小林太郎、過去の混沌を吹き飛ばした会心作、メジャー1st EP『MILESTONE』。
小林太郎 | 2012.07.13
骨太でダイナミックなロックンロールを爆発させる、先日22歳になったばかりのロック界期待のホープ、小林太郎。2010年にインディーズ1stアルバム「Orkonpood」をリリースし、新人ながら「SUMMER SONIC」や「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」など数々の大型フェスに出演。順風満帆なスタートを切ったように見えたが、実は“混沌の時代を過ごしていた”と語る彼。7月11日にリリースされるメジャー1st EP『MILESTONE』は、様々な苦悩や葛藤を経て、それまでの混沌を全て吹き飛ばした会心作、まさに“「MILESTONE」=画期的な出来事”となったそうだ。EMTG MUSIC初登場となる今回は、EPの話を踏まえつつ「小林太郎」という人物がどう生まれたのか話を訊いてみた。
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小林太郎:小5の頃にCHEMISTRYを聴いて“歌を歌おう!”って練習してたんです。その頃はCHAGE & ASKAとか、Mr.Childrenとかが好きだったんですけど、バンドっていうものはよく知らなかったんですよ。それで、中2の頃にBUMP OF CHICKENさんを聴いて、カッコイイなと思って。それまではボーカルだけだったけど、ギターボーカルだと間奏のときに手持ち無沙汰にならないじゃないですか(笑)。あと、作詞作曲っていうものが付くと魅力的になるし、良いとこどりみたいな感じがしたんですよね。
それから高校に入ってからバンドを始めたんですけど、曲作りをするのに邦楽を聴いてるだけじゃ限界があるなと思ったんだけど、洋楽を全然カッコイイと思えなかったんですよ。でも、高1の終わり頃にいきなりNIRVANAがカッコイイと思って。今まで洋楽に全く興味のなかった自分が、いきなり聴ける体質に変わって。 - EMTG:どんな部分に惹かれたんですか?
- 小林太郎:声が良かったんですよね。それまではキレイな声で歌ってたけど、ガラガラのしゃがれた声で歌うのがすごく魅力的で。そこでロックのダーティーなイメージとか爆発力みたいなものを知って、そこはずっと今でも変わらずにあるなぁと思っていて。でも、元々曲をバンバン作るタイプじゃなかったのに、音楽を幅広く聴くようになったら参考にする範囲が広くなりすぎて、更に曲が作りにくなって(苦笑)。そこから混沌の時代を過ごしていったんですけど。
- EMTG:それはいつ頃まで続いたんですか?
- 小林太郎:最近までですね。『MILESTONE』まではそうだったと思います。
- EMTG:2010年にアルバムを2作(『Orkonpood』『DANCING SHIVA』)リリースされてますけど、この頃も?
- 小林太郎:そうですね。その後に「小林太郎とYE$MAN」っていうバンドで活動してたんですけど、あの頃ってガムシャラだった代わりに、よく分かってなかったんですよ。バンドをやったのも、自分が良い音楽を作るにあたって、ソロがいいのかバンドがいいのかっていう手段を模索したかったんです。実際どっちも良い物が出来たし、同じ歳で音楽を志している人よりも運良くいろんな経験が出来たわけだから、ソロかバンドかを選ぶのに充分な状況なはずだったんです。でも、選べなかったんですよね。そもそも自分にとっての「良い音楽」っていうのが何なのか分からなくて。
- EMTG:一番根底の部分が分からなかったと。
- 小林太郎:そう。何故自分が音楽をやっているのか最初からハッキリしてる人は少ないかもしれないけど、それがないまま来てしまったみたいで(苦笑)。でも全くないわけじゃなくて、漠然としてるんだけど、デカくて、強くて、太くて、熱量がすこぶる高いものがあるのはずっと感じてたんだけど、それを言葉で説明出来なかったんです。ちょうどその頃に震災があって、みんながメッセージを発信しているのに、俺はそれ以前に、自分のことが分かってないことを申し訳なく思って。それもあって、自分が音楽をやる答えを絶対に出さなきゃいけないと思ったんですけど、やっぱりいくら考えても分からなくて。だから、逆にこれは“分からないもの”だって思ったんです。
- EMTG:なるほど。
- 小林太郎:今まで俺のことを良いって言ってくれた人は、“俺”に言ってる訳じゃなくて、“俺の良さ”に言ってるんだと思って。だから、それを分離させるというか。自分はあくまでも器であって、自分の中身を知ろうとするんじゃなくて、自分の中身を純度の高いまま伝えるようにしようと思ったんです。それが聴き手に届けばある程度OKだなって思い始めて。
- EMTG:自分の中身を解放する、みたいな。
- 小林太郎:そう。今までは自分の中から出てくるものを“ちょっと待って!”って塞きとめて、良いものにするために加工しなきゃいけないって思ってたけど、それが邪魔だったんじゃないかなって。それを全部取り払って本能的に書こうと思ったときぐらいから、いろいろなものが整理された気がして。いろんな考えや想いみたいな歯車が初めて噛み合って、やっと動き出したなっていう、自分にとって一番画期的な出来事だと思ったので、『MILESTONE』って付けていて。
- EMTG:確かに『MILESTONE』は、過去2作に比べるとものすごくダイナミックだけど、ものすごくシンプルというか。核の部分が思いっきり出てきてる作品だなと思いました。
- 小林太郎:その通りなんじゃないですかね。今までは核が奥に引っ込みすぎてたけど、それを前に出して行ったわけだから。核はこの先変化して行くかもしれないけど、今はもっと前に行ける、前に進むしかないっていう想いが強くて。その感覚はアルバム全曲通して出てるなと思います。
- EMTG:「飽和」はものすごくダイナミックなロックンロールで、まさに解放というイメージです。
- 小林太郎:そうですね。すごくサラサラと出てきたんだけど、サラサラ出来たから良いのかどうかが分からなくて不安でしたね。ありのままを出したけど、それがダメだったらどうしようって。それが怖かったから塞き止めていたのもあるし、塞き止めていたものがカッコよかったって言われたら元も子もないんで(笑)。
- EMTG:確かに(笑)。本能的に書いたとのことでしたが、「廻って廻って」に<草食メロディー>っていうワードがありますよね。自分のことを無意識的に“草食だな”って思ったんですか?
- 小林太郎:どうなんですかね。世代的には「ゆとり世代」なので(笑)、そういうことを言われる機会もあって。無意識にそれが出てきたっていうのは、そう感じてるってことが大きいのかな。本質的には肉食な感じなんですけど。
- EMTG:サウンドも肉食ですしね。
- 小林太郎:でも、音楽って基本「肉食」だと思うんですよね。発信するわけじゃないですか。草食って受け身なイメージがあるから、演るより聴いてると思うし。だから自分でもなんでこの歌詞を書いたのか分析出来てないんですけど(笑)、もし、そういう音楽にちょっと腰が弱くなってるところがあるんだとしたら、そこはもう少し強くなった方がいいのかなって思いますね。
- EMTG:あと「泳遠」のようなミディアムな曲調のメロディーがすごくキレイですけど、その辺は昔J-POPを聴いていた影響もあるんですかね?
- 小林太郎:そうですね。チャゲアスなんじゃないですかね(笑)。でもあの時期って、いろんな方の歌のメロディーがすごく個性的だったと思うんですよ。例えば、今日の晩御飯を考えていた人のところに音楽が聴こえてきたとして、その曲が気になって晩御飯のことがどうでもよくなるような、土足で踏み込んで行くような音楽のエネルギーって、昔の人の中にすごく強く感じるんですよね。ジャンルとか関係なく、今の音楽全体的に言えることだけど、そういう太くて強いものがなきゃいけないなと思っていて。そういう音楽がもっと世の中に流れるような歯車のひとつであればいいなと思ってます。
- EMTG:そういう意味でも「小林太郎」は、今のシーンに対してやってやるっていう気持ちが強いんですか?
- 小林太郎:“やってやる!”っていうよりは、“どうなんだろう?”っていう感じかなぁ。俺はこういう太い音楽が好きだから、自分が作るものも太くなったけど、今の音楽を聴いてるリスナーの人達がこういう音楽を聴いたときに、どう思うのか全然分からないんですよね。今まで俺を見守ってくれてた人達に対しては“純度の高い小林太郎が出来ました”って自信満々で言えるけど。
- EMTG:では、この『MILESTONE』で「小林太郎」を世に問うと。
- 小林太郎:なんか、世の中の人に言うよりも、“お前が持っていた物はこんな評価だったよ”って自分に対して言ってあげたい。周りからのリアクションで刺激を受けるとは思うんですけど、それで元々持ってる物は変わらないと思うから、半分諦めがあるんですよね。良かったらまた作れるし、全く必要のないものだったら俺の存在価値がなくなるわけだから。それだけだと思うんです。だから、早くどっちか知りたいですね。
【取材・文:山口哲生】
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東京ドーム
前に神宮球場に行って野球の試合を見たんですよ。それまで野球って全然知らなかったけど、あの感じっていいなと思って。その前に野村監督の本を読んだのもあったと思うんですけど、“今この瞬間って悩んでるのかな?”って、表向きには見えなかった野球の内面的な面白さが分かった気がしたんですよね。それがキッカケで野球をもっと見るようにしようと思って、最近は野球のことをいろいろ調べたりしてます。
■ライブ情報
小林太郎 SHORT LIVE ACT
“MILESTONE Carnival”
2012/07/23(月)心斎橋 LIVE HOUSE Pangea
2012/07/27(金)タワーレコード渋谷店 B1「STAGE ONE」
ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2012
2012/08/03(金)国営ひたち海浜公園 SeasideStage
TREASURE05X~dream creator~
2012/08/23(木)クラブダイアモンドホール
※その他ライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。
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2012/07/23(月)心斎橋 LIVE HOUSE Pangea
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