「自分たちに対しては常に厳しくあろう」。昨年末、バンドを取り巻く環境の変化を肌で感じながら、メレンゲの3人はこう話し合ったという。
　今年、レコード会社を移籍。その第二弾シングルが完成した。
めくるめく4分30秒の高揚感の中、クボの繊細な歌声が胸を締め付ける表題曲「シンメトリア」。幸福感と切なさ、陰と陽とが混ざり合った「ライカ」の人間臭さ。この2曲からは、現状に足をすくわれることなく、むしろ以前よりもしっかりと地に足をつけたバンドの姿が、はからずも浮き彫りになっている。
　クボケンジ（G・Vo）、ヤマザキタケシ（Dr）、タケシタツヨシ（B）。キャリアに裏打ちされた、しなやかで頑固なミュージシャン気質はそのままに、彼らが突き進むネクスト・ステージでは、この先、どんな音楽が鳴らされるのだろう。

EMTG：移籍第一弾シングル「クレーター」はアニメ『宇宙兄弟』オープニング曲だったこともあって、新たにメレンゲを知ったファンも多くいると思うのですが、反響はいかがでしたか。

クボ：どうなんですかね？　というのも僕ら、「クレーター」を出してからあまり大々的にライヴやってないんで、あまり実感が沸いてないというか。ただTwitterを見てると、初めてメレンゲ聴いてくれたっていう人もたくさんいて、それは嬉しかったんですけど。

EMTG：一方でこれまでのメレンゲ・リスナーからすれば、『宇宙兄弟』とメレンゲがどう対峙するのかという期待もあったと思うんですね。

クボ：そう、だから「ちゃんと出来るのかなあ」みたいなことは思いましたけどね。もちろん先方の要望もありますし、自分たちだけの曲じゃないから、あまり好き勝手作っていいわけでもないし。そういうのは初めてでしたよね。

EMTG：それは誰かに楽曲提供する、という意識とも違うものだったんですか。

クボ：違いますね。違うけど、でもそれに近いものではあったのかな。誰かに曲を書く時は、いい意味で無責任に作れたりするんだけど、メレンゲとして自分が歌うとなったら、すごく制約されたものになるんですよ。「これは自分が今、歌うべきなのか」とか、「俺が歌って成立するものなのか」とか考え込んじゃうタイプなので。それが、“アニメ”という枠があった分、逆にあまりいろいろ気にせず作れたというか。

EMTG：そうすると今回の「シンメトリア」は、自分たち本来のやり方で、ということになると思うんですが、これもやはりWOWOW連続ドラマ『LINK』のテーマソングなんですよね。

クボ：そうですね。でも、どちらかといえば好きに作らせてもらえたんですよ。「クレーター」の次の曲だっていうのもあったし。

EMTG：それでも2作続けて強い曲が並びましたよね。

クボ：今回、アレンジを先に作っちゃったんですよ。その時点で、強いものにしたいなというのがあって。ライヴでも楽しめるように、っていう気持ちはありましたね。第二弾として派手目に、というか。でも、だからといって、次も、その次もそうなるかといったら…。

一同：（笑）

ヤマザキ：今年の頭だったと思うんですけど、最初クボくんからデモで聴かせてもらったときは、もうちょっと違う感じだったんですよね。それでスタジオに入ってみんなで合わせていくうちに、ゴンゴンと攻めていくアレンジに仕上がっていったんですよ。

EMTG：「シンメトリア」は、今のバンドにとってどういう位置づけの曲ですか。

クボ：うーん…「クレーター」は今の自分たちにとっても若々しい感じになったなあと思うんですけど、「シンメトリア」は等身大かもしれないですね。『ミュージックシーン』のイメージを引き継いでいると思うし。今回、あんまり歌詞の辻褄を合わせなかったんですよ。割と断片的にメッセージを張り付けたっていう感じ。前の僕は時間軸とか起承転結とか、かなり意識して作ってたんですけど、それをやると、ライヴに組み込みづらくなるんですよね、メッセージが強すぎて。そういうのは今回、考えないようにして。もっとお客さんが勝手にイメージしてくれたらいいなあと思って。

EMTG：ヤマザキさんはこの曲に対してどういう印象がありますか。

ヤマザキ：曲に関しては、この四分打ちのグングンと迫ってくる感じは、今までなかったなあと。これまでの僕らの曲で四分打ちって、ダンサブルに捉えるか、もっと叙情的なものであったんだけど、今回は攻撃的な四分打ちだから。そういう意味では新しいかもしれないですね、リズム的にも若々しいなあと。

クボ：そう…か。

一同：（笑）

EMTG：タケシタさんも大活躍ですよね。

タケシタ：いや、僕はそれほど…（笑）。でも基本的には歌メロに寄り添いつつ、たまに飛び出てくればいいなあという、いつも通りの感じですかね。けど、ベースの音自体はちょっと強くなっているかな。

EMTG：その分、歌も強いし、思い切って歌っている印象があります。

クボ：こういう曲は照れちゃダメだなっていうのはありますよね。それとハッキリ言葉が聴こえるように、ちゃんと伝えるようにっていうのは最近すごく意識してます。

EMTG：それでもイマジネーションを掻き立てられてしまう、というのはメレンゲ曲ならではですよね。クボさんの中ではどういうイメージで歌詞を書かれたんですか。

クボ：やっぱりまだ第二弾っていう気持ちが強かったから、「クレーター」の余韻は意識しましたけどね。あとは、メレンゲとして何かやり残しているような気持ちもあるので、そういうのはちょっとずつ、ちょっとずつ込めていきたいなあと思って。

EMTG：やり残してること？

クボ：いやあ、いっぱいありますけどね。なんだろう…音楽的なところでいえば、僕はもっと立体感のある音作りはしたいなあとずっと思ってて。今回は結構楽器が多いんですけど、楽器の数というよりは、音数をもっと減らしたものを作りたいですね。音が壁になってないようなものを。日本人って特にそういうのが好きだと思うんですけど。もっと音が少なくて、でもメロディは伝わる音楽があるのになあっていう憧れはありますね、昔から。

EMTG：次のアルバムが待ち遠しいですねえ。そうは言いつつもカップリングの「ライカ」、これもメレンゲとしては新しいですよね。

クボ：ロックな感じがやりたいと思って（笑）。でも結局、歌詞はそんなことにはできないんで、音だけは…中学の時に聴いてたような音楽もやってみちゃおうかなあって。最初はアコギで、メロディアスな感じで作ったんですけど、もしかしたらロックな感じをはめられるかも？と思って、とにかくハモリとか、「いわゆる」みたいなものは全部押さえて。

ヤマザキ：僕らには挑戦でもあったので難しかったっていうのもありますね。聴いてはきたけど、こういうハード・ロッキンなものは、やってはこなかったから。同じシャッフルでもロックンロールっぽいもの、ブルースっぽいものとは違うし、そういう意味では苦労しました（笑）。でも、この何でもアリ感は新しいなあと思いましたけどね。

タケシタ：僕はクボくんに「こういうのやりたいんだけど」って言われて「マジか？」と。こういうHR/HMみたいなの、大好きだから。そこでまず胸が熱くなりました（笑）。そういうのが好きな人には伝わってくれると思う。

EMTG：歌詞では自分自身のことを歌っていますが、今のクボさんからは自然とこういう歌詞が出てきてしまいますか。

クボ：そうですね。何も考えずに書いたし、あんまり悩んでないですね。自分が音楽やってる以上は、その意味を見出したいと思うし。

EMTG：その欲求は今、高まっていますか。

クボ：うん、強いかもしれないですね。

EMTG：これはライヴのハイライトになりそうですね。

クボ：なる…かな？演奏する時はテンション高くなれるというか、歌詞の内容は別にしてもね。お客さんもノッてくれるといいなあと思います。

EMTG：その大きなライヴが決まっています。来年のバレンタイン、渋公ワンマン。

タケシタ：移籍後初ワンマンだし、渋公には思い入れもあるので、また絶対やりたいって思ってたから。

クボ：なんか確信したんですよ。メレンゲってホールとか椅子席があるところでやりたいんだなって。そういうのをもっと強いものにしたいなっていうのは今回ありますね。

タケシタ：「目指せ、ソールドアウト」ですよ。

【取材・文：篠原美江】