原動力は、葛藤から生まれた衝動。“神戸の最終兵器”ドラマチックアラスカ初登場
ドラマチックアラスカ | 2014.07.18
- EMTG:そもそも、どういうバンドを始めようと思って集まった4人なんですか?
- ヒジカタ:どういうバンドをやろうっていうよりは、とにかくライヴがしたかったんですよ。でも、ライヴハウスに出るには、どうやらオリジナル曲じゃないといけないらしいと。それで、ライヴをするために曲を作り始めたんですけど、そもそも曲の作り方が分からなくて(笑)。
- EMTG:もう本当にイチから始まったんですね。
- ヒジカタ:そうです。オリジナルのバンドをやるのは、全員このバンドが初めてでした。
- EMTG:ちなみに、学校生活はどうでした?
- ヒジカタ:僕は誰かの前に立って人を引っ張るような人間でもないし、決まって遊ぶ友達もいないし、お昼はiPodで音楽聴きながら食べていて。イジメられてたとか、心の病気ではないんですけど、やり切れなさを感じながら過ごした3年間でしたね。
- EMTG:トバさんは?
- トバ:そんなね、楽しそうな学生生活を送ってたタイプに見えないでしょ?(笑)
- 一同:(笑)。
- ヒジカタ:そういう感じの奴らが集まったバンドなんですよ(笑)。「ライヴしてぇー」「目立ちてぇー」みたいな。
- EMTG:目立ちたい願望はあったんですね。
- ヒジカタ:「目立ちたい」というよりは「気付かれたい」ですね。例えば、バンドで文化祭に出れば、その日だけはヒーローになれるじゃないですか。普段は全く前に出ないんだけど、その日だけはいろんな人に見られて賞賛されるっていう。そうされたくてバンドを始めたんです。だから、最初の頃は音楽的なことは本当に考えてなくて。
- EMTG:自分達の音楽が見え始めたのはいつだったんですか?
- ヒジカタ:2枚目のアルバム(『オーロラを待っている』)を作ってる辺りですね。
- EMTG:じゃあ、1枚目の『ドラマチックアラスカ』は、結構手探りで?
- ヒジカタ:そうですね。レコーディングが何かもよく分かってない状態で、自分達だけで作ったんですよ。もう、ミックスとマスタリングの違いも分からないぐらいで(笑)。
- トバ:そこからいろんな人が関わってくれるようになって、そこから学んで行って、こんな感じなんだっていうのが分かったのが2枚目でした。
- EMTG:あと、昨年から本格的にツアーを始めていますね。
- ヒジカタ:ぶっちゃけ、わりと不健康な状態でデビューしちゃったんですよ。ライヴの場数も踏んでいないし、友達もいないような状態で1枚目が出て。でも、名前だけは聴いたことがあるっていう状態だったから、複雑な気持ちもありましたね。
- EMTG:知名度と自分達の実力に開きがあると。
- ヒジカタ:そうです。それを去年の下半期はずっと感じながらやっていたんで、ライヴの後はビデオを見て反省しようとか。
- マルオカ:とにかく一本一本のライヴを大事にしてました。
- EMTG:しっかりと足場を固めようと。そして、先日『ビヨンド・ザ・ベーリング』をリリースされましたが、いつから制作を?
- ヒジカタ:アルバムの前に出したシングル(「東京ワンダー」)と並行しながら作っていました。あの曲は、自分達の振り幅のひとつとして出してみたんですけど、「方向性が変わった」とか「雰囲気が変わった」って言われたのが悔しかったんです。それで、もう一回自分達の足下を見直したというか、1枚目でやっていたものをもう一回このアルバムで出したというか。
- EMTG:ここまで培ったもので、もう一度1枚目のつもりで作ってみたと。
- ヒジカタ:はい。中身は変わっていないけど、アウトプットの仕方は分かったので、より洗練した音になっていると思います。
- EMTG:曲としてはヒジカタさんのものが多く収録されていますが、トバさんは「マヤカシドリームランド」「憂世侍」を作曲されていて。
- トバ:「マヤカシドリームランド」は、ライヴで盛り上がる曲にしようと思って。4つ打ちで分かりやすいものというか。
- ヒジカタ:新曲の中でライヴの反応が一番良かったですね。「憂世侍」は和メロみたいな曲を作って欲しいって、僕が言ったんですよ。
- トバ:歌詞のテーマも面白いし、歌詞がつくと曲ってこんなにも変わるんだなっていうのを感じた曲ですね。
- EMTG:そして、マルオカさんが「未来手紙」を作曲されています。
- マルオカ:ちょっと懐かしい感じというか、昔のスピッツみたいな雰囲気がある曲にしたいなと思ってました。
- ヒジカタ:マルオカは、毎回アルバムのキュンとする曲を作る担当なんですよ(笑)。
- EMTG:担当分けがあるんですね(笑)。歌詞は全てヒジカタさんが書かれていますけど、「未来手紙」の歌詞がすごく素敵だなと思いました。字面としてはすごくネガティヴなんだけど、曲になると全然そう聴こえないんですよね。
- ヒジカタ:なんか、僕らもちょっと大人になったけど、昔と何も変わってないなと感じていて。それに、仕事をする人達はみんな年上だし、僕らも早く大人にならなきゃいけないんだけど、大人ってなんやろう? いつから大人なんやろう?って考えていた葛藤を書いてます。僕らの曲の根底には、そういう葛藤とか、もどかしさみたいなものがありますね。
- EMTG:『ビヨンド・ザ・ベーリング』のリアクションは、どんなものが届いてますか?
- ヒジカタ:「歌詞が良い」って言ってもらえたのはすごく嬉しかったです。単純に、今回は歌詞を書くのに時間がかかったんですよ。「アレシボ・メッセージ」は丸々5回は書き直してますし。昔は単語の羅列で歌詞を書いていたけど、今はメッセージとしてちゃんと書けるようになって、書き方を覚えたから迷う部分が出て遅くなったのかもしれないんですけど。でも、「良い」と言ってもらえたのは嬉しかったです。
- マルオカ:歌詞も大きいですけど、「東京ワンダー」はシングルのものとちょっと音が違うんですね。そういう細かいところにも気付いてくれた方が多くて。
- ヒジカタ:リミックスしたことも言ってなかったんですよ。
- ニシバタ:あとは単純に反応の数も増えましたし、多少差はあっても、どの曲にも「この曲が好きです」って言ってくれる人がいたんです。もちろんPVを撮った曲(「アレシボ・メッセージ」)はありますけど、バンドとしては全曲聴いてもらいたいので、そこは嬉しかったですね。
- EMTG:あと、『ビヨンド・ザ・ベーリング』っていうタイトルも素敵だと思いました。それこそ、さまざまな葛藤を乗り越えていこうとする意志を感じられて。
- ヒジカタ:前回のアルバムが『オーロラを待っている』だったんですけど、待ってたらイカンやろ?ってことで(笑)、能動的なニュアンスになってますね。タイトルは、毎回アラスカにちなんだものにしたいんですよ。前回がオーロラ、今回はベーリングで、その次も決めてるんですよ。
- EMTG:じゃあ、次の作品がもう見えていたり?
- ヒジカタ:だいぶ見えていて、曲も出揃ってきて、これから録ろうか?っていう感じですね。僕ら、曲のストックがないんですよ。録って出しの状態なんですけど、そこは新陳代謝が良くていいなと思いますね。
- EMTG:次作も楽しみにしてます。みんなに気付かれたいところからスタートして、いろんなことを経て、これから先はどういうバンドになりたいですか?
- ヒジカタ:僕らはthe pillowsがキッカケで知り合ったんですよ。バンドを始めた頃はコピーもしていたんですけど、the pillowsの立ち位置には本当に憧れていて。ずっと確固たる地位にいて、あんなに関係者にファンがいて、同業者に尊敬されているバンドも少ないんじゃないかなって。しかも、自分達の音を曲げずにやっているロックな感じにも憧れていて。でも、the pillowsになろうとしてもただの二番煎じなんで、そういうニュアンスで何か新しいことが出来ないかなと思っています。
神戸を拠点に活動しているドラマチックアラスカ。同じ高校に通っていたヒジカタナオト(Vo&Gt)、トバナオヤ(G)、マルオカケンジ(Ba)、ニシバタアツシ(Dr)の4人で結成され、昨年発表した第一作『ドラマチックアラスカ』をキッカケに、じわじわと名前が浸透し始めているギターロックバンドだ。そんな彼らが先日、3rdミニアルバム『ビヨンド・ザ・ベーリング』をリリース。瑞々しい衝動に満ちたサウンドの中に、どこか郷愁を感じさせる快作に仕上がっている。EMTG MUSIC初登場となる今回は、結成の経緯や最新作について、そしてこれからのことなど、幅広く話を訊いた。
【取材・文:山口哲生】
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2014/10/19(日)神戸太陽と虎 ※ワンマンv
※詳細、そのほかのライブ情報は、オフィシャルサイトをご覧ください。
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