back number、映画『オオカミ少女と黒王子』の主題歌でもある待望のニューシングル『僕の名前を』で新たなフェーズへ。
back number | 2016.05.18
back numberのラヴソングが多くの人々に支持されているのは聴き手の胸の中にある感情のヒダと鮮やかにシンクロしていくからだろう。映画『オオカミ少女と黒王子』の主題歌でもあるニューシングル「僕の名前を」も様々な感情を喚起させるラヴソングだ。せつない歌であると同時に、恋愛によって成長し、開放されていく主人公が描かれたヒューマンな歌としても成立している。確かな意志が詰まった演奏、ダイナミックで力強くて、温かな包容力を備えたバンドサウンドも素晴らしい。これは昨年12月にリリースされた5枚目のアルバム『シャンデリア』以降のback numberの新たなる始まりを告げる作品でもある。
- EMTG:「僕の名前を」は映画『オオカミ少女と黒王子』の主題歌にもなっていますが、映画の話が来てから作ったのですか? 清水依与吏(V&G):そうですね。特に歌詞は原作と台本を読んで、そこから組み立てていったので、物語と自分達のコラボみたいな曲になりました。
- EMTG:ポイントにしたことは?
- 清水:原作自体は10代の恋愛の物語なので、今30代の僕らが10代の主人公の気持ちをそのまま歌っていくのは違うんじゃないかなって。僕らが演る以上、登場人物のその先の物語に繋いでいくほうがやりやすいんじゃないかと思って作っていきました。
- EMTG:リアルに響いてくる曲でもあります。清水さんご自身が体験した感情と重なる部分はありますか?
- 清水:主人公の不器用な感じは自分の中にある要素とリンクさせているところはありますね。主人公は“僕は君のものだ”と言ってるんですが、相手からいろいろなものをもらったのに、そのくらいしか自分に返せることを思い付かなかったっていう。その強い気持ちを後押しできるように、ガシャガシャと演奏をしていこうと。
- EMTG:温かくて力強いバンドの演奏も素晴らしいです。どんな意識で演奏していきましたか? 小島和也(B&Cho):こういう曲って、ついきれいにまとめようとしがちなんですが、バンド感を強く打ち出したい意図もあったので、枠に収まらないようにプレイしました。依与吏からもプロデューサーの蔦谷好位置さんからも「もっとやっていいよ」って言われて、手数を増やしつつ、しっかり大きなリズムを心がけました。
- EMTG:ドラムを演奏する上ではどんなことを? 栗原寿(D):力強さや意志を表現できたらと思って演奏しました。強い音、いい音で録ることができたので、曲に説得力を出していくことができたんじゃないかと思っています。
- EMTG:今回、蔦谷好位置さんと一緒にやったのは?
- 清水:この曲にしようって決めた瞬間に蔦谷さんにお願いしたいなと思ったんですよ。というのはバンドの音を大事にしたい曲だったから。こちらの意図を伝えたら、すんなり理解していただいて、話も早かった。バラードを蔦谷さんと一緒に作るのは初めてだったので、楽しみながらやらせいただきました。
- EMTG:“何度も僕の名前を”というフレーズも印象的でした。名前というモチーフを使おうと思ったのはどうしてなんですか?
- 清水:名前を呼ぶとか呼んでもらうとか、すごく重要だなと思っていて。名前って自分だけのものですしね。この曲を最も象徴している場面は、相手から名前で呼んでもらっていたことに気づくところ。こっちは怖がっているのに、逃がしてもらえない感じもあるし、相手の思いの強さもしっかり伝わってくるんじゃないかなって。
- EMTG:名前で呼ぶって、年代関係ない部分もありますよね。
- 清水:僕らくらいの年代になってくると、だんだん心のドアが開きづらくなってくるし、いろんなものが怖くなってくるんですよ。出会うと、その人の人生と自分の人生とが関係あるものになってしまうわけですが、そうすると、その人がいなくなった時にはダメージが残っていく。いろいろと億劫になったり、臆病になったりする。その一周回った臆病さって、10代の人たちが出会うのが怖かったり、恋に落ちるのが怖かったりという感情と似ている気がします。
- EMTG:制作はツアー中ということになるんですか?
- 清水:そうですね。ツアーが始まってすぐで、かなり大変でした。個人的には体調も壊していて、過酷だったんですが、なんとかいいものができて良かったですね。
- EMTG:乗り切っていけたのは集中力や気合いによって?
- 清水:最終的には気合いじゃないですか。頑張って、一生懸命やりました(笑)。
- 小島:ライブをやっている時期だったので、お互いの演奏の呼吸みたいなところでは集中できていたのかなと思います。
- 栗原:そうですね。ライブを何本か重ねたあとのレコーディングだったので、せーので音を出した時のまとまり方の速度は速かったですね。
- EMTG:映画『オオカミ少女と黒王子』でこの曲が流れているのを観てどんなことを感じましたか?
- 清水:試写会に行ったのはつい先日なんですが、自分がイメージしていたものがそこにしっかりとあったので、良かったなと思いました。この話をいただいた時は、10代の恋愛ものということで、自分たちの音楽がそぐわないんじゃないかという懸念もあったんですが、いいものを作ることができたなって。映画自体も良かったんですよ。10代の恋愛ものを観て、どう感じるんだろうと思っていたんですが、キュンキュンしたので、自分もまだいけるなと(笑)。山崎賢人くんにキュンキュンしてました。かっこいいなあ、生まれ変わりたいなあって(笑)。
- EMTG:「僕の名前を」は両思いのラヴソングだとすると、2曲目の「パレード」はさらに得意分野となる失恋の歌ですが、ユルさや明るさもあって、聴いてて楽しかったです。
- 清水:こういうのを作るのが一番好きですね。楽しく作りました。『シャンデリア』の制作時にはできていたんですが、その時点で片思いの曲はいっぱいあったので、今回はいいかって取っておいた曲で。歌っていても、こういう曲のほうが落ち着きますね。俺なんかさあ、ってへりくだっている感じを長いことやりすぎたせいかもしれないですけど(笑)。
- 小島:僕としてはもっと明るい歌詞が入るんじゃないかと予想していたんですけど、帳尻を合わせるというか、この演奏でこの歌詞だから、おもしろい感じになったんじゃないかなと。
- 栗原:歌詞のちょっと力が抜けた感じもいいですよね。僕はギター・ソロのメロディが好きで。そういうものがありつつ、ビートに推進力があって、こういう曲になりました。
- EMTG:「パレード」というタイトルはこのリズムの感じから?
- 清水:もちろんそこからも来てますし、むなしい感じがあるなあと思って。楽しそうな曲でもありますが、好きになっちゃうと立ち止まれないわけで、むなしいけど、続いていくその感じが「パレード」感に通じるかなと。
- EMTG:“神に祈ろう”ってところ、最高ですね。
- 清水:そこが一番歌いたかったんですよ(笑)。
- EMTG:3曲目の「ひとくいにんげん」はハードでヘヴィなサウンドが新鮮ですが、この曲はいつぐらいに作ったんですか?
- 清水:この曲も最近ですね。まっさらな状態でスタジオに入って作っていった。『シャンデリア』はいい音の曲ばっかりだったので、逆に悪い音を使いながら、最終的にいい曲にするというテーマで作っていきました。
- EMTG:じゃあその音からこの歌詞も導き出されてきたんですか?
- 清水:そうですね。曲自体が怒っている感じがしたので、何に対する怒りなのか、考えて作っていきました。自分に対する怒りもあるんですが、人間に対する悲しみみたいなものも描いていきたかったので。より強くなっていくためには、人の感覚を食べて育っていくしかないと思っているので、その感覚を歌えたらなと。
- EMTG:創作をしている人間ならではの感覚ということですよね。
- 清水:そうだと思います。昔の自分のほうが光っていたとか思いたくないし、どこかしらアップデートしていかないとつらいですからね。先輩の方々が生き生きとしてやっているのはなんなのかなって考えた時に、いろんな人と話したり、いろんな音楽を聴いたりして、人のエキスを吸い続けて、新しい自分にアップデートし続けているんだなって思ったんですよ。だからみずみずしいものを作り続けているんだろうなって。僕もそうありたいし、そういう人々へのリスペクトと畏怖の念がありつつ、作りました。
- EMTG:ライブ感のある演奏がいいですよね。
- 小島:もうその感じですよね。バンバン好きなことをやっていって、攻撃していく感覚で演奏しました。
- EMTG:ドラムもエネルギッシュです。
- 栗原:振り切りました。今までこういうリズムってなかったので、そういう意味ではいいトライができましたね。
- EMTG:ホールツアーとアリーナツアーの間で出るシングルということになります。
- 小島:このシングルが出ることで、また速度を落とすことなく、ツアーに向かっていけますね。
- 栗原:ツアー中にリリースするのは初めてのことなんですが、ツアー中ならではのバンド感、勢いもあるし、新たな一面を見せられた作品になりました。
- EMTG:アルバム『シャンデリア』以降の方向を示す作品でもあるのではないですか?
- 清水:いつもそうなんですが、アルバム明けの1枚目のシングルって、何かしら、チャレンジをしようとしていることが多いんですよ。それまでの自分を否定するところから始まっている作品ではあるので、新しい物語か新しいエピソードが始まったのかなという気はしています。
【取材・文:長谷川 誠】
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リリース情報
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僕の名前を
2016年05月25日
ユニバーサル シグマ
1. 僕の名前を
2. パレード
3. ひとくいにんげん
4. 僕の名前を (instrumental)
5. パレード(instrumental)
6. ひとくいにんげん(instrumental)
2. パレード
3. ひとくいにんげん
4. 僕の名前を (instrumental)
5. パレード(instrumental)
6. ひとくいにんげん(instrumental)
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お知らせ
■ライブ情報
back number tour 2016
"ミラーボールとシャンデリア"
2016/06/04(土) 日本ガイシホール
2016/06/05(日) 名古屋 日本ガイシホール
2016/06/18(土) 幕張メッセ国際展示場 9・10・11ホール
2016/06/19(日) 幕張メッセ国際展示場 9・10・11ホール
2016/06/29(水) 大阪城ホール
2016/06/30(木) 大阪城ホール
2016/07/09(土) マリンメッセ福岡
2016/07/10(日) マリンメッセ福岡
2016/07/14(木) 日本武道館
2016/07/15(金) 日本武道館
※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。
back number tour 2016
"ミラーボールとシャンデリア"
2016/06/04(土) 日本ガイシホール
2016/06/05(日) 名古屋 日本ガイシホール
2016/06/18(土) 幕張メッセ国際展示場 9・10・11ホール
2016/06/19(日) 幕張メッセ国際展示場 9・10・11ホール
2016/06/29(水) 大阪城ホール
2016/06/30(木) 大阪城ホール
2016/07/09(土) マリンメッセ福岡
2016/07/10(日) マリンメッセ福岡
2016/07/14(木) 日本武道館
2016/07/15(金) 日本武道館
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