“雨が降るなら踊ればいいじゃない”――Lucky Kilimanjaroの初野外ワンマンライブ、日比谷野音に集結した「YAON DANCERS」と作り上げた熱狂的な一夜を観た!
Lucky Kilimanjaro | 2021.04.08
ラッキリ初の日比谷野音ワンマンライブ「Lucky Kilimanjaro presents. YAON DANCERS」。天気予報は雨、開演前BGMの1曲はジーン・ケリーの「雨に唄えば(Singin’ in the Rain)」だった。同名映画の主題歌で、「雨が降るなら踊ればいいじゃない」のアイデアの元になっているのはファンなら先刻ご存知だろう。
意外に明るい空に一縷の望みを託していたが、開演の少し前にパラパラと降り始めた。BGMがやむとアフリカンな出囃子が流れ、メンバーがひとりずつステージに現れて、「太陽」でショーがスタートする。
「YAON DANCERS、お越しいただきありがとうございます。Lucky Kilimanjaroです。今日はいろんな人がいると思います。それぞれの楽しみ方で踊っていきましょう。よろしく!」。
熊木幸丸(vo)がそう開幕を告げると、サンバmeets盆踊り的な祝祭感に合わせて観客が体を揺らし始める。ノンストップで「Superfine Morning Routing」「Drawing!」、そして「FRESH」へ。ドラムンベース風のドラムに煽られて、客席は早くもエキサイトし始めた。
少しテンポを落として「雨が降るなら踊ればいいじゃない」。熊木が「みんなのグルーヴ見せてもらっていいですか?」とハンドクラッピングを促す。「初恋」で再びテンポを上げ、「とろける」でぐっとスローに。後者はたくましさを増した熊木のボーカルの本領発揮で、個人的にはスタジオバージョンより良かった。
一度は小雨になった雨がまた降り始めてどんどん大粒になっていく中、次は「Sweet Supermarket」。<ハーゲンダッツは新作/とりあえず手を伸ばす>のくだりでは大瀧真央(Syn)が両手を上げてアピール(彼女はTwitterでよくこの一節をツイートしている)。シンセのソロでも熊木が「シンセサイザー・まおたき! ハーゲンダッツ大好き!」と紹介した。
「ペペロンチーノ」は裏拍を強調したビートが極めてファンキーなミディアム。「みんなとこのフィーリングを一緒に感じたいです」と熊木は再びハンドクラッピングを促す。この状況下で“踊る”ことに限界がある関係上、こういった光景は何度も目にすることになる。「もっと踊らせにいくんで、準備はいいすか?」とシャッフルナンバーの「ON」。個人的に好みのビート連発で盛り上がる。時季をとらえた選曲「春はもうすぐそこ」、ハードロックmeetsヒップホップな「アドベンチャー」でさらにアゲアゲだ。「Do Do Do」はそもそもダイナミズムの派手な曲だがいっそう強調されており、観客の体の揺れも一段と大きくなった。
ここまで13曲、切れ目なし。初めてのMCタイムで熊木は「YAON DANCERS、お越しいただきありがとうございます! めちゃ来てる。すげえ!」と感嘆してみせる。「雨もすごいけど、2021年最初のライブをみんなで踊れてうれしいです。(中略)みんな踊ってる?」と呼びかけると、大瀧が「わたしが言わなきゃ始まらないでしょ! 野音、踊れてる?」と引き継ぎ、「Burning Friday Night」のエレクトロブギーで後半戦がスタートだ。
終盤に次の曲のフレーズが絡んでくるDJミックス風の演出から「エモめの夏」、熊木が「『DAILY BOP』でいちばん気に入ってる曲」と前置きして「KIDS」。インタビューで多くのメンバーが「早くライブでやりたい」と言っていたとおり、バンドバージョンでさらにパーカッシブかつ躍動的になり、出囃子のアフリカンビートとつながった感があった。
「夜とシンセサイザー」まで『DAILY BOP』収録曲を3連打し、いよいよライブはクライマックスを迎える。テーマが共通する「ひとりの夜を抜け」から、「懐かしい曲をやります」と「Super Star」。間奏で熊木は「ワンマンじゃないけど昔野音でやりました、この曲を。今日こうやってみんなと一緒に踊れてうれしいです。ありがとう!」と言っていたが、初心に返る意味合いもあったのだろう。
ラミがガヤで、大瀧が声ネタで活躍する「350ml Galaxy」、ブレイクを挟んで「この曲をみんなとやるのを楽しみにしてました。野音まだまだ踊れるよね?」と煽って「HOUSE」。同曲の歌詞そのままにBPMの速い曲4連発で客席も熱を増し、発声を禁じられているのに<ここから出ない>のオーディエンスシャウトが聞こえたような気がした。
「MOONLIGHT」でチルアウトし、本編ラストは「おやすみね」。熊木は「みんな、濡れてもいいならちょっと携帯の光もらっていいですか?」と観客に要請。スマホのライトに照らされて、「この光景をまた思い出して曲を作ります。今日はありがとうございました! またツアーで会いましょう」と言い残し、バンドはステージをあとにした。
ほぼ大雨に近い降りようだったが、雨にも負けずにアンコールを求める拍手に応え、グッズのTシャツに着替えて再登場。「今日という日を、こんな雨だけど、みなさんと迎えることができて、思い出に残りましたし、今後もっともっとすごい景色を見せたいなと思いました。本当にありがとう!」といったMCに、観客は万雷の拍手で応えた。
「去年、最初の緊急事態宣言が出たときに、ツアーが延期になったり中止になったりして、とても混乱していました。いま現在も戦い続けている人がたくさんいると思います。そんな人のために1曲やらせてください」と「光はわたしのなか」を披露。<変わる日々に目隠しされても このダンスは止めないわ/ここでできることをやるよ/来たる夏を想うよ>とのラッキリらしいマニフェストがしたたかに響いた。最後はラッキリのテーマ曲とも呼ぶべき名曲「君が踊り出すのを待ってる」。「また一緒に踊ってくれますか?」という礼儀正しいMCが印象的だった。
本編23曲にアンコール2曲、計25曲で約1時間40分。曲間のMCタイムがほとんどないノンストップミックス状態のショーで、派手には踊れない状況下でも“おどらせる”ことに注力した構成に矜持を感じた。ライブアレンジもいつもながら出色で、歌メロと上モノのフレーズを保持しつつリズムは入れ替えに近いほど変わっていた。音源だけではなく、生演奏と照らし合わせてこそ全体像が見えてくる。それがラッキリの音楽だと思う。
結果的には開演前に流れていた「雨に唄えば」が伏線のようになった。終演後、熊木は「いやあ、もうひたすら楽しかったです。野音は初めてじゃなかったけど、感覚的には初めてで、みんなの声援と熱量と雨と……たぶんこういうことは2度とないですね」と感無量な様子だった。2度とないなら、また違ったものを経験すればいい。ライブバンドとしてますます強力になっていく6人、5月に始まるツアーも楽しみだ。
【取材・文:高岡洋詞】
【撮影:田中聖太郎】
リリース情報
DAILY BOP
2021年03月31日
ドリーミュージック
02.太陽
03.エモめの夏
04.アドベンチャー
05.ペペロンチーノ
06.雨が降るなら踊ればいいじゃない
07.ON
08.KIDS
09.夜とシンセサイザー
10.MOONLIGHT
11.おやすみね
Bonus Track 光はわたしのなか
セットリスト
Lucky Kilimanjaro presents.
YAON DANCERS
2021.04.04@日比谷野外大音楽堂
- 01.太陽
- 02.Superfine Morning Routing
- 03.Drawing!
- 04.FRESH
- 05.雨が降るなら踊ればいいじゃない
- 06.初恋
- 07.とろける
- 08.Sweet Supermarket
- 09.ペペロンチーノ
- 10.ON
- 11.春はもうすぐそこ
- 12.アドベンチャー
- 13.Do Do Do
- 14.Burning Friday Night
- 15.エモめの夏
- 16.KIDS
- 17.夜とシンセサイザー
- 18.ひとりの夜を抜け
- 19.Super Star
- 20.350ml Galaxy
- 21.HOUSE
- 22.MOONLIGHT
- 23.おやすみね 【ENCORE】
- EN1.光はわたしのなか
- EN2.君が踊り出すのを待ってる
お知らせ
LUCKY KILIMANJARO ONEMAN TOUR“DAILY BOP”
05/29(土)大阪 CLUB QUATTRO
05/30(日)名古屋 CLUB QUATTRO
06/10(木)広島 CLUB QUATTRO
06/12(土)福岡 BEAT STATION
06/18(金)札幌 cube garden
06/20(日)仙台 JUNK BOX
07/09(金)東京 Zepp Haneda
※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。