「RUNNIN’」から「西日と影法師」までを真摯に届けた、モン吉ソロツアー「SARUTABI2021~MEGURU~」よりファイナル公演を徹底レポート!
モン吉 | 2021.04.14
3月26日、渋谷WWWにて、モン吉がニューアルバム『モン吉3』を携えた全国ツアー「SARUTABI2021~MEGURU~」のファイナル公演を行った。
2月6日の福岡公演からスタートした本ツアーは、各自治体の新型コロナウイルス感染防止のガイドラインに準じて行われ、全ヵ所「猿の部」と「旅の部」の2部構成、さらに整理番号をもとにした入場時間の設定や、会場内の床に観客の立ち位置を示す紙を貼るなど、ソーシャルディスタンスを徹底した中で開催された。前代未聞の“制約”が規されたライブ。アーティスト側も観客も未経験の状態ゆえ、開演前にはどうしても緊張感が漂う。コロナ禍以降、ライブ会場に足を運ぶ度、そう感じていた。
しかし、それがモン吉のライブ会場では感じられなかった。なぜなら、会場に入った瞬間、随所に来場者を想ったモン吉のサービスマインドが見られたからだ。例えば、前述した観客の立ち位置を示す場所に貼られた紙には、モンキーのイラストがマスクをして「いらっしゃい。ちょっと待っててね」と語り掛けてきた。この日のライブには、開演前から、観客をなるべくリラックスさせよう、いつもの雰囲気に近づけようという、モン吉のホスピタリティーが溢れていたのだ。いつもとは確実に違う環境。でも、いつものような気持ちでフラットに開演を待つ観客。口には出さないが、観客の心が躍っているのが会場の雰囲気から伝わってきた。
最終日の「猿の部」は低音がバーストするダンサブルなSEで幕を上げた。旋回するライトの中、まずはDJヒョウドウがステージへ。4つ打ちに合わせ手拍子するDJヒョウドウ。モン吉を呼び込む。ステージ下手から、モン吉が滑り込むように視界にフェードインしてきた。そのスピードと軽やかさ、もはや奔放を通り越して無重力。1曲目を飾ったのは、アルバム『モン吉3』でもオープニングを担った「RUNNIN’」だった。曲終わりで「ファイナル、よろしくでーす」と言ったあと、「WONDER DAY」へ。キュートなリズムと、モン吉の跳ねるようなラップのフロウで聴かせるポップチューンだ。モン吉のラップのフロウが、メロディーのように大きな起伏を作っていく。
この日最初のMC。「どうもです。皆さん、調子どうですか?」と挨拶。その後、ファンモンの再結成について触れ「懐かしい気持ちになりながら歌ってます」と、ファンモンの曲「告白」へ。サビでは、手でシャツの胸元をギュッと掴み、声を振り絞るように歌った。
再びMCへ。ツアーの初日を終えたあと、DJケミカルの元を訪れ、一緒に歌うことができない観客のために、一緒に盛り上がることができるいい方法はないかと相談したと言う。「鈴はどうですか?」というケミカルからのひと言で、優しい音色だし、モン吉本人も聴いていて心地いいと、大阪公演以降、来場者全員に鈴を配布することにした。シャンシャン、シャラララ……と、この日も鈴の音はライブを彩る大切な要素になっていた。言葉の変わりに、鈴の音を鳴らす。このシンプルでプリミティブな光景に、改めて、音楽はコミュニケーション方法のひとつでもあるのだと思った。
「チャイルドキッド」では、観客の持つ鈴がリズムを刻み、楽曲をリードした。続く「なると」では<なると なると……>の連呼と一緒に、観客もくるくると手を回した。モン吉のキレッキレなラップスキルがあるからこそ成立するこの1曲は、サイケデリックなサウンドアプローチ、リリックのテーマも含め、じつはドープなミディアムチューンだが、シャープに言葉を連射するモン吉のうしろでDJヒョウドウがラーメンを食べるという演出で、ドープさよりも笑いを感じさせるところがニクイ。これが、モン吉らしさと言うべきか。愛嬌を忘れない、否、愛嬌が黙ってても漏れてしまう、といった感じだ。そしてこの愛嬌は、ライブ中のアクシデントを爆笑に変えた。「なると」終わりで「びっくりするニュースがあります!」と言ったモン吉。続いた言葉が「1曲、飛ばしちゃってます!」だった。いきなりのカミングアウトである。「こういうこと、本当は話さなきゃいいのにね(笑)。でもどうしても言っちゃうんだよなー」と、本音がこぼれる。この言葉に、鈴の音が一瞬ぶわっと大きくなる。爆笑ととっていいだろう。そして改めて「8年ぶりくらいにラブソングを書きました」と、本来であれば4曲目に披露されるはずだった「君が好き」へ。優しく、誰かと会話するように歌うモン吉。観客は、身体を揺らして曲に身を委ねていた。
再びMC。「こんな時代に、皆さん、集まってくれてありがとうございます。普通のライブに来るよりも、勇気がいることだと思います。そんな中来てくれて本当にありがとう」と、改めて感謝の気持ちを言葉にしたあと「遥か」を披露。<ありがとうって伝えたいよ>というワンフレーズでマイクを両手で握りしめた。「こんな時代でも少しでも元気や勇気を持ってもらえたら。それができるのがミュージシャンでもあると思うから。少しでも力になれたらなと思って歌わせてもらいます」と、ファンモンの「あとひとつ」。観客が両手をステージに伸ばす。モン吉は歌いながら、その観客の想いを受け止めるように、両手を広げるパフォーマンスをみせた。最後に右手を上げ、人差し指で天井を指しながら「ありがとう」と言ったモン吉。観客も一緒に天井を指していた。「久々に純粋な応援ソングを書きました」と紹介されたのは、ソロになって初めて書いた応援ソング。アルバム『モン吉3』に収録されている「夢のつづき」だ。丁寧に言葉を紡ぐように歌う。歌い終わったあとに、深々と客席に向かって一礼した。薄闇に沈むステージ。鈴の音が鈴虫の輪唱のように綺麗だ。重なり、広がり、繋がり、会場を満たしていく鈴の音。みんなの心。会場がスーッと明るくなる。それに合わせて鈴の音も大きくなった。観客の様子を見ながら、モン吉がマイクをとった。
そろそろライブが終わると告げたあと、「いつもはこっから折り返しって感じだからなぁ……。わかるんだよ、みんなの気持ち、俺もそうだもん」と、またしても本音をポロリ。最後はこう結んだ。「みんなのその心の中のなんか、なんか……なんでもいい、震わしていってください。いける?」と「ちっぽけな勇気」へ。この曲をひとりで歌うモン吉を応援するように、観客は右手をあげリズムを刻む。鈴の音と一緒に、観客の手が前後に揺れている。歓声が右手からこぼれていっているみたいだった。本編最後は「サヨナラREMEMBER」。モン吉ソロ楽曲の中では、アンセムソングになっているようなスケール感あるアッパーチューンに、観客も思い思いに手を振ってレスポンスした。
アンコール。「ツアーをやれたことに、本当に感謝しかないっす。みんな来てくれてありがとうございます」と述べたあと、「この前ファンちゃんと八王子で会う約束をした。昨日か今日連絡来るはずだけどまだ来ていない、だから今は連絡待ち状態。でも俺、今日ライブじゃん、でも明日なら会えるかなぁー、みんな、モン吉が連絡待ってるってファンちゃんのSNS軽くいじっておいて……」と思ったことダダ漏れのMCで会場をほっこりさせ、「ONE DAY」を披露。そして再びマイクをとった。
「ソロもやっていくし、ファンモンもこれからライブもあると思うんで、良かったら遊びに来てください。20年弱、音楽をやってきて、いちばん好きな曲っす」。
この言葉を受け歌われたのが、ファンモンの「西日と影法師」。どこか牧歌的なメロディー、マーチングのようなテンポ、原風景に繋がる歌詞の世界、そしてサビの<今日の自分が 一歩進んだ 明日へと踏み出せる様に>という、相手に寄り添うようなメッセージ性が、多くの人々の心を掴んだのだろう。初出がシングルのカップリング曲だったにも関わらず、ライブに欠かせない1曲となった。いうなれば、ファンモンがファンと一緒に育んだ1曲である。またDJケミカルが初めてプロデュースを担当した1曲でもある。そんな曲を“音楽人生の中でいちばん好きな曲”と言い切り、ソロライブのラストに持ってきたモン吉に、心から拍手を送りたい。歴史を刻んで来たこの曲が、今、新しい歴史のスタートを刻む。
ソロとしてはもちろん、“FUNKY MONKEY BΛBY’S”としての歴史がまた始まろうとしている――誰のためでもない、モン吉自身が、そして今日のあなたが、また一歩、進むために。
【取材・文:伊藤亜希】
【撮影:久保永隆二】
リリース情報
モン吉3
2021年01月27日
ドリーミュージック
02.WONDER DAY
03.君が好き
04.夢のつづき
05.TAKE
06.未来の手紙
07.ONENESS
08.チャイルドキッド
09.ROLLIN
10.LOOP MAGIC feat.NillNico
11.WEDDING SONG
12.君の面影 feat.ラブリーサマーちゃん
13.メロディ
セットリスト
SARUTABI2021〜MEGURU〜
2021.03.26@渋谷WWW
- 01.RUNNIN’
- 02.WONDER DAY
- 03.告白
- 04.チャイルドキッド
- 05.なると
- 06.君が好き
- 07.遥か
- 08.あとひとつ
- 09.夢のつづき
- 10.ちっぽけな勇気
- 11.サヨナラREMEMBER 【ENCORE】
- EN1.ONE DAY
- EN2.西日と影法師