2016年2月にメジャー1stフルアルバム『with YOU』をリリース。王道のJ-POPを想起させるサウンド、キャッチ―なメロディと共感度の高い歌詞によって注目を集めているGoodbye holidayからメジャー1stミニアルバム『KNOCK』が届けられた。「まだまだ自分たちが望むような状況になっていない。いまの環境を打破したい」という強い思いを抱えながら制作された本作には、フェスやイベントを意識したダンサブルなロックチューン「十ヶ条」からピュア度100％のウエディングソング「純白のドレスを君に」まで、幅広いリスナーにアピールできる楽曲が揃っている。バンドの新たな方向性を示した本作について、児玉一真（Vo&Gt）、福山匠（Ba）に聞いた。

EMTG：1stフルアルバム『with YOU』以降も、ライブ、シングルのリリースなど、精力的な活動が続いてますね。

福山匠（Ba）：常に何かをやっていた感じですね。いいタイミングでドラマの主題歌（テレビ東京系ドラマ「ドクター調査班～医療事故の闇を暴け～」）のお話をいただいたり、NHKみんなのうたで「弱虫けむし」を放送してもらったり。インストアライブもかなりやったんですよ。夏はずっとやってたよね？

児玉一真（Vo&Gt）：めっちゃやった（笑）。1か月くらい毎日のようにやってたんですけど、インストアはアコースティックでやらせてもらうことがほとんどだから、ちょっとユルい感じになることもあって。でも、そうじゃなくて「バンドのライブと同じような心持ちでやらないとダメだな」って反省したんです。曲と曲のつなぎだったり、手拍子を煽ったりすることを含め、いつでも熱量を持ってやっていきたいなって。

福山：うん。経験を重ねることで気付けることはいろいろありますからね。

EMTG：そして12月7日にはメジャー1stミニアルバム『KNOCK』がリリースされます。すべての楽曲の方向性がしっかり定まっているし、新しいトライも数多く込められていて。すごい充実作だと思います。

児玉：ありがとうございます。自分たちにとってもひとつの分岐点になる作品だと思っていたので、とにかく良いものにしたくて。15曲くらいの候補の中から、メンバー、スタッフと話しながら厳選したのがこの6曲なんですよね。

EMTG：分岐点というのは？

児玉：メジャーデビューしてからいろいろ活動してきたけど、売り上げを含めて、自分たちが思っていた状況になっていないっていうのが一番大きくて。それをどう変えていくかっていうのをすごく考えたんですよね。

福山：うん。

児玉：いまの音楽シーンはライブがメインになってるじゃないですか。僕らはライブでお客さんを盛り上げるというより、良いメロディと良い歌詞を軸にしたJ-POPらしい曲を作ることで広めようと思っていたんですが、「それだけじゃ足りないな」という現実に直面して。いまのシーンに向き合っていかないと、自分たちが目指している場所には行けないっていう。それを4人全員が感じたんですよね。

EMTG：1曲目の「十ヶ条」はまさにライブを意識した楽曲ですね。エッジの効いたギターリフ、４つ打ちを中心にしたリズムを含めて、これまでのGoodbye　holidayにはなかったタイプの楽曲だなと。

児玉：ギターをメインにしたバンドサウンドですからね。「十ヶ条」と2曲目の「パラダイムシフター」には鍵盤が入ってないんですよ。

福山：あるバンドのファンの女の子がTwitterで「新曲、ライブで絶対聴きたい」って言ってたんですけど、それを見たときに「自分たちにはそういう曲がないな」と思って。「十ヶ条」は「ライブで聴きたい」と思ってもらえるような曲を意識していたんですよね。イントロのギターのリフもそうですけど、何回も聴きたくなる中毒性だったり、自然に体が動く感じを取り入れて。

EMTG：こういうアッパーな曲に歌詞を乗せるのも初めてですよね？

福山：そうですね。作曲は大森（晧/Gt）なんですけど、サビのメロディが２拍３連みたいな感じになっていたから、最初は「踊れ踊れ」とか「回れ回れ」みたいな歌詞が浮かんできてしまって。でも、それを僕たちがやると一気に舵を切り過ぎるというか、バンドの芯が揺らぐんじゃないかと思ったんです。盛り上がれるカッコいい曲でありつつ、いままでの“らしさ”も残したかったというか。だから歌詞に関しては、切なさだったり物語性みたいなところを重視してましたね。いままでにないほどセクシーな要素も入ってるし、感情も揺らせる曲にしていきたいですね。

児玉：もちろんライブでもどんどんやっていこうと思ってます。この前、初めて披露したんですけど、まだ演奏するだけで精一杯で（笑）。お客さんを煽ったり、ステージングも考えていかないと。

EMTG：3曲目の「純白のドレスを君に」も、本作のポイントだと思います。こういうピュアなウェディングソングを表現できるのもGoodbye　holidayの魅力なので。

児玉：J-POPの感じというか、しっかり聴かせる曲もやっていきたいですからね。「純白のドレスを君に」は、広島のRCCテレビの「カンムリ」という番組の企画がきっかけなんです。漁船をヒッチハイクしながら瀬戸内海を旅するという企画だったんですけど…。

福山：僕はテレビで観てただけですけどね（笑）。

児玉：（笑）そこで出会った人たちと話をして、“究極のラブソングを作る”というテーマがあって。
瀬戸内海の島にはコンビニなんてないし、最初は「不便そうだな」って思ってたんですよ。でも、暮らしている人たちはみんな笑顔が素敵で、気さくで温かいんですよね。みなさんと話をさせてもらうなかで「モノがたくさんあることではなくて、好きな人、大切な人と一緒にいることが一番の幸せなんだな」って思って、その気持ちを書いたのが「純白のドレスを君に」なんです。そろそろ友達が結婚する年齢になってきてるし、これから結婚する人、長年連れ添ってる人にも共感してもらえる曲にしたくて。

EMTG：「命果てるまで　歌うよ」と宣言している「人間到る処、青山あり」についても聞かせてください。児玉さんの作詞・作曲ですが、ここまで強い意志を歌った曲も初めてでは？

児玉：はい。これはもう僕のエゴをそのまま書いた感じですね。共感してもらうことはあまり考えず、とにかく自分の気持ちを言いたくて…。確かにここまで振り切ったことはなかったけど、このタイミングで「ステージに立って、一生歌っていく」ということを言葉にしないとダメだと思ったので。

福山：生々しいですよね。「パラダイムシフター」（作詞：福山 / 作曲：児玉）もそうだけど、今回は生々しい思いが出ている曲が多くて。「自分たちの身を削らなくちゃいけない」という気持ちが無意識のうちにあったのかもしれないです。

児玉：うん。「KNOCK」（作詞：福山 / 作曲：大森）に「やっとスタート地点だ」という歌詞があるんですけど、まさに「ここから始まる」という気持ちだし、「4人で戦っていくぞ」という決意がやっと固まったんですよね。

福山：「KNOCK」は10代の悩みをテーマにした曲なんですけど、そこで歌ってることは僕ら自身にも当てはまっていて。スタート地点って、常に自分たちで決められると思うんですよ。今回のミニアルバムは制作の環境も一新させてもらったし、メンバーで何度も話し合って、一丸となって進めて。やっと土台が固まったんだと思いますね、ホントに。

EMTG：2017年3月からは対バンツアー「KNOCK!!KNOCK!!KNOCK!!～はよ上がりんさい～」がスタート。このミニアルバムを作り上げたことで、さらに前進できる手応えはありますか？

児玉：ありますね。いい作品が出来たのもそうですけど、一番大きいのはメンバーの思いが一致していることだと思っていて。「このままじゃダメだ」「もっとこうしよう」という話をしながら、全員の意識を共有できたのはホントにデカいですね。

福山：今回のアーティスト写真もそうなんですよ。「4人が住んでいる部屋」みたいなイメージで「ライブ会場にノックして訪ねてきてほしい」という気持ちだったり、「こっちからも訪ねていくよ」ということを表していて。それはGoodbye holidayの根幹にあるコンセプトなんですよね。ライブもアー写と同じ衣装でやってるので、ぜひ会場に来てほしいです。

児玉：この先のライブで「いまのシーンで戦える」ということを証明したいので。夏フェスもどんどん狙っていきたいし、男の子のファン、バンドキッズにもぜひ見てもらいたいなって。そのなかで「Goodbye　holidayのライブはこれだ」というものを提示したいんですよね。

【取材・文：森 朋之】