テーマにしたのは“命”。My Little Loverのニューシングル「ひこうき雲」が教えてくれるものとは?

My Little Lover | 2011.10.18

10月12日にリリースされたMy Little Loverの新曲「ひこうき雲」は、7年ぶりに小林武史が作詞作曲を手がけたミディアムバラード。ファンならずとも、その普遍的なメロディーには癒されるはずだ。カップリングには荒井由美による同名の「ひこうき雲」のカバーを収録。女性としての強さ、優しさを感じさせる1枚に仕上げている。様々な出来事があった2011年、akkoとしては深い思いで音源を完成させたという。彼女が届けたかったメッセージとは何か……ここでじっくり語ってもらった。

EMTG:今作「ひこうき雲」は、NHKドラマ10『ラストマネー ~愛の値段~』主題歌として制作されたそうですね。
akko:ドラマの台本も読ませていただいたんですけど、保険詐欺の人間模様……闇と光とか、嘘と真実とか、そういう矛盾したものの先にある人間の深い愛情みたいなものを、楽曲で表現してほしいっていうことだと私は解釈したんですね。それを踏まえて小林さんと話し合って曲を制作していきました。
EMTG:そこで楽曲のテーマになったことは何ですか?
akko:大きく言えば“命”ですよね。“ひこうき雲”というタイトルを提案したのは私なんですけど。ひこうき雲って、空にツーッと美しく輝いてますけど、空の色が変わると見え方も雰囲気も変わるし、そして必ず消えてなくなるじゃないですか。人生も、いろんな物事が生まれてはまた消えて……ひこうき雲のような現象が何回もやってきますよね。消えてなくなった時にそこでどう立ち上がるか、みたいなことが今は一番大事なんじゃないかって思っていて。そんな想いもこの“ひこうき雲”というタイトルには込めてますね。
EMTG:小林さんから楽曲が上がってきた時、どんな感想を持ちましたか?
akko:小林さんの楽曲は7年ぶりくらいなんですけど、音の選び方とかも小林ワールド炸裂してたから、“ああ、マイラバっぽい、この曲!”って(笑)。懐かしくもあり、うれしくもありましたね。
EMTG:こう今の日本の状況とリンクして、前に踏み出す力に加え、凛とした力強さを感じました。
akko:そうですね。今こそどう立ち上がって復興していくか。その力みたいなものをずっと信じていきたいっていう願いも込めてます。震災以降、なんだか暗いし悲しいし淋しいし……。だから、今から生み出す音楽は、切なさとか悲しさは必要ないと思う。とにかくいい空気感とか気持ち良さ、優しさ、そして力強さが絶対にほしかったし、凛としていたかった。
EMTG:震災から半年経った今だからこそ、より伝わる曲なんじゃないかなと思いました。
akko:私ね、8月に岩手の被災したエリアに歌いに行って来たんですよ。瓦礫とかだいぶ片付いて綺麗にはなってるんですけど、皆さん精神的に疲れてる時期なんだということをお話をしている中でつくづく感じたんです。本当に今こそ、音楽が力強く側にいれたら背中を押してあげられるかもしれないと思いました。そういう想いはすごくありますね。
EMTG:でも歌は、決して感情的ではなく、どこか淡々とした印象を受けました。
akko:そうなんです。ガムシャラに歌うんじゃなくて、より言葉を伝えるために、物語を語るようなイメージで言葉をメロディに乗せていった感じですね。久しぶりに自分以外の人の歌詞だったこともあって、より客観的に言葉を捉えることができたのもあります。
EMTG:特に共感された歌詞はありましたか?
akko:エンディングの“心に隠した闇もいつか 消えてしまう時がくるように♪”という願いは、私の本心でもあったので、そこが言いたいがためのすべてっていう感じはありましたけどね。あと、原発問題のこととかを考えると、2番の“嘘のない世界はひとつもない でもその先で待ってた♪”という歌詞は、悔しいし、悲しいんだけども、それを受け入れることで、その先の光を信じて願わなきゃいけないっていう気持ちに今私もなってるので。歌に実感こもってると思います(笑)。
EMTG:また、歌詞だけで読んだ時と、歌として聴いた時の印象が違いましたね。
akko:歌詞だけ読むと重く感じても、やっぱり私の声の効果で決して重くならない、それがマイラバなんですよね。
EMTG:カップリングの「リトル・プリンス」は、童話『星の王子様』をモチーフに作られたそうですね。
akko:震災以降、私も本当に落ち込んでしまって、いろいろ手につかなくなってしまったんですね。その時に、大好きなサン=テグジュペリの『星の王子様』を読み返してみたんです。そしたらすごく心に引っかかる言葉がいっぱい出てきて、本来の自分に戻っていく感覚でとっても癒やされたんです。そして読み終わった時に、今こそ『星の王子様』みたいな感覚とか考え方が最も大切なんじゃないかと切実に感じまして。今のこの地球……大変なのは、日本だけじゃないじゃないですか。“今この地球を星の王子様が見たらどう思うんだろう?”って純粋に想像しちゃったりして。そこからイメージを膨らませて書いていきました。
EMTG:詞中のセリフ“「心で見なくちゃ ものごとはよく見えてこない」♪”はハッとさせられるところがありました。
akko:その言葉が「リトル・プリンス」の象徴的な文だと思うんですけど。本当に今、必要だと思いますね。
EMTG:3曲目には荒井由実さんの「ひこうき雲」をカバーされてますが、同じタイトルの曲をカバーするって面白い発想ですね。
akko:うちのスタッフから、“「ひこうき雲」にちなんで、ユーミンの「ひこうき雲」をカバーしたらいいんじゃないですか?”って言われて。なんて面白いことを言うんだと。私、もともとユーミンの「ひこうき雲」が大好きで、すごく尊敬している大好きなアーティストでもあったので、好きだからこそ歌ってみたいという気持ちにかられ、カバーさせてもらいました。
EMTG:歌詞も“命”っていうところで共通してますね。ただ、My Little Loverらしいサウンドアレンジで、荒井由美さんのオリジナルとはまったく曲の印象が違いましたね。
akko:そうなんですよね。ユーミンの「ひこうき雲」は、“生と死”で言ったらどちらかというと“死”に近い作品なんじゃないかと感じていて。でも今回の私が歌うユーミンの「ひこうき雲」は、生きることに向けて歌いたかったので、キーもずいぶん上げて、私の歌として歌わせてもらいました。何度も言ってますけど、悲しさとか一切ほしくなかったので、”生”に向けてだけの想いを込めてます。3曲共通して言えることなんですけど、“また一歩、また一歩”って踏み出すきっかけになったり、支えてあげられる存在になれたらいいなと願ってます。
EMTG:12月には My Little Lover Live#8 acoakko party-Little☆Prince night!が開催されますね!
akko:“acoakko”は、アコースティックとakkoの略なんですけど。キーボーディストとギタリストと私の3人だけでどこまで表現できるかっていうことを追求している場でもあるんですね。今年はいろいろな想いを胸にやって来られると思うので、よく使う言葉なんですけど、笑顔の連鎖……とにかく笑顔を振りまいて、その笑顔がどこまでも連鎖していけるような場にしたいですね。

【 取材・文:牧野りえ 】

tag一覧 シングル 女性ボーカル My Little Lover

ビデオコメント

リリース情報

ひこうき雲

ひこうき雲

2011年10月12日

ORS

ディスク:1
1. ひこうき雲
2. リトル・プリンス
3. ひこうき雲 (Yumi Arai cover song) -Bonus Track-
4. ひこうき雲 (Instrumental)
5. リトル・プリンス (Instrumental)
ディスク:2
1. ひこうき雲 (music clip)
2. ひこうき雲 (music clip メイキング)
3. Private eyes <15th anniversary tour. Best Akko!~2010.5.1 at 渋谷C.C.Lemonホール~>
4. STARDUST <15th anniversary tour. Best Akko!~2010.5.1 at 渋谷C.C.Lemonホール~>
5. Hello,Again ~昔からある場所~ <15th anniversary tour. Best Akko!~2010.5.1 at 渋谷C.C.Lemonホール~>
6. dreamy success <15th anniversary tour. Best Akko!~2010.5.1 at 渋谷C.C.Lemonホール~>

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サンマのさばき方
「サンマのさばき方」ですね(笑)。サンマをたくさんいただきまして。これはいっぱい料理できるじゃん! と思い、初めてサンマをさばいてみようと。
YouTubeで日本料理の料理人がサンマをさばいている映像を見つけまして。サンマは難しかった、細いから。 でもやってるうちにだんだんうまくなっていって楽しかったですよ。なめろうが激ウマでした!

■ライブ情報

My Little Lover Live#8 acoakko party - Little☆Prince night!
2011年12月20日(火)umeda AKASO
2011年12月22日(木)赤坂BLITZ

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください

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