SUPER BEAVERの音楽はどんな時でもあなたに寄り添うことを証明した結成15周年記念ライブ
SUPER BEAVER | 2020.10.13
あなたの目の前で演奏できる喜びと、あなたの声が聴こえない辛さ。その二つの感情に引き裂かれながら、その二つの感情を抱きしめるように進むライブは、だからこそ、SUPER BEAVERというバンドの本質を露にしていた。
彼らが結成15周年記念ライブ「SUPER BEAVER 15th Anniversary 都会のラクダSP~ラクダビルディング&ビルディング~」を日比谷野外大音楽堂で開催。開演18時ジャストに暗転すると、拍手が鳴り響き、静かな沈黙が数秒続く。その間隙を縫って、日比谷野音・名物の虫の声が耳に入ってきた。柳沢亮太(Gt)がギターをジャラーンと鳴らし、「よろしくお願いします」と渋谷が言った後、「ありがとう」で本編スタート。始まってすぐに、いつもの曲がまた違って聴こえることにふと気付く。こちらの受け取り方の問題だが、歌詞と音色が心を激しく、激しく波立たせる。僕とあなたがいる、そこに意味があるんだと歌い上げる普遍的な内容が、当たり前が当たり前ではなくなった今、グサリと刺さるのだ。ずっとビーバーが歌い続けてきたことが、コロナ禍でさらに鋭さを増している。マスクをした二人の女性が溢れ出る涙を必至にタオルで抑える姿をカメラは捉えていた。
「あなたと一緒に生きている今がハイライト!」と言うと、次は「ハイライト」へ。柳沢と上杉のコーラス・ワークが楽曲を力強く援護し、藤原"32才"広明(Dr)のパワフルなドラムも相まって演奏の勢いも加速していく。各楽器の音色も立体的に響く中、「ベースやばくない?」と視聴者による多数の書き込みがあった。そう、生き物のように蠢く躍動感溢れるベース・ラインは一段も二段もバンド・サウンドを骨太なものに押し上げていた。
「8ヵ月ぶり、人前で歌うのは」と渋谷がMCを挟み、今日は有観客と生配信で行っていることを説明。それから声以外で気持ちをぶつけて欲しいと強く訴えた後、「証明」をプレイ。イントロや合唱パートで観客はクラップで応戦し、<無いという「証明」>の歌詞が視聴者コメントにもひっきりなしに流れ、彼らの楽曲はしっかり伝わっているようだった。
そして「閃光」、「361°」と続き、「8ヵ月、自分が何者かも考えた。今日やって良かったなとマジで思ってる。今日は手の感覚をなくならせて帰すからね。あなたが好きだと言ってくれたバンドです。俺はあなたの自慢になりたい」と告げ、10月21日に出るメジャー再契約第二弾シングル収録曲「自慢になりたい」を初披露。サビで曲名を歌い上げる高揚感に肌が粟立つのを抑え切れない。日比谷野音と生配信で観ている人たちと、この曲を一緒に共有していることを誇らしく思える名曲だった。
「27」の最後には「一歩でもあなたの近くに!」と渋谷は何度も叫び、その後のMCでは「声が出せないことで、萎縮しちゃうようなあなたじゃないよな?」と濃密なコミュニケーションを求め、観る者の心を執拗に焚き付けていく。その流れで披露されたのは「東京流星群」だ。日比谷の夜空に渾身の力を込めた演奏を高らかに響かせ、ステージ天井に設置されたミラーボールが回る演出もあり、壮大なスケール感を魅せ付ける。またコーラス・パートに入ると、観客も拳を振り上げて曲に参加していた。
「新曲やってもいいですか?」と問いかけると、先述した10月リリースのもう一つの新曲「突破口」を解き放つ。疾走感に富むロック・チューンはライブでも抜群に映え、<正々堂々>、<威風堂々>、<正面突破>とまるでビーバーの生き様を象徴する四文字熟語に加え、<今をやめない やめない やめない>の歌詞も心の深部にグサグサ突き刺さった。
「いよいよクライマックスになってきました」と語ると、今日はガイダンスに従い、日比谷野音のキャパ半分にあたる1600人に観客を絞ったことにも触れ、「愛すべきあなたのお手を拝借」と恒例のMCを挟んだ後に「美しい日」をプレイ。渋谷の背中越しに精一杯ハンドクラップする観客の姿をカメラは捉え、メンバーも最高の笑顔を浮かべながら楽しそうに演奏している。その光景は何よりも美しかった。祝祭感溢れる「予感」に移ると、観客も高揚する気持ちを制御できない様子で楽曲を通して熱い一体感も生まれていた。
コール&レスポンスで観客と一つになる「秘密」においてはメンバー全員で声を張り上げ、また渋谷はコールした後、レスポンスの無音状態をあえて作り、「あなたの声がどれだけ大事だったかわかる」と現状を噛みしめるように口にする。本当は一緒に歌いたかったけれど、今はそれができない。バントとファンの間に立ちはだかる壁を直視して、いつかまたコール&レスポンスできる日が来るまで一緒に歩みたい。そんなメッセージを汲み取った。
「最高だなと思ったり、寂しいと思ったり……」と嘘偽りない心情を吐露する渋谷。しかし、ラスト曲「ひとりで生きていたならば」までありったけの感情を投げ打って歌い、演奏するビーバーの姿に感動せずにはいられなかった。
どんな状況であろうと、あなたに伝えることやめない、届けることを諦めないビーバーのパフォーマンスは間違いなく"今"だけの特別なライブとなった。もっと言えば、彼らが音楽に託した感情は順境や逆境などに左右されることなく、触れた人たちすべての心を明るく灯し、勇気づけ、背中を押してくれるものであることを図らずも証明するステージとなった。コロナ禍で音楽は必要ではなくなった? コロナ禍においても音楽はあなたの隣に寄り添ってくれる存在なのだ。そう確信させられた素晴しいパフォーマンスであった。
【取材・文:荒金良介】
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リリース情報
突破口 / 自慢になりたい
2020年10月21日
Sony Music
02. 自慢になりたい
セットリスト
15th Anniversary 都会のラクダSP~ラクダビルディング&ビルディング~
2020.10.03
- 1.ありがとう
- 2.ハイライト
- 3.証明
- 4.閃光
- 5.→
- 6.361°
- 7.自慢になりたい
- 8.27
- 9.東京流星群
- 10.突破口
- 11.美しい日
- 12.予感
- 13.秘密
- 14.ひとりで生きていたならば
お知らせ
SUPER BEAVER 15th Anniversary
都会のラクダSP 〜特大のラクダ、イッポーニーホーサンポー〜 @横浜アリーナ
12/08(火)OPEN 19:00 / START 20:00
SUPER BEAVER 15th Anniversary
都会のラクダSP〜全席空席、生配信渾身〜 @横浜アリーナ
12/09(水)OPEN 19:00 / START 20:00
MERRY ROCK PARADE 2020
12/19(土) ポートメッセなごや 1号館〜3号館
※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。