断片をふたりに渡して、3人で繋ぎ合わせていきました。
  • マツイ

    「光芒」もひっつけ系の作り方やったよな。
  • 片桐

    そうだね。「光芒」もレコーディングの前日まで作れなかったね。
  • ヤスカワ

    「22」を出した頃から、次にバラード調の楽曲を作るとしたら、ストリングスを入れたいよねっていう考えは、言葉で言わずとも共有していたんだと思います。
  • 展開の仕方としても、「22」の経験を昇華させているように思いました。緩急の付け方がよりドラマチックになっているというか、起承転結がはっきりしていますよね。
  • ヤスカワ

    たしかに、エレクトロサウンドとバンドサウンドの対極性っていうのは、「22」よりも意識はしました。ドラマをきっかけにHakubiを知ってくれる人が増えるチャンスだと思ったので、その機会を無駄にしないようにしたいという意味でも、ダイナミクスを心掛けました。
  • バラ―ドの中での緩急の塩梅って、特にリズム隊は難しいと思うんですけど、そこのところで意識されたことはありました? ラストセクション前のリズムも、新しいように思いましたけど。
  • マツイ

    起承転結に関しては、かなり意識しましたね。2番のサビ終わりのところではメロディが結構動くので、そこはドラムとしても挑戦するチャンスやと思って、初めてマーチングっぽいリズムを入れてみました。ドラムパッドを切って、タムを回しながらフレーズを考えたら、めちゃくちゃハマったんですよね。
  • 片桐

    あそこ、めっちゃいいよね。
  • 太陽が昇ってくる景色が浮かんできますよね。
  • ヤスカワ

    あの部分は、入れる入れないでチーム内で賛否両論だったんですよね。僕は入れたいと思ったけど、ふたりは入れないほうがいいと思っていたみたいで。たしかに耳馴染みするフレーズではなかったんですけど、歌詞との整合性を考えると面白いと思ったんですよね。
  • マツイ

    自分で作ってみたものの、やっぱり今までやったことがなかったので、聴いた人に抵抗感を与えそうで嫌だったんですよね。メジャーデビューのタイミングでもあったし、わかりやすいシナリオとして捉えられてしまうのが怖かったですし……。でも、やっているうちにのめり込んでいって、自分もやりたいっていう気持ちに変化していきました。
  • 片桐

    最初は夜の中の孤独を感じていましたけど、徐々に朝に向かっていきつつ、最後に振り返るっていうストーリーの起承転結は絶対につけたかったんです。そこでマーチングのリズムを入れるというアイデアが、やっぱり聴き慣れなかったんですよね。
  • なるほど。あの展開は、どちらかというと想像力を掻き立てる狙いもあったのかと思っていたので、意外でした。
  • 片桐

    なんか、フレーズだけ聴いたときは、綺麗すぎちゃうんじゃないかな?と思ったんですよね。でも、自分たちの音に落とし込んだらいい具合に憂いを帯びてくれたので、結果良かったんですけど。
  • 憂いは手放したくなかった?
  • 片桐

    そうですね。やっぱり、手放しにして楽になれないんですよね。
  • でも、ワンマンライブで初披露した際に「(この曲が)誰かの希望になったらいいな」と仰っていましたが、そういう光は見せたかった?
  • 片桐

    「アカツキ」は、コロナの間に感じたモヤモヤしたことを全部落とし込めた楽曲なんですけど、私自身が自分と向き合いながら作ることができたし、この曲を書くことによって少し強くなることができたんです。だから、何かにぶつかったり、つらくなってしまったりした人が、自分と同じように一歩踏み出してもらえたらいいなと思ったんですよね。
  • 背中を押すのではなく、「こういう人間もいるよ」と提示するに留めるからこそのやさしさが感じられます。メジャーデビューも間近に迫ってきましたが、心境としてはどうですか? ワンマンライブでの発表時も、かなりクールに伝えていましたよね。
  • 片桐

    自分は、メジャーデビューで階段を一段上がったというよりは、責任感という重みが増した感覚なんですよね。たしかに喜ばしいことではあるんですけど、背負うものがもっと増えたということだと思っているんです。だからこそ、ワンマンライブでメジャーデビューを発表するときもにこやかに言えなかったし、「ここから」という気持ちが大きいですね。メジャーデビューを目標にしている人ももちろんいると思うんですけど、私たちとしては、喜びよりも決意という意味合いが強かったな。
  • ヤスカワ

    バンド活動を続けるなかで、メジャーデビューというタイミングって1回しかないと思うので、個人的にはとても大切で、いちばん大きなトピックスだと捉えています。「mirror」の途中でメジャーデビューを発表するというのも、その方法がいちばん効果的だと思っていたので、話題になってくれてうれしかったですね。
  • マツイ

    普通にバンドをやっていて、メジャーデビューできるかできないかっていう大きなイベントだと思うので、この3人で迎えられて良かったなと思っています。メジャーのステージに立つことによって、比べられる機会も増えると思うので、インディーズ時代にやっていた楽曲の作り方を見直さなきゃいけないでしょうし、その点でのプレッシャーはかなりありますね。
  • でも、そういった重圧を背負いつつも、これからさらなる飛躍を迎えるであろうHakubiの兆しとして、今回朝焼けの曲が歌えたということは大きな励みになりますね。
  • ヤスカワ

    実は、朝の歌も出来ているんですよ。
  • おお! 繋がっていきますね。2月からは全国ツアーも始まりますし、楽しみにしています。
  • 片桐

    はい。楽しみにしていてください!
  • 【取材・文:峯岸利恵】

リリース情報

アカツキ

アカツキ

2020年11月16日

unBORDE

01.アカツキ

お知らせ

■コメント動画




■配信リンク

「アカツキ」
https://Hakubi.lnk.to/Akatsuki



■ライブ情報

極・粉塵爆発ツアー
2021/02/09(火)東京 渋谷TSUTAYA O-EAST ※ワンマン
2021/02/11(木)新潟 GOLDEN PIGS RED STAGE
2021/02/13(土)石川 金沢vanvanV4
2021/02/15(月)岡山 CRAZYMAMA 2nd Room
2021/02/17(水)大阪 OSAKA MUSE
2021/02/19(金)愛知 名古屋APOLLO BASE
2021/02/20(土)静岡 東静岡UMBER
2021/02/24(水)宮城 仙台enn 2nd
2021/02/26(金)千葉 LOOK
2021/02/27(土)岐阜 柳ヶ瀬ants
2021/03/02(火)兵庫 神戸太陽と虎
2021/03/04(木)山口 周南rise
2021/03/05(金)福岡 Queblick
2021/03/07(日)大分 SPOT
2021/03/09(火)京都 KYOTO MUSE

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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