まるで何度も映画を見返しているような、聴き手と一緒に成長出来るback numberのニューアルバム

back number | 2011.10.26

「映画は2度以上観ることで段々と真意が分かってくるもの。色々なところにストーリーのレトリックが配されていて、<あの場面は、ここに繋がっていたのか?><あの時のセリフはこういった意味だったのか?>等、1回目では何気なく観ていたものも、2回目では違った意図を帯び、また違った楽しみ方が出来る」。

 そう教えてくれたのは、高校時代の現代国語の先生だった。
 ことある毎に思い出す、この言葉。僕は今回のback numberのニューアルバム『スーパースター』を繰り返し聴き、やはりこのセリフを想い出した。

 そう、今作はまさに、切なさや健気さも交えた歌たちが、聴く者の胸を締めつけ、あの日、あの場面、あの時の気持ちに引き戻し、想いを馳せさせる彼らの真骨頂的ナンバーを中心に、1周目と2周目以降に聴いた時とでは、その感受が変わってくる作品。加え、各所にこれからや新しい彼らをも感じさせる楽曲がズラリと並んでいる。
 そんな聴き返す度に新しい心境と出会わせてくれる今作について3人に色々と聞いてみた。

EMTG : 今回のジャケットは、これまでの一連の女性が写っていたものと違い、かなり抽象的ですね。
清水:色々なものに見えるでしょ? これまでのシングルは、1人の女性と向き合ってきたテーマの下で作ってきた経緯もあり、あの女性シリーズが合っていたんですが、今作はそれではけっしてくくれませんでしたからね。いわゆる、色々なパターンや物語、視点からの歌ばかりで、そこに色々な女性像を浮かばせる作品になったというか。あと今作は、より人の感性に委ねたかったし。なので、どんな風にもとれる、このような抽象的なジャケットがぴったりだったんです。たぶん、このジャケットって、10人10通りの解釈があるだろうし、今回収録のどこかの場面のようにも見えますからね。
小島:眺めて色々なことを思い浮かべながら聴いて欲しいし、色々な人が見て様々な感じ方をしてもらいたいんです。
栗原:質感も今の僕たちにぴったりだと思うし。
清水:楽曲同様、このジャケもキレイなものだけを描いてませんからね。各楽曲に含まれている陰影も、ジャケットでもキチンと表わせたと思っています。
EMTG : 今作に際し僕は勝手に、徐々に幸せへと向かい行く楽曲が増えてゆくとの作品予想を立てていたんですが、実際はみなさんの真骨頂が基軸の作品性になりましたね。
清水:その辺りは、自分たちの芯が変わらなかったことの表れなんでしょう。あまり変化する必要がなかったというか。自分たちがどんなことを描写したいか、自身にとって最も大切な部分が表れた作品になったと思います。とは言え、逆にサウンド面では、かなり冒険してますよ。メロディや歌詞はそれほど変化が見えませんが、違った面での変化やチャレンジは盛り込めたかなと。
小島:今、自分たちが表現したいものが詰まった、かなり理想に近づけた1枚になりました。メジャーデビューしたこの1年が濃厚に凝縮された、総括的な作品というか。色々なことがようやく分かり、それが出せた作品になりましたね。
栗原:実は今までで最も色々なことを演ってるし。より自分たちらしさや自分たちが何をしたいかも具体的に表わせましたね。より3人がまとまった感もあるし、歌やメロディに対して、どのようなアプローチが最適か?を踏まえて出来たし。自分たちの理想的な作品になりました。
EMTG : 基本ライヴバンドなんだけど、作品になるとかなり緻密で。その作品は作品、ライヴはライヴ観がいいですね。
清水:ライヴでのあの感情やエモ―ショナルさをそのまま作品に収めたいというのとは、多少違いますからね。それぞれの曲が最も伝わり、最もキチンと届く方法論で挑んだ結果というか。
小島:これまで頭の中だけで鳴っていたものが、キチンと表わせる環境になりましたからね。どの曲も出来て嬉しかったし、それぞれに感動がありました。
EMTG : 確かに伝え方がキチンと考えられての方法論というのが各曲から伝わってきます。いわゆる雰囲気や世界観、物語性を伝えるために、各曲このような方法論を取ったんだなぁって。
清水:伝え方は最も大事にしているし、重点を置いてます。そのために1曲1曲全く違った歌い方や感情の込め方をしてるし。やっぱり伝え方を間違えると、伝えたい思いも伝わらないですからね。あと、アレンジに関しては、僕があまり事細かく説明しちゃうと、共有はあるけど、その人なりの解釈やイメージが出てきにくくなっちゃうんで、自分だけでなく、メンバーやレコーディングスタッフの解釈も尊重し、その差も大切にしました。
小島:その意識は実は音作りの時点から持っていて。各曲”こうしたい”的な意志をエンジニアさんに伝え、それに最も合う方法で音を引き出してもらいました。それを指揮官である依与吏(清水)に投げ、そこからキャッチボールをしながら仕上げていったんです。
清水:そんな中でも自分たちらしさや、ちょっと欠けているもの、いわゆるイビツなものも大事にしましたよ。基本、曲に呼ばれるものを信じて作ってますから。「ミスターパーフェクト」なんて、まさにそんな中生まれた曲でしたからね。いびつなものでも愛してもらえれば、それで充分というか…。
EMTG : 「ミスターパーフェクト」は、かなりシニカルな歌内容ですもんね。
清水:皮肉もですが、半ば素直な気持ちからですね。変わる度胸もないけど、完璧になったところで、周りに誰もいなくなってしまったら意味がないんじゃない?って。
栗原:あの曲は、新しさや自分たちの混沌さも表わせたんで、今までより表現も広いし。
清水:現場での決定や思いつき、中には事前に綿密に話合いながら作っていきましたけど、基本はどの曲も歌や歌詞に呼ばれてアレンジしていきました。それが最も正しいと信じ、そこから、あーでもない、こーでもないを繰り返し着地まで持っていったんです。
小島:最終的には自分たちが気持ち良いか?しっくりくるか?が採用の判断基準で。いわゆる判断を身体に委ねるというか。M-2の「スーパースターになったら」も、当初はもっとベースを弾いていたんです。だけど、もっとシンプルな方が歌に合うだろうと、どんどんシンプルになり、今に至ってますから。それこそ最初は弾きまくってましたからね(笑)。
清水:この「スーパースターになれたら」は、今の自分たちを最も表わせた楽曲かなと。歌詞は女々しく、<いつまでも変わらないな…>的なことを歌いつつ、メロディやサウンドは今までにないディスコサウンドだったり。
EMTG : この曲はある種の決意表明にも受け取れました。
清水:それは多分にありますね。自分が音楽を始めるキッカケを歌った歌というか。この曲を軸に色々なことが出来たことも自分にとっては非常に大きくて。目の前の人たちと分かち合える、より手を差し出してあげられる、それが今の自分たちがやりたいことですからね。
EMTG : 先程、「歌に出てくる相手は、各曲バラバラだ」と言ってましたが。逆に主人公は自分ただ一人のような…。
清水:それこそその主人公が僕なんでしょうね。自分の芯の弱さと強さ、変わらない部分や気づいたら自分が投影されていたってことなんでしょう。あと、やはりこのアルバムの面白いところは聴き手1人ひとりでハイライトが違うだろうってところで。その辺りは聴き手に委ねたいんです。
EMTG : そんな中でも、「リッツパーティー」は比較的明るくて。
清水:それこそ最初は、パーティソングの予定でしたから (笑)。”今までにないほど明るい曲を作ろう!!”と臨みましたが、結局はこの程度のほのかな明るさに (笑)。この曲では、小さな幸せを感じてもらえると嬉しいです。それにしても今回はかなり曲順で悩みましたね。
EMTG : 分かります。分かります。
清水:今作って、1stシングルの2曲に全曲が挟まれている形なんです。世に出ていく上でこの2曲は大事だったんで、あえて自分の芯でもあるとの自覚の下、最初と最後に入れました。
栗原:どの曲も粒ぞろいですからね。流れもきれいだし、並べ替えるとまた物語も違って感じるだろうし。
清水:M-1の「はなびら」にしても、ラストの「幸せ」まで聴いて、もう一度聴き直すと違って聴こえたり。それこそ最初はネガティブに響いていた曲も、一周こ回ってもう一度聴き返すと、ポジティブに聴こえてきたり。これを始め、2周目は、どの曲も響き方が違うと思うんです。
EMTG : 映画も2回目だと、また違った感じ方や、1回目では分からなかった色々なことが分かったり、判明したり、伝えたかったこと、言いたかったことがより明確に伝わってきますもんね。Back numberの今作って、まさにそんな感じです。
清水:自分でも、後から色々気づいたり発見したりする、そんな作品になったかな。僕らの歌ってどうしてもドキュメンタリーなところがあるんで、そういった意味では映画に近いかも。同様に、時間を空けて聴いた時に、また違った感じ方をするだろうし。盤は変わることがないんで、そこで以前とは違った響き方をするのであれば、それはきっと聴いている人の心境や環境に変化が、そこに加味され、表れたからだと思うし。そんな聴き手と一緒に成長出来る作品になったかなと。是非多くの人に聴いて欲しいですね。

【 取材・文:池田スカオ和宏 】

tag一覧 アルバム 男性ボーカル back number

関連記事

ビデオコメント

リリース情報

スーパースター

スーパースター

2011年10月26日

ユニバーサルミュージック

1. はなびら 
2. スーパースターになったら 
3. 花束 
4. 思い出せなくなるその日まで 
5. あやしいひかり 
6. 半透明人間 
7. チェックのワンピース 
8. ミスターパーフェクト 
9. こぼれ落ちて 
10. リッツパーティー 
11. 電車の窓から 
12. 幸せ

このアルバムを購入

お知らせ

■マイ検索ワード

●小島 和也
MAC

パソコンが壊れたこともあり、今までWINDOWSユーザーだったんですが、この機会にMACに乗り換えようと思っていて。メンバーもマネージャーも回りはみんなMACユーザーなんですよね。“こりゃ、互換性も含めMACを持ってなきゃいかんかな…”と。周りのMACユーザーにアドバイスを受けつつ、色々調べています。
●栗原 寿
駅名検索

最近は「現地集合」なんてことも多く、乗り継ぎに自信がないので、駅名検索や乗換案内をかけてから移動することが多いですね。いやー、「乗換」は電車名は出るけど、ホームがどこにあるか?まで記されてませんからね。いまいち複雑な駅もあったりで、戸惑うこともあります(笑)。だけど、あれに頼りすぎちゃうと、ついギリギリにスケジュールを組んじゃうんで、その辺りは慎重に使用しています(笑)。
●清水 依与吏
交響詩篇 エウレカセブン

映画を観るのが好きなんですけど、最近は劇場はおろかレンタルDVDを借りに行く時間もないので、もっぱら自宅のPCのオンデマンド配信を楽しむことが多いですね。そんな中でもアニメの「交響詩篇 エウレカセブン」にハマっていて。全50話あったんですが全て観ました。現実逃避でもしたいんですかね。なんか最近は、非日常な世界に無性に行きたくて。特にディズニーランドに凄くいきたい!うーん、夢の国に行きたい?!!

■ライブ情報

SIGMA FES.2011 ~感動だけが人のココロを打ち抜ける!~
2011/12/ 2(金) 渋谷公会堂
ワンマンツアー
2011/12/ 6(火) 名古屋ell FITS ALL
2011/12/ 8(木) 心斎橋MUSE
2011/12/17(土) 渋谷O-EAST
2011/12/22(木) 福岡DRUM Be-1
COUNTDOWN JAPAN 11/12
2011/12/29(木) 幕張メッセ国際展示場1〜8ホール、イベントホール

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください

トップに戻る