様々な状況が現在進行形で激変していく中で迎えた2021年に、SUPER BEAVERから届いたフルアルバム『アイラヴユー』。まず、このアルバムタイトルを聞いて、彼らの楽曲を総括する上でこの言葉以上のタイトルはないだろうと思った。「私」と「愛」と「あなた」の3単語であること。そして、「私」と「あなた」の間に「愛」があること。SUPER BEAVERというバンドを語るには、正直、この一言があれば充分だとすら思う。

バンドとしては、2020年4月にメジャー再契約という大きなトピックがあったが、彼らのライブや楽曲からは、「じゃあ、ここからまた仕切り直していきましょう！」という気持ちは微塵も感じられなかった。今作に収録されている、同年にリリースされた「ハイライト」や「ひとりで生きていたならば」、「突破口」、「自慢になりたい」も、これまでと変わらずに「あなた」に向けて歌っている曲たちだし、人となかなか会うことができない今、そうしたSUPER BEAVERの曲がどれだけの人の励みになっているかは計り知れない。









とはいえ、彼らは「こういう時代だから」という理由で、そうした楽曲を届けたわけではない。これは、彼らが今まで至極当然のようにやってきた「普通」のことだ。「大事な人に、あなたが大事だと伝えたいから、自分が大事にしたいと思える音楽でそれを届ける」という彼らにとっての普通は、時代背景を問わず、いつだって私たちの胸にダイレクトに響く。打算も狙いもなく、結成15周年を迎えてもなお輝き続けるSUPER BEAVERの本質的でピュアな部分が、この『アイラヴユー』というアルバムに、言葉に、まるごと集約されている。

さらに今作は、ふと訪れるナーバスな気持ちをそのまま歌った「今夜だけ」から始まりながらも、最後には＜だって 絶望なんて簡単に 知ってたまるか＞と前向きな強さを歌う「さよなら絶望」で終わるというストーリーもとても良い。「mob」で歌われているように、人の悪意に触れることで自分を顧みたり、「パラドックス」で歌われているような「本当の気持ちってなんだ？」という自問自答をしたりしながら、少しずつ「自分」という存在を、自分自身で認めていく。



そして、自由であることの歓びを歌う「予感 -Album mix-」を経て、「ひとりで生きていたならば」で「私はひとりではないんだ」と気付いていく。――アルバムを通して、丁寧に聴き手の感情に寄り添い、励まし、しきりに「あなたが大事なんだ」と伝えてくれているようで、聴き終えたあとの心の温まり具合がとてつもないし、ああ、愛されているんだな、と思える。今作のリード曲である「アイラヴユー」の中で、彼らは＜今あなたに 必要なのは 想われてる その実感＞と歌っているが、まさにこの『アイラヴユー』というアルバムがそれを有言実行し、その実感をもたらしてくれている。





個人的には、今作の中で、「時代」の中で歌われる「時代とはあなただ」という歌詞がとても印象的だった。このフレーズが、「だからあなたに責任があるんだよ」とか「あなたが変わらなければならないんだよ」という意味を持つものではないと言えるのは、それを届けているのがSUPER BEAVERだからにほかならない。あなたが自由に感じ、自由に思ったように、自分で選び、生きていくこと。それができる未来を、時代を、共に歩んでいきたい。そういう慈愛と信頼に満ちたメッセージだと受け取った。環境の変化に応じて変わっていくことはもちろんあるけれど、そこに自分自身の「変わりたい」という意志がなければ意味がないことを、様々な経験を経てきたSUPER BEAVERはよく知っているはずだ。だからこそ彼らは、いつだって「あなたはどうしたいのか」を真摯に問いかけ続けているのだと思う。私は私のままでいい、という肯定。作品を通じて伝わってくるその深くて温かい愛情に、胸が熱くなる。

【文：峯岸利恵】