ラップシーンの注目株、SKY-HIがメジャーデビュー!
SKY-HI | 2013.08.07
- EMTG:SKY-HIとして地道に活動を続けてきた結果、ついにシングル「愛ブルーム/RULE」でメジャーデビューしましたね。デビューはひとつの目標でもあったと思いますが。
- SKY-HI:そうですね。ラップのキャリアは7年ほど前からSKY-HI名義でスタートさせたんですけど、その時はすでにAAAの活動が始まっていたんですよ。なので当時、事務所には内緒で始めたっていう状態でした。そこから2年くらい経って、“SKY-HIとしてもメジャーでリリースしたいな”って思い始めたんです。で、出せるものならすぐに出したいと思って、企画書みたいなものを事務所に提出したんですけど、ものの見事に一蹴されて(苦笑)。“お前なんかが売れるわけないだろ!”って(笑)。そこで僕も、確かに実力も実績もいろんなものが不足してるなと実感したんです。
- EMTG:ポジティヴですよね。そこでガックリせずに、むしろ冷静に分析できてるし。
- SKY-HI:それでよかったと思ったのは、一蹴された時、“何だよ、やりたいこともできないのかよ”って思わず、その企画書や自分自身に落ち度が多すぎたからダメだったんだって気づいたからで。いろんな人から“やるべきだ!”って言われなかった時点で、まだまだ実力不足だったんだなと。 だったら、どうやって進めていけば世の中の人達が面白がってくれるだろうっていう方向にいけたのが、いい思考の転換だったと思います。そこから活動を続けて今回のメジャーデビューにたどり着いたんですよ。まぁ、長かったと言えば長かったかもしれないですけど、個人的には最善策で最短距離で実現できたかなって思ってます。
- EMTG:むしろ、パワーをつけてきたこの時期デビューっていうのは、よかったのかもしれないですね。
- SKY-HI:そうだと思います。こればかりは結果論だけど、なるべくしてこのタイミングだったんだって思ってます。
- EMTG:そして完成した「愛ブルーム/RULE」ですが、まず「愛ブルーム」を聴いた時、まさかこういう歌モノのディスコサウンドで来るか!と 驚きました(笑)。かなりハードなラップチューンで攻めてくるかと思ったので……。
- SKY-HI:メジャーデビューが決まった時、最初に作った曲のは「RULE」の方だったんです。「RULE」はこれまでの集大成の意味も含めて書いたんですけど、この曲のレコーディング直前になって思い直したというか……。メジャーデビューって、より多くの人の目や耳に届く機会をいただけるものなのに、今までの自分をテーマにすることで、何か世界を狭くしてるなって思ったんです。そもそも、SKY-HIのことなんて知らなくて当然だし、AAAも知らなくて当然。もっと言えば、ヒップホップとかラップがどうのってことも関係なく、街中でフッと耳にした時に興味を持ってもらえる音楽の手法でもやれるんじゃないかって感じたんですよ。「RULE」を作ったあとだったし、これは今までの路線をもっと逸脱したこともできるんじゃないかと。ちょうどアメリカでディスコブームもあったりして、じゃあ挑戦しようかと思って「愛ブルーム」を作り始めたんです。他のラッパーが絶対マネできない曲にしたかったし、シンガーでも、こういうことはやらないだろうし。そういうワン・アンド・オンリーな部分がなきゃ面白くないなって思ったんです。
- EMTG:キャッチーなメロもあるラップって、案外難しいですもんね。
- SKY-HI:Jay-zやNasもすごくポップだし、ヒップホップスターがアメリカ本国でポピュラリティーを得ている背景には、そういう聴きやすい要素があるからだと思うんですね。多くの人にポピュラリティーを感じてもらえる部分を考えた時に、「愛ブルー ム」みたいなサウンドがいけそうな気がしたんです。で、逆に自分でも意外でしたね。今までここに手を付けてなかったことに。
- EMTG:“こういうアプローチもアリなんだ!”って思いました(笑)。
- SKY-HI:今までが意固地になりすぎていたのかもしれないですね。その意固地だった部分から逸脱できたからこそ、制作にポジティヴになれた気がします。確かに「愛ブルーム」はメロ感もあるし、歌モノ好きな人達からの評判もよかったんですよ。
- EMTG:さて、冒頭でもおっしゃってましたけど、「RULE」ではガツンとしたメッセージを盛り込んでますね。たぶん、これまでのSKY-HIを知っている人は“これこれ!”って感じじゃないですか(笑)。
- SKY-HI:メッセージ……盛り込んでますね(笑)。これはもう自分の話になるんですけど、HIPHOPシーンからは“アイドルがこんなところに来やがって”っていう目で見られたし、AAA側の目線で見たら“アイツは毎日クラブに入り浸ってけしからん!”って言われ、どっちにも属せなかったんで、自分で自分のルールを作るしかなくて。その結果、たどり着いたのが、他人が作ったルールでは見ることができない唯一無二の景色のあるところだったと。“そんな生き方、オススメですよ”っていう(笑)。で、そんなメッセージを、誰が聴いてもその人のストーリーに置き換えられる歌にできるかどうかがテーマにありました。
- EMTG:そういうラップソングって、普通はハードになってくると思うけど、「RULE」にもキッチリとメロがありますよね。
- SKY-HI:聴いてくれた人の耳にスムーズに入るからっていうのは無意識にあったかもしれないです。ただ、トラックのコード感には、なるべくからみたいと思ってました。
- EMTG:こう言っては何だけど、ホントに素直に聴けますよね。あと、ラップの中に個人的な自分ヒストリーが入るパターンも多いけど、「RULE」はいろんな人に響きそうですね。
- SKY-HI:特にシングルだからっていうのはあります。完全に一人称の話だったり、違うストーリーにした歌詞も、書き直している時にはあったりしたんですけど、それはシングルとしてふさわしくないなって思いました。自分のことを知らない人に聴いてもらうのに、ずっと自分の話をしても説教くさくなってしまっても違うんじゃないかなと。
- EMTG:そこは完全にエンターテイナーのマインドですよね。嬉しいことにSKY-HIとしてのメジャーデビュー後、初のツアーも来年、決定したようで。実は今年の2月に行ったソロツアーを見せてもらったんですが、SKY-HIの場合、歌、ラップのみならず、さらにはダンス……と、武器は多いんですよね(笑)。
- SKY-HI:2月のツアーでは特にエンタメの部分を意識してました。個人名義のリリースがあったわけでもなかったし、コンピのアルバム(= 『FLOATIN’ LAB』)は出したけど、リリースパーティーはすでにやったあとだし。しかも、HIPHOPやラップを知らない人とか、AAAでの活動しか知らないお客さんも多いと思ったんです。でも、そこに変な壁を作りたくもなかったので、何も知らない人が来た時に楽しんでもらおうと思って構成しました。で、次のツアーはリリースもあった上でのライブなんで、もっとやりやすいと思いますね。
- EMTG:期せずして開いてしまった新しい可能性もありますもんね。しかも「愛ブルーム/RULE」でSKY-HIを初めて知った人も来るだろうし。
- SKY-HI:そうですね。そういう人を増やすためのメジャーデビューだし。ライブには、できるものはいろいろと詰め込もうと思ってます。詰め込むことに恐怖感がないのは、根っこの部分に自信と安心があるから。しっかりした根っこがあるから、振り幅の大きいことをやっても根本がブレないでいられる気がするんです。で、来てくれた人達が、帰る時に“明日もっと楽しく生きれそうだな”って気持ちにしてあげたいですね。
- EMTG:そのライブの準備もAAAの活動の合間を調整しながらですもんね。いや、ホントにアクティヴ……。
- SKY-HI:やりたいことと、やらなきゃいけないことがたくさんあるのは、すごく健全だしクリエイティヴなことですよね。こうしてインタビューしていただけるのも、7年前にはまったくなかったことですから(笑)。
- EMTG:この先も新しい音源が完成したら、またぜひ話をきかせてください!
AAAのメンバーとしても多忙な日々を送る日高光啓のソロ・アーティスト名……それがSKY-HIである。ラッパーとしての腕を磨き、そのスキルはAAAのライブや作品、そしてSKY-HIとしてのこれまでの活動でも証明済みだが、8月7日、ついに「愛ブルーム/RULE」でメジャーデビューを果たすこととなった。「WOOFIN’ AWARDS 2012」では「BEST OF RAPPER」に選ばれるほど、その流れるような高速ラップはお墨付きの彼である。このメジャーデビューでは、どんな手を見せてくるかと思ったら、「愛ブルーム」で意外にもキャッチーで軽快なディスコチューンを披露。メッセージ色の強い「RULE」はSKY-HIらしいトラックだが、はやくも振り幅の広さを感じさせてくれた。さっそくSKY-HIに、デビューまでの道のりや作品への思いをきいてみよう!
【取材・文:海江敦士】
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