『イーガジャケジョロ』は、無意味な言葉。でも聴いている と、「ま、いっか」てな意味が伝わってくるから不思議。ユニコーンのバンド哲学を、そのまま体現したアルバムだ。復活３枚目にして、これだけお気楽なアルバムが作れたのは、やはりユニコーンならではと言いたくなる。
　川西幸一・作のタイトル曲の「イーガジャケジョロ」を皮切りに、EBIのセクシーボーカルが炸裂する「夢見た男」、なんともフラフラした言葉の羅列が魅力のOTナンバー「早口カレー」、手島いさむ渾身のラブバラード「それだけのこと」など多彩な曲が並ぶ。特に奥田＆川西コンビ作品「俺のタクシー」は、ユニコーン史上に残るナンセンスソングの傑作で爆笑必至。かと思うと、ABEDON（元・阿部義晴）作の正統派ロック「KEEP ON ROCK’N ROLL」では、ロックバンドとしての貫録を見せつける。
　OTとABEDONのソロと、電大の活動が有機的に結びついて生まれた『イーガジャケジョロ』について聞いてみた。ただし、今回、大活躍のEBIが体調不良で欠席という、これまたユニコーンらしい変則面白インタビューになった。

EMTG：アルバム制作は、どんな風に始まったんですか？

ABEDON：まず、電大の雰囲気を見てたね。電大っていうか、メンバーの川西（幸一）さんとテッシー（手島いさむ）とEBIは、いい意味で自由なんですよね。それを止める必要はないだろうってことをまず考えた。だから「KEEP ON ROCK’N ROLL」みたいな正統派の曲を一個やっておけば、あとは思う存分遊べるだろうっていうのが、どっかであったんです。そういう王道の曲がないと、邪念が入って思いっきり遊べないんで。焼き肉で言うと、どっかで必ずカルビとメシを一緒に食いたくなるじゃないですか、カルビは１枚でもいいから。そういうのを作らなきゃいけないなと思って、最初のほうに作ったのが「KEEP ON ROCK’N ROLL」です。これさえやってしまえば、あとは…。

EMTG：遊びまくり（笑）。

ABEDON：うん（笑）。

EMTG：それでOTにボーカルを振って。

ABEDON：そう。やっぱり１曲は欲しい。世の中の表向きにも、OTボーカルの王道曲が１曲はあったほうがいい。

EMTG：それで「KEEP ON ROCK’N ROLL」、カルビのような仕上がりになった！　でも、今回はOTの歌が案外少ないんじゃないかな？

OT：そうなのよ。いつもは俺に歌を振ってくるのに、今回は電大の３人が自分で歌いたがって、みんな振ってくんないのよ。「ほんまよ?、俺、わりと歌うまいんやで?。お前ら全部自分かい！」って思ってた（笑）。

川西：でもね、歌って楽しいなって今回思い始めたのは確か。

奥田：こういうこと、言ってんのよ。さすが、電大効果ですよ。

ABEDON：（笑）。

川西：でね、やってみると、やっぱり「民生の歌ってすごいなあ」と思った。

奥田：だけどやらしてくんないんですよね。

EMTG：１曲目の「イーガジャケジョロ」は、川西さんとテッシーが歌の中心だし。

手島：「ロック幸せ」のコンビがね。

川西：「ロック幸せ」コンビって（笑）。

奥田：過去の栄光みたいに言うな（笑）。

手島：今回は、「あなたが太陽」も「俺のタクシー」も「トキメキーノ」も、全員がパートを与えられて歌ってるわけですよ。

EMTG：みんな、歌うことに関してノリノリだぁ。

手島：電大で１年半、ツアーとかレコーディングとか、歌いっぱなしだったから、その効果をユニコーンに反映できてよかった！

EMTG：OTは嬉し泣きしてるけどね（笑）。で、「KEEP ON ROCK’N ROLL」を作った後は？

ABEDON：その次に作ったのは、「Boys ＆ Girls」。速いテンポの曲を僕が歌うっていうのをやりたかった。ちょっとパンクっぽいニュアンスも あって。ビート的には前に引っ張ってって、グイグイ盛り上げるようなのを僕がやる役目かなと思ってたんで、そういう曲を狙って作りましたね。

手島：ABEDONは、今回、ギターも弾いてますよ。

ABEDON：どれだっけ？

手島：「お前BABY」のリズムギターは、Aメロの部分がABEDONで、BメロをOTがやって、サビは僕がやってる。

ABEDON：Aメロがいちばん大変なんですよ。「なんで俺がいちばんこんな難しいパートやってんだ」って（笑）。

EMTG：ギタリストじゃないのに。

ABEDON：そうそうそう（笑）。

EMTG：ライブはどうすんの？

ABEDON：わかんない。

EMTG：EBIがボーカルだね。

ABEDON：そう、それで民生がベースにいくからね。だから、俺がギター弾かなきゃいけなくなっちゃうの。

EMTG：大変じゃん。

ABEDON：ホントに！今回ね、僕、鍵盤あんま触ってないんですよね（笑）。

EMTG：OTはあんま歌ってないし（笑）。その分、EBIくんのボーカルがすごいことになってる。

手島：やってくうちにああなったんですけどね。最初は探り探りやったけど。

奥田：まあでも、セクシーなボーカルを目指せということもあり。

川西：お色気ムンムンですからね、あれ。

手島：（笑）ムンムンって。

ABEDON：何回も録り直してたよな。

川西：ものすごいもん目指してたもんね（笑）。

ABEDON：なんか探してる風がありましたけどね。

EMTG：目覚めちゃったのかな。そういう意味では、今回、いちばん変わったのはEBIくん？

手島：変わったっちゅうか、もともと持ってるんですけど、スイッチが入ってなかっただけなんで。

奥田：そんなに新しい世界でもないけど。

川西：前より振り切ってるね。

奥田：前は、ちょっと恥ずかしがってたんじゃないの（笑）？

ABEDON：そうかもね。

手島：そうそう、照れはあった。でも最近はスイッチ入るとすごいんだよ、ホントに。

奥田：なんか照れないよね。

手島：うん、スイッチ入るとすごい。それまでは嫌だ嫌だ嫌だって言ってるんだけど。パチっと切り替わる。

奥田：さすが。

川西：安全装置が外れたみたいになってる。

奥田：芸人やね。

EMTG：いちばん変わったのに、今日は欠席してるし（笑）。

ABEDON：まあ、でも、EBIは前とは違うでしょう。スタジオで座ってる位置が、まず違う。

奥田：そうね。電大の人たちが真ん中にいたもんね。

ABEDON：コントロールテーブルの真ん中。

奥田：EBIがいたもんね。

EMTG：今まではなかったこと？

ABEDON：今までは後ろのソファーとか、そっちが多かったんですけど、センターにいるもんですからね。何かと目につくわけですよ。

EMTG：それはずいぶん違うね。そうすると音楽も変わる？

奥田：うん、変わる。

EMTG：アドリブ的な要素が多くなる？

奥田：そんなに準備してスタジオに入ってないからね。アドリブっていうより、ホントにその場しのぎのアイディアが出てくるわけですよ（笑）。

ABEDON：EBIくんは、周りの空気に関係ないんですよ。バンドってさ、その日によってメンバー間の空気って違うでしょ。誰かが機嫌悪かったりとか、誰かがすごい楽しかったりとか。そういうことでどんどんバンドの雰囲気っていうのは日によって変わっていくんですよね。僕はそれにわりと敏感なんですけど、EBIは関係ないんですよ。だからEBIのテンションが高いと、バンドのテンション高くなっちゃう。すごいどんよりした雰囲気でも、EBIは関係なくハイテンションだったりしたんで、「じゃあ、それに乗っかる」かみたいな。今回だいぶ助かったんですよね、正直。なんか困ったことがあると、「EBIく?ん、何かやって?」って言うと、わりと積極的に彼はやってくれたんで、みんなのテンションが上がる。ムードメーカー的なところはありましたよね。

EMTG：役立つマイペース男だ！そして、テッシーのバラード「それだけのこと」は、バックは完全にピアノだけ。

ABEDON：これはそのままやると普通のバラードになりそうだったから、わざとメロディを把握しないで弾いたんですよ。しかも、一発で録って終わりっていう。正味、１時間ぐらいだった。

手島：詞を書くときに、「これ、何を歌やええんや」って話をしてたら、奥田さんから「こういう曲は、どこまでも真面目に書くんだよ」ってアドバイスがあり。じゃあ、真面目に書いてこようーっつって。

EMTG：聴いて、嘘っぽいロマンだなって思った。復活３枚目にして、これだけお気楽なアルバムが作れたのは、やっぱりユニコーンならではだね。逆の言い方をすると、ノーコントロールでどん底のアルバムかもしれないけど（笑）。

ABEDON：あはは、３枚目でここにいったっていうのはいいね。このアルバムに目くじら立てる人は、まずいないだろうから。まあ、こういうバンドがいてもいいでしょう。これを作って、非常に楽になった。アルバムを完成させたことで、だいぶバンド的にはいい状態になってきてるんでね。多分、今回のツアーは面白いと思いますよ。気負いもないし。心配事はあるけどね、２つ、３つ。

EMTG：なんとなくわかる（笑）。

ABEDON：（笑）なんとなくね。

EMTG：ありがとうございました！

【取材・文：平山雄一】