山あり谷あり、どころか、断崖絶壁に追い詰められたり、とんでもない暴風雨に見舞われたり、しかしその向こうに目がくらむほど美しい虹を見たり、いろんなことがあった気がする。2021年春、「デビュー15周年記念 春ワンマン ファンキー加藤 爛漫ライブ」が無事に開催されたことに、長年のファンのひとりとして感慨を覚えている。今日は、15年のヒストリーを一気に振り返る、初挑戦となる1日2回公演のスペシャルプログラム。計3時間の全力疾走、こちらも全力で見届けなければ。

　午後2時開演、【1部：My Style】のテーマは、“いつもより我を押し通す、ファンキー加藤濃度100%ライブ”だ。お馴染み、バカムスコ翔（Cho）と田中隼人（Key）ががっちりとバックを固める中、多幸感いっぱいのEDMメドレー「Good show / MUSIC MAGIC / LIFE IS A PARTY」でライブはスタート。ミラーボールとスポットライトがぐるぐる回り、フロアで思い切り飛び跳ねるオーディエンスの後ろ姿は、通常のライブと何も変わらない。ハッピーな幕開けだ。

「みなさんの、マスク越しの笑顔に会いに来ました。第1部、歌いたい歌を歌わせていただきます！」。

　ハーモニカを吹きまくる「冷めた牛丼をほおばって」から、力強く拳を突き上げる「春雄の唄」へ。「MUSIC MAGIC」などEDMタイプの曲から、ストレートなロック調の「春雄の唄」まで、この15年でファンキー加藤の音楽性の幅はぐっと広がり、もはやラップと歌の境目もない。田中隼人のアグレッシブなキーボードプレーが光る「DIVE」も、アッパーなロック調でぐいぐい攻める。一転して、FUNKY MONKEY BABYSの「告白」は、ぐっとスローであたたかくせつなく、包容力いっぱいに。セットリストを追うだけで、楽しい時間が過ぎてゆく。

「みなさん、おととい、見てくれました？」――そう言って切り出したのは、FUNKY MONKEY BABYSが一夜限りの復活を果たした、TBSの特別番組「音楽の日」のことだ。8年ぶりの3人でのパフォーマンスを振り返り、「めちゃくちゃ緊張したけど、今日は全然緊張してない」と言って笑ったのは、ここがファンキー加藤のホームだから。

「15年間、ファンキー加藤を守ってくれたのはみなさんでした。俺も音楽でみなさんを守っていきます」。

　近年、ファンキー加藤の楽曲には、支えてくれるファン、共に生きてゆくファンに向けたものが増えてきた。「死守」もそうで、「つながるから」もきっとそう。＜あなた＞と呼びかける相手の顔が、よりくっきりと見えてくる、それがファンキー加藤の15年。日々の悔しさや焦燥感を、春を待つ蕾にたとえた「花」で、ステージを全力で往復する姿は、あの頃よりもスピードが落ちたかもしれない。それでもあなたのために走り続ける、それがファンキー加藤の15年。

「15年間、夢や希望ばかり歌ってきて、15年経ってもファンキー加藤は、希望の歌ばかり歌っていきます」。

「希望のWooh」「CHANGE」、そして「My VOICE」へ。ソロキャリアを彩る代表曲3連発は、ファンキー加藤の原点と未来を同時に示している。ステージを駆け回りながら、「心で歌って！」とフロアにマイクを向ける。その心には、＜悲しみを超えて 大きな声で／「ここにいるよ」と歌ってるんだ＞という大合唱が、たしかに聴こえていたはずだ。

　アンコールは、美しい叙情あふれる「桜 ふわり ふわり」と、最後は楽しくにぎやかに、レゲエ調の「ラストナンバー」で明るいフィナーレ。もっとわがままで変なセトリにもできたけど、やっぱりみんなに聴かせたいのはこれなんだよな。という感じの、意外にストレートだと思う選曲に、かえってファンキー加藤らしさを感じる、メドレーを入れた全15曲。あらためて名曲の多さをかみしめる、充実の90分間だった。

　そして、午後6時開演、【2部：Your Style】のテーマは、“楽曲投票によるリクエストライブ”。一体何が飛び出すか、待ち構えるフロアに爆音で放たれたのは、「リスタート / ヒマワリノユメ / ナツミ」だった。アルバム曲、カップリング曲、ファンモン曲と素性はバラバラ。それがおおらかな解放感いっぱいのビートで統一され、明るく華やかに盛り上がる。オーディエンスはモンキーダンス、クラップ、手振りで忙しい。1部以上に派手なスタートかもしれない。

「ちょっと喉枯れてますが、関係ないです。明日から2日オフもらってるんで、ぶっ倒れてもいいと思って歌います！」。

　初体験の2回公演にビビっているように見せて、「希望の唄」「希望のWooh」と、手加減なしの全力歌唱でフロアを圧倒。これがファンキー加藤だ。この15年間、追い込まれてこそ力を発揮するライブを何度も見ているから、何も心配はいらない。

「今日は、みんなのリクエストに基づくセットリスト。俺が見ても楽しいし、今までなんでやらなかったんだろう？というくらいです」。

　続く「終わらない未来」は、個人的には＜さあ　頑張ろうぜ＞というキャッチーな歌詞が、一度聴いたら忘れない、ファンキー加藤代表曲。第1部でも歌った「つながるから」も、＜きっといつの日かつながるから＞というリフレインが、いつまでも耳に残り続ける代表曲。代表曲ばかりを贅沢に並べ、ライブは佳境へと入ってゆく。

　MCは1部と同じ、「音楽の日」の話題だが、今度は笑いを入れない真面目モード。ソロを始めるとき、ファンモンという大きな存在が足かせに感じることもあったこと。それでもファンモンを、ファンキー加藤を愛し続けてくれたファンのこと。そして、今日この瞬間を分かち合ってくれて、心から感謝していること。

「これからの音楽活動、心折れそうなときに最初に浮かぶのはみなさんです。みなさんには、そういう力があります」。

　田中隼人の素晴らしいピアノに導かれ、この日一番と言っていいエモーショナルな歌を聴かせた「太陽」。その対曲のように歌われた、FUNKY MONKEY BABYSの屈指の名バラード「大切」。ファンキー加藤が全力で歌うバラードに、計算や技巧はいらない。飾らないむき出しの感情が、そこにあればいい。

　年下の世代へ向け、希望のバトンを繋ぐ応援歌「CHANGE」を経て、堂々の“ソロ楽曲ランキング1位”として歌われたのは、なんと「吼えろ」。「俺のじゃなくて提供曲だった（笑）」というまさかの展開だが、歌は作り手の思惑を超えて広がってゆくもの。ファンキー加藤がまたひとつ、スポーツ系応援歌の代表曲を生み出した事実を喜ぼう。そのままの勢いで「ALWAYS」「My VOICE」と、本編ラストを全力で駆け抜ける。その高揚、興奮、これが15年変わらぬファンキー加藤のスタイル。

　アンコールは、吼えるように叫ぶように、タフなロックボーカリストが憑依したような3連符のロックバラード「本当のこと」。歌い終えるとすぐに座り込み、「今後、2部構成はやめませんか」とつぶやいて笑いを誘う。そう、ファンキー加藤はいつだって限界に挑み、乗り越えてきた。「人生で一番しんどいライブでした」と言いつつも、またここに戻ってくるだろう。ファンモンのライブを締めくくる定番曲、懐かしい「西日と影法師」を聴きながら、どんな今日でも明日は必ず来ることを思う。そのとき一歩進んでいればそれでいいと、楽しそうなファンの姿を見ながら思う。

「この先も30年、50年、100年と、ファンキー加藤をよろしくお願いします。今日は本当にありがとうございました。世界一愛してるぜ、俺のファン！」。

　その後、この日から3日後に駆け巡った大ニュースについては、誰もがもう知っているだろう。3月16日、ファンキー加藤とモン吉の2人によって、FUNKY MONKEY BΛBY’S（ファンキーモンキーベイビーズ）としての再始動が発表された。「心の奥のほうにずっと仕舞い込んでいた想い出」が「現在進行形の強い想いとなりました」と、ファンキー加藤はコメントを出した。それについては、ファン一人ひとりの感じ方にゆだねたい。ただ、「音楽の日」のパフォーマンスと、「デビュー15周年記念　春ワンマン ファンキー加藤 爛漫ライブ」を見た上で思うのは、ファンキーモンキーベイビーズの楽曲は今も生きているし、ファンキー加藤の活動にも無限の可能性があるということ。どちらも生かせる未来があるのなら、どちらも楽しもう。新しい始まりを祝おう。ファンキー加藤、15周年おめでとう。

【取材・文：宮本英夫】
【撮影：川島彩水】