CHiCO with HoneyWorks、希望に満ちた春へ誘ったツアー「SPRiNG BEAT」
CHiCO with HoneyWorks | 2021.04.03
それは、希望に満ちた春へと誘う歌声と奏で。
8月から9月にかけて全国を巡るはずだった『CHiCO with HoneyWorks summer tour 2020「WiSH Upon A Star」』は6公演が中止となり、『CHiCO with HoneyWorks ONLiNE LiVE @BUDOKAN 「COME! COME! ONiON」』と題し12月25日に開催した2度目の日本武道館公演は、キャリア初の無観客公演に。多くの人々、アーティストにとってそうであったように、CHiCO with HoneyWorks、通称チコハニにとってもまた、2020年は試練の年だったけれど。2021年3月、約1年半ぶりとなるツアー『LAWSON presents CHiCO with HoneyWorks ZEPP TOUR 2021「SPRiNG BEAT」』を、各公演とも昼夜2部制にて行うことができた。ここでは、3月21日開催のZepp Tokyo昼公演の模様をお伝えする。
オープニングSEが鳴り響き、Oji(Gt)、中西(Gt)、宇都圭輝(Key)、Hiroki169(Ba)、AtsuyuK!(Dr)がスタンバイすると、ライトが当たったステージ後方にCHiCOの姿が! 待ちかねた1曲目は、「プライド革命」だ。<力なら君にもらった>と、フロアに向けて真っ直ぐに声を響かせるCHiCO。それぞれの奏でる音に魂を込める楽器陣。声を出すことはできなくとも、クラップをしたり、両手に持つサイリウムを打ち鳴らしたりして応えるオーディエンス。どんな形であれ、お互いの想いをやりとりして熱を高めていける空間は、格別だ。
「声を出せないし、タオルを振り回すこともできないけど、みなさんの熱いハートはばっちり見えてるよ~!」
思わず嬉しくなってしまうCHiCOの言葉から、「ラズベリー*モンスター」へ。サウンドも歌詞も歌い方もライティングもとことんアグレッシブで、CHiCOのロングトーンやハイトーンもよく映える。
「一緒に踊っていきましょう!」とCHiCOが誘ってくれたのは、弾むようなポップナンバー「ぐる恋」。Ojiと中西のギターのかけ合いにしても、CHiCOに加え宇都圭輝のキュートなダンスも、なんて楽しいんだ。「カヌレ」ではOji、中西、Hiroki169が演奏しながら笑顔で跳ねたり、Ojiから中西へとギターソロのバトンを渡したり、CHiCOが大きく腕を振りながら歌ったり。<好き>の連呼に、オーディエンスのテンションもますます高まっていく。
「ツアーは2019年の夏ぶり! Zeppツアーも、みんなが声を出せないツアーも、チコハニにとって初めてのことで。いろんな発見があります」
そんな気づきを口にしつつ、MCになるとどうしたことかカミカミなCHiCO。すかさずメンバーが茶々を入れて、チコハニならではの温かくアットホームなトークタイムだ。
かと思うと、「Marie」からは空気が一変。2020年9月の中野サンプラザ公演でも、楽曲の主人公である悲劇の王妃、マリー・アントワネットの哀しみややり場のない怒り、凜とした強さ、気高い美しさを見事に表現したCHiCOだが、ますます鬼気迫るその姿が思い浮かばせる言葉は、“憑依型”。「ヒストリア」にしても然り、ダークな世界観をまとうCHiCOは、ゾクっとするほどにかっこいい。
さらに驚かされたのは、2月5日公開の映画『樹海村』の主題歌でもあり、2月3日にシングルリリースされた「鬼ノ森」だ。多くの作品のテーマソングを担当してきたチコハニではあるが、ホラー映画の主題歌を担当するのは初にして、和情緒漂う音像にしても、沖縄民謡を思わせる“こぶし”をきかせたCHiCOの歌にしても、断ち切れない呪いがもたらす狂気と混沌の世界を繊細に描ききっているではないか。音源とはまた違ったアレンジで聴けるというのも、ライブの醍醐味。ポップでキャッチー、キュンキュン必至の“らしさ”も大切にしながら、またもや新たな境地を切り拓いてしまったのだ。
AtsuyuK!の勢いあるドラムカウントからなだれ込んだ「醜い生き物」は、アニメ『裏世界ピクニック』のオープニング主題歌であり、「鬼ノ森」とともに両A面シングルのタイトル曲としてリリースされたナンバー。ロックに突き抜ける演奏も、自らの内にある醜さに向き合った赤裸々な歌詞や歌も、刺さりすぎる。
再びのMCタイムでは、バンド紹介をすっ飛ばしそうになり、「ダメだ今日の私ポンコツ(苦笑)……」とヘコむCHiCO。メンバーは総ツッコミしつつも賑やかにフォローして、そこはとても優しい世界だ。
そして、4月28日にシングルリリースする「冒険のVLOG」(4月から放送開始のTVアニメ『EDENS ZERO』エンディングテーマ)のカップリングナンバー「スーパーアイドル(笑)」を初披露。うねりながら疾走するサウンド、それでも決して埋もれないCHiCOの歌声、SNS時代に鋭く切り込むような歌詞は、タイトルからすると意表を突くものだ。デビューから7年、まだまだ新しい引き出しが開いていくのだろうな、と思うとワクワクが止まらない。
本編ラストにたたみかけたのは、不屈の精神を宿したCHiCOの歌声、骨太いバンドサウンドが絡み合うアンセム「決戦スピリット」。メンバー同士向き合ったり、隣り合ったりする姿も胸アツな「アイのシナリオ」。チコハニが最強のライブバンドであることを、はっきりと示してくれた2曲である。
オーディエンスの大きな拍手に呼ばれ、再びステージに現れたメンバー。アンコール1曲目は、“SPRiNG BEAT”というライブタイトルにぴったり、桜色のライトがステージを照らした「今日もサクラ舞う暁に」だ。あいにく、この日は春の嵐とも言うべき荒天に見舞われてしまったが、切なくも美しい春の日を想像できた時間であったように思う。コロナ禍でライブ会場に足を運べなかったとき、ファンが心の支えにしていたであろう<会えなくなったけど離れ離れじゃないよ><いつか会えた時には ただいまってきっと大声で!>というフレーズにも、グっときてしまった。
「チコハニは、8月6日にデビュー7周年を迎えます。どんな形になるかわからないけど、みなさんとお祝いできたら、と思っています。これからも、心がめげそうなとき、チコハニの音楽を、ライブを、心のお供にしてもらえたら嬉しいです」
デビュー当時から変わらない想いを言葉にしたCHiCO。「今日会えたみなさんの幸せを願って」という言葉が導いたラストナンバーは、「幸せ。」だ。音、言葉、歌声には、人を笑顔にして、幸せにする力がある。そんなことも、あらためて感じることができた。
すべてが元通りの世の中に、すぐには戻れないかもしれないけれど。どんなときだって我々を力強く導いてくれるチコハニ、愛すべきチコハニがこの春に蒔いてくれた種は、やがて豊かな実りをもたらすはず。そう思うと、胸が高鳴る。
【取材・文:杉江優花】
リリース情報
冒険のVLOG
2021年04月28日
MusicRay’n
CD+グッズ
01.冒険のVLOG
02.スーパーアイドル(笑)
03.冒険のVLOG 【Instrumental】
04.スーパーアイドル(笑)【Instrumental】
【特典】
・HoneyWorksヤマコ描きおろしジャケット
・特製!CHiCOオリジナルポップアップシール
セットリスト
LAWSON presents CHiCO with HoneyWorks ZEPP TOUR 2021 「SPRiNG BEAT」
2021.03.21@Zepp Tokyo
- 01.プライド革命
- 02.ラズベリー*モンスター
- 03.ぐる恋
- 04.カヌレ
- 05.Marie
- 06.ヒストリア
- 07.鬼ノ森
- 08.醜い生き物
- 09.スーパーアイドル(笑)
- 10.決戦スピリット
- 11.アイのシナリオ
- EN1.今日もサクラ舞う暁に
- EN2.幸せ。