SALU初全面プロデュースの新アルバム、聴き手もぐっと“歩み寄る“関係に

SALU | 2016.04.13

 フィーチャリングゲストに中島美嘉やSalyuといった女性シンガーを初めて起用。トラックメイカーにはtofubeats、Kenmochi Hidefumi(水曜日のカンパネラ)といった話題のクリエイターを迎えた、SALUの2年ぶりとなるニューアルバム『Good Morning』。他にも初顔合わせとなるミュージシャン、プロデューサーを取り揃え、さらには初の全面セルフプロデュースを敢行と、制作スタイルを根底から変えてつくられた本作は、歌詞も曲調も明るくてポジティブなものへと一新。ここには生まれ変わったかのようなSALUがいる。その変化はどのようにして起きたのか。アルバムの制作背景を紐解きながら、現在のSALUの姿に迫る。

EMTG:今回は『Good Morning』というアルバムタイトルがもたらす印象通りの、とても明るいアルバムになりましたね。それもあってこのアルバムタイトルになったんですか?
SALU:簡単に言うとそうですね。自分の中では「良い朝」っていう意味での「Good Morning」、周りの人とか聴いてくださる人には「おはよう」って言ってる感じです。出すまでに2年間かかっていて、最初の1年くらいは曲を作っても納得いくものができなくて、ずっと悩んでいたんです。でも去年6月に1曲目に収録した「All I Want feat. Salyu」の原型が不思議とスッとできて。そのときに悩みが晴れ、やっと夜が終わったなって感じたんです。そのあとの曲はすらすら書けましたね。何度も書き直したのは「In My Face」くらい。それ以外は一筆書きに近いです。
EMTG:アルバムを作っていく上で意識していたことは?
SALU:こっちから聴き手に近づいていくんだけど、聴いてる人も「なんだろう?」ってこっちにちょっと歩んできてくれるような距離感は意識しました。今までは聴いてくれる人がすぐに考えたくなるようなアルバムじゃなかったと思うんです。誰もが近寄れるものじゃないというか。
EMTG:歌詞も内省的だったり、抽象的だったり、哲学的だったりしたからね。
SALU:そう。でも、今回はそうじゃないもの……絵画のように、何も考えずに見ているとただの美しい作品だけど、よく目を凝らすとメッセージが浮き出てくるみたいなものにしたかったんです。でも、こっちから100%歩み寄るわけじゃないんですよ。そうしちゃうと待ち合わせの楽しみがなくなっちゃうじゃないですか(笑)。
EMTG:アルバムでカギになったと思う曲はどれですか?
SALU:「Tomorrowland」と「Nipponia Nippon」と「AFURI」かな。「Tomorrowland」はアルバムでいちばんポップな方向に振り切ってる曲だと思うので。その扉を開きたかったからトラックをtofubeatsくんに頼んだんですけど、見事に開いてくれたなと。「Nipponia Nippon」はメッセージ、フロウ、トラック、すべてに於いて、アルバムで唯一「ラッパーのSALU」が出てくる曲かなと。
EMTG:「AFURI」を挙げた理由は?
SALU:今まで敢えて書いてこなかった、僕が生活してる街の雰囲気を書いたことで清々しかったり、誇らしかったりするし、こういう曲を出しているということが今後、歌詞を書く上で大きいんじゃないかと思うんです。この曲があるから、みんなも自分も「厚木にいるSALU」っていうのをいつでも想像できるというか、SALUという存在がリアルになる。そういう曲だと思うから。
EMTG:フィーチャリングゲストでいちばんビックリだったのが中島美嘉さんです。SALUくんにとって中島美嘉さんはどんな人なんですか?
SALU:ただのファンですね(笑)。僕が中学生の頃に中島さんがデビューして、いつか一緒にやりたいなって、ファン目線の淡い夢を描いてたんです。それを今回のゲストを考えているときに思い出して。オファーしたときは、空から見てる母なる声みたいなイメージなんですっていうことだけメールしました。そしたらこの歌詞とこの歌唱が送られて来たんでバッチリでしたね。
EMTG:「ビルカゼスイミングスクール feat. 中島美嘉」は、都会に出てきた人間が抱く、理想と現実の狭間で生まれる葛藤をテーマにしてますよね。そういう曲を書く場合、今までのSALUくんだったら「都会暮らしで葛藤してます」と内心を客観的に描写するだけで終わってたような気がするんです。でも、この曲は途中のラジオボイス風になるところで「ここ(都会)で続けます」と一歩踏み込んで主張をしている。そこにSALUくんの変化を強く感じたんです。
SALU:そこはアルバムでいちばん聴き手に近づいていってる部分かもしれないです。しかも(その部分では)「SALUです」と言って話しかけてて。そこまで直接的に言葉を投げかけることは今までなかったんで。
EMTG:そういう姿勢は聴き手の励みにもなるんじゃないかと思ったんですね。「諦めるな」とメッセージしてくれているようにも感じられたし。
SALU:そう感じてもらっても嬉しいですし、「他人に蹴落とされるかもしれないんでしょ? 自分で足を踏み外して落ちるかもしれないんでしょ? じゃあ俺には無理そうだ」と思って他の道に進んでくれる人がいても、それはそれですごく嬉しいんです。どっちも勇気が要ることだと思うんで。
EMTG:今回のアルバムを聴いていると、「人って変われるんだ」って思うんですよね(笑)。今までのSALUくんの作品を聴いてきた人は特にそう思うかもって。
SALU:あはは。確かに僕自身でそれを体現してるかもしれないですね。
EMTG:今までは内向的でどこか斜に構えてるところがあったと思うし。
SALU:そうですね。今でも思いっきり斜めなんですけど(笑)。何も意識してないと45度になっちゃうんだけど、でも0度とか180度に近づけることはできるようになってきたっていうか。振り幅みたいなのができてきたかなと。
EMTG:蝶つがいがついた、みたいな。もしくは世の中と自分との結合部に遊びが生まれてきたっていうことですね。
SALU:そう、遊びができてきたから。これからは表現者としてもっと前進できるんじゃないかなと思っていますね。

【取材・文:猪又 孝】

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ビデオコメント

リリース情報

Good Morning

Good Morning

2016年04月20日

トイズファクトリー

1. All I Want feat. Salyu
2. Tomorrowland
3. ハローダーリン
4. Mr. Reagan feat.Takuya Kuroda
5. How Beautiful
6. Nipponia Nippon
7. Lily
8. 痛いの飛んでいけ -interlude-
9. ビルカゼスイミングスクール feat. 中島美嘉
10. タイムカプセル
11. In My Face
12. AFURI

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お知らせ

■ライブ情報

SALU LIVE TOUR 2016 ”Good Morning”
2016/06/17(金)大阪 Fan J Twice
2016/06/18(土)東京 渋谷WWW

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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