山中さわお、新作と共に回った初のソロ全国ツアーのファイナルを臨場レポート!
山中さわお | 2013.06.17
昨年7月に活動を一旦休止したthe pillows。しかし、山中さわお(Vo/G)のエンジンに休息の二文字はない。JIRO(B/GLAY)、高橋宏貴(Dr/Scars Borough / ELLEGARDEN)からなる3人組のTHE PREDATORSでミニアルバム『Monsters in my head』の発表&レコ発ツアー、そして今回はソロ名義で3rdアルバム『破壊的イノベーション』を今年2月に発表すると、初の全国ツアーに飛び立った。
今日はその21本目にあたる最終公演。開演20分前に会場に入ると、横長のフロアは既に多くの観客でごった返していた。場内に流れていたBGMが爆音に切り替わり、天井のミラーボールが煌々と回ると、山中を中心に、山倉勇太(G)、the pillowsでもサポートを務める鈴木淳(B)、そして楠部真也(Dr)の4人がステージに立つ。力強いドラムのビートが響き渡ると、1曲目「RED BAT」でライヴはスタートした。山中は髪を振り乱して激しくステップを踏み、更にジャンプもキメる。ド頭からロック少年さながらの熱き魂を解き放つパフォーマンスは圧巻だ。2曲目「Vacant House」では観客もハンドクラップして飛び上がるなど、場内の温度も上昇する一方。「久しぶりじゃないか、元気かい? マネキン500体ぐらい買おうと思ってたけど・・・」と山中はジョーク交じりに語りかけていたが、マネキン入らずの満員状態にバンドの演奏はさらに勢いづいていく。ツアー初日と今日でライヴの雰囲気も変わってきたと言っていたが、メンバー間の呼吸やグルーヴ感も噛み合ってきたのだろう。自由に、伸び伸びと、肩肘張らずに音楽を楽しんでいるように映った。そこから生み出される、曇りなきロックンロールの爽快感が、とにかく気持ちいい。
中盤には69歳からロックを聴き始めた山中の母親(現在74歳)の話を挟む。なんでも今回札幌公演を観に来たらしく、息子のステージを目撃して50歳若返ったと母親が言ったそうだ。これには会場も爆笑に包まれ、その母が好きな曲と前置きした後、「Rehabilitation」をプレイする辺りの流れもニクイ。その後もクダけたMCやファンの声に返答したりと、リラックスしたムードが流れていた。後半から本編ラストにかけては、「Answer」、「All Memories」、「HEAVEN’S PINHOLE」、「Mallory」、「Buzzy Roars」とソロ作で初めて解禁した日本語詞を含む最新作のナンバーを続けて披露する。音源と比べて、内側にあるエモーションが噴き出した熱を帯びた歌声に会場が惹きつけられる。何か張り詰めていたものが吹っ切れたように、天井を仰ぎ見て絶唱するシーンもあり、背筋がゾクゾクしてしまった。
鳴り止まぬアンコールに応え、キャッチーな「DAWN SPEECH」を放つと、次はエレキ片手に山中一人で登場し、「fool on the planet」、「Funny Bunny」とthe pillowsのナンバーをプレイする。ステージ去り際には「次はもちろんthe pillowsで会いに来るよ」とさりげなく告げ、1時間50分に及ぶライヴは幕を閉じた。
初のソロ・ツアーは山中本人にとって、歩き慣れない畦道を踏みならしながら、新たな感動、興奮、トキメキを見つけ出す旅だったのかもしれない。終始イキイキとした表情を見せ、片時もジッとせずに動き回るロック少年っぷりを見ていると、こちらまで元気が漲ってきた。山中さわおの次の展開が楽しみでしかたがない。
【取材・文 荒金良介】
【撮影 古溪一道】
リリース情報
セットリスト
Buzzy Roars Tour FINAL
2013.6.2@Shibuya O-EAST
- RED BAT
- Vacant House
- The Devil’s Pub
- The Beautiful Lip
- Absurd Song
- Slide in tomorrow!
- Desert me
- Rehabilitation
- Permanent black sheep
- silver moonlight
- Irritations
- たとえばぼくが死んだら
- Music Creature
- Answer
- All memories
- HEAVEN’S PINHOLE
- Mallory
- Buzzy Roars
- DAWN SPEECH
- fool on the planet
- Funny Bunny