SHISHAMO、go!go!vanillas、キュウソ、KANA-BOONの列伝ツアーファイナル!
スペシャ列伝 | 2014.03.19
日本の音楽シーンで燦然と輝くバンドを多数輩出し、新人バンドの登竜門的存在となっている「スペースシャワー列伝 JAPAN TOUR」(以下、「列伝ツアー」)。7年目を迎える今年は、KANA-BOON、キュウソネコカミ、SHISHAMO、go!go!vanillasという強力な4組が、全国8カ所をサーキット。ツアーファイナルとなった3月9日赤坂BLITZは、早耳のオーディエンスを始め、様子を見に訪れた関係者など、フロアも2階席もパンパンに膨れ上がっていた。
ライヴはまず、オープニングアクトとして赤色のグリッターが登場。スペースシャワー主催のオーディション「DayDreamBeliever」で優勝した男女混成の4人組バンドは、なんと先日高校を卒業したばかり! 繊細さと疾走感をたたえたバンドサウンドで、オーディエンスに衝撃を与えていた。
「列伝ツアー」のこれまでを振り返るオープニング映像を挟み、トップバッターとして登場したのは、今回唯一のガールズロックバンドであるSHISHAMO。スペシャのロゴ入りタオルを掲げて吉川美冴貴(Dr)が、それに続いて宮崎朝子(Vo・G)、松本彩(B)がステージに姿を現わし、「あの子のバラード」でライヴスタート。1曲目から勢いよく行くかと思いきや、バラードナンバーをチョイスし、オーディエンスの意識をグっと引きつける。そこから一気にギアを入れて、「バンドマン」「行きたくない」など、ポップで極上なメロディーが乗せられた骨太なギターロックで、フロアの熱をぐんぐんと上げていった。また、MCでは、「「列伝ツアー」ってみんな言うけど、私達なりのものを広めようって「スペ伝ツアー」って言ってたんですけど、全然広まらなくて(笑)」と宮崎。また、「今日はステキなバンドマンばかりで、誰かをお目当てに来た女の子達もいるんじゃないですかね」と話し始めると、客席から「SHISHAMOを観に来たよ!」という声が。それに対して「あ、そういうのいいです(笑)」と答えたりと、ゆるめかつほのぼのとしたテンションで進行。しかし、いざ曲を始めると一気にスイッチが入る。イントロからダイナミックなギターカッティングでフロアを沸かせた「僕に彼女ができたんだ」ではクラップを巻き起こし、「タオルをお持ちでしょうか!?」という松本の呼びかけから始まった「タオル」では、「せーの!」の合図でオーディエンスが一斉にタオルを振り回す。サビの《持ってない人は物販コーナーまで》なんて歌詞もユニークだ。その勢いのままラストの「恋する」へ突入。キュートに歌い上げていたと思ったら、突然ドスを効かせる宮崎の歌声も心地よく、瑞々しい衝動に満ちたステージ、楽曲で魅了した。
続いて登場したのは、go!go!vanillas。「やっとこの日が来ました! 頭のてっぺんからつま先まで楽しんで帰りましょう!」と牧 達弥(Vo・G)が煽り、1曲目は「オリエント」から。00年代ロックンロール・リバイバルに影響を受けたガレージサウンドを、日本語でガッチリと歌い上げるスタイルで、一気にフロアに飛びかかって行く。そこから「俺達のテンション見せてやるよ!!」となだれ込んだのは「ハイテンション」。この“ハイテンション”というのが、このバンドの肝でもあるだろう。長谷川プリティ敬祐(B)は、ベースをうねらせながらステージ上をひたすら飛び跳ね回り、宮川怜也(G)は、ときに膝まづきながらギターを熱く弾き倒し、牧も全身全霊のシャウトで捲し立てて行く。そんなパワフルなステージに、オーディエンスは楽しそうに踊り続けていた。また「モッシュとか大合唱とかやってみたいことはりますけど、まずは横乗りから始めてみませんか!」と口火を切った「ミスタースウィンドル」の途中で、ジェットセイ(Dr)がダイナミックなドラムソロを披露。そして「オーイエー! 列伝ベイベー! 最高だぜーーー!」とゴキゲンにフロアとコミュニケーション。曲が終わると、その勢いのままドラムから立ち上がって、興奮しているところを牧に止められるまでの暴れっぷりを見せつけた。また、「ビッグモンスーン」では、コール&レスポンスとコール&ささやき(息を吐く程度の小声でやる感じ)でフロアをギュっとまとめあげ、「最後1曲、貴方達の好奇心をぶつけてきてください!」と「人間讃歌」へ。ミラーボールがぐるぐると回る中、ハッピーが弾ける熱狂的な空間を作り上げていた。最後、ステージの去り際に、ジェットセイヤが「サンキュー! ロックンローーール!!」と絶叫。終始情熱的なアクトを繰り広げた。
転換中からオーディエンスを沸かせたのは、キュウソネコカミ。サウンドチェックで出てきたメンバー達は、「今から本気出しちゃっていいですかね?」と、キラーチューン「お願いシェンロン」を始めると、一瞬でフロアがぐちゃぐちゃに! 更にステージ袖から持ってきた「列伝」、ひっくり返すと「リハ」と書かれたプラカードを見せたりと、出番前から旺盛すぎるサービス精神にオーディエンスは大興奮だった。ライヴは「列伝ツアーに出たからってな! 売れるとは限らんのじゃ! こっからスタートやからな!」なんてMCを交えつつ、とにかくフルスロットルで爆走。オカザワカズマ(G)、カワクボタクロウ(B)、ソゴウタイスケ(Dr)が繰り出すアグレッシブなバンドサウンドを、ヨコタシンノスケ(Key・Vo)が中毒的かつキャッチーなフレーズで色づけしていく。スピード感のあるステージが繰り広げられる中、「売れたら遠くに行くって言う定型文がありますけど、物理的に俺が一番近い!」と宣言。そこからの「DQNなりたい、40代で死にたい」では、《ヤンキーこわい》の大合唱が巻き起こるフロアに、ヤマサキセイヤ(Vo・G)が突入して狂乱を巻き起こした。続く、新曲「KMDT25」(読み方:きまじめどうていトゥエンティーファイブ)では、サークルモッシュならぬ「日本で一番平和なサークル=盆踊りの輪」をフロアに作り出したりと、とにかくもうやりたい放題(笑)。内容特盛で攻め立てて行った。そんな中、「サブカル女子」では“あぁ、こういう子っているよね”と言わせしめる、あるあるネタ的批評眼が炸裂。「ファントムヴァイブレーション」では《スマホはもはや俺の臓器》と、世の中にバサっと切り込むシニカルな歌詞を、全力でオーディエンスにぶつけていく。それに呼応するオーディエンスの掛け声がとにかく大きく、その声こそが彼らの愛されっぷりを物語っていた。
トリを務めたのはKANA-BOON。昨年のデビューから、一気にシーンの最前線へ躍り出た彼ら。昨夏のフェスでは入場規制が続出し、今最も注目されているロックバンドといっても過言ではないだろう。SEは流さずに、4人が姿を現すと、フロアからは大歓声。「KANA-BOONです、よろしくどうぞ!」と谷口 鮪(Vo・G)の挨拶から、彼らの名前を一気に知らしめた「ないものねだり」でライヴがスタート。アップテンポな4つ打ちナンバーに、赤坂BLITZが跳ね上がる。また、オーディエンスによる“ワン! ツー!”の掛け声や、大合唱もバッチリ決まり、1曲目からステージとフロアの親密感が凄まじかった。MCでは「列伝ツアー中、MCでしょうもないこと喋って来たんですけど」と前置きして、飯田祐馬(B)が「列伝ツアーが始まってからツイてなかった」と、切ないエピソードで笑いを誘う(満員電車に乗ってたらケツを揉まれた、などなど……)。そんな飾らないMCタイムを経て、新曲の「結晶星」へ。古賀隼斗(G)が奏でる、キラキラと瞬くロマンティックなギターの音色が、会場全体を包み込んでいく。性急なビートでアゲる爆発力のみでなく、ミディアムな楽曲の心地よさもしっかりとアピールしていた。そこから小泉貴裕(Dr)がバスドラムでビートを刻む中、「スペースシャワー!」「列伝!」と、コール&レスポンスで盛り上げて(ちなみに「列伝」の前に“うん”と一拍置く)、そのまま「1.2. step to you」へなだれ込み、フロアを再着火。立て続けに、和の情緒を充満させた攻撃的な4つ打ち曲「盛者必衰の理、お断り」で本編を締め括った。アンコールの声に応えて再び登場した4人は「A.oh!!」をプレイ。ダイナミックなサウンドをオーディエンスにぶつけていく4人の姿には、貫禄すら漂い始めていた。
そして、ステージに全バンドが登場し、「列伝ツアー」恒例のスペシャルセッションへ。曲は、レミオロメンの「3月9日」。公演日にちなんでのチョイスだったと思うのだが、ツアーが終わることを少し寂しそうにしていた出演者も多く、ちょっとした卒業式みたいな空気もあったことからも、この選曲はかなりハマっていたと思う。出演者、オーディエンスが一緒になって大合唱。最後に「ありがとうございましたー!」と、(それこそ卒業式っぽく)声を揃えて感謝を告げ、今年の「列伝ツアー」を締め括った。
全く個性の違う4バンドが集結したイベントだったが、どのバンドも楽曲に個性とキャッチーさがあり、ライヴでオーディエンスの心を掴むのも巧妙。これから先、音楽シーンを邁進して行くこと間違いなしだろう。終演後の挨拶で「この4バンドで、いつか武道館でやりたい!」という宣言もあったのだ──…マジでやれると思う。そんな4組の現在地点とポテンシャルに、ひたすら胸を躍らされた夜だった。
【取材・文:山口哲生】
【撮影:古渓一道】
セットリスト
スペースシャワー列伝 JAPAN TOUR 2014
2014.3.9@赤坂BLITZ
赤色のグリッター(オープニングアクト)
- 愛の舌打ち
- ハナミズキ
- あの人
- 未来飛行機
SHISHAMO
- あの子のバラード
- バンドマン
- 行きたくない
- 僕に彼女ができたんだ
- タオル
- 恋する
go!go!vanillas
- オリエント
- ハイテンション
- ミスタースウィンドル
- アクロス ザ ユニバーシティ
- ビッグモンスーン
- 人間賛歌
キュウソネコカミ
- ネコ踊る
- サブカル女子
- ファントムヴァイブレーション
- DQNなりたい、40代で死にたい
- KMDT25(新曲)
- ウィーアーインディーズバンド
- 良いDJ
KANA-BOON
- ないものねだり
- ミミック
- 結晶星
- 1.2. step to you
- 盛者必衰の理、お断り
- A.oh!! (アンコール)
スペシャルセッション
- 3月9日(レミオロメンのカバー)