ボールズ、悩みながら切り開いた進化の1枚。新作『SEASON』リリース

ボールズ | 2015.06.24

 関西出身の5人組バンド、ボールズが、2ndアルバム『SEASON』を完成させた。寂しさも悩みも振り切って颯爽と進んでいくような、キラキラしたメロディと軽快なビート。《セメント工場》や《炭酸の抜けたサイダー》、《切りすぎた前髪》など、景色や匂いや物語が浮かび上がってくるような単語をちりばめた歌詞。丁寧に作り込まれた、良質なポップ・アルバムに仕上がっている。前身バンドのミラーマンから、評判を集め始めた彼ら。酸いも甘いも噛み分けてきて、ようやくシンプルな場所に着地したような清々しさが表れている。山本剛義(Vo/G)の素直過ぎるインタヴューから、人間臭い彼らの魅力を感じて欲しい。

EMTG:今作に関して、何かテーマはあったんですか?
山本:凄く大きく言うと、自分たちが出来る限界までわかりやすくするっていう。ここまでなら、今の僕らはカッコよく聴かせられるっていうギリギリまで。そうしたらロック色が強くなって、バンド感が増したと思います。
EMTG:それは、昨年のメジャーデビューを経て、何か考えが生まれてきたから?
山本:そうです。前のアルバム(『スポットライト』)を出した時に、音楽が僕らの目的なんで、それを伝える手段を考えなきゃいけないと思ったんです。そこで、しっかりサビを聴かせるっていうテーマで作ったら、僕らと同じような音楽を聴いてきた世代はわかってくれたんですけど、イマイチ、中高生には届いていなかった。そういう子らに届かないと、バンドが趣味で終わってしまうんじゃないかなって。それで、今流行っている音楽とかも聴いた上で、それが消化できているかはわからないですけど、こうやったら伝わるんじゃないかって試行錯誤して作りました。歌を生かしながらも、5人の一体感が出たと思います。
EMTG:壁にぶち当たった上での変化だったんですね。
山本:デビューして一年になりますけど、正直悔しいことばっかりだったんです。自分たちは、思ったより大したことないなって痛感することばっかりで。
EMTG:前々から、たくさんの人に聴いて欲しいという思いはあったんですか?
山本:何もわかっていなかったんで、勝手に売れると思っていました(苦笑)。自分が作るものがわかりやすいとかわかりにくいとか考えたこともなくて、いいものを作っている自信はあったから、これを作っていれば売れるだろうって。甘かったんですけど。それでデビューしたら、いろいろ見えてきたんですよね。
EMTG:じゃあ、今作は自信作ですか?
山本:出来たものは100%カッコいいと思っていますけど、闇雲な自信は正直持てなくなって。あとは届いてくれと願うっていう感じですね。
EMTG:正直ですね。でも、楽曲からは、ポジティヴなエネルギーしか感じられないですよ。
山本:どんだけ落ち込んでも、音楽に助けられた一年だったんで、バンドをやっていて良かったと思えましたね。メンバーとスタジオに入っている時は元気になれて、そこだけ時空が歪んでいる感じだったんですよね。だから曲からネガティヴな感じが聴こえないのは、メンバーのお陰だと思います。前は、僕のバンドだと思っていたんで、曲の細かいところも全部僕が指定していたんですけど、今回はメンバーからの発信も多くて。
EMTG:バンド一作目、みたいな感じじゃないですか。
山本:そうですね。デビュー盤っぽいかもしれないです。
EMTG:そもそも、バンドをはじめた時から理想はあったんですか?
山本:ミラーマンっていう名前で、阪口(晋作/B)とユニットでやっていた時から、阪口と一緒に長くやりたいな、一生やりたいなとは思っていました。こういう曲をやりたいっていうイメージはころころ変わるんですけど。
EMTG:早くに良い相棒に巡り合えたんですね。
山本:彼の作る曲が本当に好きなんですね。良い歌詞を書こうって思えるんです。まあ、一緒におるから、こういうこと言うと気持ち悪い感じしますけど(笑)。
EMTG:音楽性は、最初は全然違うものだった?
山本:最初は高柳昌行さんや灰野敬二さんに憧れてノイズユニットを組んで、難波ベアーズに出ていたんです。でも、歌のある曲を作ってみようってなって、ペイヴメントっぽい曲を作ってみたら、こっちの方が自然やなって思ったんですよね。いろいろ考え過ぎて、自然に出来ていない時もあったんですけどね。
EMTG:今回は?
山本:後半4曲はごく自然に出来た曲で、頭4曲は凄く考えながら作った曲です。ほんとの意味で、幅広い世代に深く刺さるように。
EMTG:入り口は広く、だんだん深くなっていく流れですね。
山本:そうです。
EMTG:あと、単語の使い方が面白いですよね。《切りすぎた前髪》とか、《短い前髪》よりも物語を連想させるじゃないですか。
山本:普段から、響きがいい単語を思い付いたらメモしていて。常にストックしていないと不安なんですよね。バンド以外でも、不安なことが多いんですよ。待ち合わせでも、集合時間の15分前に着くように向かわないと。
EMTG:それ、疲れますよね?
山本:疲れますね。もっと大雑把にやりたいんですけどね。不安を解消するには、どうすればいいんですかね?
EMTG:うーん、でも、やっぱり準備ですよね。
山本:ですよね。受験勉強も、嫌だけど、やってしまったら気持ちよく寝れるじゃないですか。それって不幸なことじゃないんですよね。
EMTG:わかりますよ。
山本:今回のアルバムは、僕としては劇的な変化だと思ったんですけど、どう思いました? 『青写真』みたいな曲、去年だったらダサイと思っていたと思うんです。
EMTG:確かに、メジャー感があるから、他のバンドがやったら、歌詞が少し違っていたら、ダサイところに着地しそうな曲ではありますよね。
山本:一年くらい前にデモを作った時に、ギターのジャスミンに、ダサくて弾くの辛いわって言われて。そうしたら今回、凄く楽しそうに弾いていて。僕だけじゃなく、メンバーにも何か変化があったんじゃないかなって。売れ線を狙うとかじゃなくて、たくさんの人に届けたいって思ってきた実りなのかなって。
EMTG:それに加えて、山本さんの悩んだり迷ったりする性格が滲み出ているからこそ、伝わりやすい曲になっているんだと思いますよ。
山本:音楽って、娯楽やと思っていて。それは、バカにする意味じゃなくて、気付けばそこにあるようなものがいいし、偉そうなものにしたくないっていう。ばあちゃんが聴いても、なんかいいなって思えるような……でも、若い子にはなんかいいなで終わってしまっては困るかな、なんかヤバいって思って欲しいけど。
EMTG:若い子には、そこはかとない青春感が響くんじゃないかな。
山本:モラトリアムな感じをイメージした曲もあるし、今を生きているみたいに強い決意を持って作った曲もありますけど、青春ってひとつのテーマかもしれないです。街や人のことを歌っても、ただ街が好きで歌うんじゃなく、その街で過ごした何かが見えるように歌えば、青春を感じとれるんじゃないかなって。一曲一曲に、聴いてくれる人の思い出が焼き付けば嬉しいですね。

【取材・文:高橋美穂】

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リリース情報

Musical

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Musical

発売日: 2018年03月28日

価格: ¥ 2,500(本体)+税

レーベル: BOGUS RECORDS

収録曲

1.Entr’acte
2.砂時計
3.少年と夢
4.今日もわたしは
5.ハローグッバイ
6.星座線
7.コインランドリー
8.Interlude
9.かいじゅうがあらわれた日
10.妖精のピアス
11.フライサイト
12.景色の花束
13.musical

ビデオコメント

リリース情報

SEASON

SEASON

2015年06月24日

ユニバーサル ミュージック

1.青写真
2.STEP
3.ファンタジア
4.魔法
5.ひみつ
6.ギター
7.アンセム
8.瞬き

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お知らせ

■ライブ情報

見放題2015
2015/07/04(土)ミナミアメリカ村周辺のライブハウス16ヶ所

ボールズ ワンマンライブ
“ボールズのSEASON~いざ、プレイボール 編~”

2015/09/23(水祝)大阪 梅田Shangri-La

“ボールズのSEASON~9回裏ツーアウト満塁 編~”
2015/09/25(金)東京 下北沢SHELTER

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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