ウソツキ、3rdミニアルバム『一生分のラブレター』で、一生分の“ラブソング”を歌う。
ウソツキ | 2016.07.08
“王道うたものバンド”を標榜するウソツキが、王道中の王道である“ラブソング”をコンセプトに掲げ、見事に織り上げられた画期的3rdミニアルバム『一生分のラブレター』。タイトルからして清々しいほどに直球ど真ん中だ。収録された5曲が互いに手を取り合って、聴き手の胸に飛び込んでくるかのような楽曲の高い作品性はもちろんのこと、アルバムジャケットを始めとするアートワークに、いち早く公開されて話題を呼んだミュージックビデオ(以下、MV)なども含むトータリティも楽しんでほしい必聴の今作について、バンドのソングライティングを一手に担う竹田昌和(Vo.&G.)にたっぷりと話を聞いた。ウソツキのラブソングとは一体何なのか、行間からもしっかり読み取ってほしい。
- EMTG:ラブソングをコンセプトにしようと思ったきっかけはどんなものだったのでしょうか。
- 竹田:「一生分のラブレター」という曲を書いたことですね。詞先とか曲先とか、曲の書き方はいろいろありますけど、僕の場合は大体、同時なんですよ。“メッセージ先”って勝手に呼んでるんですけど、言いたいことがあるっていうところから始めて、鉛筆とか何も持たずにアコギを握って歌いながらどんどん形にしていくっていう。でも「一生分のラブレター」だけは初めて完全な詞先で作ったんです。ただ、最初は“これ、出せないな”って思ってたんですけど。
- EMTG:それはなぜ?
- 竹田:まず第一に……僕には弱点がありまして、おじいちゃんおばあちゃん系にとにかく弱いんです。おじいちゃんとおばあちゃんが楽しそうに一緒に歩いてるのを見るだけで、すでに若干泣いてる、みたいな(笑)。
- EMTG:涙腺をやられちゃうんですね(笑)。
- 竹田:はい(笑)。で、この曲も、出会ってから死ぬまでを描いているので、そういう描写が出てくるわけなんですけど、おかげで読むたび号泣してしまって。読むだけで泣いちゃうからまず歌えないし、メロディもつけられない(笑)。それでも、ある程度は慣れてきたんですけど、今度はタイトルで悩み始めて。“一生分”ってかなり重いというか、要は“全部”っていう意味じゃないですか。この1曲だけでそう言い切ってしまっていいのかと思ってしまったんですよね。だったら、この曲は先頭とか真ん中に置きつつ、他の曲で一生の中でのそれぞれの一瞬……それこそ恋に落ちた瞬間とか、コンビニまでの道のりっていうひとコマとか、そういうディテールを一つひとつ描いていったら、トータルで『一生分のラブレター』って呼べるんじゃないかなって。
- EMTG:“一生”という言葉で大きく括ってしまうのではなく、一生につながる一瞬一瞬もちゃんと描いてこそだと。それにしてもここまでど直球なラブソングって過去のウソツキの作品にはなかったのではないでしょうか。
- 竹田:ラブソングに限らず、これまでの曲っていうのは主人公を立てて書くことが多かったんですよ。僕の分身ではあるけど、あくまで“自分ではない別の誰か”っていう書き方をしていて。それが、だんだん自分の言葉になってきて、前回のフルアルバム『スーパーリアリズム』では意識して何曲か書いてみたんですよ。その流れで書いたので、他の曲はちょっと違うけど「一生分のラブレター」と「ハッピーエンドは来なくていい」は確実に自分の言葉になってますね。
- EMTG:自分の言葉で書こうと思った理由は?
- 竹田:腹を割るっていうんですかね、来てくれるお客さんがすごく腹を割ってくれるので、これは僕も腹を割らないわけにはいかんなと。とはいえ自分自身の言葉でラブソングを書くというのはやっぱり恥ずかしいし怖いし、それ以上に“僕でいいのか?”って、それこそ「一生分のラブレター」なんかはホントそう思いながら書いていて。だからこそ今回は5曲なきゃダメだったんですけど。
- EMTG:さて、その「一生分のラブレター」ですが、初の詞先ということで、何か取っ掛かりになるような出来事が?
- 竹田:あのですね、どうやら恋には賞味期限があるらしいんですよ。
- EMTG:賞味期限、ですか。
- 竹田:科学的にも証明されてるらしくて、個人差はあるかもしれないんですけど、とにかく脳内に恋愛ホルモンみたいなものが出る期間は決まっている、と。ネットか何かで見たんですけど、その記事を読んだ人たちのコメントがついていて、“いつか終わるんだから私は恋なんかしない”とかネガティブな反応がガーッと書いてあったんですよ。それを見てなんだか嫌だなと思って。僕自身、ネガティブな人間なのでそういう気持ちはよくわかるんですけど、同族嫌悪というのか、自分を見ているような気がしてしまうのか、“私なんて……”って言ってる人をどうにかしたい、ポジティブに変えなきゃいけないってすごく思うんですよね。なので、そのアンサーとしての“何回だって告白をしよう”なんです。
- EMTG:“告白”という言葉にたどり着いたのが素晴らしいなと思います。
- 竹田:告白ってビッグバン的な、すごい始まりのエネルギーがあると思うんですよ。普通、告白するタイミングって付き合うときとプロポーズするときの2回ぐらいだけど、もっと思い立ったときに告白したら、そのたびに脳内物質も出るんじゃないかっていう勝手な屁理屈で(笑)。
- EMTG:「ボーイミーツガール」は甘酸っぱさにキュンとしましたし、「恋学者」は逆説から入って最後に“君が好き”にたどり着く感じとか、とてもウソツキっぽい曲だなと。そこから一転してアグレッシブなロックチューン「地獄の感情無限ロード」はラブソングなのに“地獄”というタイトルのインパクトに加え、遊びの要素もあちこちに散りばめられていますよね。
- 竹田:サウンド的にもこの曲は遊んでいて、実はドラムとベースをトラックメイクしてるんです。リズムを主役にして“感情無限ロード”感を表現したくて。トラックを作ることでコード進行も同じになるので、メロだけで景色を変えていかなければならないっていう部分でも挑戦でしたね。
- EMTG:歌詞の“キットカット”も絶妙に効いてるし。
- 竹田:“かっ飛ばして”と“ちょっとかっとなった”ときたので、つい“キットカット”ってつい勢いで書いちゃいました(笑)。あとで書き直そうと思ってたんですけど、“キットカット、いいよね”って思いのほかウチのメンバーとかスタッフの反応がよくて、そうか?って思ってるうちに、ここまで来てしまって(笑)。
- EMTG:あと、恋愛の場面でチョコレートが発揮するパワーや意味って他のスイーツ系よりも特別だったりするじゃないですか。
- 竹田:恋の成分的な感じで科学的にも言われてますもんね。あ、もしかしてラブソングだから使ってるって深読みしていただきました?
- EMTG:えーと、はい(笑)。
- 竹田:深読みです(笑)。でも僕も今、“そうだ、恋の成分だ!”と思ったので、これからどんどん言っていこうかなって(笑)。
- EMTG:そしてラスト「ハッピーエンドは来なくていい」。「一生分のラブレター」でもおっしゃっていた“恋愛には賞味期限がある”“恋はいつか終わる”へのアンチテーゼをこの曲にも感じるのですが。
- 竹田:言われてみればそうですね。終わりばかりを見ている人たちに対して“終わりとかどうでもいいじゃないか。今、君がいてくれればそれでいい”って言ってるっていう意味では同じかもしれないです。最初はハッピーエンドの曲を書いてたんですけど、だんだんハッピーエンドとかどうでもいいんじゃないかと思い始めまして。結果主義の人っているじゃないですか。“で、結果、どうなの? 儲かるの?”みたいな。でも人は結果、死ぬんですよ。なので結果には意味がないんです。
- EMTG:それは究極の答えかもしれない。
- 竹田:ハッピーエンドでなくてもいいから今を、って思いたいんでしょうね。もちろんハッピーエンドに越したことはないですけど、“終わり”より“今”が大事。今はまだ終わるときじゃないので。
- EMTG:今回の作品は楽曲だけでなくアルバムジャケットもラブレターになっていたりとトータルイメージも統一されていて。
- 竹田:『一生分のラブレター』っていうアルバムを作るって決めたときにもう“ジャケットもラブレター以外ないだろう”って思ってたんですよ。具体的にどうするか話し合っていく中で、本当に手紙型にしちゃおうよっていうアイデアが浮上してきて。ダメ元で業者の方に相談してみたら、ものすごくやる気を出してくれたんです。例えばハートの部分はシールになってるんですけど、職人魂に火がついたのか、はがしても破れないシールを作ってくれたり。
- EMTG:それはすごい!
- 竹田:感動ですよね。そういう意味では「一生分のラブレター」で作らせてもらったMVもそうで。
- EMTG:渡辺いっけいさんが出演されているのにも驚きましたけど、主人公の俳優さんがまた迫真の演技でしたね。
- 竹田:小椋大輔さん(劇団チキンハート)という俳優さんで、渡辺いっけいさんが紹介してくださったんですけど、ひたすら全力でやってくださってるんですよ。怒るシーンなんてホント怖くてちびりそうで(笑)。アーティスト写真の衣装にしても僕の幼なじみが働いてるショップから貸していただいたり、僕ら以外のたくさんの人たちが協力してくれたからこそできた作品だと思ってます、この『一生分のラブレター』は。トータルでひとつのベクトルに向かっている、完成度の高い作品になったなって。
- EMTG:そうやってたくさんの人を惹きつけて心を動かす大きなパワーが今のウソツキにはどんどん宿り始めている気がします。
- 竹田:だったらうれしいですね。僕も手応えをすごく感じているので、どういうふうに広がっていくのか、この手紙がどこまで届くのか本当に楽しみで。いろんな人たちの心に僕らのラブレターが少しでも作用したらいいなと思いますね。ホント一生分ですよ、これは。次に書くとしたら来世分ですから(笑)。
【取材・文:本間 夕子】
ビデオコメント
リリース情報
一生分のラブレター
2016年07月13日
DAIZAWA RECORDS/UK.PROJECT
01.一生分のラブレター
02.ボーイミーツガール
03.恋学者
04.地獄の感情無限ロード
05.ハッピーエンドは来なくていい
02.ボーイミーツガール
03.恋学者
04.地獄の感情無限ロード
05.ハッピーエンドは来なくていい
お知らせ
■ライブ情報
NUMBER SHOT 2016 Show Case Live supported by 福岡スクールオブミュージック&ダンス専門学校
2016/07/24(日) 海の中道海浜公園野外劇場
ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2016
2016/08/13(土) 国営ひたち海浜公園
TREASURE05X 2016〜TRIPLE AUTHORITY〜
2016/08/14(日) 名古屋大須 ELL/ell.FITS ALL/ell.SIZE
UKFC on the Road 2016
2016/08/16(火) 新木場STUDIO COAST
WILD BUNCH FEST. 2016
2016/08/20(土) 山口きらら博記念公園
DISK GARAGE MUSIC MONSTERS -2016 summer-
2016/08/28(日) TSUTAYA O-EAST・TSUTAYA O-WEST・duo MUSIC EXCHANGE・TSUTAYA O-Crest・ TSUTAYA O-nest
ワンマンライブ「地獄のUSOTSUKANIGHT FEVER」
2016/09/10(土) 東京・新代田FEVER
代沢まつり < DAIZAWA RECORDS 15th Anniversary for the Future >
2016/09/16(金) 栃木・HEAVEN’S ROCK 宇都宮 VJ-2
2016/09/17(土) 宮城・LIVE HOUSE HOOK SENDAI
2016/09/22(木祝) 大阪・LIVE SQUARE 2nd LINE
2016/09/23(金) 愛知・APOLLO BASE
2016/10/4(火) 東京・SHIBUYA CLUB QUATTRO
No Maps presents Sapporo Neutral 2016
2016/10/14(金) Klub Counter Action / mole / spiritual lounge / ベッシーホール / KRAPS HALL / COLONY
※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。
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