Superfly、“ロック”で“ライブな”新作発表。

Superfly | 2012.09.14

 Superflyの『Force』は画期的なアルバムだ。3作目までの進化は常に前作の延長線上でなされてきたものだったが、今回はいきなりの跳躍を見せ、サウンド面から何から新しいアプローチが成されている。そうした中身の進化もさることながら、形態としても前代未聞。初回盤に限ってではあるが、なんとオリジナルのスタジオ録音盤に加え、同じ曲順で実際にライブ録音された音源を収めたもう1枚のディスク……即ちライブ盤が付くのだ。このライブ盤は6月から7月にかけて行なわれたファンクラブ・ツアーのときのものであり、そもそもアルバムが世に出る数ヶ月前に新曲だけで構成されたライブをやってしまうという発想自体がユニークで画期的なわけだが、しかしそこには志帆の音楽表現に対する真摯な気持ちが隠されていた。そして、それこそが『Force』を作る動機でもあったのだ。それについて話を訊いた。

EMTG:ファンクラブ・ツアーの東京公演2日間をぼくも観せていただきましたが、初めて聴く新曲ばかりなのに、みんなすごい盛り上がってましたよね?!
志帆:いやぁ、予想以上に盛り上がってくれてビックリしましたね。初めて聴く人にも伝わるように、なるべくシンプルな言葉で歌詞を書くっていうのは作るときから意識していたんですけど、それにしてもお客さんの勘がよすぎるというか。
EMTG:初めて聴いたその瞬間に腕を振り上げたくなるような新曲が多いからなんでしょうね。
志帆:そうなるようにエネルギーを注ぎ込みたかったし、バンドのメンバーとも気持ちの込め方とかを話したりしたんですよ。やっぱりステージ上が熱くなってないと、お客さんも熱くならないから。クールになんかならず、感情剥き出しのライブをしよう!って。
EMTG:曲順自体に物語性があるのも大きいんだなと思いました。最初の3曲で一気に盛り上がって、4曲目からじっくり聴かせる曲もでてきて、後半でまた盛り上がって、最後は大団円を迎えるという。アルバム自体がまさにそういうライブのような構成だから、初めてライブで聴いた人も入り込みやすいんだろうなと。
志帆:そうですね。そこは意識したところなので。ひとつのライブを観ているみたいに感じられるアルバムにしたいと思っていたので。
EMTG:そもそもどういう思いから、新曲だけでファンクラブ・ツアーをやろうと決めたんですか?
志帆:デビューして5年経って、ライブに欠かせない曲というのもできてきて、お客さんもそういう曲をやれば必ず盛り上がってくれるわけですけど、一方でそういう過去曲に頼りたくない自分というのもでてきてしまって。ここでこの曲をもってきたら絶対盛り上がるだろうなっていうのがあるわけですけど、なんかそれに頼ってるのって、ある種の甘えじゃないけど、どっか厳しさが足りないんじゃないかって思ったんですよね。デビュー前は誰もSuperflyの曲を知らなくて、でもだからこそお客さんに知ってもらおうと1曲1曲にすごくエネルギーを込めて歌っていた。そのときの気持ちを取り戻したかったというか、一度原点に帰ってみるのもいいんじゃないかと思ったんですよ。新曲を歌って、それを初めて聴く人たちにどれだけしっかり届けられるのかを試したかったし。そういう刺激的なことをやってみたくなったんですよね。
EMTG:ものすごいチャレンジですよね。
志帆:はい(笑)。自分に伝える力がなかったら、まったく盛り上がらない可能性だってあるわけですからね。で、ちゃんと新曲を伝えるためには、やっぱりいいメロディじゃないとダメだろうし、内容にしても何を歌うか真剣に考えて歌詞を書かないと薄っぺらいものになって全然残らないだろうし。だから今回は多保孝一とたくさん会話をして、一緒にバンドをやってた頃のように“Superflyは何を歌っていくべきなのか”とかも改めて話して、そこから1曲1曲作っていったんです。
EMTG:いつ頃からそういう原点回帰モードになっていったんですか?
志帆:去年のホール・ツアー中ですね。長いツアーだったんですけど、ライブをやればやるほど、今の自分には伝える力みたいなものがどれだけついてるのかなぁって思ったし。ライブってやればやるほど難しいもので、いろんな条件が重ならないと本当にいいライブになったとは思えないし、だからこそもっといいライブを作りたいと思うし。それにはもっと伝える力をもたないとって、ホール・ツアー中に思ったんですよ。
EMTG:『Mind Travel』のツアーをやりながら、そういうことを考えていた。
志帆:うん。どうやったらもっとシンプルに思いを伝えられるんだろう、とか。どうやったらもっと自分を曝け出せるんだろう、とか。あと、『Mind Travel』がわりと穏やかなアルバムだったので、そういう曲を歌いながら、もっと暴れる自分を見てみたいなとも思ったんですよね。もっとギラギラしたい、もっと爆発したいっていう気持ちがすごく強くなっていたんです。
EMTG:つまり、それが今回のアルバムの動機になったわけですね。
志帆:そうですね。『Mind Travel』もすごく好きなアルバムではあるんですけど、もっとこう、心の底から湧き上がるエネルギーみたいなものを感じたいと思って。
EMTG:『Mind Travel』の反動みたいなものがあった。
志帆:多少はあったと思いますね。まぁ、3rdがこうだったから4thはこうっていうふうにはそんなに考えてなかったんですけど。
EMTG:でも非常にバラエティに富んでいた前作に対して、今作はビジョンが明快でしょ?
志帆:そうですね。ある意味、今までで一番アルバムっぽいんじゃないかと思います。
EMTG:キーワードにして言うなら……。
志帆:「ロック」で、「ライブ」。あと、「プリミティブ」。ライブでこっちから誘導してお客さんをノセるんじゃなくて、聴いた瞬間にみんなのスイッチが入るようなものにしたいなと思ってましたね。あ、あと「シンプル」。今回は楽器編成をすごくシンプルにしたかったんですよ。「終焉」だけはストリングスも入ってるんですけど、基本的には少ない楽器でどれだけ表現できるかっていうところを追求したかったんです。
EMTG:去年「愛をくらえ」のシングルが出たときにも、シンプルに戻したかったってことを言ってましたよね。今思えばあれが今回のスタート地点でもあったのかな、と。
志帆:ああ、そうですね。ちょうど意識が変わり始めた頃でした。なんか、「愛をくらえ」を作ったときに、“オリジナル曲や!”って言える曲ができたなってすごく思えたんですよ。だから今回もオリジナル・アルバムだって胸張って言えるものを作りたいなと思ってて。何年代っぽくとか何々っぽくとか、そういうサウンド的なコンセプトはまったくなくて、私としてはただちゃんと昂揚できるものが作れるかどうかってところだけに賭けたかったんです。装飾的なことを考えるより、今は軸をちゃんと作ることのほうが大事な気がしたんですよね。
EMTG:今はそういうモードなんですね。装飾を排除して、シンプルに、生々しく、自分を曝け出した表現をしたいという。
志帆:なんかそうみたいですね(笑)。だから今度のツアーもシンプルに勝負したいと思ってるんです。前のホール・ツアーはわりと演出もあったんですけど、今回は中身勝負!
EMTG:5周年だからといって祝いモードのお祭りにするのではなく、むしろ原点に立ち返って、さらに攻めの姿勢を見せるという。普通と逆ですよね(笑)
志帆:ホントですね?。一体何に挑戦してるの?っていう(笑)。まぁ、まだ5歳ですから。キャリアにしたら短いし、ゆっくりやってる段階ではないんだろうなって思ってて。通過点な感じです。

【取材・文:内本順一】

tag一覧 アルバム 女性ボーカル Superfly

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リリース情報

Force(初回限定盤)

Force(初回限定盤)

2012年09月19日

ワーナーミュージック・ジャパン

ディスク:1
1. Force
2. Nitty Gritty
3. No Bandage (映画:闇金ウシジマくん イメージソング)
4. 輝く月のように(ドラマ:サマーレスキュー〜天空の診療所〜主題歌)
5. 愛をくらえ(映画:スマグラー〜お前の未来を運べ〜 主題歌)
6. 終焉
7. 平成ホモサピエンス
8. Get High!!〜アドレナリン〜
9. 919
10. The Bird Without Wings(映画:闇金ウシジマくん 主題歌)
11. スタンディングオベーション
ディスク:2
1. Force(Live)
2. Nitty Gritty(Live)
3. No Bandage(Live)
4. 輝く月のように(Live)
5. 愛をくらえ(Live)
6. 終焉(Live)
7. 平成ホモサピエンス(Live)
8. Get High!!〜アドレナリン〜(Live)
9. 919(Live)
10. The Bird Without Wings(Live)
11. スタンディングオベーション(Live)

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お知らせ

■ライブ情報

Superfly 4th Album『Force』リリース記念
Free Live at 代々木公園

2012/09/19(水)代々木公園野外ステージ

テレビ朝日ドリームフェスティバル2012
2012/10/06(土)国立代々木競技場第一体育館

Superfly Tour 2012-13 "Live Force"
supported by VO5

2012/10/26(金)戸田市文化会館
2012/10/29(月)神戸国際会館こくさいホール
2012/10/31(水)滋賀 びわ湖ホール
2012/11/01(木)なら100年会館
2012/11/05(月)名古屋センチュリーホール
2012/11/07(水)東京国際フォーラム ホールA
2012/11/08(木)東京国際フォーラム ホールA
2012/11/12(月)倉敷市民会館
2012/11/14(水)米子コンベンションセンターBiG SHiP
2012/11/16(金)郡山市民文化センター
2012/11/18(日)秋田県民会館
2012/11/20(火)札幌 ニトリ文化ホール
2012/11/22(木)帯広市民文化ホール 大ホール
2012/11/24(土)旭川市民文化会館 大ホール
2012/11/27(火)仙台サンプラザホール
2012/11/28(水)仙台サンプラザホール
2012/12/02(日)長野県松本文化会館
2012/12/04(火)富山オーバード・ホール
2012/12/05(水)福井 フェニックスプラザ
2012/12/07(金)大分 iichikoグランシアタ
2012/12/09(日)長崎ブリックホール
2012/12/11(火)広島市文化交流会館
2012/12/12(水)広島市文化交流会館
2012/12/17(月)大阪 オリックス劇場
2012/12/18(火)大阪 オリックス劇場
2012/12/24(月/祝)三重県文化会館 大ホール
2012/12/26(水)アクトシティ浜松 大ホール
2012/12/28(金)福岡サンパレス
2013/01/08(火)新潟県民会館
2013/01/09(水)新潟県民会館
2013/01/11(金)香川 アルファあなぶきホール
2013/01/14(月・祝)鳴門市文化会館
2013/01/15(火)高知県立県民文化ホール
2013/01/17(木)愛媛 ひめぎんホール
2013/01/18(金)愛媛 ひめぎんホール

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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