音と映像の痛快なスパーク!! 東京事変の新作ミュージックビデオ集

東京事変 | 2011.09.22

ニューアルバム『大発見』の興奮も冷めやらぬ中、東京事変が新作ミュージックビデオ集『CS Channel』をリリース。その内容は4th アルバム『スポーツ』から最新作『大発見』までの、映像作家・児玉裕一が監督を務めた楽曲のビデオで構成されている。
その上、何と未発表の新曲「ハンサム過ぎて」も収録。単なる映像ダイジェストとは一線を画すレアな映像集となった。

言うまでもなくこれまで事変は根幹である“音楽”を実演するライブに於いて、またその世界観を視覚化するミュージックビデオという媒介について、常に一分の妥協も許すことなく取り組み続けてきた。そんな彼らが近年全幅の信頼を寄せている存在が児玉である。現在までに数々のMV、CMを手がけてきた児玉は、2007年公開のユニクロのWEB広告「UNIQLOCK」では、カンヌをはじめとする世界三大広告賞のすべてでグランプリを受賞した映像クリエイターだ。
戦友か、共犯か、はたまた!?……互いの才能をぶつけ合うことで独創的な作品と関係性を築いてきた椎名と児玉に、『CS Channel』の舞台裏を大いに語り合ってもらった。

EMTG:まずは『CS Channel』というタイトルについてお聞かせ下さい。
椎名:最初は思い付きでした。これまでTVプログラム縛りでアルバムを作ってきたので、スポーツもディスカバリー(『大発見』)もあると言えばCS放送かなと。CSの語源はCommunication Satellite(通信衛星)の略だそうですが、「これってCustomer Satisfaction(顧客満足)でもあるのでは?」と思えて。そもそもこのパッケージのリリース自体、お客さんからもとても多くのリクエストをいただいていたものでしたので。
EMTG:児玉監督が最初に監督した事変のミュージックビデオ(以下MV)は「OSCA」(アルバム『娯楽』収録)でした。そこから今回の映像集まで、カメラで覗いてきた事変メンバーの変化については?
児玉:もともと5人全員のキャラ立ちが強いバンドですから、こちらも毎回「もっと行ける」と勝手に思い込んで様々なトライを強いてしまって。しかもみんな「できちゃう」から。
椎名:光栄です(笑)。監督はどのビデオでも、男性メンバーの素顔に近くて、それでいてカッコ良く見える表情を引き出すのがお上手で。何でそこまでメンバーのことを理解していらっしゃるのかと不思議なくらい。
EMTG:ちなみに監督にとって事変メンバーの活かし方が“掴めた”作品とは?
児玉:まだまだ掴めていませんね。東京事変は個々のキャラクターもそうですが、メンバー同士の関係性もまた魅力的なので、つい欲張ってしまうんですよ。そもそも演奏シーンだけでも成立してしまう程のカッコ良さに、余計な演出なんていらないという気すらして、毎回とても悩みます。
EMTG:コンテにたどり着くまでの椎名?児玉間のやり取りとは?
児玉:いつも完成形の楽曲のみしかいただきません。わりとノーヒントですね(笑)。
椎名:ほとんど相談もしませんよね。曲が出来て、それを監督にお送りするタイミングは、大抵私自身も制作の佳境やプロモーションで一番忙しい時期で。コンテを待っている間は、自分が書いた曲をどう演出して下さるかという、作家同士ならではの楽しみがあります。だからコンテをいただいた時点で満足しちゃうこともあって。
EMTG:椎名林檎は児玉裕一に撮られることについてどう思われていますか?
椎名:「役不足」という想いがずっと絶えません。監督のいろいろな作品を拝見すると、「あんな才能が、こんな要素が私にあれば」と思うことばかりで。
児玉:僕は僕で、たとえば椎名さんに「踊れますか?」と確認もしないのに、コンテ上では「踊る」ことにしてしまっているので。
椎名:そう言えばやり取りはおろか、確認もし合えたこと無いですね。
児玉:「これ、出来ますか?」といった確認が一切無いままに進めてますね(笑)。「出来るでしょ?」くらいの勢いで現場を進めて。
椎名:児玉組も事変組も言うこととやることが一致していない。出だしは「すみません」なのにやることは大胆で。だったらお互い最初から謝るなよっていう(笑)。
EMTG:すべての作品がこの充実した完成度である以上、多くのリスナーは椎名?児玉間で相当細かい打合せや密なキャッチボールがあると思っていると思います。でも実際は駆け引きの下に成り立っていたという……。
椎名:あ、それはよく問われます。「椎名からはどの程度注文を出しているのか?」と。この機会にはっきり言いますね。「九割方、監督がお決めになってるんですよ!」
児玉:(爆笑)その通りです。毎回博打を打っている気分で。でも悩んだら常に楽曲に立ち戻って考えることにしています。MVって音楽体感装置だと僕は思っていて。だから曲とともに感情がどのように揺さぶられながらどんな結末を迎えるのか、その時間の流れを強く意識します。メインのヴィジュアルと同時におおまかな構成が先に浮かんで、ディテールは後から辻褄があっていくという感じです。ビジュアルイメージだけだとうまくいかないですね。
椎名:そこは私の作曲と同じなんだと思います。コードの組み方とか、こちらが発想する部分や計算する箇所が似ている気がする。きっと監督は映像で作曲をなさっているんですね。
EMTG:そして新曲「ハンサム過ぎて」は、何と監督が作詞を担当されているという。
児玉:椎名さんから楽曲とタイトルを渡されて、「音から映像をイメージして、その映像にドンピシャな歌詞を書いてみて下さい」という無茶振りをされて……最初は全力でお断りしていたんですけど……。
椎名:通常ビデオを作っていただく際は、すでに曲の歌詞は付いている状態なので、ある意味歌詞に縛られるわけですよね。その制約が外れた時に、監督がどんな映像をイメージなさるかも興味深かったのです。より一層好きなようにやっていただけるかなと。
EMTG:実際、イメージしていた映像とMVの完成形は同じものになりましたか?
児玉:そうですね。自分からかけ離れたことは書けないので、東京事変のアルバムタイトルに込められる「テレビ」の世界というところに自分の仕事との接点を感じて、その表と裏の境目であるテレビスタジオを舞台にしました。ハンサムって外見的なことじゃないですか。映像も一番綺麗な表層だけを捉えるわけです。観る人はその向こう側や奥行きや裏側を知りたがるけれど、実際に撮っている僕らにとっては映っているものだけがすべてという。華やかだけど哀しくて残酷な世界ですよね。
EMTG:なるほど。では最後に事変×児玉ワークス2年分の集大成となったこの『CS Channel』の総論をお願いします。
児玉:やっぱり“頑張った”しかないですね(笑)。毎回ドタバタでしたけど、クールに構えていても完成まで到達しませんからね。
椎名:ほら、やっぱり作曲と同じ。腹を括って、どんどん肉体を動かさないと進まない。腕を組んでいても完成しないし、綺麗事では収まらないわけですからね。

【 取材・文:内田正樹 】

リリース情報

CS Channel

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CS Channel

発売日: 2011年09月21日

価格: ¥ 3,048(本体)+税

レーベル: EMI MUSIC JAPAN

収録曲

1. 能動的三分間
2. 勝ち戦
3. 空が鳴っている
4. 新しい文明開化
5. 女の子は誰でも
6. 天国へようこそ (Tokyo Bay Ver. CS Edit)
7. ハンサム過ぎて

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ライブ情報

東京事変LIVE TOUR 2011 DISCOVERY 9/30(金)府中の森芸術劇場
10/2(日)静岡市民文化会館
10/7(金)仙台サンプラザホール
10/8(土)岩手県民会館
10/10(月・祝)ニトリ文化ホール
10/14(金)本多の森ホール
10/16(日)新潟県民会館
10/19(水)大宮ソニックシティ
10/25(火)福岡サンパレスホテル&ホール
10/26(水)福岡サンパレスホテル&ホール
10/28(金)鹿児島市民文化ホール第一
11/3(木・祝)神戸国際会館
11/4(金)倉敷市民会館
11/6(日)広島市文化交流会館
11/12(土)名古屋センチュリーホール
11/13(日)名古屋センチュリーホール
11/16(水)神奈川県民ホール
11/22(火)グランキューブ大阪
11/23(水・祝)グランキューブ大阪
11/25(金)アルファあなぶきホール(香川県県民ホール)
12/1(木)東京国際フォーラム A
12/2(金)東京国際フォーラム A
12/6(火)東京国際フォーラム A <追加公演>
12/7(水)東京国際フォーラム A <追加公演>

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください

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