ファンキー加藤、2ndアルバム『Decoration Tracks』インタビュー後篇

ファンキー加藤 | 2016.11.02

 2ndアルバム『Decoration Tracks』についてのインタビュー後篇。多くのリスナーが気づくと思うが、過去の自分自身と向き合っている姿を描いた曲が、今作にはいくつかある。このような切り口が生まれた背景とは何だったのか? そして、彼の胸の中に広がる原風景、今まさに伝えたかった気持ちをこめたのだという曲についても語ってもらった。

EMTG:「走れ 走れ」とか、「ブラザー」や「Tokyo Destiny Land」もそうですが、過去の自分を振り返る視点は、今回のアルバムに色濃く出ていますよね?
加藤:そうだと思います。今年はファンモンでデビューしてから10周年ですので、その節目がそうさせたのかなと。インタビューとかでも振り返る機会が多かったですし。だから、気づいてみると、そういう曲がいろいろ生まれてました。
EMTG:「振り返る」と言うと後ろ向きのニュアンスで捉えられることもありますけど、今回の曲で表現されているのは、それとは別のものを感じます。
加藤:そうなんですよ。歩んできた日々を愛おしく感じる気持ちが大きいですから。「積み重ねてきた日々を今日や明日の自分に繋げていこう」という決意表明なんです。
EMTG:「Tokyo Destiny Land」は、地元を離れて都内に住み始めた頃のことを描いていますが、これはまさに過去の自分との対話ですね。
加藤:上京をテーマにしています。僕のような八王子出身者も都心に行くことへの「上京感」があるんですよ。この感覚、なかなか理解されないんですけど。
EMTG:僕もあの辺りの人間ですから、その感覚はよく分かりますよ。「同じ東京都じゃない?」って言われがちですけど、大人になるまで都内なんてほとんど行く機会がなかったですし、全然別の街なんですよね。
加藤:ほんとそうです。僕は20歳くらいの頃に一番ヒップホップに傾倒して、ラッパーを名乗ってた時期は、渋谷とか原宿にものすごく憧れを抱いてました。当時の僕にとって東京を象徴する音楽がヒップホップ。でも、僕は八王子の中心街から離れた竹藪の1軒家に住んでたわけです(笑)。だから今回、バシッとラップする曲を作ることになった時に、「東京」っていうキーワードが出てきたんですよね。いつか「東京」をテーマにした曲を作ってみたいと思ってたんですけど、やっと形にすることができました。
EMTG:「Tokyo Destiny Land」、すごくラップしていますよね。「そういえば加藤さんってバリバリのラッパーだったな」と。
加藤:やめてください(笑)。今はラッパーとは名乗ってないですから。でも、久しぶりにしっかり韻を踏んでやってみたかったんです。僕がかつてラップをやってた頃は、「3、4文字で韻を踏むのは甘い!」っていう認識で、ガチガチに踏むことをやってましたから。
EMTG: ファンモンの曲の「八王子純愛物語」の歌詞を書いた時、《都まんじゅう》で韻を踏めて、3人が大喜びしていたのを覚えているんですけど。
加藤:《都まんじゅうへ》と《30円》で踏めたんです。ガチで電話で問い合わせて、「30円です」って教えてもらった時、みんなで「よっしゃー!」って(笑)。
EMTG:(笑)ところで、アルバムで「ブラザー」を聴いて改めて思ったんですけど、加藤さんの音楽って「夕焼け感」みたいなものが色濃くありますよね?
加藤:そうだと思います。夕焼けが好きですから。八王子のせいですよ(笑)。童謡の「夕焼け小焼け」(作詞:中村雨紅・作曲:草川信。雨紅は、故郷の八王子をイメージして同曲の歌詞を書いた)が生まれた土地ですし、西の空がきれいに見えるんです。
EMTG:浅川(八王子市内を流れる川。多摩川の支流)の土手から見る夕焼けがきれいですよね。
加藤:そうなんです。だから僕、いまだに河川敷と夕焼けが好きなんです。子供の頃の原風景なんでしょうね。そういえば「花鳥風月」の歌詞の中にも河川敷が出てきますね。河川敷と夕焼けって日本中にある風景ですけど、特別な想いがあるんですよ。
EMTG:ファンモンの「西日と影法師」も良い曲です。
加藤:あの曲、ウチのおふくろも好きで、1人でカラオケで歌ってるらしいですよ(笑)。僕、河川敷で見る夕焼けの甘酸っぱい空気感、切ない風、美しいオレンジ……そういうものをいまだに追い求めてる気がします。「あの空気感を曲にしたい!」って、ずっと思ってますから。あの風景って青春とか、初恋とか、挫折とか、希望とか、いろんなものを包み込んでくれる感覚もあります。
EMTG:「ただいま ~HOMETOWN~」も、加藤さんの抱いている原風景が表れている曲?
加藤:そうだと思います。これは川村結花さんと一緒に作ったんですけど、実は「走れ 走れ」のタイミングでのシングル候補曲だったんです。でも、シングルは「走れ 走れ」に決まったので、アルバムの曲として作り直すことにしました。
EMTG:歌詞に関しては、どのような想いをこめています?
加藤:今年のあの一件があった中でファンのみなさん、スタッフさん、関係者さん、仲間、家族の支えをとても感じたんです。そのことへの想いの歌ですね。大きい意味では八王子の家族や仲間の歌なんですけど、書いてる段階で地元の風景だけじゃなくて、これから回る全国ツアーでのステージ上の自分のイメージも浮かびました。
EMTG:加藤さんにとって、ステージ上から見るお客さんたちもふるさと?
加藤:はい。僕にとってのホームタウンって八王子だけじゃないんですよね。
EMTG:なるほど。そして、「本当のこと」も、今の加藤さんの気持ちがすごく伝わってくる曲として受け止めました。
加藤:アルバムがほぼ完成した状態から、「もう一度、最後にチャンスをください」と周りに言って作った曲です。もともとこのアルバムの14曲目には別の曲が置かれてたんですけど、ちょっと自分の中でモヤモヤしたものがあって。「時間がないからしょうがないのかな……」って諦めかけてたんですけど、ラストチャンスの3日間で作りました。
EMTG:この気持ちは、今歌っておかなきゃいけないと?
加藤:はい。そう思いました。このタイミングでみなさんに聴いて頂きたい、伝えたいなと。ファンのみなさんの日々を肯定したいという想いですかね。
EMTG:自分が歌ってきた曲を聴いて、何かを感じてくださったファンのみなさんの気持ちを何が何でも守って肯定したいというアーティストとしての強い想いを感じる曲です。
加藤:ありがとうございます。そうなんです。だから歌いたくて。今歌うべき歌だなと思いました。あと、ロックバラードの曲調も、ファンモン時代からいつかやりたいなと思ってたんです。大切に温めてたアイディアだったから、ほんとに強く伝えたいと思ってるメッセージがある時に形にしようというのがありました。レコード会社のディレクターさんも「好きなようにやれ」と言ってくれて、最後の最後にマスタリングも終わって出来上がったのを聴いて、「いいのができたね」と言ってくれました。
EMTG:ブルースハープのフレーズが出てきますが、もしかしたら今後、ライブで吹くんですか?
加藤:準備は進めてます。最近、移動の車の中で練習してますので。事務所が完成度を危惧してNGを出す可能性はありますが(笑)。
EMTG:(笑)横浜アリーナで宙吊りになった時に発揮した根性があれば、おそらく大丈夫でしょう(ファンキー加藤は極度の高所恐怖症だが、7月に行われた『I LIVE YOU 2016 in 横浜アリーナ』のアンコールの時、ワイヤーに吊られた状態で宙を舞った)。
加藤:あれは頑張りました(笑)。あのワイヤー、すごく細いんですよ。1本で300kg支えられるらしいんですけど、「ほんと大丈夫?」と。ワイヤーでフライングをしているみなさんってすごいんだなと思いました。
EMTG:さて。アルバムについてじっくり語って頂きましたが、改めてどのようなことを感じますか?
加藤:2016年の今現在、これ以上の作品を作ることはできないというくらいのことがやれたと感じています。これをみなさんに聴いて頂いて、「ファンキー加藤、今イチだな」と思われたんなら、ほんとにそうなんだろうなと思います。そんな時はできたらアルバムだけじゃなく、ライブも一度観て頂きたいという気持ちもありますが…(笑)。それくらいの気持ちがあるアルバムですね。
EMTG:デコトラのジャケット写真や、『Decoration Tracks』というタイトルについては、どのような背景が?
加藤:タイトルに関しては、ジャケット写真を踏まえてます。制作の進行上、ジャケット写真の撮影の時期が早かったんですよ。まず、「ジャケット写真をどうしようか?」と話し合ったんですけど、例えばヒップホップのアーティストは、オープンカーに乗って海岸線を走ったりするじゃないですか。「だったらファンキー加藤はデコトラだ!」と(笑)。
EMTG:(笑)衣装も含めて、とても似合ってます。
加藤:ありがとうございます。トラック運転手は、子供の頃の憧れでもあったんですよ。八王子の甲州街道とか国道16号とかに、大型トラックがたくさん走ってるのを見て育ちましたから。今回、夢が叶いました。最初は冗談半分の笑い話だったのに、だんだんスタッフさんも僕も本気になってましたね。
EMTG:オフィシャルファンクラブの『ファンキー号』は船ですけど、この機会にデコトラに乗り換えるのはいかがでしょう?
加藤:ファンキー号は既に出航してるので、港に戻って来なきゃいけないじゃないですか!(笑)。『ONE PIECE』だって、ルフィたちがデコトラに乗り換えたら、話が全然変わっちゃいますよ。
EMTG:それもそうか(笑)。
加藤:まあとにかく、この写真を撮った後に、アルバムタイトルを決めたんです。乗り物のトラックは「truck」なんですけど、曲のトラックは「track」。遊び心もこめて、『Decoration Tracks』という表記にしました。
EMTG:来年の3月まで続く全国ツアーもすぐに始まりますが、それに対する意気込みはいかがでしょう?
加藤:「デビュー10周年ありがとう! 2016年ありがとう! 2017年、11周年、また新しい一歩もよろしくね!」という気持ちで回ろうと思ってます。新曲や1stアルバムの曲はもちろん、FUNKY MONKEY BABYSの曲もバランス良く散りばめて全国のみなさんに会いに行きますので、ぜひ遊びに来てください!

【取材・文:田中 大】

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リリース情報

Decoration Tracks[通常盤]

Decoration Tracks[通常盤]

2016年11月02日

ドリーミュージック

M1.MUSIC MAGIC
(よみうりランド2015 ジュエルミネーション テーマソング)
M2.ブラザー
(映画「サブイボマスク」主題歌)
M3.中途半端なスター
(マイナビ転職CMソング)
M4.走れ 走れ
(10/19リリース最新シングル曲)
M5.つながるから
(マイナビ転職CMソング)
M6.勇者のうた
(2016TBS系列プロ野球中継“SAMURAI BASEBALL”テーマ曲)
M7.Ring a Bell
M8.Tokyo Destiny Land
M9.カラフル
M10.ただいま 〜HOMETOWN〜
M11.急性ラブコール中毒 Part.1
M12.少年の声
(フジテレビ系めざましテレビめざましデイリーテーマソング・水曜日)
M13.花鳥風月
M14.本当のこと

お知らせ

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■ライブ情報

HALFWAY STAR TOUR
2016/11/12(土) ハーモニーホール座間
2016/11/17(木) 神奈川県民ホール
2016/11/25(金) 市川市文化会館 大ホール
2016/11/29(火) 静岡市民文化会館大ホール
2016/12/01(木) 神戸国際会館こくさいホール
2016/12/06(火) 郡山市民文化センター 大ホール
2016/12/09(金) 滋賀びわ湖ホール
2016/12/11(日) 福井フェニックスプラザ
2016/12/17(土) 大分iichikoグランシアタ
2017/01/12(木) 大宮ソニックシティ 大ホール
2017/01/22(日) 香川レクザムホール 大ホール
2017/01/29(日) 倉敷市民会館
2017/02/04(土) 福岡サンパレス
2017/02/06(月) 大阪フェスティバルホール
2017/02/12(日) 新潟県民会館
2017/02/18(土) 仙台サンプラザホール
2017/02/19(日) 盛岡市民文化ホール 大ホール
2017/02/25(土) 名古屋国際会議場センチュリーホール
2017/03/11(土) わくわくホリデーホール(札幌市民ホール)

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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