LILI LIMIT メジャーデビューEP『LIVING ROOM EP』をリリース
LILI LIMIT | 2016.07.11
精力的な作品リリースとライブ活動によって、既に知る人ぞ知る存在となっているLILI LIMITが、EP盤『LIVING ROOM EP』でメジャーデビューを飾る。立体的に配置された多彩な質感のサウンド、心地よいメロディ、イマジネーションを豊かに喚起する歌詞の魅力が際立っている1枚だ。斬新な手法をたっぷり盛り込みつつも、極上のポップスとして成立させているところがすごい。部屋をモチーフにした4曲によって構成され、日常の中にある深いドラマも浮き彫りにする今作。LILI LIMITの独特な音楽性は、どのようにして生まれているのか? 牧野純平(Vo)と土器大洋(G)が語る。
- EMTG:牧野さんが地元の山口で結成したバンドが母体のようですね。
- 牧野:はい。ベースの黒瀬は当時から一緒だったんですけど、他のメンバーが就職のために脱退したんです。その後に福岡に行って土器とかが加入して今の編成になりました。
- 土器:対バンしたことがあって、繋がりがもともとあったんですよ。そして、福岡で約1年間活動した後に上京しました。
- EMTG:一緒にやるにあたって、どういうサウンドをやりたいと思っていました?
- 土器:僕も牧野も、前はギターの勢いで押すようなバンドをやっていたんです。だから一緒にやるにあたって、そこをまずフラットにすることにしました。
- EMTG:2人ともギタリストですよね。牧野さんがギターを始めたきっかけは?
- 牧野:父親がブルースギタリストだったので、ギターを弾くのを子供の頃から見ていたんです。ギターはずっと身近な楽器だったんですよ。14歳くらいの頃からレッド・ツェッペリンが好きになって、コピバンをしたりもしていました。
- 土器:僕はBUMP OF CHICKEN、ASIAN KUNG-FU GENERATION、フジファブリック、Mr.Childrenとかを聴いて、自分でもギターを弾くようになりました。中3の時に初めて買ったギターは赤いストラト。フジファブリックの山内さんの影響です(笑)。その後、高2くらいから「ドラムやベースのフレーズもすごく好きだな」と思うようになって、打ち込みソフトを使ってDTMをやるようになりました。音の重なりを作り上げることに喜びを感じるようになったのは、その頃からでしたね。
- 牧野:僕が「サウンドを構築する」ということを意識して音楽を聴くようになったのは、土器と出会ってからです。サウンド面を委ねられる点でも、土器は頼りになります。
- 土器:牧野は僕とはタイプが異なって、感覚的に出てくるもののすごさがあるんです。「2人が合わさったらすごいものが生まれるんじゃないか?」っていう期待は、一緒にやり始めた初期からありました。
- EMTG:まさに期待通りとなったわけですね。ギターロックとしてのストレートな熱量と、緻密な構築美が融合しているのが、現在のLILI LIMITの音楽ですから。
- 土器:ありがとうございます。僕は昔から何となく頭の中に「音の定位」みたいなことに関して理想があったんです。立体的なことをやっている海外の音楽に惹かれていたので。例えば、ブロック・パーティーの2ndアルバムや、Mewとかから刺激を受けていました。
- 牧野:僕は高校生の時にシガー・ロスに出会ってハマって、ビョークも聴いたり。最近はアウスゲイルが好きです。
- EMTG:2人とも「心地よい空間を体感できる音楽が好き」というような点で、何か共通するものがあるようですね。
- 牧野:そうなんだと思います。
- 土器:今の5人でやり始めてからそういうサウンドを漠然とイメージしながらも、形にできるまでは時間がかかりましたけど。
- EMTG:でも、緻密さがありつつも、肉体的な躍動感もあるのがLILI LIMITの面白さですよ。ファンキーさとかを感じることも度々ありますから。例えば前作の『#apieceofcake』に入っていた「Festa」を聴いた時、「あれ? これ実はちょっとラテンっぽくない?」っていう雰囲気を感じました。
- 土器:いろんなリズムも好きなんです。「LILI LIMITってダンスミュージックだよね」って言われるようになったのは、東京に来てからなんですけど。
- 牧野:僕らは音源とライブでの印象も結構違うみたいです。スタジオで緻密に作るだけじゃなくて、ライブバンドでもありたいという気持ちもありますから。
- EMTG:お客さんは、みなさんのどういうところが好きだとおっしゃっています?
- 牧野:「楽しい」っておっしゃってくださる人が多いです。
- 土器:「原因不明な楽しさがある」みたいな感じ方をして頂いているのは伝わってきます。それは嬉しい反応です。J-POPが好きな若い人とか、年齢が上の世代は「歌」として音楽を聴く方々が多いと思うんですけど、そういうみなさんにも僕らの音楽を楽しんで頂きたいので。僕ら、難しいことを突きつけたくはないんです。
- EMTG:LILI LIMITってキャッチーですし、「歌モノ」として楽しめる面も大きいですよ。
- 牧野:そうなんです(笑)。そこはずっとブレていないところです。「個性を出しながらも、商業的とされるものにどれだけアプローチできるか?」というのを楽しんでいます。
- EMTG:土器さんは、ゆずの「かける」の編曲とか、でんぱ組.incの「永久ゾンビーナ」の作曲を手がけたり、J-POPのアーティストの作品にも携わっていますよね。
- 土器:はい。面白い手法を使った曲をいろんな人たちが楽しめる時代になっているんだろうなというのは、そういうお仕事をさせて頂きながらも感じています。J-POPって、実は時代を先取りしたサウンドがいろいろあるんですよね。
- EMTG:『LIVING ROOM EP』も、斬新な手法を盛り込みつつポップスとして着地させた作品だと思います。
- 土器:そう感じて頂けると嬉しいですね。
- EMTG:すごく情景が浮かぶ音楽であるということも感じました。
- 牧野:音からイメージする情景に合った歌詞を書くというのは、最近よくやっていることですね。だから曲に合った場所を探す作業をよくしています。例えば1曲目の「Living Room」は、最初「Drive」というタイトルで歌詞を書こうとして、レンタカーを借りてオケを聴きながら走ってみたりもして1ヶ月くらい悩んだんです。聴きながら街を歩いたり、いろんな場所に行ってみたりもしたんですけど、合う場所は見つからなくて……。そんな時に丁度引っ越しをしたら、新居の西日がすごくいい感じで、この曲のAメロに合ったんですよ。「ここだ!」と思って、「Living Room」というタイトルで歌詞を書きました。
- EMTG:ということは、押入れがイメージに合ったら、「押入れ」という曲になったかも?
- 牧野:「Closet」だったかもしれないです(笑)。
- 土器:あり得ましたね(笑)。牧野がどういう歌詞を乗せるのか分からない状態で曲を作るやり方は、最近導入したんですけど、すごく面白いです。牧野の歌詞によって、改めて自分の作った曲がそういうイメージで聴こえてくるのを楽しんでいます。前作の「Festa」もそうでした。広い空間、アウトドアなイメージで最初は作ったんですけど、歌詞は《インドアスタンダードガール》っていう言葉がメインに来る曲になりましたし(笑)。
- EMTG:(笑)「Kitchen」「Unit Bath」「Bed Room」という2曲目以降は、「Living Room」に続いて固まっていったんですか?
- 牧野:そうなんです。「Living Room」を作ってから、「残りの曲も部屋にしよう」と。どの時間帯のイメージが合うかは考えながら、他の3曲の歌詞も書きました。
- EMTG:完全に余談となりますが……牧野さんは、まさにこういう間取りの家に住んでいるんでしょうか?
- 牧野:「Unit Bath」だけ違います(笑)。バストイレ別で、洗面台がありますから。でも、オケを聴きながら歩いていたら《マンネリした体に衰えを感じた夜》っていう歌詞が浮かんだんです。書き進めていったら窮屈なイメージのものになったので、「ユニットバスだな」と。
- EMTG:面白いイメージの膨らませ方ですね(笑)。
- 牧野:あと、「Living Room」を書きながら浮かんだテーマは、「未来を語りたがるのが男の人。今と過去を語りたがるのが女の人」ということだったんです。そういう男女が出会い、付き合い、同棲して、結婚して子供が生まれる……っていう物語の流れも考えました。その流れに僕が今まで見たり感じたりしたことを加えていったのが、今回の4曲の歌詞です。
- EMTG:4曲目の「Bed Room」は、牧野さんの作曲ですね。
- 牧野:はい。土器の作った3曲が既に形になっていたので、僕が作るものはすっきりしたイメージの音にしたいというのがありました。子どもに対して歌っている「Bed Room」を聴いた後に1曲目の「Living Room」に戻ると、また違ったイメージで受け止められると思います。音に関しても聴く度にいろんな箇所に耳が行くと思いますので、何度もリピートしながら様々な楽しみ方をして頂けたら嬉しいです。
- EMTG:LILI LIMITは、アートワーク面に関しても興味深いバンドですよね。『Festa』(タワーレコード限定でリリースされたシングル盤)のレシートをモチーフにしたジャケットも印象的でしたし、今作の初回生産限定盤は写真家の伊丹豪さんとコラボレーションをしたフォトブックが封入されるじゃないですか。
- 牧野:こういうのは、「今の時代だからこそできることをやりたい」と思う中で出した結論です。今って音楽とプラスアルファの部分を求められるようになっていると感じるんです。だから、僕が好きなことも提示するやり方をしているんですよ。お客さんに強要するというのではなく、「面白いでしょ?」というような感覚なんですけど、そういうことは毎回提示していきたいです。
- 土器:僕らの音楽は決して難しくないので、まずは手にとって頂きたいというのもあるんです。手に取ったからこそ伝わる感触とか感動も届けられる、「モノ」としていいものを作ることにこだわっているバンドでもあるので、そういう部分も感じて頂けたら嬉しいです。
【取材・文:田中 大】
リリース情報
LIVING ROOM EP
2016年07月13日
Ki/oon Music
1. Living Room
2. Kitchen
3. Unit Bath
4. Bed Room
2. Kitchen
3. Unit Bath
4. Bed Room
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コンテンポラリーダンス ローザス
ベルギーのコンテンポラリーダンス集団のローザスです。ダンス的な要素もある音楽をやるからには、いろいろ知らないといけないなと思って調べていたんです。その中で出会ったのがローザス。日常的な動作をダンスにしているところに惹かれました。
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ソフトシンセ Diva
新しい機材とか楽器には、常に興味があるんです。最近よく調べるのは、PCで扱うソフトシンセですね。最近調べたのは「Diva」というソフトシンセです。昔のアナログシンセを再現したようなサウンドです。その内、使うかもしれません。
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