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6バンドが集い、新しい風を吹かせた「Mashroom 2021 ~Hello new wind~」

MASHROOM | 2021.03.18

 MASH A&Rが主催する恒例のライブイベント「Mashroom」。今年は、当初1月5日に開催予定だったところ、新型コロナウイルス感染拡大に伴う政府からの自粛要請によって中止になってしまったが、こうして「リベンジ開催」が実現した。出演バンドはオープニングアクト含め6組。もとよりそれぞれの個性が際立つバンドが所属している事務所だが、この日のラインナップを眺め渡しても、そのバラエティはますます広がっている気がする。果たしてどんな対バンになるのか。開演を今や遅しと配信画面にかぶりつく。

 オープニングアクトとしてまず最初にステージを踏んだのはEzoshika Gourmet Clubだ。池澤英(Vo/Gt/Key)の「Mashroom 2021、よろしくお願いします!」という力強い一言と広がりのあるバンドサウンドでイベントをキックオフすると、「弾ける炭酸」「青山通り」と硬軟自在のポップソングを次々と繰り出していく。ひときわアッパーな「猫と占いと家具屋」ではフロアに向けてギターをかき鳴らし、笑顔で拳を突き上げていた池澤。最後に「今日はいい1日にしましょう」と告げて新曲へ。メロディとアンサンブルを目一杯のスケールで響かせると、4人は爽やかな余韻を残してステージを降りていった。

 エゾシカがあっためた空気を引き継いでこの日最初の大爆発をぶちかましたのがPanorama Panama Town。どストレートなロックアンセム「SHINKAICHI」で名乗りを上げると、腕をぶん回してギターを弾いていた岩渕想太(Vo/Gt)はロックスターよろしく「サンキュー!」と叫ぶ。緩急を行き来しながら強烈なメッセージを放つ「いい趣味してるね」から、タノアキヒコ(Ba)が弾くゴリゴリのベースラインと切れ味鋭い浪越康平(Gt)のギターリフが唸りを上げる「Rodeo」へというパノパナ流ロックンロールを立て続けに披露すると、ここで「We are PPP from Kobe! 知らない人のために自己紹介の曲を」と「パノラマパナマウタウンのテーマ」へ。ここまでのロックモードから一転、ゆったりとした横ノリのグルーヴが心地よい。岩渕もハンドマイクで肩を揺らしながら伸び伸びとラップしている。

 そして「今日は原点に戻って、俺らが最初に作った曲を……」と披露された「ロールプレイング」で改めてこのバンドのオリジナルな面白さを見せつける。そこから最新の楽曲「SO YOUNG」へとつなげる流れも憎い。紆余曲折を経ながら手に入れた音楽への確信をまっすぐに歌うこの曲が眩しく響き渡る。リキッドルームでの思い出に触れつつ、「今なかなか大変な状況ですけど、そんなところでライブを開いてくれて、ありがとうございます」と主催者とオーディエンスに感謝を述べた岩渕。「ケリをつけて帰りますんで」という言葉通り、「MOMO」と「Sad Good Night」のラスト2曲で今改めての存在証明を刻みつけてみせた。

 パノパナに続く二番手として登場したユレニワは、2月にリリースしたばかりの「焦熱」でしっとりとライブをスタート。息のあったアンサンブルとシロナカムラ(Vo/Gt)の歌声が絡み合い、瞬く間にオーディエンスを引き込んでいく。緊張感のあるジャムセッションから、RENJU(Dr/Cho)の打ち鳴らすスネアがバンドを鼓舞するように「Cherie」へ。スリリングな展開から一気にポップなサビへと広がっていく、ドラマティックな曲だ。「ライブハウスは最高だな!」。シロが顔をくしゃくしゃに歪ませながら叫ぶ。その叫びをそのまま音にしたかのような豪快にして攻撃的なロックナンバー「だらしないね」では種谷佳輝(Gt/Cho)のギターソロもクールに決まる。最初の1コーラス、PA回線の問題でボーカルマイクの音が聞こえなかったのだが、それでもその熱量は有り余るほど伝わってきた。

 「こんにちは、ユレニワといいます。あんまりこういうのもなんですけど、僕らってみなさんどう思ってます? Saucy Dogとかめっちゃ好きっていう人、果たしてユレニワのこと好きになってくれるかな」と先輩バンドへのライバル心を覗かせつつ、「お手柔らかにお願いします」と天然か計算か、不敵に語るシロ。その後披露された「Bianca」が最高だった。淡々と刻まれるリズムと反復するギターフレーズ、そしてひとつひとつ言葉を置いていくようなシロの歌。決して派手ではないが、その危うさも含めて美しい、ユレニワを象徴するような楽曲である。そして「fusée 101」を挟んで最後は「まぼろしの夜に」。種谷が弾くシンセサイザーとリヴァーブの効いたギターが夢見の世界を描き出し、リキッドルームを飲み込んでいった。

 続いては、先日東京での初ワンマンを成功させたばかりのYAJICO GIRL。キーボードの前面についた電飾に「Indoor Newtown Collective」の文字が浮かび上がると、「NIGHTS」の緩やかなグルーヴが溢れ出す。薄暗い灯りの中1曲終えると、パッと明るい光がステージを照らし出す。「ユルく体を揺らしながら楽しんでください」という言葉を自ら実践するようにステップを踏む四方颯人(Vo)。自然と腰が揺れるようなリズムが気持ちいい「2019」から、ニューアルバム『アウトドア』より「街の中で」「WAV」「Surfing」を三連発。より濃密になったバンドアンサンブルと印象に残るキャッチーなメロディがバンドの現在地を物語る。

 「熱が醒めるまで」ではホーンやピアノの音色が心地よく鳴り響く中、フロアでも手拍子が巻き起こり、会場の一体感はさらに高まっていく。そして鳴らされたのが、バンド自身のことを歌った「FIVE」だ。5人全員でひとつのリズムを紡ぎ、コーラスを重ねていく。晴れやかなメロディがこの真っ暗なライブハウスに涼やかなそよ風のように吹き渡ると、四方は小さく「ありがとうございます」と呟いた。「Mashroom。年に一度、こうやって、全然音楽性違いますけど、一緒にやることができてよかったなと思います」。そんな言葉から最後に鳴らされたのは『アウトドア』のリード曲「Better」。力強いシンセリフの響きとスムースな四方の歌、そしてゴスペルのような神々しさも感じさせるコーラスのレイヤー。個性豊かなMASH A&Rのバンドの中にあってもやはりこのバンドは唯一無二。追い求めてきた自分たちの音楽を、リキッドルームで思いっきり見せつけていた。

 残すところ2組となった今年のMashroom。いつものSEとともにステージに登場したのはSaucy Dogだ。3人で拳を合わせると、大きく息を吸って石原慎也(Vo/Gt)が「シーグラス」を歌い出す。武道館ワンマンを終え、ひとまわり成長したようなパフォーマンスは見ていて安心感がある。石原は時折フロアに目をやりながら笑顔を見せている。3人でアイコンタクトを取りながらフィニッシュすると「Saucy Dog始めます、どうぞよろしくー!」という石原の声に拍手が起きる。そしてそのまま「メトロノウム」に突入していくと、さらに一歩一歩地面を踏みしめて進むような力強いリズムが印象的な「BLUE」へ。1曲ごとに表情を変えながらフルスケールの景色を描き出していく。

 「毎年毎年、所属バンドのみんながめっちゃよくなってて。負けてられんなあって思わせてくれる」とこのイベントに出る気持ちを語るせとゆいか(Dr/Cho)のMCを経て、「楽しんでいきましょう!」という石原の叫びから「雀ノ欠伸」の軽やかなリズムを繰り出すと、フロアからは何本もの腕が上がる。石原はもちろん、秋澤和貴(Ba)もせとも笑顔。心底楽しそうに音楽を鳴らしている彼らを見ているとこちらも自然と笑顔になってくる。「ゴーストバスター」を経て、3人向き合ってのイントロから「バンドワゴンに乗って」。せとの叩き出すビートがアンサンブルを牽引し、石原のかき鳴らすコードが音楽のみずみずしい喜びを体現する。「めちゃめちゃ楽しませてもらってます」と言いながら「なんやろ、この緊張な」と久しぶりのライブハウスでの演奏でちょっとソワソワした気持ちを吐露する石原。秋澤に「ちょっと深呼吸しようか」とか言われる中、ラストは「とっておきの愛の歌」という言葉とともに奏でられた「sugar」。切なく美しいメロディが最後まで感情を震わせた。

 トリを飾るのはMASH A&Rの先輩格、LAMP IN TERRENだ。「BABY STEP」でいきなり壮大な映画のような風景を描いてみせると、続く「ほむらの果て」ではダークでヘヴィなアンサンブルの中、松本大(Vo/Gt)の絶叫が響き渡る。着ていたジャケットを脱いでフロアにぶん投げて「かかってこいや!」という力強い一言から突入したのは「凡人ダグ」。そのタイトで重厚なロックサウンドに、オーディエンスは手を挙げて応える。大屋真太郎(Gt)のギターソロも艶っぽく鳴り響き、3曲目にして早くもクライマックスのような興奮を生み出していく。それにしても、ずっと前から思っていることだけど、決してわかりやすくアッパーな曲とか踊れる曲とかがあるわけではないのに、音と歌の存在感と説得力だけで高揚させていくこのバンドの凄みはやはり他に類を見ない。しかも、その存在感と説得力にますます磨きがかかっているのが今だ。

 「今日長かったけど、一番の盛り上がりをみんなで作りたいと思います!」と言う松本の言葉とともに鳴らされた「地球儀」(松本はハンドマイクでフロアを煽り倒す)を終えて、「5曲連続は……(きつい)」と息を切らしながら、「喋りたいことは次にまとめたいのでもう1曲頑張ります」とギターを弾き始める松本。歌い始められたのは優しい響きの中に決然とした意志を織り込んだ「いつものこと」。さっきまでのハイテンションとは打って変わって一音一音をしっかり届けるように鳴らされるサウンドがグッと心に染み入ってくるようだ。

 イベントを開催したスタッフ、出演したバンド、そして勇気を持ってライブハウスに来たひとりひとりに拍手を送り、「音楽ってね、俺は自分がやってること、自分が歌うことが生活の支えになってるかは知らんけど、みなさんの人生を少しでも彩ることができるものだと信じてるんで。俺たちが歌えば、俺たちは音楽になって、俺たちが音楽を続ければ、ずっと続いていく。当たり前のことだけどなかなか言えない。みなさんもそう。みなさんが生きれば、人生は続いていく。その人生が、少しでも楽しくなるように俺たちは全力でライブで歌うし、みなさんに届けていきたいと思ってます」と今この時代に音楽を鳴らす思いを語った松本。そうして最後に披露された最後の曲「Fragile」は、そのピアノの響きと相まってひときわ感動的に響いた。

 アンコールではLAMP IN TERRENがアレンジして演奏する各バンドの曲をそれぞれのバンドのボーカルが歌うというスペシャルセッション。披露されたのはユレニワ「だらしないね」、YAJICO GIRL「WAV」、Saucy Dog「シーグラス」、Panorama Panama Town「フカンショウ」。いつもと違うサウンドの上で新鮮さを感じながら歌うボーカリストたちの楽しげな表情が印象的だった。最後はLAMP IN TERREN「EYE」をEzoshika Gourmet Club・池澤も含めた全出演ボーカリストとセッション。こうして並んでいるのを見ると、本当に音楽性がバラバラだなと思う。それぞれがそれぞれの場所で前に進み続け、1年に1回こうして相見える。その光景自体が奇跡的で美しい、2021年の「Mashroom」だった。

【取材・文:小川智宏】
【撮影:山川哲矢、小杉歩】

tag一覧 J-POP ライブ LAMP IN TERREN Panorama Panama Town Saucy Dog YAJICO GIRL ユレニワ Ezoshika Gourmet Club

セットリスト

Mashroom 2021 ~Hello new wind~
2021.03.14@恵比寿LIQUIDROOM

    ■Ezoshika Gourmet Club
  1. 01.東京
  2. 02.弾ける炭酸
  3. 03.青山通り
  4. 04.猫と占いと家具屋
  5. 05.新曲
    ■Panorama Panama Town
  1. 01.SHINKAICHI
  2. 02.いい趣味してるね
  3. 03.Rodeo
  4. 04.パノラマパナマタウンのテーマ
  5. 05.ロールプレイング
  6. 06.SO YOUNG
  7. 07.MOMO
  8. 08.Sad Good Night
    ■ユレニワ
  1. 01.焦熱
  2. 02.Cherie
  3. 03.だらしないね
  4. 04.Bianca
  5. SE fusée 101
  6. 05.まぼろしの夜に
    ■YAJICO GIRL
  1. 01.NIGHTS
  2. 02.2019
  3. 03.街の中で
  4. 04.WAV
  5. 05.Surfing
  6. 06.熱が醒めるまで
  7. 07.FIVE
  8. 08.Better
    ■Saucy Dog
  1. 01.シーグラス
  2. 02.メトロノウム
  3. 03.BLUE
  4. 04.雀ノ欠伸
  5. 05.ゴーストバスター
  6. 06.バンドワゴンに乗って
  7. 07.sugar
    ■LAMP IN TERREN
  1. 01.BABY STEP
  2. 02.ほむらの果て
  3. 03.凡人ダグ
  4. 04.ホワイトライクミー
  5. 05.地球儀
  6. 06.いつものこと
  7. 07.Fragile
      【ENCORE】
    1. 01.だらしないね
      ゲストボーカル:シロナカムラ(ユレニワ)
    2. 02.WAV
      ゲストボーカル:四方颯人(YAJICO GIRL)
    3. 03.シーグラス
      ゲストボーカル:石原慎也(Saucy Dog)
    4. 04.フカンショウ
      ゲストボーカル: 岩渕想太(Panorama Panama Town)
    5. 05.EYE

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