the pillowsの山中さわお、印象的なタイトルの2枚目のソロアルバム完成!
山中さわお | 2011.10.18
the pillowsのボーカル&ギタリスト&ソングライターの山中さわおが、ソロ第2弾アルバム『退屈な男』をリリースした。洋楽テイストを独自に昇華したポップセンスを持つ山中だが、全曲英語詞のアルバムでは魅力全開。クールなグルーヴとシニカルな歌詞、そしてロックンロールへの愛がバンドとはまた違う山中の表情を生み出している。
アルバムは1曲目「Vacant House」からショッキングな内容だ。“空き家”と題されたこの曲は、♪僕はお金持ちになったよ でも何も感じないのさ 退屈な男だな♪と歌う。一方でラストの「Absurd Song」は、♪毎晩このくだらない歌を歌ってる♪といかにも楽しそうに歌って笑わせてくれる。このロックな“ヒネクレ者”は、山中そのものだ。
さて、どんなアルバム作りだったか、話を聞いてみよう。
- EMTG:ソロも2枚目になりますが。
- 山中:セカンドなので、けっこう肩の力は抜けてます。ファーストのときは「やるぞっ!」って鼻息が荒かったんですが(笑)。ただ、ファーストを作って、いろんなミュージシャンとセッションする楽しさを知ったので、またやりたいなと思ってたんですよ。ただ、いつ出すぞっていう強い意志はなくて、単純にthe pillowsの活動の合間でやれるときにやろうと。
- EMTG:シビアに自分を責める「Vacant House」から始まって、軽快に自分を笑い飛ばす「Absurd Song」で終わるっていうストーリーになってますね。
- 山中:曲順は、ストーリーとかは全然考えてないんですよ。歌詞には関係なく、テンポとキーだけで並べてる。それがストーリーに聴こえるとしたら、それはリスナーの自由ですけど。
- EMTG:震災に対するメッセージにも感じられた。
- 山中:歌詞は、震災の前にほぼ書き上げてたから、たぶんメッセージはないと思う。ただ、震災後はまったく歌詞が書けなくなりました。
- EMTG:特にアルバムの前半が、暗くて……。
- 山中:それは元気のないときに書いたからです(笑)。歌詞は、自分で内容をコントロールしないで、その時に思ってることを書くようにしてるんで。たとえば「Vacant House」を書いた時は、心が疲れてたんじゃないかな。その意味で言えば、「Absurd Song」は、開き直ったブラックジョークみたいな歌です。
- EMTG:たとえば、何に疲れてたんですか?
- 山中:僕は「こういうふうになりたい」って目標を目指して進んでいくのは得意なんだけど、それが実現してしまうと退屈な感じがするんですね。今、the pillowsはコンスタントにアルバムが出せて、ツアーもできてる。それは嬉しいことなんだけど、自分にとっては得意じゃなかったってことを初めて知った。音楽以外に趣味がないから、音楽活動の合間の休息も、退屈に感じてしまうんです。
- EMTG:“音楽貧乏症”っていう(笑)。
- 山中:そうかも知れない。だって、去年から今年にかけて、the pillows、THE PREDATORS(GLAYのJIRO、Scars Borogh / ELLEGARDENの高橋宏貴と組んでいるトリオバンド)でもアルバムを出してるし。
- EMTG:あはは、退屈してるから3枚もアルバム作っちゃったんだ。
- 山中:そう言えるかもしれない(笑)。
- EMTG:今回のアルバムで、特別な思いがある曲は?
- 山中:3曲目の「The Devil,s Pub」で、the pillowsの初代サポート・ベーシストの鹿島達也さんと久々に一緒にやれたことかな。鹿島さんは僕らを6年間、手伝ってくれて、その後もオリジナルラブやハナレグミのサポートをしてるから、フェスとかでちょこちょこ会ったりしてたんですよ。ある時、「今度、レコーディングに誘ってよ」って言ってくれたから、「ようし!」と思って、鹿島さんとやるために「The Devil,s Pub」を作りました。
- EMTG:でも、この歌って、最悪のパブの歌だよね。
- 山中:そう、実在したパブ、っていうか、日本語で言えば居酒屋の歌。あるツアーで京都に行ったとき、日曜日でどの店も開いてなくて、仕方なく入った居酒屋が最悪だった。
- EMTG:歌のとおり、ヤバイ肉出すような。壊れたスピーカーを平気で鳴らしてるような(笑)。
- 山中:そうそう。しかもKISSを爆音で流してた(笑)。あまりにヒドくて、一杯だけ呑んですぐ出て来たんです。そんな最悪な思い出の歌を、鹿島さんと一緒に笑いながらやるのもいいかなと。
- EMTG:面白いね。
- 山中:そうしたら、鹿島さん、その店には行ってなかったんだって。
- EMTG:あはははは。シャレになりませんね。
- 山中:(笑)でも、サウンドがオルタナティヴなファンクで、鹿島さんが得意だったので、スタジオにずっと居てもらって、実質、“鹿島プロデュース”に近いです。PVも一緒に撮りました。帰り際に、「久しぶりに楽しいレコーディングだった」って言ってもらったのが、嬉しかったです。
- EMTG:よかったね。でも、その居酒屋、行きたくねー(笑)。
- 山中:翌年、その店の前を通ったら、つぶれてましたもん(笑)。
- EMTG:6曲目のインスト「Doll」も、エリック・サティのギター版みたいで、かっこよかった。
- 山中:エリック・サティは、すごく好きなんで、そう言ってもらえると嬉しいですね。
- EMTG:全体に、全然、退屈なアルバムじゃないですね。
- 山中:音楽以外は退屈……っていうアルバムなんですけど、震災があってからは、それは贅沢な退屈なんだなって分かった。自分の道を生きていくしかないんだって、今、すごく思ってます。
- EMTG:ありがとうございました。
【 取材・文:平山雄一 】
リリース情報
リリース情報
BORN AGAIN 2011.04.24 at Zepp Tokyo“HORN AGAIN TOUR”
発売日: 2011年10月12日
価格: ¥ 4,000(本体)+税
レーベル: avex trax
収録曲
1. Limp tomorrow
2. Give me up!
3. 空中レジスター
4. Nobody Knows What Blooms
5. Purple Apple
6. Moon is mine
7. Sad Fad Love
8. Comic Sonic
9. Biography
10. オレンジ・フィルム・ガーデン
11. Lily,my sun
12. カーニバル
13. サードアイ
14. Brilliant Crown
15. EMERALD CITY
16. Movement
17. その未来は今
18. LITTLE BUSTERS
19. Doggie Howl
20. TABASCO DISCO
21. HEART IS THERE
22. No Surrender