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ハンブレッダーズがライブハウスで歌う意義――心を震わせた“きっと何かが変わるはず”ワンマンツアー

ハンブレッダーズ | 2021.03.10

 3月4日に渋谷・TSUTAYA O-EASTにて、「ハンブレッダーズ“きっと何かが変わるはず”ワンマンツアー」の東京公演が行われた。ムツムロ アキラ(Vo/Gt)がライブ中に「東京でのライブは2年振りくらい」と話していた通り、本当に久々の東京公演となったこの日、彼らは相変わらず、ただひたすら良い曲を、ただひたすら演奏していた。様々な制限の下で行われたライブではあったが、そんな彼らの迷いのなさに「ああ、ライブってこうだよな」と、胸が熱くなる瞬間が何度も訪れた。

 「ハンブレッダーズ」と大きく書かれたバックドロップの前に登場したムツムロ、でらし(Ba/Cho)、木島(Dr)、サポートメンバーのうき(Gt)が、この日最初に演奏したのは「銀河高速」。久々のライブで聴く<続けてみることにしたよ/走る 銀河高速>という歌詞が、このライブの開会宣言のようにも、バンドの決意表明のようにも聴こえて、これからも走り続ける意志を、改めてライブの最初に伝えてくれたことがとても心強かった。そして、ムツムロが「青春というのは、10代の時間のことではなくて、何かに夢中になれる時間のことを言うのだと思います」と、ハンブレッダーズらしい青春の定義を伝え、「何も持っていなかった僕たちが、青春を送ることになったきっかけの曲」との紹介から「見開きページ」をプレイ。<事実は小説よりもいきなりだったのさ>という歌詞然り、韻の踏み方然り、ムツムロが紡ぎ出す言葉のアレンジは面白いし、上手いことを言うなぁと感服する。彼は「(性格が)捻くれている」と自称しているが、そこに知識と感性が加わって、オリジナルの詞世界が構築されていることが良く分かる。曲を通じて見えてくる、物事を斜めから切り取った景色は新鮮で楽しいし、こちらの思考の死角を突いてくるからハッとする。ハンブレッダーズの楽曲は、いつだって私たちにワクワクと気付きを与えてくれるのだ。

 また、彼らの曲は、そうした気付きと共に「親近感」を与えているのも事実だ。それは、ハンブレッダーズが作るどの曲に対しても、「ひとりぼっちだった17歳の自分が聴いて、カッコイイと思える音楽かどうか」という絶対的指標を設けていることが大きいのだと思う。この後のMCで、ムツムロが客席に「今日のライブにひとりで来た人はいますか?」という質問を投げかけつつ、「僕はフェスにもひとりで行く」という話をした際に、でらしと木島が「いや、僕らは友達と行く」と返したことで「あれ?」となって笑いが起こる、というシーンがあった。そのやりとりは、彼の作る音楽には、自分を含めた「ひとりぼっちの為に」という明確な意識が根付いていることを裏付けるものだと思えた。ひとりでライブに来たっていいし、そもそも、音楽の前では誰だってひとりだ。その前提の真上で歌われるハンブレッダーズの曲は、いつだって「私/僕」のことを歌い、励ましてくれている。けれど、そんな彼らの曲を聴いて、「ひとりぼっちであること=孤独」だと思えないのは、ハンブレッダーズのメロディのポップさや、彼らのキャラクターがひたすらに明るく、前向きだからだろう。教室の隅にいた人間が、夢中になれるものを見つけて、17歳の頃の自分を含めた「弱者の為の騒音を」鳴らしてくれている。とてもドラマチックで、直向きで、夢のある話だなと思う。ハンブレッダーズのライブを観ると、そういうストーリーも一緒になって胸を打ってくるから目頭が熱くなるし、声が出せない環境ではあっても、たくさんのオーディエンスが拳を振り上げて彼らの音楽に共鳴しているあの光景は、文句なしに美しかった。

 そして、木島のドラムとでらしのべースが足元を揺らす、爽快感たっぷりなダンスナンバー「SUMMER PLANNING」や「都会に憧れて」、「ユアペース」を経て、最新シングル「COLORS」から「パーカー」を披露。以前行ったインタビュー(https://music.fanplus.co.jp/special/202101165791210c0)の中で、ムツムロが「絵本や漫画を読んでいる時のように、その世界に入るような感覚で聴けるフィクションも書けるようになりたい」と話していたが、それを具現化したような曲がこの「パーカー」だ。そんな彼の考え通りに、オーディエンスは物語の中にどっぷりと入り込んでおり、曲が終わった後には拍手をするのも忘れた様子だったほどだ。その余韻をしっかり受け止めながら、バンドは「ファイナルボーイフレンド」へと続けていった。

 さらに、木島のハイハットを合図にして「COLORS」、「フェイバリットソング」と、最新シングルの収録曲を続けてプレイ! 「1stシングルはバンドの顔になる」という意識の下、ハンブレッダーズを語る上で欠かせない作品となった「COLORS」だが、ライブでのハマり方もバッチリで、“ライブバンド”として培ってきた経験と底力が、しっかりと楽曲にも息づいていることを物語っていた。そして、そんな彼らがこの日のラストに届けたのは、「ユースレスマシン」と「ライブハウスで会おうぜ」の2曲。「時代遅れだと言われても、生で音楽をやるということの大事さをしぶとく歌っていこうと思います。そういうバンドがいてもいいでしょ?」「音楽は、ライブハウスは、ロックンロールバンドは、決して不要不急ではないということを、俺たちが証明していきます」というムツムロの力強い言葉と共に鳴らされたこの2曲に、どうしようもないほど心が震えた。音楽は二の次、三の次と思われている世の中で、音楽を第一に考えて、必死になって生きている人間がライブハウスにいる。その事実を無いものにしてはいけないし、絶対にしたくない。<ライブハウスで会おうぜ>というフレーズを、ライブハウスで思いっきりシンガロングできるその日まで、ハンブレッダーズの音楽を支えとしていきたい。現状を嘆くのではなく、未来への迷いなき意志を歌う彼らの曲を聴いて、心からそう思えた。

 そんな感動を巻き起こした本編が終わっても鳴り止まないアンコールに応えて再度登場した4人は、オーディエンスに対して改めて感謝を告げつつ、新曲「STILL DREAMING」と、「DAY DREAM BEAT」を届けた。ライブハウスでも、ヘッドフォンの中でも、私たちが望みさえすれば、好きな音楽に自由に会いに行ける。「変わらないものはない」ということを痛感せざるを得ない時代ではあるけれど、それでもハンブレッダーズは、これからもずっと、私たちを待っていてくれているはずだ。そんな真っ直ぐな彼らの想いに、心を揺さぶられっぱなしのライブだった。

【取材・文:峯岸利恵】
【photo by 松本いづみ】

tag一覧 J-POP ライブ 男性ボーカル ハンブレッダーズ

リリース情報

COLORS

COLORS

2021年01月20日

TOY’S FACTORY

01.COLORS
02.フェイバリットソング
03.パーカー

セットリスト

“きっと何かが変わるはず”ワンマンツアー
2021.03.04@TSUTAYA O-EAST

  1. 01.銀河高速
  2. 02.見開きページ
  3. 03.弱者の為の騒音を
  4. 04.SUMMER PLANNING
  5. 05.都会に憧れて
  6. 06.ユアペース
  7. 07.パーカー
  8. 08.ファイナルボーイフレンド
  9. 09.COLORS
  10. 10.フェイバリットソング
  11. 11.ユースレスマシン
  12. 12.ライブハウスで会おうぜ
【ENCORE】
  1. EN1.STILL DREAMING
  2. EN2.DAY DREAM BEAT

お知らせ

■ライブ情報

スペースシャワー列伝JAPAN TOUR 2020
~仕切直始の宴~

03/13(土)東京 EX THEATER ROPPONGI
04/13(火)愛知 名古屋CLUB QUATTRO
04/14(水)大阪 心斎橋BIGCAT



START UP!! -ロックの春2021-
03/31(水)大阪 インテックス大阪 6号館 (A+Bゾーン)

Pangea 10th Anniversary
『agartha20210401』×”ライブハウスで会おうぜ”ツアー vol.5

04/01(木)大阪 Live House Pangea

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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