赤い公園、1年半ぶり3枚目のオリジナルアルバム『純情ランドセル』
赤い公園 | 2016.03.18
- EMTG:新作完成おめでとうございます。軽やかでカラフルで、聴き応えがある14曲入り。この曲数が必要な作品ということでしょうか。
- 津野米咲:今回は、完成型が見えてないまま制作に入って。ライヴしながら、“この曲録るか”ってスタジオ入って、何曲か録ってるうちに、古い曲も“これ合いそうだな”って録ってという感じで、もっと何年も続けたバンドみたいな作り方しちゃって(笑)。でもどっかで自信があったんですね。不安もゼロではなかったけど、曲順決まった時には鳥肌が立ちました。
- EMTG:そういうレコーディングの進め方、佐藤さんはどうでした?
- 佐藤千明:アルバム全体が見えないでレコーディングするのは初めてだったので、不安というよりは、どんなアルバムになるんだろうなという期待の方が大きかったですね。最初に「ショートホープ」を録った時には、けっこうアダルティな、大人な感じになるのかなと思ったんです。『猛烈リトミック』がやんちゃな猛烈感があったので、その流れからは「ショートホープ」でココロ的にはシフトできたかな。
- EMTG:「ショートホープ」は、赤い公園には珍しいゆっくりしたR&B調で歌うのが大変そうなテンポですね。
- 佐藤:テンポ感はそんなに苦戦しなかったんですけど、こういうなぞるような歌い方が慣れていなかったので、サビとか自分で(歌に)波を打つのに苦戦しましたね。蔦谷(好位置)さんがボーカル・ブースまで来て、「ちーちゃんは”♪ダー”だけど、”♪デュワ~”ってやって欲しい」と言われて、ほうほうなるほど、と思って。そういう歌い方が初めてだったので、それでちょっと眠たげなアダルティな感じに(笑)。
- EMTG:そうやってレコーディングを進める中から、「Canvas」がシングルに選ばれたんですか。
- 津野:はい。「KOIKI」の後は、もっといい曲じゃないと、と思って。「Canvas」は、いい曲なので。ふふっ。
- EMTG:本当にいい曲ですね。歌詞に五感が織り込まれてることもあって聴いてると共感するし、歌がメロディとひとつになって心に残ります。
- 津野:嬉しい。歌詞は何度も書き直しました。日本で名曲として残っているもののルーツは、歌謡曲かなと思って。歌謡曲のメロディ運びは、他の国では成立し得ないなと思って、それにチャレンジしてみようかと思って。これまで成功しなかったんですけど、初めて成功したかな。
- 佐藤:これはデモを聴いた時に最初の1音で、本当に桜の花びらが舞い散るみたいなイメージが浮かんで。次第に時間の流れがゆっくりになって、サビでまたワッと咲き乱れるみたいな。今言われて気づいたんですけど、五感が入ってるから自分の中で一番だった春をイメージして歌えました。今まで、そういう風に自分の人生とか思い出に寄り添いながら歌うということがなかったので、そこを引き出されたというか。素直な気持ちで歌いましたね。
- EMTG:歌との距離が変わった感じ?
- 佐藤:そうですね、今までは声で表現するとか曲のイメージに合うようにとかだったんですけど、私は歌詞になっている言葉を伝える役割があるなと思って。わかるかわからないかの差なんですけど、この言葉を歌う時は熱を帯びてるなとか、自分で実感できたので。そういう感じにシフトしましたね。でもそれは「KOIKI」からの歌詞の流れで、すごく素直なものになったというか。それが大きいですね。
- EMTG:津野さん、歌詞への意識が変わりました?
- 津野:そうですね、自分の思ったことを書くというか。そういう弾みがついた感じがありますね。前は、これはちーちゃん言わなそうだなとか、ちーちゃん歌うならこういう方がいいかなとか。今は、自分の気持ちでも素直に書いていいんじゃないかって思います。
- EMTG:それは大きな変化ですね。
- 津野:私は曲を作って、みんなの動きを観察して、赤い公園で遊ぶのが趣味、みたいな感じたったものが、昨年なんのリリースもないツアーをやったことで、私はただこの人たちと演奏する、4分の1でいるという、そういう居場所に自分がストンと収まった感じがして。だからバンドで鳴らすことの方が大きくなった。以前は自分が書いた曲で、4人で演奏するアレンジが思いつかなかったら、自分の段階でボツってたんですよ。今は4分の1としてギターを持ってできることがある、と思えて。プレイヤーとしての自分を、作曲家の自分が頼りにできるようになってきたというか。「ナルコレプシー」とかデビュー前の合宿でできた曲ですけど。それができると思えるようになった。
- EMTG:これは歌詞を藤本さん(B)と共作してるんですね。
- 津野:私が「わー、もう歌詞ダメだー」ってなってたら、ひかりが「私が作るよー」ってサビのところ書いてきてくれて。それに周りを増やしてメロディつけて。これはなんとも言えないような女の子ロックになる予感がして、亀田さんに「キュンキュンしたいんです」ってお願いして。眠そうにやってみようって、みんなの協調性が発揮された。
- 佐藤:ギターとか音がめっちゃ眠そうに仕上げてきたから、歌だけ起きてたらどうしようと思って(笑)。で、寝てるんだけど大サビでどんどん起きていくみたいのをやりたくて。
- EMTG:「デイドリーム」も眠そう。
- 津野:そう、このアルバムいかほど眠いんだ説が(笑)。寝てるのはたいてい昔書いた曲なんです。でも今の自分たちにフィットする。無意識の状態を表現できたら、それが素直なんじゃないかと、独特の回路でそこにたどり着いたんですけど。
- EMTG:「14」も素直さの発露?
- 津野:「14」「西東京」は、ただの青春ですね(笑)。
- EMTG:「ハンバーグ!」も素直ですよね。お母さんのハンバーグを歌ってる。
- 津野:これは普段言えないようなことだから、発売されてお母さんが聴いちゃうのがすっごい気まずい(笑)。でもこれは、大人になって気づき始めたこと。どこにでもあるようで、いつまでもあるわけじゃない。なんでもないけど会いに行こうと思った時、本当に自分のお母さんのことを思い浮かべて書きました。
- EMTG:いろいろなところで津野さんの変化が現れているような?
- 津野:そうですね。考え方がだらしなくなったかもしれない(笑)。前は、削げても足りるように120%ぐらいでみんなのところに持って行く。それはプレッシャーではなくて性格で、あまりに赤い公園が大事だから、自分も死力を尽くしておかないと次の日に後ろめたさで死ぬぐらいの(笑)。今は、内から4分の1として見てるからか、素直になれたからそういう見方ができるのかもしれないけど、自分のまとまってないような気持ちも、出してみようと思いますね。前は歌詞を書けないところなんか見せてなかったけど、「Canvas」なんて歌入れ直前まで書いてて。なんか、みんなの一生懸命さに、気づきあっていたんですかね。制作中、いっぱいいっぱいで怖い顔してたみたいで、3人がふっとカラオケに誘ってくれて。
- 佐藤:死んでたね、あの時。大丈夫かなーって(笑)。
- EMTG:だから「あなたのあのこ、いけないわたし」もあるんでしょうね。
- 津野:これが素直だったら怖いでしょ(笑)。私、みんなとの共通点ないと思ってたんですけど、自分の女の子という部分には、みんなと同じところがいっぱいあって、それに気づいて嬉しくて書いたところがあります。
- EMTG:それはコイバナするわけでもなく思うこと?
- 佐藤:めっちゃコイバナするんですよ。
- 津野:こういう気持ちみたいのはみんな持ってると思う。羨ましいなとか、あとちょっと可愛かったらなーみたいな。これノイジーな感じだったらホントに怖いけど、よかったポップになって(笑)。
- EMTG:そういう制作過程を知ると、『純情ランドセル』というタイトルが納得できますね。
- 津野:出来上がって、このまばゆい純情感は何だ!と思って。あと、ここから新1年生がランドセル背負って行く気持ちで行くよと。すごい速さで赤い公園の音楽が変わってきたと感じてる人が多いと思うんですけど、私としては、やりようが変わってきただけでそんなに変わってない。でも変わってると感じる方々の、赤い公園メーターの中心を行く感じになるんじゃないかな。一番最初からやってきたことが、すごいごちゃ混ぜになって、これ聴いたらいいですよって感じにまとまったかなと思います。
- EMTG:ツアーも発表になりましたね。
- 津野:まっとうに格好良く面白く、可愛くやろうと思ってます。
『公園デビュー』『猛烈リトミック』に続く赤い公園の3作目は、全14曲入りの『純情ランドセル』。これまでになく純粋に、フレッシュな気持ちで取り組んだ新作は、ソングライティングを手がける津野米咲(G)の新たな顔を見せながら、4人の一体感を伝えている会心の一作だ。先行シングルとなった「KOIKI」「Canvas」をフックに、バンドらしいアツさや女性バンドらしい柔らかさを詰め込んで、14曲が次々と聴き手の心に飛び込んでくる。なんと小気味のいい小粋な作品だろう。この作品が生まれた過程で大きな変化があったという津野と、そんな彼女を見てきた佐藤千明(Vo)の二人に話を訊いた。
【取材・文:今井智子】
リリース情報
アイラヴユー
発売日: 2021年02月03日
価格: ¥ 2,728(本体)+税
レーベル: ソニー・ミュージックレーベルズ
収録曲
01.今夜だけ
02.ハイライト
03.突破口
04.mob
05.自慢になりたい
06.パラドックス
07.アイラヴユー
08.予感 -Album mix-
09.時代
10.ひとりで生きていたならば
11.さよなら絶望
ビデオコメント
リリース情報
純情ランドセル(初回限定盤)[CD+DVD]
2016年03月23日
ユニバーサル ミュージック
[CD]
1. ボール
2. 東京
3. Canvas
4. 西東京
5. ショートホープ
6. デイドリーム
7. あなたのあのこ、いけないわたし
8. 喧嘩
9. 14
10. ハンバーグ!
11. ナルコレプシー
12. KOIKI
13. 黄色い花
14. おやすみ
[DVD]
・「KOIKI」MUSIC VIDEO
・「Canvas」MUSIC VIDEO
・「黄色い花」MUSIC VIDEO
・ 赤い公園ドキュメンタリー映像「情熱公園」
1. ボール
2. 東京
3. Canvas
4. 西東京
5. ショートホープ
6. デイドリーム
7. あなたのあのこ、いけないわたし
8. 喧嘩
9. 14
10. ハンバーグ!
11. ナルコレプシー
12. KOIKI
13. 黄色い花
14. おやすみ
[DVD]
・「KOIKI」MUSIC VIDEO
・「Canvas」MUSIC VIDEO
・「黄色い花」MUSIC VIDEO
・ 赤い公園ドキュメンタリー映像「情熱公園」
お知らせ
■ライブ情報
赤い公園マンマンツアー2016
2016/04/23(土)水戸 LIGHT HOUSE
2016/04/28(木)浜松 窓枠
2016/05/01(日)高知 X-pt
2016/05/02(月)高松 DIME
2016/05/07(土)仙台 MACANA
2016/05/08(日)盛岡 the five morioka
2016/05/11(水)新潟 RIVERST
2016/05/13(金)金沢 vanvan V4
2016/05/20(金)名古屋 E.L.L.
2016/05/22(日)広島 セカンド・クラッチ
2016/05/27(金)大阪 BIG CAT
2016/06/01(水)岡 山IMAGE
2016/06/03(金)福岡 DRUM Be-1
2016/06/10(金)札幌 cube garden
2016/06/12(日)旭川 CASINO DRIVE
2016/06/16(木)東京 ZEPP DIVER CITY
※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。
赤い公園マンマンツアー2016
2016/04/23(土)水戸 LIGHT HOUSE
2016/04/28(木)浜松 窓枠
2016/05/01(日)高知 X-pt
2016/05/02(月)高松 DIME
2016/05/07(土)仙台 MACANA
2016/05/08(日)盛岡 the five morioka
2016/05/11(水)新潟 RIVERST
2016/05/13(金)金沢 vanvan V4
2016/05/20(金)名古屋 E.L.L.
2016/05/22(日)広島 セカンド・クラッチ
2016/05/27(金)大阪 BIG CAT
2016/06/01(水)岡 山IMAGE
2016/06/03(金)福岡 DRUM Be-1
2016/06/10(金)札幌 cube garden
2016/06/12(日)旭川 CASINO DRIVE
2016/06/16(木)東京 ZEPP DIVER CITY
※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。