マカロニえんぴつ、新ロックレーベルTALTOからミニアルバム『s.i.n』をリリース
マカロニえんぴつ | 2017.02.14
音楽大学の学生が2012年に結成したロックバンド「マカロニえんぴつ」。最新作『s.i.n』には、多彩なサウンドが煌めく7曲が収録されている。キャッチーなメロディが揺るぎない柱だが、ユニークなアレンジや予想外の展開が次々飛び出すのが面白い。ヴォーカル、ギター、ベース、ドラム、キーボードという王道の編成を目一杯に駆使し、新鮮なロックの形を堂々と示す1枚だ。メンバーを代表して、はっとり(Vo・G)が今作について語ってくれた。
- EMTG:キャッチーだけど、なかなかぶっ飛んだところもある作品ですね。
- はっとり:今までの作品は真面目というか、固い感じで作っていた部分もあったので、今回は「音で遊ぼう」ということを思ってました。自分が作詞作曲のほとんどをやってるんですけど、メロディに自信があるんです。だから、オケは変わったことをやっても最終的にはまとまるのかなと。
- EMTG:マカロニえんぴつって、洋楽の香りがあるように感じたんですけど、そう言われることはあります?
- はっとり:あります。例えば、「初期のweezerみたい」とか言われることがあって、実際にそういうパワーポップとかが好きなんです。今回、そういう趣味の部分を多めに入れた感じでもありますね。
- EMTG:例えば「スタンド・バイ・ミー」は、日本語の歌詞の響きが英語っぽいですね。
- はっとり:僕、GRAPEVINEも好きなんです。あのバンドは英語っぽく聴かせるじゃないですか。そういう遊び方もやってみました。
- EMTG:マカロニえんぴつは、音楽大学で結成されたバンドですけど、理論的な部分も駆使して作ってます?
- はっとり:通っていたのはロックとかの学科なので、理論に関してはそこまでではないですね。ウチのキーボード(長谷川大喜)はエレクトーンコースの学生だったので、彼だけはロックの世界に巻き込んでしまった結果になりましたが(笑)。クラシックとかジャズとかミュージカルとか、いろんなコースがある学校だったので、面白かったですよ。学校の中でいろんなコンサートがあって、自由に観に行けたのも、今思えば良い環境だったと思います。
- EMTG:そういう環境の中で多彩な発想が培われたんでしょうね。例えば「メイビーネイビー」は、アジアンテイストが香るのが面白かったです。
- はっとり:この曲は、ヒンドゥー語で数字を言ってるところもあるんですよ。
- EMTG:《エク・ド・ティン・チャール・パンチ》っていう辺り、謎だったんですけど、ヒンドゥー語?
- はっとり:はい。ヒンドゥー語の数字です。それもあってシタールの音を入れました(笑)。デモ音源を作る時って、英語っぽいようなよく分からない言葉で仮歌を入れるんですけど、歌詞をつける時に日本語でハマるものが浮かばなかったので、ヒンドゥー語を入れることにしました。歌詞はアイリスの花言葉を盛り込んでいるんですけど、こういうのも新しい試みでしたね。でも、どの曲においても「日常の言葉で基礎を作りたい」っていうのを思ってます。
- EMTG:「洗濯機と君とラヂオ」は、タイトルも含めて日常の雰囲気が漂っていますね。《この恋が》というフレーズが繰り返されることで生まれる突き抜け感もすごいですし、不思議なキャッチーさがある曲だと思いました。
- はっとり:展開のさせかたも面白いことができました。耳を「おっ!」って惹きつけることがしたいんです。「洗濯機」「君」「ラヂオ」っていう組み合わせも、気になるミスマッチ感を探した中から出てきました。サウンド面に関しては「さり気なく4つ打ち」っていうのも、面白い感じになったと思います。
- EMTG:この曲もそうですけど、マカロニえんぴつの音って、「パリッ」と乾いたフィーリングがありますよね。それも洋楽っぽさを感じるポイントだと思いました。日本のバンドの今の主流って、もう少しウェットな感じがあるように思いますので。
- はっとり:ギターに関しては、ディレイをかけてジャキジャキ弾くのが今の主流なのかもしれないですね。でも、おっしゃる通り、ウチは乾いたサウンドが好きなんです。
- EMTG:洋楽ということで挙げると、ドラムのサティさんが作曲をした「まなざし」を聴いて笑いました。クイーンを彷彿とさせるサウンドアレンジじゃないですか。
- はっとり:みんなでアレンジを考えた曲です。サティはクイーンが好きなので、突然雰囲気が変わって、ギターソロが入るようなクイーンリスペクトみたいなことをやることになったんです。音作りやコーラスもクイーンっぽいですよね。
- EMTG:ギターの音色、ブライアン・メイ(クイーンのギタリスト)っぽいと思いました。
- はっとり:ミドルブーストなセッティングで弾いたりしてますからね。さすがにコインは使ってないですけど(ブライアン・メインはコインをピック代わりにして演奏する)。そういうことも楽しみながら作っていけた曲です。
- EMTG:クイーン風味のアレンジって、大半のバンドマンが一度はやってみたいと思っていることじゃないでしょうか。
- はっとり:やってみたくなりますよね。今回のアルバムは、いろんな面で「やってみたい」っていう気持ちを制限することなく作れたんです。そういう姿勢や遊び心は、これからも大切にしたいと思ってます。
- EMTG:考えてみれば、みなさんのバンド名も遊び心の塊ですね。
- はっとり:そうかもしれないです。1stミニアルバムを出した時から、バンドのマスコットキャラクターがいるんですよ。「まかぴー君」という名前なんですけど。ゆるキャラブームにあやかった感じもあります(笑)。
- EMTG:(笑)熱いロックフィーリングが発揮されている「哀しみロック」も、遊び心を感じました。飼い犬のように女の子に媚びてしまう男の悲哀を描いた歌詞と、サウンドのコントラストが面白いです。
- はっとり:自分があまりシャキッとした男じゃないところも投影した曲なのかもしれないです(笑)。終盤の転調も気に入ってます。終盤に向かって畳みかけるような感じになってるんですよ。ゴチャゴチャした感じの葛藤を荒っぽい音で表現したら面白いだろうなと思ってました。
- EMTG:先ほど「ミスマッチ」という言葉が出ましたが、この曲もその面が出ている曲だと思います。
- はっとり:「明るいことを言ってそうだけど、実はそうではない」というようなアンバランスなニュアンスは、やはり追求したくなるんです。あと、「歌詞だけ読んでも成立する」というのも目指してますね。1個の読み物として読んでも、「なんだか切なくなる」というようなものにしたいんです。そして、聴いてる人が想像する余地も残すようにしてます。
- EMTG:「夜と朝のあいだ」も、物語と風景をすごく想像できる曲ですね。
- はっとり:この曲の歌詞は、自分でもいいものが書けたなと思ってます。「朝」って「1回寝て朝になったら何かが解決する」っていうような前向きなイメージがあるじゃないですか。その「朝」に行ってしまう前の宙ぶらりんの感情にしがみついてるというか、「朝が来てほしいんだけど、夜のままでもいいし……」っていう、朝と夜の中間で浮遊してる感じの歌詞なんですよね。この曲にも出てくる《愛している》っていう表現は、今回の1枚の中でいくつか出てくるんですけど、温度感はそれぞれ異なるんです。冷めきったニュアンスの《愛している》もあるので。
- EMTG:「two much pain」の中に出てくるのは、終わりつつある恋のニュアンスですね。
- はっとり:はい。温度感の違いを大事にして描きたいというのも、今回のテーマの1つだったんです。《愛している》って諸刃の剣の表現でもあるんですよ。使うことによってチープになることもあれば、必然性のある表現となることもあるので。今回は、「この言葉しかない」っていう使い方ができたと思います。
- EMTG:約5年間の活動の中で模索してきた作風が、今作で結実した感覚はあります?
- はっとり:それを自分たちから言ってしまうとそこで止まってしまう感じがあるので、「結実した」までは言わないですけど(笑)。でも、なんとなく形になったものは出てきてるのかなと思います。今回で3作目ですから。
- EMTG:1stミニアルバムが『アルデンテ』、その次が『エイチビー』、今作が『s.i.n』……マカロニや鉛筆関連のタイトルが続いていますね。
- はっとり:今回は新レーベルのTALTOから出すので、その意味での「新」でもあります。あと、去年、大学を卒業したので、「心機一転」の「心(しん)」とかも入ってます。
- EMTG:マカロニと鉛筆シリーズのタイトルは、今後も続くんでしょうか?
- はっとり:思い浮かばなくなりつつあるので、困ってるんですよ。次は『s.i.n 2』とかにすればいいんですかね?
- EMTG:『ちょっとアルデンテ』とか?
- はっとり:なるほど(笑)。
- EMTG:あと、鉛筆の硬さで順番につけていけば、『3B』『2B』『B』『H』『2H』とか、しばらくは楽ですよ。
- はっとり:それは便利なタイトルですね(笑)。
- EMTG:(笑)という冗談はこれくらいにしておきましょう。ツアーもありますが、ファイナルの4月27日は渋谷のクラブクアトロでのワンマンですね。
- はっとり:はい。大きい会場なので、ツアーで曲たちを磨いて臨みたいと思ってます。そして、マカロニえんぴつは、フェスに出たことがまだないんです。だから、フェスとかにも呼んで頂けるようなバンドにもなっていきたいです。
【取材・文:田中 大】
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2017/04/14 名古屋CLUB UPSET
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※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。
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