この1月で20歳になるAnlyから届いた4thシングルは、テレビ東京系アニメーション『NARUTO-ナルト-疾風伝』のオープニングテーマとして好評を得ている「カラノココロ」。自身のココロに向き合い、たとえ暗闇でもがいていても光を求めて手を伸ばし続けよう、仲間と共に進んでいこう……という想いを込めて歌った力強い1曲だ。この曲とカップリングの2曲について話を聞いた。
EMTG:デビューしてから、もう1年ちょっと。とても充実した1年だったのでは。
Anly:そうですね。ギター1本持って、いろんな街で歌うことが増えました。そこで出会ったひとたちがまたライブを観に来てくれたり。本当に出会いがいっぱいありましたね。ひととの出会いだけじゃなく、新しい音楽にもたくさん出会ったし、それが少しずつ自分の音楽を形作るようにもなってきた。めまぐるしい1年でしたけど、充実してましたね。
EMTG:そして2017年最初のシングルがここに届きました。4thシングル「カラノココロ」。まず、ひっかかりのあるメロディが印象的ですね。独特の節回しがあって。
Anly:自分のなかから出てきたものなので、最初は特に不思議に思わなかったんですけど、レコーディングして聴き返すうちに、「なんでこんなメロディが出てきたんだろう?」って。それで考えてみたんですけど、高校生のときにやっていたイタリア歌曲とか合唱の影響が出たんだと思います。それでこんなふうに1オクターブ以上飛ぶようなメロディになったのかなって。でも、それをポップに変えられたのは、私にとっては成功でした。
EMTG:スローで静かに始まり、一拍入れてから物語が動き出す感じもいい。
Anly:曲を書き始めたときから、静かなところから上がっていく展開にしようと決めていたんです。歌詞は『NARUTO-ナルト-』を読んで、自分の実生活と重ねながら書いていって。だから自分でも共感できる曲に仕上がりました。
EMTG:この曲は『NARUTO-ナルト-疾風伝』のオープニングテーマになっていますが、もともとその話があった上で曲を書いていったんですか?
Anly:メロディ自体は前から自分のなかにあったんです。で、今回のお話をいただいたときに、『NARUTO-ナルト』自体が新しい章の始まりということだったので、どうにか曲自体にも新鮮さを出せないかと考えて。自分の新しい引き出しをあけようと頑張ってみました。
EMTG:具体的に言うと?
Anly:いままで触れたくなかった自分の暗い部分とかにも手を突っ込んで書いてみたんです。
EMTG:『NARUTO-ナルト』の物語にインスパイアされて、そのように自分の内側に入っていくことができた。
Anly:はい。『NARUTO-ナルト』のキャラクターたちもみんな明るく見えるけど、どこかに闇を抱えていたりする。その上で試練を乗り越えようとしているわけで。それって現実も一緒で、例えば東京を歩いていてよく思うのは、成功しているように見える人でも、みんな何かしら悩みなりを抱えて生きているんだなってことで。私自身のなかにもネガティブな部分はあったりするので、そういうところに手を突っ込んでみたというか。
EMTG:自分のネガティブな面とちゃんと向き合ってみた。
Anly:そうです。例えば曲作りって、楽しい面もあるけど、苦しいものでもあるわけですよ。特にこの1年は生みの苦しみをすごく味わって。陣痛みたいな感じ? 生まれたあとは、曲は育って自分で歩いていくからいいんですけど、やっぱり生むまではたいへんなんですよね。それで自信を失いかけたりもしたし。私はどういうアーティストで、どういうふうになりたいんだろって、改めて考え直したりもした。「カラノココロ」ほど悩んでできた曲はいままでないですね。
EMTG:そこをどうやって乗り越えて、曲の完成までもっていったんですか?
Anly:暗闇のなか、ひとりで手探りしているときに、手を差し伸べてくれるひとたちがいたんです。「懐かしい風にふりむけば いつでもあなたの声がするよ」って歌詞があるんですけど、本当に懐かしい風が吹いた気がした日に、親とか友達から連絡が来たりとか。それで、“ああ、離れていても通じ合ってるんだな、私はひとりじゃないんだな”って感じたんです。ひとを頼ることも大事だなって気がついたし。
EMTG:それにしても「カラノココロ」というカタカナ6文字のタイトルはなかなかインパクトがありますね。その頃はまさにそういう気持ちだったわけですか?
Anly:そうですね。カタカナにしたのもそのときの虚無感を表現したかったからで。このタイトルは最初に出てきたんです。一番衝動的に出てきたのが、そのタイトル。ちょっと暗いけど、このタイトルだからこそ逆にメロディの明るさは際立つというか。自分を引っ張りあげようというのが、すごく見える曲だと思いますね。
EMTG:Anlyさん自身、この曲を書いたことで、救われたような気持ちになったのでは?
Anly:はい。できたときは薄暗い印象の曲だなと思っていたんですよ。でもいまは夜が明けて太陽がのぼってきたぐらいの時間帯が合う曲だなって思えますね。日に日に輝きが増していく曲のように感じられるんです。
EMTG:ストリングスの音がその輝きに結びついているのかもしれませんね。あれが物悲しい音だったりしたら印象はだいぶ違ったと思う。
Anly:そうですね。ストリングスには今回すごくこだわりました。曲のなかでキーになってるパートですね。ストリングスの動きがちょっと和風チックで、そこが『NARUTO-ナルト』にも合ってるなって最近思えてきて。
EMTG:それから後半にはエレクトロな音が入ってきて、昂揚感のあるコーラスがそこに重なります。あそこでまさに希望の光が見える感じですね。
Anly:座り込んでいたひとたちが声に応答して立ち上がっていくイメージ。フェスで歌ったときに、みんなで一緒に「オーオー」って歌えたら一体感が出るし、共に生きていこうというメッセージも共有できるかなって思って。
EMTG:確かに。あと歌い方に関しては、ラップっぽく歌っているところがあります。Anlyさんにとって、それもチャレンジだったのでは?
Anly:はい。ラップっぽく歌うのは大好きなエド・シーランからの影響が大きいんですよ。私も初めは英語のラップをカヴァーしたりしていたんですけど、どうにか日本語でやれたらいいなぁと思っていて、この曲ができたときに、そんなに意識もしないでできました。韻を踏むのはちょっと難しかったけど、歌ってるうちに口が馴染んでくるのが楽しくて。
EMTG:デビュー2年目の最初のシングルで、いろいろと新しい面を表現することができましたね。
Anly:そうですね。この1年で吸収したものを全部出せた曲かなって思います。
EMTG: それからカップリング曲の「だから」。これはアコースティック・ギターで始まり、ピアノにのせて歌われる、どこか懐かしくて優しい曲ですね。
Anly:高校生のときに作って、インディーズの頃によく歌ってた曲なんです。
EMTG:「カラノココロ」と違って、曲展開もメロディもすごく素直ですよね。
Anly:いまこういう曲を書くのは、逆に難しいかもしれないですね。聴くひとがどういうふうに思うか、いまは意識しがちなところがあるから。「だから」は本当に自分だけの世界で書いていたから、こういう素直な曲になったんだと思う。歌詞もそうですね。高校生の自分の日常のなかでの大きなことを歌にしたいと思って書いたんです。
EMTG: 10代の子たちが聴いたら、きっとすごく共感するだろうと思う。少女から大人になる間の揺らぎがそのまま出ているから。
Anly:ぐらついてる頃ならではの歌詞ですよね(笑)。16歳の自分の感性って、いま思うと、面白いなって思います。3年でけっこう変わったのかな。因みにこの曲のサウンドは、16歳のときにレコーディングしたものなんですよ。歌だけ録り直したんですけど。
EMTG:あ、そうなんですね。歌はすごくナマっぽいというか、素のAnlyさんらしさが出ているように思います。飾りがまったくない。
Anly:そこを意識して歌いました。映画『新宿スワンⅡ』に私も出演してるんですけど、そこでもこの曲を歌っているんです。主演の綾野剛さんも「いい曲だね」って言ってくださって、嬉しかったですね。
EMTG:そしてもう1曲、「初恋」ですが、これはいつ頃作ったんですか?
Anly:これは比較的最近ですね。メロディやギターの雰囲気を思いついたのは、伊江島でランニングしていたときで、いい広がり具合が出せたかなと思う。色あせない初恋というのがキーワードとしてあって、それをうまく表現できたんじゃないかと。
EMTG: 「いいの」でも片思いを歌ってましたが、これもやはり片思いの曲ですね。
Anly:私はいつも片思いしかしてないので。
EMTG:「いいの」で歌ったひとと同じひと?
Anly:別のひとです。「いいの」は高校のときのひとで、「初恋」は中学のときのひと。伊江島のあの頃の風景をたくさん思い出して書きました。懐かしむ意味で書いたというか。どこかで頑張ってるそのひとに、「頑張ってね。私も頑張ってるから」って気持ちを伝えたくて。
EMTG:Aメロはずいぶん低い声で歌ってますよね。
Anly:はい。でもサビは高いっていう。だいたい高低差があるんですよね、私の曲って(笑)。でもこの曲ほど低い声は出していなかったので、なるべく肩の力を抜いて歌うことを意識しました。カフェとかで歌いたいですね、この曲は。アットホームな雰囲気で歌いたい曲です。
EMTG:「だから」と「初恋」はフォーキーで、優しくてあたたか。表題曲の「カラノココロ」はエッジもあって力強い。今回もAnlyさんの両方の面が表れたシングルになりました。
Anly:そうですね。私の幅を見せることができたシングルになったと思います。でもこれからは、カップリング曲で表しているような自然な姿をタイトル曲でも出していきたいと思っていて。ライブでも「アコースティックになったときの自然な声がいいね」って言ってくださるひとが意外に多いので、そういうオーガニックな感じをA面の曲でもやってみたいと思ってます。
EMTG:ところで1月で20歳になるわけですが、音楽以外でやってみたいことはありますか?
Anly:行ったことのない土地にもっと行ってみたいですね。
EMTG:20歳になったらお酒を飲むとか、そういうのは?
Anly:私が生まれたときに、みんながメッセージを書いてくれたお酒の瓶があるんですよ。そこに誰かが「大きくなったら飲むのかな」って書いてくれてて。20歳になったらまずそれをあけたいですね(笑)
【取材・文:内本順一】