チリヌルヲワカ“今を生きるロック”の息吹を感じるニューアルバム

チリヌルヲワカ | 2016.05.12

 ポップな側面を見せた前作『アヲアヲ』から1年、ニューアルバム『ShowTime』からはごっついロックが聴こえてくる。
 今年1月にギタリスト坂本夏樹が脱退して、チリヌルヲワカはユウ(g&vo)、阿部耕作(dr)、 イワイエイキチ(b)のトリオになった。そのことがバンドに大きな影響を与えたことは確かだ。変化はユウを身軽にし、思い切りロックに振り切るチャンスを与えてくれている。最近めっきり増えた女性ロック・ミュージシャンのトップランナーとして、ユウの切れ味は増している。加えて爆発的な化学変化を引き起こすリズムセクションは健在で、和のテイストが滲み出す歌詞世界と相まって、今回も“今を生きるロック”の息吹を見事に伝えてくれる。
 チリヌルヲワカの3人に、新しいスタートについて聞いてみた。

EMTG:アルバム作りを意識し始めたのは?
イワイ:前作『アヲアヲ』のリリース・ツアーの後くらいからですね、曲を作り始めたのは。
阿部:年末のツアーではもう、新曲を2曲くらいライブでやっていたんですよ。
EMTG:その時点で、どんなアルバムにしようと思っていたんですか?
ユウ:とにかくロックなアルバムにしたいと思ってました。でもアルバム・レコーディングの準備の途中でナッキー(坂本夏樹) の脱退が決まったんで、急いでアレンジをし直しました。
EMTG:レコーディング直前にアクシデントがあったんだ。
ユウ:最初はもちろんプレッシャーはありました。3人でやれるのかなっていう不安もあって。ただ、実際、レコーディングをしてみたら意外と大丈夫だったので、楽しんでやれましたよ。
EMTG:あはは、タフだなあ。
ユウ:3人になって、自分のギターが強くなったと思います。前はツイン(2人の)ギターをどう活かすかって考えて組み立てていたんですけど、1人だと考えずに自由奔放に弾ける。本当の意味で“フリーダム”っていうか。ギター・ソロにしても 「どっちが弾くの?」って考えなくていい。
EMTG:責任は重いけど?
ユウ:そうですね。でも、もともとチリヌルヲワカは武骨を良しとしてきたバンドなので、大ざっぱな音の良さというか。
阿部:大ざっぱって(笑)。それを言うなら“粗削り”の良さでしょ。
ユウ:ああ、そうか(笑)。
EMTG:(笑)僕は「ヤミとクモ」が好きだな。
ユウ:それ、最初に録った曲。
イワイ:この曲をやってみて、「あ、3人の音だけで行けるな」っていう自信が湧きました ね。
EMTG:その自信のお陰で、ロックなアルバムになったのかな?
ユウ:初めから振り切ったアルバムにしたかったのが、3人になってさらに「やれることを全部やろう」ってすっきり考えられるようになったかもしれないですね。行き切ろうって。
EMTG:アルバムタイトル曲の「ショウタイム」は、聴いていてロックに振り切った感じがすごくした。
ユウ:全部の音が歪(ひず)んでます。アレンジや構成はシンプルにして、演奏で暴れる。サーカスで象が暴れるみたいな。
EMTG:サーカスで象が暴れたらマズイだろ(笑)。
ユウ:あ、そうか(笑)。まあ、そんな感じで暴れました。 
EMTG:「夏の亡霊」も面白かったな。リズムが少しハネてて。
ユウ:最初はもっとバラード寄りの曲だったんですよ。
阿部:今までのチリヌルヲワカって、基本は8ビートで、和音でバリエーションを付けるって いうやり方をしてきた。でもこの曲はリズムを変えてみたくなった。ドラムとベースでハネてみたんです。
イワイ:やったみたらユウちゃんが「カッコいい!」って言って。
ユウ:曲がすごく変化したんですよ。自分からは出てこないアイデア。なんかアカ抜けた感じがした。
阿部:ユウちゃんがやって来なかったリズムに挑戦したんだけど、それも3人になったせいでやりやすかったですね。
EMTG:今回、歌詞の面ではどうだったのかな?
ユウ:いつもと変わらないスタンスですね。私は歌詞カードを見て発見があるのが好きなんです。聴いてる感じと、文字で見る印象が違ったり。たとえば「ヤミとクモ」は“すきとかきらいとか”って聴こえるんだけど、歌詞カードを見ると、♪隙とか機雷とか♪ってなってたりします。
EMTG:そうだね。でも歌としては“好きとか嫌いとか”よりも、“隙とか機雷とか”の方がより深い意味が感じられる。
ユウ:そう感じてもらえたら嬉しいんですよ。もちろん聴いてわかるに越したことはないし、 歌詞カードを見ないとわからないような歌詞は書くつもりはないんです。気付かなくてもいいんだけど、気付く人には歌詞カードを見て笑ってもらえると嬉しい。私自身が他のアーティストのCDを聴くときに、歌詞カードを見ながら聴くのが当たり前だったこともあるんですが、「一度は歌詞カードを見てほしい」っていうポリシーで作ってますから。
EMTG:メンバーとしてはユウちゃんの歌詞をどう感じてますか?
イワイ:全部、把握してるわけじゃないです。把握しなくてもいいと思ってるし。ただ、やってるうちに自分の中に飛び込んでくる言葉に影響されます。それでプレイが変わったりしますね。
阿部:歌詞って、誰が書いてもパーソナルなものだと思う。ましてや女性で、ユウちゃんはその中でも独特の人だから、いちいち本人に確認することはせずに、自分なりに歌詞の言葉からイメージするようにしてますね。同時に、ユウちゃんが出来た曲を聴かせてくれるときのギターがいいんですよ。すでにそのギターに曲の世界観がある。それも含めて歌詞をとらえる方が、いいんじゃないかと思いますね。
EMTG:完成してみて、『ShowTime』はどんなアルバムになりましたか?
ユウ:目指したとおりのロックなアルバムになったかな。
阿部:特にユウちゃんの色が強まった。彼女の毒と薬のブレンド具合っていうか、明るくても毒があるし、暗くても薬になるっていう。そのひねり具合が、ユウちゃんのロック観なんだと思います。
EMTG:そして6月から“Tour2016 -ShowTime-”が始まる。
ユウ:リハーサルをやりながら、ちょいちょいイベントに出てるんですが、『ShowTime』からの曲は3人で作ったから大丈夫なんですけど、過去の曲をどうやろうか考えたりしてますね。ギター・ソロをどうしようかとか。そのお陰で、「私はギタリストだ」っていう意識が戻ってきました。もしかしたら今までちょっと楽してたのかもしれない(笑)。その分、今、頑張ってます。やりがいがありますね。
阿部:今まではギタリスト同士でバランスを取ってたんだろうけど、もうその必要はない。バランスなんて考えずに、ユウちゃんにはライブではガンガン行って欲しいですね。
ユウ:まだ心配はあるけれど、ツアーを1回やり切ったらひと皮むけるのかも(笑)。もう一つ心配なのは、4人で作ったときの曲を3人でやると、「お客さんがどう思うのかな?」って。
阿部:それを考えちゃうと、武骨さがなくなるよ。まあ3人になったことで変わるのは、平均年齢が上がることと、MCや打ち上げの雰囲気が違ってくることくらいじゃないの(笑)。
イワイ:確かに!(笑)
EMTG:ライブ、楽しみしてます。ありがとうございました!

【取材・文:平山雄一】

tag一覧 バンド 女性ボーカル チリヌルヲワカ

ビデオコメント

リリース情報

ShowTime

ShowTime

2016年05月13日

ヤマミチレコード

1.ショウタイム
2.秘密の部屋
3.咲かぬなら
4.夏の亡霊
5.ヤミとクモ
6.=0
7.未知への洞窟
8.みずいろの恋
9.ブラックホール
10.鬼ヶ島

お知らせ

■ライブ情報

チリヌルヲワカワンマンツアー
「チリヌルヲワカLiveTour2016 -ShowTime-」

2016/06/04 (土) 千葉LOOK
2016/06/11 (土) 福岡DRUM SON
2016/06/12 (日) 広島セカンド・クラッチ
2016/06/17 (金) 札幌COLONY
2016/06/25 (土) 大阪Shangri-La
2016/07/09 (土) 仙台PARK SQUARE
2016/07/15 (金) 金沢vanvan V4
2016/07/17 (日) 京都磔磔
2016/07/18 (月・祝) 名古屋CLUB QUATTRO
2016/07/26 (火) 渋谷CLUB QUATTRO

「六本木VARIT.オープン記念~SPECIAL 2MAN LIVE~」
2016/05/26 (木) 六本木VARIT

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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