ストレイテナー最新作『Resplendent』についてホリエアツシに訊く
ストレイテナー | 2013.09.11
- EMTG:久々の新曲が一気に5曲、ベスト盤『21st CENTURY ROCK BAND』や武道館公演の準備などしている間に制作してきたものですか?
- ホリエ:正月ぐらいはけっこう時間があって。今年に入ってから作った曲がほとんどですね。2月に武道館が終わった後は、すごい達成感で、1回アタマの中を空っぽにできたんで、その後に新曲作りを集中してやりました。その後のツアーまで空いていたので、その間にプリプロ・レコーディングをやった感じですね。
- EMTG:武道館では既発曲をやっていたから、新曲に向かうのはフレッシュな気持ちになれたのでは?
- ホリエ:新曲、実はけっこう久しぶりで、去年10月に出したシングル「From Noon Till Dawn」の3曲以来。だからわりと作りたい衝動は沸いていたんです。あと、武道館のセットリストというか演奏曲をファンから投票で募った事で、ファンがストレイテナーに対して求めている音楽性、それをあの時だけで決めてしまうのは早い気はするんですけど、けっこうマニアックなところを求めているというか。僕らが実験でやったりとか、その作品の中で、一番その時の自分たちがやりたいことを表現した曲が、30位の中に軒並み入っていて。だから、僕らが自由にやって来た事が、ファンの求めている事だと、そこで確信できたというか。そういうものが生まれたので、より自由に今回作れましたね。ファンも意外にとんがってるというか、生温さは求めてないんだなと。自分たちが、ちょっとでも手を抜くでもないけど、譲歩する感じでキャッチーなものを作ろうとしても、たぶんあんまり響かないだろうと思う。
- EMTG:それで新曲は研ぎ澄まされたものになったわけですね。
- ホリエ:自分たちが面白がっている事とか実験が、キャッチーさを越えて来たというか。
- EMTG:ではその5曲について伺いたいんですが、1曲目「シンデレラ・ソング」は、可愛らしいタイトルと裏腹にタフな曲で。
- ホリエ:「シンデレラ」っておとぎ話ですけど、いろんな国でいろんなシンデレラがあって、けっこうどぎつい話だったり、善悪はっきりしてたり。最終的にシンデレラが王だか王子に見初められて幸せになるという。でもそこまでのシンデレラの生い立ちってめちゃめちゃ悲惨だし、そこで「幸せになりました、めでたし」って言っていいのかなって思ってしまう。おとぎ話ってそういうの多いですけど、子供の頃のシンデレラの悲しみに満ちた人生というものを、そこで無しにできないよなとか。今回の作品のテーマとして、「Resplendent」=輝き、輝いているという様子なんですけど、輝きに至るまでの影の部分とか、輝きの先にある、輝きが終わってしまった状態とかも含めた、輝きというのを、シンデレラに託している感じです。
- EMTG:歌詞に出てくる「何よりも美しい夢」「何よりも美しい歌」とは?
- ホリエ:具体的な夢ではないんですけど、自分はどうしたい、というのを実現できることに向かっている人は輝いていると思う。「何よりも美しい歌」というのは、自分が作りたいなと思っている。漠然とですけど。
- EMTG:演奏はストレイテナーらしい鋭さと疾走感があってグッと心掴まれます。
- ホリエ:最初はストレートな曲だったんですけど、攻撃性を高めたくて。前作『From Noon Till Dawn』のテンションを絶やさずに行こうと決めた曲だったので、のっけからガツンと引っ張り込むようなアレンジを徐々に考えて行って。最初から1番のサビまでのガンガン決めが入って行くのとかは、後から考えて。
- EMTG:もうライヴでは演奏してるんですよね。
- ホリエ:この曲だけですけど、テンポが早いから決めに向かう溜めとかがないんですけど、その早さを楽しんでますね。
- EMTG:2曲目「BRILLIANT DREAMER」は、アルバム・タイトルになっている「Resplendent」という言葉も出てくるので、本作のリード・トラックかと思いますが。
- ホリエ:まあそういうことですね(苦笑)。言葉もシンプルだし、まさに「Resplendent」というタイトルを代弁している曲。自分には味方がいないとか、自分の事を思ってくれてる人は誰もいないとか、思ってしまう瞬間があるとしたら、そんなことはないよというメッセージというか。永遠には生きられないとか、何も永遠に続かないというところも、ネガティヴな意味じゃなくて、だからもっと幸せになりたいと願うという。
- EMTG:この曲にはタイトルの「BRILLIANT」の他にも輝きや光を意味する言葉がたくさんあって、キラキラ感がありますね。
- ホリエ:サウンド的にもキラキラ感満載で(笑)。高音のっけまくってますからね。
- EMTG:ポジティヴな気持ちにさせる2曲に続く「BLACK DYED」には意表を突かれました。こういうヒップホップ調の曲は珍しいと思うんですが。
- ホリエ:こういう曲を作る時って、バンドの集中力と言うか、アイディアを出す反射神経がすごくて。メンバーもガンガン、センスを出してくるのが面白いですね。
- EMTG:歌詞もメッセージより遊び心がありますね。
- ホリエ:これは言葉遊びだし、こういうサウンド的な詞は、こういう曲だからできる。だから作詞も存分に楽しんでますね。
- EMTG:リリック・ビデオが公開されていますが、あれは?
- ホリエ:ツアー序盤で、毎アンコールでカメラ持って出て行って、お客さんとリリックのリップシンクを自分で撮るというのを10何カ所か。それを繋げて編集したんです。
- EMTG:その場ではお客さんに言ってないんですか?
- ホリエ:ええ。会場でステージ上がよく見えてるお客さんは、僕が自分録りしてたのも見えてたし。リリックビデオを見て「なんだ!これか」って(笑)。
- EMTG:イントロのヴォーカルが、ちょっとラジ声にしてますけど、ストレイテナーでは初めてでは?
- ホリエ:そうですね、オートチューンは初めて。これ、カニエ・ウエストのインスピレーションから来てます。たまたま聴こえて来たのがすごく面白くて。
- EMTG:ピロウズの山中さわおさんは、ホリエさんのような声になりたいと言ってるほどなのに、声を変えてしまうというのはどうなんでしょう(笑)。
- ホリエ:ああ(笑)。でもオートチューンで違う声になっちゃうわけじゃないし、自分の声で遊んでるって感じですね。ちょっと演じてたり。ラップ調のところも、ホントに喋ってる時のような、喉がビリビリいうような声で歌ってたりとか、普段歌ってるのとは全然違う歌い方してますね。
- EMTG:4曲目「SCARLET STARLET」も、タイトルを見た瞬間はシンデレラに続く女性名の曲かと思ったんですが。
- ホリエ:(笑)色の方ですね。「深紅」の。赤い旗って革命のイメージがあって。自分が考えてる事、もしくは疑問に思っている事とかを、もっと声に出して表現して行くべきなんじゃないかって。周りに流されたり、受け身で情報を鵜呑みにしてしまうとかっていう事の危険を、この曲ではメッセージとして。
- EMTG:最後の一言「Kill Your Timid notion」が重要ですか?
- ホリエ:自分の臆病さを殺せ、という。どうしても自分が言わなくてもとか、自分より深く考えてる人がいるからって、引っ込んでしまう人が多いと思うんですけど、別に間違っててもいいじゃんって。とにかく言ってみると、もっといろんなことを知るきっかけになったりするし。そこで臆病になる事はない。そういう、世にちょっと滞ってることに対して僕から見た目線ですね。
- EMTG:主張のある曲なので演奏もアグレッシヴですね。
- ホリエ:かなり腰を据えてやらないと、どんどん走って行く曲ですね。
- EMTG:最後の「WISH I COULD FORGET」は穏やかに作品の最後を飾る感じです。
- ホリエ:これは流れとは違うタイプの曲ですけど、すごいパーソナル。ポエムというか、メロディーもちょっとポエムっぽいというか。エモーション系ではない。僕なりにフォークっぽい感じの曲。ちょっと古さをイメージしたんですよね、最初は。違う人に歌って欲しいぐらいの(笑)。ふわーっとした女性に歌って欲しいぐらいの。
- EMTG:真ん中あたりの歌詞が、孤独を厭う切実さを感じさせて印象的です。
- ホリエ:自分が傷つけて欲しいのか相手が傷つけて欲しがっているのか。自分でも煮え切らない感情と言うか。先がないんだったら本当は忘れてしまいたいとか。でも忘れられないし、このまま続いて行くかもしれない…というところから来てます。過去に捕われたり、一つの場所に自分で自分を縛り付けてるようなタイプの曲だと思います。結果的には自分を縛ってるんだけど。
- EMTG:「シンクロ」とかと近い感じの曲ですね。
- ホリエ:「シンクロ」あたりから具体的に出て来た部分なんで。こういう方向に振り切って曲を作るということは,長続きしないと思うんですけど、(ソロの)entをやってた時の、ブルースというか、よりパーソナルな詞というのを、たまに書きたい時があります。
- EMTG:このシングルの初回盤には,ツアー初日のクアトロの映像がついてますね。
- ホリエ:ツアー初日なんで、ここからどんどん変わって来てるし、ツアー後半で変わって行くと思うんですけど、まだ行ってない場所だったり、ライヴ見てない皆に向けて、こんな感じでやってまっせって(笑)。
- EMTG:47都道府県を回るツアーの後半戦が始まるところですけど、このツアーには意味が?
- ホリエ:4人になって初めてなんで、10周年というチャンスを逃す手はないなと思って。回っていて、楽しい意外ないですね。6年ぶりとかの場所でも皆来てくれて。この6年の間に子供ができちゃったとか(笑)。その土地に行かないとわからない、近さというか距離感みたいのを楽しんでいます。
- EMTG:もうひとつ、PV集『EMOTION PICTURE SOUNDTRACK 3』が出ますね。昨年のap bank fesでの「シンクロ」が1曲入ってますが、これを選んだ理由は?
- ホリエ:これは何年かに1作出してて、時期が来たというタイプの作品で。ap bankはすごい充実感のライヴができたんですよ。TVでは放映されたんですけど、「ap bank fes ’12 Fund for Japan」には入ってなかったんで、お借りして、入れました。
- EMTG:ミニ・アルバムと映像集と出ると、次はフル・アルバムかと期待が高まりますが?
- ホリエ:おそらく次のアルバムは、また時間と体力を尽くして作ると思うので、これを出して年内で(10周年は)一区切りというのがあるかもしれません。
ストレイテナー待望の新作『Resplendent』は、充実の5曲入り! 2月の武道館公演にベスト盤『21st CENTURY ROCK BAND』と実りあるメジャーデビュー10周年を過ごしている彼等から、溢れ出すようにドロップされたのは、確かなメッセージと包容力を伝える珠玉の5曲。ホリエアツシが丁寧にそれぞれの曲について語ってくれた。
【取材・文:今井智子】
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ビデオコメント
リリース情報
Resplendent(初回限定盤)[CD+DVD]
2013年09月11日
ユニバーサルミュージック
1. シンデレラソング
2. BRILLIANT DREAMER
3. BLACK DYED
4. SCARLET STARLET
5. WISH I COULD FORGET
ディスク:2
1.DISCOGRAPHY
2.PLAY THE STAR GUITAR
3.VANDALISM
4.SIX DAY WONDER
5.プレアデス
6.From Noon Till Dawn
7.YES,SIR
8.TRAVELING GARGOYLE
9.TENDER
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リリース情報
【DVD】EMOTION PICTURE SOUNDTRACK 3
2013年09月11日
ユニバーサルミュージック
2. Man-like Creatures
3. VANISH
4. VANDALISM -Prototype-
5. YOU and I
6. 羊の群れは丘を登る
7. シンクロ
8. From Noon Till Dawn (feat.Tabu Zombie & Kunikazu Tanaka)
9. シンデレラソング
10. BLACK DYED
11. DONKEY BOOGIE DODO -RECORDING CLIP-
12. Toneless Twilight -RECORDING CLIP-
13. SILLY PARADE -EXTRA VIDEO CLIP-
14. シンクロ -ap bank fes ’12 Fund for Japan-
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お知らせ
21st CENTURY ROCK BAND TOUR
2013/09/28(土)千葉 LOOK
2013/09/29(日)神奈川 横浜 BLITZ
2013/10/11(金)茨城 水戸 LIGHT HOUSE
2013/10/13(日)埼玉 HEAVEN’S ROCK さいたま新都心 VJ-3
2013/10/14(月祝)新潟 LOTS
2013/10/16(水)石川 金沢 Eight Hall
2013/10/18(金)福井 CHOP
2013/10/19(土)兵庫 神戸 VARIT.
2013/10/21(月)和歌山 CLUB GATE
2013/10/24(木)岩手 宮古 KLUB COUNTER ACTION MIYAKO
2013/10/25(金)岩手 大船渡 LIVEHOUSE FREAKS
2013/10/27(日)青森 Quarter
2013/10/29(火)北海道 札幌 ペニーレーン24
2013/11/01(金)静岡 浜松 Live House窓枠
2013/11/02(土)滋賀 U★STONE
2013/11/04(月祝)鳥取 米子 AZTiC laughs
2013/11/09(土)香川 高松 DIME
2013/11/10(日)愛媛 松山 サロンキティ
2013/11/16(土)大阪 なんばHatch
2013/11/17(日)福岡 DRUM LOGOS
2013/11/19(火)鹿児島 CAPARVO HALL
2013/11/20(水)長崎 DRUM Be-7
2013/11/22(金)広島 クラブクアトロ
2013/11/24(日)愛知 Zepp Nagoya
2013/11/29(金)宮城 仙台 Rensa
2013/12/01(日)東京 新木場 STUDIO COAST
2013/12/07(土)沖縄 桜坂セントラル
※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。