病院が舞台のドラマ『白衣のなみだ』のエンディングテーマ「七色」をニューシングルとしてリリースする河村隆一（5月29日発売）。バラードにおける表現力と歌唱力では、他の追随を許さない実力を持つ彼。今や40代となり、深みを増したボーカリストとして、どんな思いをこの曲に込めたのだろうか。40代の今だからこそ感じることや願いを、彼自身の口から語ってもらった。

EMTG：ニューシングル「七色」は、ドラマ「白衣のなみだ」のエンディングテーマですね。このお話というのは、楽曲制作前にあったんでしょう か？

河村隆一：そうですね。ドラマのお話をいただいて僕も何曲か作ったんですけど、（音楽プロデューサーの）葉山（拓亮）くんにも何曲かお願いして。で、「七色」の原曲をもらった時に、すごくキレイなメロディーだったし、歌いたいなと思って“この曲を元に作ろうよ”って話になったんです。歌詞は僕が書いたんですが、曲に関してはそういういきさつで一緒に作っていきました。

EMTG：歌詞を書くにあたり、ドラマの内容は意識されましたか？

河村隆一：結構参考にしました。ドラマのプロデューサーの方とお話した時に、“命を訴えたいドラマだし、残された人達に、精一杯生きるっていうメッセージを伝えたい”っておっしゃっていて。病院ものっていう設定もあるんですけど、2年前には東日本大震災もあったし、“最後まで生きる”もしくは“最後の瞬間まで生かそうとする”っていう思いがあったんですね。で、“さらに言うと希望が欲しい。重いだけの話ではなく、もっと人間の根源にある愛も含めて歌って欲しい”と。

EMTG：でも、たとえドラマを知らなくても、染みる歌になりましたよね。すごく大きな愛を歌われているので……。

河村隆一：僕の中でのテーマがあって、夜空の星って、実はすでに消滅しているのに、今でも光が届くじゃないですか。人間の思いだって、死んだあとも残っていくんじゃないかと思ったんです。愛した場所や、愛した人達の中に残っていく思いを信じたいなって。恋愛に例えれば、成就しないからって思いを断ち切ると、思い出は少しずつ色あせていく……でも、だったらキラキラした思いをずっと抱きしめて生きていくのもステキな選択なんじゃないかと思ったんですね。“生死”という意味ではなく、歌詞にあるように、恋愛においても、相手のことが好きだったという思いを、しっかり受け止めていくのもステキかなって。まぁ、人間的にかなり強くないとムリなんですけどね、きっと（苦笑）。

EMTG：確かに（笑）。なかなかそういう境地にはいけないと思いますが（笑）。

河村隆一：クヨクヨするくらいなら忘れちゃえって思うのが普通ですしね。でも、失恋のあとに新しい恋をしても、新しい場所に移り住んでも、その時の思い出は大切に残しておくべきじゃないのかなって。

EMTG：お話を聴いていると“光”っていうイメージも浮かぶんですが、タイトルは「七色」ですよね。“七色＝虹”っていう連想もできますが、「七色」とつけた理由は？

河村隆一：一番最初に葉山くんのデモテープをもらった時、すでに「七色」っていう仮タイトルがついていて。そのタイトルも含めて、すごく気に入っていたんです。実は夜空に浮かぶ星のあかりって、青白いものもあれば赤いものもあったり黄色っぽいものもあったり、いろんな色が存在しているんですよね。まさにその光自体が“七色”なんじゃないかと思ったんです。実態はなくても、思いを運んでいくようなイメージっていうか。

EMTG：歌入れに関しては、いかがでした？　こういうバラードって、すごくお得意のパターンじゃないかと思うんですが。

河村隆一：仮歌を録った時は、声がかれていて、あまりいい状態ではなかったんです。ただ、その声のかれた感じが、すごく曲に合っていたんですね。でも、よりロック的な発声じゃないと安定した声が出ない状態だったので、河村隆一というよりは、LUNA SEAのRYUICHI寄りの発声で歌いました。

EMTG：歌唱法で、そういうコントロールもできるんだ。

河村隆一：半音の半音をあまり使わないというか……。経過音を長く使わないと、荒れた感じにきこえないんですよ（笑）。

EMTG：レベル高過ぎます（苦笑）。

河村隆一：要するに「七色」は、ストレートにロックボーカリストが歌っているバラードだと思います。

EMTG：普通の人でもカラオケで歌えますか（笑）。

河村隆一：（笑）。葉山くんの曲って、実際に歌うのは難しいんですけどね。でも、ぜひみんなカラオケで歌って欲しいです（笑）。歌えたらすごく気持ちいい曲だと思いますよ。

EMTG：カップリングの「the earth~未来の風~」は作詞作曲ともにご自身で書かれてますが、「七色」同様、優しい曲になりましたね。希望を感じる力強い曲だと思います。

河村隆一：これは『省エネの達人「企業編」』（BSジャパン）っていう番組のテーマソングに起用していただいた曲なんですよ。今って夢を持てない若者が多い時代じゃないですか。いい車に乗りたいとか、いい生活したいと思うより、無難な生活をする方が賢いっていうかね。別に若い子達にスポーツカーを乗り回せって言いたいわけじゃないんです（笑）。僕ら大人が残してきたいろんな負の財産のせいで、もはや“自分ががんばっても前に進めないよね”って考える子が増えてしまった気がして。だから、僕ら大人も“まだあきらめてないよ！　次の世代にバトンを渡すまでには時間があるんだから”っていう意識を持てば、今より少しはよくなると思うんですよ。少しでもみんなの夢がかなうように、いきいきと生きることができるようになればいいなって思いで、この曲を作りました。

EMTG：曲の最後には子どものコーラスも入ってますね。

河村隆一：10歳とか12歳くらいの子たちなんですが、この子たちも10年経つと大人になるんですよ。あっという間に（笑）。だからこそ、ちゃんと思いをバトンタッチしてあげなきゃって感じます。

EMTG：この２曲、ぜひライブで聴いてみたいですよね。ツアーなどのご予定はありますか？

河村隆一：このシングルを出したあと、本格的にアルバム制作をつめると思います。実はすでに作業を進めてるんですよね。秋の始めくらいには出せるんじゃないかと……まだ、アバウトですが（苦笑）。でも、できればそのあとで、ツアーをやれたらいいなと思ってます。

EMTG：アルバムが出るって話をきくと、その内容が気になりますね（笑）。ちょっとだけ内容を教えていただけますか？

河村隆一：今回、悩んでいたのは、全曲バラードのアルバムにするか、LUNA SEAではやれないかもしれないけど、“こういうロックのテイストを河村隆一がやったらどうなるんだろう”っていうロックアルバムにするか。でも、どうせならそれをまぜてしまおうかって。あくまで僕のイメージですけどね（笑）。

EMTG：楽しみです（笑）。その前にたくさんの人に「七色」を楽しんで欲しいですね。

【取材･文：海江敦士】